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ビル・ゲイツとジェフ・ベゾスが3Dプリント人工肉時代の到来を宣告「すべての富裕国は100%合成牛肉産業へとシフトすべきだ!」
2021年はオルトミート元年になるか SK本舗メディアでこれまで幾度も人工代替肉(オルトミート)のバイオ3Dプリントについてを取り上げてきた。その「本当の肉と区別がつかない」ほどの精度については、世界から驚きと賞賛の声が多くあがっており、あとはその普及を待つばかりと言われてきたが、どうやらこの2021年は、このバイオ3Dプリント人工肉にとって、記念すべき一年となりそうである。 以前、取り上げたように、この業界を牽引しているのはイスラエルのスタートアップ企業「Redefine Meat」(以下、RM)だ。このRMが2021年の資金調達ラウンドにおいて、2900万ドルの調達に成功したことを発表したのである。主要な投資家には、Redefine Meatの初期からの支援者でもあるCPT Capital、グアテマラを拠点とするLosa Group、オランダのPrime Venturesの創設者で金融コンサルタントのSake Bosch、シンガポールのK3 Venturesなど、注目すべき国際的な新規投資家が名を連ねている。 今回の資金調達によって、RMは産業用代替食肉(オルトミート)3Dプリンターの大規模生産施設の2021年後半における完成を目指している。この完成が意味するものは他でもない、ついに3Dプリント人工肉が大量生産段階に入るということだ。 RMはヨーロッパでの製品の発売を皮切りに、次はアジアと米国市場への展開を計画しているようだが、しかし、果たして本当に、オルトミートは今後一般化していくのだろうか。実際、その需要はどれくらいあるのだろうか。今、オルトミートへと資金が集まっていく背景には、いくつかの理由がある。 ビル・ゲイツとジェフ・ベゾスがオルトミート時代を宣告 まず、オルトミートが注目度を高めている第一の理由は、国際的な食肉産業の持続可能性への関心の高まりだ。世界の人口増加に伴う食糧需要の増加は、あと数十年で完全に食肉ロジスティイクスを崩壊させると言われている。 ...
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3Dプリンターで340平方メートルの家をたった24時間で出力──建築業界を革新する最先端技術
「家」を3Dプリンターで作るのが当たり前の時代に 3Dプリンターによる「建築」は、ここ数年、進歩の一途にある。たとえばSK本舗メディアにおいても、2020年1月にはメキシコの貧困農村地帯における、簡易住居の3Dプリントの試みを取り上げた。 メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!? 人類と住宅の「新しい物語」とは? 詳しくは記事に譲るが、この試みでは様々な事情から適切な住居を持たない人たちに向けて、3Dプリント仮設住宅の建築が取り組まれることになった。手がけたのはカリフォルニアの「ニューストーリー」という非営利団体で、その建築が仮設住宅というには非常に立派なものでもあったことからも大きく話題になった。 (画像引用)New Story さらに驚くべきは仮設住宅の価格である。当時、想定されていた価格はなんと40万円~70万円。まさに3Dプリント建築ゆえの低費用建築だからこその価格であり、今後、様々な住居問題、ひいては貧困問題を解決しうるポテンシャルを示していた。 また同記事では「ニューストーリー」の試みの他に、イタリアにおける地産地消型の3Dプリント住宅「ライスハウス」なども紹介した。 (画像引用)GAIA あるいは、他の記事においては、コロナ禍における中国の隔離病棟の3Dプリントや、土に還るリサイクル可能な素材を用いて3Dプリントされたニューヨーク北部の宿泊施設「Tera」なども、これまで紹介してきている。 中国の湖北省武漢市に隣接する咸寧(かんねい)市の病院で導入された新型コロナウイルスに感染した患者の隔離用3Dプリント病棟 ...
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ボーカロイドはもう古い!? バンドメンバーは3Dプリンターで作った“歌って踊るロボット”
ボスニアの国民的バンドに新メンバー加入 2021年2月、ある動画が大きな話題となった。その動画はボスニア発でどうやらボスニアで人気のロックバンドに新メンバーが加入することを報告するために作られた動画のようである。 バンド名は「Dubioza Kolektiv」。Youtubeでいくつかサウンドを聞くと、ハードロックからファンク、スカ、レゲエ、ラップ、エレクトロニックと幅広いジャンルを取り入れたクロスオーバースタイルのバンドであり、楽曲の視聴回数も数千万ビューと世界的に支持を集めていることが分かる。 さて、このDubioza Kolektivに今回、新メンバーが加入したのだが、そのメンバーが話題となっている。名前は「ロビー・メガバイト」。担当楽器は特にない。強いて言えば主にダンスだろうか。と言っても音楽に合わせてなんとなく揺れている程度である。 楽器を弾かない新メンバーとは随分と風変わりなメンバーであるが、それ以上にロビーには他のミュージシャンにはないある特殊性が備わっている。他でもない、このロビー・メガバイト、人間ではなくロボットなのだ。 「見ての通り、ロボットだ。我々のロボットは普通のものとは違う。食べたり、飲んだり、叫んだり、音楽が好きなんだ」 そう語るのはバンドメンバーでベース担当のVedran Mujagicだ。映像を見ると、確かにロビーは音楽を楽しんでいるように見える。ダンスフロアーでは観客とともに音に乗り、ステージ上ではマイクに向かって歌っているようにも見える。 この動画はリリースされるや瞬く間に話題となり、ニューヨークポストをはじめ、世界のメディアで紹介された。2月には日本語圏でもニュース記事が翻訳され話題となった。すでにロビーは昨年にコロナ禍のパンデミック下におけるオンラインのライブショー「Quarantine Show」に参加し、新メンバーとしてのデビューも果たしているそうだ。 ...
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「3Dプリンターは万能マシーンではない」——ハッカーが語る3Dプリント技術の限界
3Dプリンターを「できないこと」から考える SK本舗ではこれまでに3Dプリンターの最新技術やその可能性について様々な角度から取り上げてきた。日々更新される3Dプリンター関連のニュースを追っていると、あたかも3Dプリンターに不可能なことなど、もはや世界には存在しないのではないだろうかと、そんな気持ちにさえなってくる。 そんな中、先日、ある挑発的なタイトルの記事がリリースされた。掲載元は「HACKADAY」というハッカーのコミュニティメディア。そして問題の記事のタイトルは「3D PRINNTERING: THE THINGS PRINTERS DON,T GO」、要するに「3Dプリンターにはできないこと」というものだ。 3Dプリント技術の凄さに目を奪われがちな昨今だが、確かに3Dプリンターはまだ「万能」とは言えない。公平性を保つ上でも「できないこと」という視点から3Dプリンターを考えてみることも重要だろう。 そこで、ここではその記事「3D PRINNTERING: THE THINGS PRINTERS DON,T GO」の内容を、まず要約的に追ってみることにしたい。 3D Printering: The Things Printers Don’t Do ...
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3Dプリントテクノロジーの40年史・後編──特許終了による3Dプリンターバブル、そして次の「ものつくり」時代へ
廉価版3Dプリンターの時代へ──「RepRap」の登場 さて、こうして3Dプリンターが生み出されたわけだが、当時はまだ3Dプリンターは一部の人しか知らない先端技術の一つだった。一般層が買うにはあまりに高価なものだったし、製造の現場での導入もその進展は遅々としたものだったのだ。 そこには理由があり、まずは3Dモデルを製作するためのCADがまだ十分に普及していなかったこと、そして3Dプリンティング技術自体が、造形品のゆがみなど、多くの問題点を抱えていたことである。 もちろん、3D Systemsとストラタシスの2社、そして日本の電機メーカーをはじめとする各国の企業も開発研究を進め続けてはいた。しかし、それが世間で真に注目され始めるのは、2000年代も半ばになってからのことだった。 まず、最初に話題となったのは、デスクトップ型の3Dプリンターであるオープンソースハードウェア「RepRap」が登場したことだ。これは世界初のオープンソース3Dプリンターであり、イギリスのバース大学の講師エイドリアン・ボーヤーによって作り出された。ネット上の部品を3Dプリンタで作り、組み立てることで材料費350ユーロでFDM方式の3Dプリンターを作ることができるとされ、これはその後に生まれる廉価版3Dプリンターの雛形となっている。 「RepRap」 エイドリアンらはその後すぐに控えていた特許の期限切れをあらかじめ見据えていたのではないか、とも言われている。時は2007年、3D SystemsがFDMの特許を取得してから、すでに20年が経とうとしていた。 特許終了により始まった3Dプリンター戦国時代 3Dプリンター時代の真の夜明け、これは2007年と2009年に、3D SystemsとStratasysが取得した二つの特許が切れたことによって始まる。つまり、光造形方式、熱溶解積層方式、それぞれの3Dプリント技術に対して、あらゆる人々がアクセス可能になったのだ。 ただし、この特許終了によって3Dプリンター時代が訪れたということに関しては、諸見解もある。というのも、3D SystemsとStratasys、あるいは日本の電機メーカー各社は、80年代後半から90年代、さらに現在に至るまで、基本的な出力技術以外の様々な特許を取得しているからだ。そうした細かい技術に関しては逐一、特許使用料が発生するため、07年と09年の特許期間終了をもってして完全な自由化が進んだとは言えない。 しかし少なくともこの特許切れにより、3Dプリンターの製作コストが低下し、数多くのベンチャー企業が独自に廉価な3Dプリンターを開発、市場に参入することになったのは間違いない。そして、こうした自由競争が始まれば当然、機器の低価格化も進み、技術改良の進化速度も上がっていく。 かつては1台1億円以上していた3Dプリンターが、こうして民間に届くところまで降りてきたのだった。 オバマ元大統領が認めたその革新性 こうして3Dプリンターの時代が到来した。2012年は3D Systemsも廉価版3Dプリンター「Cube」を発表。最大手が格安化に踏み切ったことで一気に市場は群雄割拠の時代へと雪崩れ込んでいく。 ...
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3Dプリントテクノロジーの40年史・前編──全ての始まりは小玉秀男の「ラピッドプロトタイピング」だった
3Dプリンター技術の発端は1980年に遡る いまや第四次産業革命の「かなめ」と言われ、一般層にも普及が進んでいる3Dプリンターだが、その歴史は古く、実は1980年代まで遡る。一般的には2010年代以降のテクノロジーという印象があるが、3Dプリンターが最初に考案されたのはもう40年も昔なのだ。 3D Systems社が1987年に発表した光造形3Dプリンター「SLA-1」 そこで今回はあらためて3Dプリンターの歴史を振り返ってみようと思う。「過去に目を閉ざす者は、現在に対しても盲目となる」とはドイツの元首相ヴァイツゼッカーの有名な言葉だが、あるいは歴史を見返してみることで、あらためて見えてくる魅力もあるかもしれない。 3Dプリントテクノロジーがこれまで歩んできた軌跡を、あくまでも駆け足にではあるが、前後編で俯瞰してみよう。 世界最初の3Dプリンターをつくったのは小玉秀男という日本人だった 先にも書いたように、世界最初の3Dプリンターが考案されたのは今から40年前の1980年のことだ。ここで驚くべきは、これを最初に考案した人物は、なんと日本人だったのである。 その名は小玉秀男。名古屋で技術士として働いていた小玉は、新聞印刷の仕組みを3次元製造に応用し、現在の3Dプリンターの元となる光造形技術を使用した付加製造方を開発したのだ。 この小玉の開発の革新的なポイントは、従来の製造機械というものが物を削ることによって製造を行っていたのに対し、物を積み重ねていくことで製造を行う手法を編み出したことだ。これにより、それまでの方法では難しかった複雑なインターフェースも表現することができるようになり、実際、この技術は試作品製作などに導入されることになった。 ただ、この技術は当時「ラピッドプロトタイピング」と呼ばれていて、まだ「3Dプリンター」という名では呼ばれていなかった。小玉の開発した技術が「3Dプリンター」と呼ばれるようになったのは、それから7年後の1987年、アメリカにおいてだった。 ※論文誌に掲載された世界で最初の光造形による立体地図(電子通信学会論文誌/1981) 3D Systemsとストラタシス――業界を席巻し牽引した二大勢力 小玉は自身が開発した光造形技術を特許申請していたのだが、その間に海外へ留学していまったため、なんと留学中に審査請求を行うことができず、特許申請が無効となってしまう。つまり、極めて革新的な技術を発明しておきながら、小玉氏はその特許を取得しないままにしていたのだ。 再びこの光造形技術に光が当たることになったのは1987年、アメリカでチャック・ハルが同じ技術に関して、特許出願を行なったのだ。その名称は「3Dステレオリソグラフィー」、そしてこのタイミングでそれを行うマシンとして「3Dプリンター」という呼称も登場している。 チャック・ハルはこの特許をもとにアメリカはカリフォルニア州に3D...
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シリカナノ粒子によって自由自在な3Dガラスプリントが現実のものに──開発者いわく「この技術は高級時計や香水のボトルなどに使用できる」
3Dガラスプリントが難しい幾つかの理由 3Dプリンターが扱える素材は様々だ。フィラメント、レジンなどのプラスチックを代表に、金属、砂、あるいはバイオ3Dプリンターにおいては有機物なども、現在では造形の素材となる。 そんな中、私たちの暮らしにおいて身近な物質でありながら、これまで3Dプリンターがそれを扱うことを不得手としてきた素材がある。それは他でもない「ガラス」だ。 ガラスの扱いが難しいのは、その融点の高さゆえだと言われている。高温度下においては機械的な特性を維持するのが難しいため、一度に積層できる量が限られ、また焼結後に歪みが生まれてしまうなど、課題が多かったのだ。 実際、これまでにも3Dガラスプリンターは存在しなかったわけではないが、透明度や造形物の精度には問題点も多く、まだ実用的な段階には至っていなかった。 そんな3Dガラスプリントの世界において、まず大きく話題になったのが、2017年にMIT Media Labのネリ・オックスマン教授が率いる研究チームが開発した3Dプリンター「G3DP2」だ。ミラノデザインウィーク2017に同研究チームが制作して展示された、高さ3mの3Dプリントガラス柱「Lexus」は、デザインの複雑さ、正確性、強度、透明性において、大きく話題となった。 この「Lexus」は、しかし、構造はシンプルだ。「G3DP2」は強度のあるガラスを3Dプリントすることできたものの、やはりより複雑な形状のガラスを出力することは難しく、また出力に際してかかる時間と手間は膨大だ。ここには積層型の3Dプリンターによるガラス造形の限界がある。やはり、小さくて細かいガラス作品を3Dプリンターでスムーズに出力することは不可能なのだろうか。 「Lexus」から4年、この難問を乗り越えるかもしれない研究論文が、先日、The Optical Societyジャーナルに発表された。 シリカナノ粒子を使用したレーザー投射型3Dプリンター 論文を発表したのは、フランスのエコール・サントラルに所属する3人の研究者だった。彼らはその論文において、多光子重合に基づく新たに開発された技術を3Dプリンターにおいて使用することで、通常の層ごとの加工に依存することなく精密なガラスオブジェクトをプリントし、将来的にはレーザーベースの複雑な光学系を3 Dプリントすることができるようになる、と論じている。 ...
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驚異の3Dバイオプリンティングの世界——近年の注目ニュースを振り返る
生命を扱う3Dプリンター 様々なジャンルで驚きをもたらしている3Dプリンターだが、中でも未来世界を予感させるような技術革新が相次いでいるのが3Dバイオプリンターである。 バイオとはそもそも「生命」や「生物」などの意味。つまり、3Dバイオプリントとは、生物に類する有機物をプリントする技術のことで、主にその研究開発は生物医学工学の発展に役立てられている。 すでに話題となったところでは人工肉や人工臓器などの3Dバイオプリントがあるが、近年ではますますの技術的進歩を遂げ、様々な成果が発表されている。そこで、ここでは近年でとりわけ注目すべきと筆者が感じた3Dバイオプリント関連ニュースを紹介してみたい。 3Dバイオプリンティングの最前線こそ人類の進歩の最前線。それでは順番に見ていこう。 1.「もう実験動物はいらない?」コロナ研究にも役立てられる3Dバイオプリント身体 ノースカロライナ州にあるウェイクフォレスト再生医療研究所 のアンソニー・アタラ氏は、薬剤の毒性をテストするための新しい多臓器チップを開発している。アタラ氏が発表した2020年2月の論文によると、「チップ上の3 Dボディ」は、市場に参入した後に薬剤を回収するリスクを減らすだけでなく、より迅速で経済的な薬剤開発につながる可能性があるとのこと。 画像引用:WFIRM この「チップ上の3Dボディ」とは、多臓器の身体を単純化したモデルを極小のチップ上に再現したもの。通常、多臓器の3Dプリントは極めて複雑であり、その再現には巨大な設備が必要だが、この技術においては、極小サイズにおいてそれらを再現することで、薬剤の実験コストを大幅に下げ、またペースアップすることができるのだ。 実際、この3DボディはCOVID-19の研究にも使用されており、この3Dボディを用いてCOVID-19ウィルスと戦う薬剤のテストがすでに行われているらしい。重要なことは、この実験が動物モデルを使った実験よりもはるかに役立つ可能性があるということ。それが事実ならば、これ以上、薬剤開発のために動物実験を行う必要がなくなるということだ。 2.「来たる大移住に備えて」ロシアの宇宙飛行士が宇宙空間で軟骨を3Dバイオプリント 現在、3Dバイオプリンティングの最前線にあたる実験は、なんと宇宙空間で行われているようだ。人口爆発や気候変動などを受け、居住コロニーとしての地球に限界がきているという警鐘は数多く鳴らされている。そんな中で実際に検討され始めているのが地球外コロニーの形成である。 その形成が間もなく始まるとすれば、重要なことは宇宙空間における医療問題だ。そのためにも低重力環境における3Dバイオプリンティングの研究が、ロシアのバイオテクノロジー企業3DBioprinting Solutionsによって進められているのだ。 ...
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3Dプリンターが明らかにする生物の進化——3Dプリント技術は未来だけではなく過去をも照らす
3Dプリンターが生物の歴史を覆す? 様々な分野に役立てられている3Dプリント技術が、近年、生物学の分野においても活用されている。 中でも進化生物学などにおいて、太古に存在していたであろう生物の限られた痕跡、たとえば化石などを3Dスキャンし、その骨格を3Dプリントすることによって、あらためて生物の進化の歴史が紐解かれようとしているらしい。 昨年にはオハイオ大学のパトリック・オコーナー教授が率いる研究チームが、白亜紀後期に存在していたとされる長くて深いくちばしを持つ鳥(Falcatakelyと名付けられた)の化石の発見を報告しているのだが、この鳥、Falcatakelyが、現在、鳥類におけるくちばしの進化を紐解く上で、非常に重要な種であると注目されているのだ。 Falcatakely(画像引用:オハイオ大学) 太古の鳥の頭蓋骨を3Dプリントで再構築 オコーナー教授が率いる研究チームが試みているのは、Falcatakelyの解剖学的構造を解明するために、マイクロCTスキャンとデジタルモデリングを用いて、鳥が埋め込まれた岩から個々の骨を仮想的に解剖、さらに3Dプリンティングを用いてFalcatakelyの頭蓋骨を再構築し、他の種との比較を行うことだ。 そもそも、白亜紀の鳥類に関しては化石の発見も少なく、完全な骨が出てくることは少ないため、こうした仮想的な骨格の再現が研究を進める上で、非常に役立つらしい。 実際、3Dプリント頭蓋骨を通じた研究によって、このFalcatakelyが現在生きているいくつかの鳥グループと共通しているものの、その組織は全く異なるものであることが判明している。オコーナー教授によれば、この結果は科学者たちが鳥の進化に関して持っていたこれまでの知識とは符合しないそうで、つまり、これは鳥の進化の歴史を知る上で、なんらかの重要な発見に繋がるかもしれないとのことだ。 画像引用:オハイオ大学 恐竜や原人の研究に役立つ3Dプリント技術 こうしたアプローチは他でも行われており、たとえばオランダではこれまで発見されているトリケラトプスの化石の中で、いまだ発見されていない最後のピースを3Dプリンターを使って補完するということが試みられている。昨年には日本の研究チームもトリケラトプスの脳や神経などを三次元的に復元し大きさを計測することで、トリケラトプスの三半規管が他の動物に比べて発達しておらず、すると機敏に動くことが苦手だったのではないかとする論文を発表して話題となった。 もっと以前では日本の海部陽介の研究チームが、フローレス原人の正確なレプリカを3Dプリンターで出力することで、その脳のサイズを特定したこともある。さらに、そこから脳のサイズが身体の大きさに対して絶対的に重要ではないという、これまでの通説とは異なる研究が進んでいる。...
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もはや薬もオーダーメイドする時代へ!? ——パーソナライズ化する医療と3Dプリント医薬品の現在
3Dプリンターが可能にする医療のパーソナライズ化 3Dプリンターの造形技術は日常で使用する道具や玩具、嗜好品ばかりではなく、私たちの体内に入ってくる食べ物、そして私たちの体を内から治す医薬品にまで及んでいる。今回はそんな3Dプリント医薬品の最前線を少し覗いてみたい。 様々な医薬品の中でも、特に3Dプリンターがその存在感を増しているのは、錠剤タイプの医薬品製造においてだろう。これは単に従来の医薬品製造を3Dプリンターが代替しているという話に止まらない。錠剤3Dプリント技術の発達によって、患者それぞれに最適化した錠剤の製造をスムーズに行うことが可能になろうとしているのだ。 たとえば現在、なんらかの病気の症状がある場合、まずは病院に行き、医師の診断を受け、病状に応じた処方箋を書いてもらうことになる。その後、薬局へと行き、その処方箋を見せることで、必要な薬を複数処方してもらうことができるというのが一般的な流れだ。しかし、最新の3Dプリント技術を用いれば、この患者それぞれに異なる複数の医薬品の有効成分を一つの錠剤にまとめて出力することができ、これが医療のパーソナライズ化を推し進めると言われているのである。 「M3DIMAKER」が出力する「ポリピル」とは? その技術を提供しているのが、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスピンアウト企業であるFabRx Ltdだ。2020年4月、FabRx Ltdはパーソナライズされた医薬品製造のために開発された初の医薬品用3Dプリンター「M3DIMAKER」の発売を発表した。 この「M3DIMAKER」は、Printletsと呼ばれる3Dプリント錠剤を製造するために設計されており、患者に必要な複数の有効成分を組み合わせた錠剤「ポリピル」をプリントすることができる。要するに、自分のためだけの薬をその都度、作ってくれるというわけだ。 ポリピル これまでのように既成の医薬品に頼る場合、病状、病気の種類によっては処方される医薬品の種類が膨大になってしまうこともある。また、薬にはそれぞれ服用量や服用期間が定められているため、えてして患者にとってその煩雑さは負担になりがちだ。しかし、この「M3DIMAKER」とパーソナライズされた医薬品「ポリピル」があれば、可能な限り、煩雑な服用スケジュールを簡易化することができると言われている。 もちろん、セキュリティも抜かりがない。「M3DIMAKER」は専用のソフトウェアプラットフォームによって制御されており、薬剤師や臨床医が指紋アクセスによって、操作することになる。要するに、アクセス権を持たないユーザーは操作することができない。品質管理に関しても、欠陥品検出のカメラ監視機能などが搭載されているなど、万全が期されている。さらにプリントの速度も優れており、アクセス権者が用量などを調整し出力スイッチを押せば、およそ8分ほどで1ヶ月分の薬剤をプリントすることができる。 この「M3DIMAKER」が普及すれば、自分の症状に特化した薬剤が速やかに、かつ安価で入手できることになるだろう。不要な有効成分は最初から排除できるため、患者にとっての安全性、安心感も高まる。3Dプリンターによって、今、医療は大きく変わろうとしているのである。 ...
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VRモデリングの魅力と難点──近い将来、VRモデリングがスタンダードに?
近い将来、VRモデリングがスタンダードに? 3Dモデルのモデリングに関しては様々な方法、様々なモデリングソフトがある。そんな中、今後もっとも注目のモデリングと言えば、VRモデリングだろう。もちろん、3Dプリンター愛好者にとってもこれは例外ではない。 VRモデリングとは文字通り「VR空間内でモデリング作業を行う」こと。つまり、VRヘッドマウントディスプレイを装着し、自分自身がVR空間に入りながら、そのVR空間にて造形作業を行うという方法のことで、まだ広く普及しているとは言い難いが、おそらく近い将来にはこれが最もスタンンダードな方法になるのではないかとも言われている。 そこで今回はVRモデリングの魅力、その特徴についてを、簡単に紹介してみたいと思う。 VRモデリングの魅力 まず、VRモデリングの魅力とはどういうところだろうか。もちろん、使用者それぞれに色々な意見があると思うが、代表的なところでは以下の4点になる。 ・実在感 ・習得しやすさ ・モデリング速度 ・楽しさ 順番に見ていこう。 ・実在感 VRモデリングで一番期待されていることは「実在感」だろう。上、横、後ろ、斜めとあらゆる角度からオブジェクトを見て、状態を確認することができる。実用面では、パースが画面上で見るよりも実際の目で見た状態に近くなるので、3Dプリントする前にゆがみに気づける、というメリットがある。 ...
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愛猫へのプレゼントを3Dプリンターで作ろう! 猫ちゃん大興奮の3Dプリントおもちゃ5選
「猫は可愛い」という普遍的な真理 この世に普遍的な真理などほぼ存在しない、世界の全ては捉え方次第でどうにでも変わりうるものなのだ――と信じる筆者のような頑固な相対主義者にも、数は少ないながら普遍的な真理と呼ぶことにやぶさかではない事象は存在する。たとえば、その一つとは「猫は可愛い」という真実である。 猫。その「可愛さ」に類するあらゆる要素を丸めて凝り固めた塊のような存在が人間と出会ったのは古代まで遡ると言われている。それこそ古代エジプト文明のバステトなどは猫をモチーフとした神様だし、一説によれば、猫は古代エジプトにおいて初めて家畜化されたのだとも言われている。実際、すでに紀元前6000年頃の貴族の墓から猫の骨が発見されており、これはその当時から人間と猫がただならぬ関係を形成していたことを示すまたとない証拠だ。 猫頭の女神「バステト」 きっと古代の人々も猫を一目見るやその可愛さに悩殺されてしまったに違いなく、猫を愛したファラオたちと「わかるよ、あいつら可愛すぎるよな」と肩を組んで夜通し猫愛を語り明かしたい心持ちになるのであるが、一方で日本においては実は猫の記録というものはかなり限られている。近世に入って以降はそれこそ歌川広重を始めとする人気浮世絵師たちが数多くの愛くるしい町猫たちを大量に描き残しているものの、たとえば日本の古代の神話的記録である日本書紀や古事記には猫は一切登場していない。あるいは日本の四季折々の風景を歌ったかの万葉集にも猫の存在は一向に見当たらないのだ。 歌川広重「猫飼好五十三疋」 そんな中、日本史に残る最古の猫の記録といえば、平安時代、宇多天皇が愛してやまなかったという黒猫の存在がある。ただし、この黒猫も唐から伝わった「もらい猫」であったとのこと。どうやら日本文化の中にはもともとは猫の居場所がなかったようで(原生の猫がいるにはいたみたいだけど)、つまりは、日本は猫に関してはやや後進国として位置づけられてしまうわけなのだが、そんな日本でも2010年代にはペット飼育頭数ランキング不動の一位と言われた犬を追い越し、晴れて一位の座を獲得するなど猫人気は高まる一方。いまや猫大国と言っていいほどの猫フィーバーが巻き起こり続けているのだ。 あるいは、今日、コロナ禍により人々の外出機会が減ったことで、猫需要がさらに高まりを見せているというデータもあり(一方で飼い猫を手放すケースも増えており、止むを得ず殺処分となってしまっている猫もいるらしい。ストップ殺処分! どうか命を粗末にしないでいただきたい)、猫と人間の蜜月はますます深まっている模様。かくいう筆者も、実を言うと3匹の猫ちゃんと同居している。忙殺される日々ではあるものの、安心しきった様子で我が家にくつろぐ彼らの様子を見れば、日頃の疲れも不思議と癒されてしまう。彼らが鳴らす喉のゴロゴロ以上のアンビエントミュージックは存在しないと断言してもいいだろう。 それにしても、なぜ人間は猫をここまで可愛いと感じてしまうのか。 その理由をめぐっては諸説あるが、一説によると猫の顔面パーツの比率が人間の赤ん坊の比率に近似しており、そのため本能的に可愛さを感じてしまうらしい。あるいは、猫も一万年近い人間との共生の中で人間がより庇護したくなるように進化しているという説もあったり、さらには、猫が保有している寄生虫トキソプラズマが人間の脳をコントロールしているなんて説まである。 トキソプラズマ このトキソプラズマは猫の糞からネズミに寄生し、ネズミの脳をコントロールすることで、その行動を変化させて猫に食べられやすくする寄生虫として知られる存在であり、これが人間に寄生しているというのは若干ホラー感もある話なのだが、しかし、猫の愛くるしい「ミャー」を耳にすれば、「うん、寄生虫に操られてたとしても別にそのままでいいや」と思えてしまうくらいに猫の可愛いさは圧倒的なのだから、まんざら寄生虫説もありえなくはなさそうだ。 さて、猫愛が高じて余談が長くなってしまったが、この記事はただ猫の可愛さを手放しに賞賛するだけの記事にあらず、そんな可愛い猫たちにすっかり魅入られてしまった人向けに、是非ともお届けしたい情報があって用意したものである。というのも、先日、3Dプリント関連の大手メディア「ALL3DP」が3Dプリンターで作ることができる猫用おもちゃを一覧化して紹介するという超良記事!をリリースしていたのだ。...
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「世界最高峰」と評価される日本のトイレがある国を救う? ——オフ・グリッドの3Dプリント公衆トイレを日本企業が開発
トイレ大国・日本が世界を救済する? 古いところでは浮世絵、歌舞伎、寿司、近年に至っては漫画、アニメ、ゲーム、ビジュアル系など、日本独自の文化はこれまで世界を様々に驚かせてきた。その中で、特に20世紀、日本で比類なき発達を遂げ、ある意味ではガラパゴス的な進化を果たした末に世界を席巻している、ある文化がある。私たちが日常的に使用せずにはすませないあいつ、そう、他でもないトイレ文化だ。 TOTOなど世界有数のトイレメーカーを有し、ウォシュレットをはじめ、快適で清潔なトイレをこれまで世界に発信し続けてきた日本は、さしずめトイレ大国と呼んでいいだろう。それは単なる思い上がりではなく、WTO(世界トイレ機関!)代表であり、『トイレは世界を救う』(PHP研究所)の著者であるジャック・シム氏はあるインタビューにおいて「日本のトイレは世界最高のクオリティーだ」と述べ、さらに「日本の最大の輸出資源はトイレ文化だ」とまで語っていた。 「日本のトイレは最大の輸出資源だ」とミスター・トイレ絶賛の理由(DIAMOND ONLINE) https://diamond.jp/articles/-/220925 もちろん、始めから日本がトイレ大国だったわけではない。かつて日本では汲み取り式が一般的であり、水洗の洋式トイレとは、そもそも輸入された技術だった。それを変えたのがTOTOだ。アメリカで開発された温水洗浄トイレ「ウォッシュエアシート」を輸入販売していたTOTOはやがて自社オリジナルの「ウォシュレット」を開発。その機能性の高さからウォシュレットは累計4000万台の大ヒットとなり、今では日本機械学会から「機械遺産」に認定されるなど、国の「宝」となっているのだ。さて、そんな日本が誇るトイレ技術が、今、ある国の人々を救うために役立てられようとしているのをご存知だろうか。そして、そこでも一役買っているのが、3Dプリンターなのである。 あの人口超大国ののっぴきならないトイレ事情 現在、トイレを巡って大きな問題を抱えているある国がある。世界人口ランキング世界2位、2027年には1位の中国を抜くだろうとも言われているのあの大国、そうインドだ。 というのも、インドでは未だにトイレといえば汲み取り式が一般的であり、また野外排泄をする人も多い(その数、なんと5億人以上)。これがインド国内において大規模な水質汚染の原因、あるいは感染症の蔓延の原因になっているというのだ。実際、インドにおいては幼児の死因の2割は下痢と合併症であり、その原因の8割が野外排泄による水質汚染であるということが調査により判明している。 そこにはいくつか原因がある。まず使えるトイレが十分に行き届いていないということ。ただし、それは単にトイレを各家庭に設置すれば解決するという問題でもないらしい。ある村では政府によって95%の家庭にトイレが設置されたが、現在ではそれらのトイレは廃墟と化しているという。なぜかといえば、トイレ自体はあるものの肝心の上下水道は設置されておらず、また汲み取り業者がいるわけでもないからだ。すると、トイレがあっても使い物にならず、結果、野外で排泄するしかなくなるというわけである。 また、インンドでトイレが普及しない背景には信仰上の問題もある。インドのマジョリティが信仰しているヒンドゥー教においては「浄/不浄」の概念が極めて重視されており、それゆえトイレが不浄のものとして遠ざけられる傾向にあるのだそうだ。それにより、トイレを自宅に持つということがそもそも忌避されてしまい、結果、家から少し離れた野外で排泄が行われてしまうことになるのだ。 本来、人間の排泄物は土に還れば微生物によって分解され堆肥となる。しかし、5億人が同時に野外へ排泄を行えば分解のプロセスは間に合わない。さらに野外排泄には汚染や感染症の問題のみならず、排泄中にヘビや動物などに襲われるリスクもあり、また排泄のために一人で野外に出た女性が暴漢に襲われてしまう事件もインドでは頻発している。 こうした問題を受け、インドでは衛生的で安全性の高い公衆トイレの整備が急務とされているのだが、とはいえ、5億人のために必要な公衆トイレを準備するのはそう簡単なことではない。そもそも上下水道が設備されていない地域が多く、あるいは汲み取り式を作ってみたところで、じゃあ誰が汲み取るのか、本当にきちんと汲み取られるのか、という問題は残り続ける。 そこで立ち上がったのが日本の北海道の企業「會澤高圧コンクリート株式会社」だ。同社は現在、ロボットアーム式のコンクリート3Dプリンタを用いて積層造形した公衆トイレを建設するというプロジェクトを行なっている。すでに二基つくられており、それらは2020年の9月に一般公開されているのだが、なんでもこの日本発の3Dプリント公衆トイレ、実はSDGs目標に沿ってインドの窮状を救うために制作されたプロトタイプらしいのだ。 3Dプリントされた外装と水道いらずのオフグリッド・トイレ 會澤高圧コンクリート株式会社はSDGsの目標のうち6番目の『安全な水とトイレを世界中に』の実践を掲げ、女性スタッフを中心とする開発チームをインドに派遣、現地のニーズや課題などを調査。その末に作り出したのが、この3Dプリント公衆トイレだ。...
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金属とプラスチックを同時に造形できる3Dプリント技術を早稲田大学が開発
プラスチックと金属からなる製品を出力するには? 3Dプリンターで使用することができる素材といえば、まず思いつくのがプラスチックだろう。熱溶解式で用いられるフィラメントも、光造形式で用いられるレジンも、名前こそ異なるが共に樹脂、つまりプラスチックのことだ。 あるいは最近では金属も注目されている。これまでは主に工業的に用いられてきた金属3Dプリンターだったが、現在、技術の進歩とともに低価格化が進んでおり、金属は一般の3Dプリンターユーザーにとっても馴染みのある素材となりつつある。先日、記事にもまとめたように、金属のほか、砂やシリカを素材とする粉末造形方式という出力方式も存在する。 3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」とは何か? その5つの分類と特徴について 当然、使用できる素材が増えればつくることができる対象の幅も広がるのだが、一方で私たちが普段使用している製品の中には、プラスチックだけでできているわけでも、金属だけでできているわけでもないものが多い。そう、実は多くの製品においてはプラスチックと金属の両方が同時に使用されているのである。 すると、どちらか一方の素材しか使えない従来の3Dプリンターの場合、少なくとも一発で完成品を出力することは極めて困難となる。プラスチック、金属、それぞれの3Dプリンターで部品を出力し、その後それらを組み合わせるというプロセスは、控えめに言っても大変な手間だ。 2020年の8月、早稲田大学の研究チームがそうした3Dプリンターの煩わしい状況を一変させる技術を開発したことを発表した。研究チームが「ハイブリッド3Dプリンタ造形技術」と呼ぶその技術とは、他でもない「プラスチックと金属を同時に3Dプリント造形する技術」のことだ。 ハイブリッド3Dプリンタ造形技術とは何か さて、この「ハイブリッド3Dプリンタ造形技術」とはいかなるものだろうか。 そもそも、これまでプラスチックと金属を同時に出力することができなかったのは、それらの素材ではそれぞれ溶け出す融点が大幅に異なることがその理由だった。それゆえ同じマシン内でプラスチックと金属という二つの素材を扱うことはできないとされてきたのだ。 この難問を、早稲田大学の研究チームは「めっき技術」と「3Dプリンタ技術」を組み合わせた新しい技術を開発することで解決したという。そして、金属とプラスチックで構成される任意形状の立体を簡単に造形できるということを実証して見せたのだ。 早稲田大学のHP(https://skhonpo.com/blog/powder)によると “本共同研究グループは、めっき技術と3Dプリンタ技術を組み合わせることにしました。無電解めっきを施すことが可能なフィラメントを独自に開発することで、めっき部(金属部)とプラスチック部の位置を制御した立体造形物の作製を実現できると考えました。” “まず、プラスチック用の3Dプリンタで一般的に使用される材料であるABS樹脂に塩化パラジウムを含有させたABS+PdCl2フィラメントを新たに開発しました。その上で、開発したこのフィラメントとABSフィラメントをデュアルノズルの3Dプリンタによって、二色刷りの要領で、ABS+PdCl2部分とABS部分から構成される立体を3Dプリントします。” “3Dプリントされた造形物に対して、無電解めっきを施すことによって、塩化パラジウムの部分に金属が析出します。その結果、金属とプラスチックから構成される立体造形物を作製することができました。” とのこと。そうして実際にハイブリッド出力された造形物がこちらである。 画像引用:早稲田大学 ...
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フィラメントを天敵「湿度」から守るには!? その予防、検出、乾燥の方法について
どうする? フィラメントの吸湿性 SK本舗は基本的に光造形方式の3Dプリンターを扱っているが、今回は熱溶解積層方式(以下、FDM)の3Dプリンターを併用されている方のために、FDMのプリント素材となるフィラメントに関する情報をお届けしたい。 おそらく、FDMを使用されている方は誰しもフィラメントの吸湿性に悩んだことがあるのではないだろうか。湿気はフィラメントの大敵であり、特に日本のような多湿な環境においては、フィラメントを湿度から守ることが、非常に重要な取り組みとなってくる。 そこで、ここではフィラメントの吸湿性によって起こるトラブルや、そうしたトラブルを回避するための知識について、いくつか紹介してみようと思う。FDMユーザーの方はぜひご参考にしていただければ幸いだ。 吸湿によって起こるトラブル どんなフィラメントが吸湿しやすい? まず、ほとんどのフィラメントは吸湿性だ。つまり、空気中に湿度がある場合、フィラメントは自然にそれを吸収することになる。時間経過により吸湿しすぎたフィラメントを使用して生じるエラーはいくつかあり、主に以下のようなことが起こるといわれている。 ・レイヤーの気泡 ・押出機のエラー ・出力品が脆く、壊れやすくなる ・ヒートベッドへの密着性が悪くなる がっさがさフィラメントが吸湿してるのか糸引きもすごいや… pic.twitter.com/a9vQJ6HlSD — HiGE (@hige1117) October 11, 2020...
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1枚の写真から3Dモデルを作成するにはどうすれば? 思い出の瞬間を3Dプリンターで出力!
大切な写真を3Dプリンターで立体にプリントしたい、と考える人は多いと思います。今回は、写真から3Dプリントを行うための三つの方法をご紹介します。
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食用3Dプリンターは「食の未来」を変えるか? その現状、可能性、難点をめぐって──
食用3Dプリンターの原型となった「ピザの自動販売機」 現在3Dプリンターには様々な造形方式が生まれており、樹脂による出力、金属による出力など、素材も多様である。私たちが普段口にするような食品もその例外ではなく、食用3Dプリンターの技術的な発展は近年、実に目覚しい。 食用3Dプリンターの原型といえば、2015年に登場したピザの自動販売機がそれにあたると言うことが出来るだろう。この機械は1台の機体の中で既に用意されたピザの生地にトマトソースとチーズがトッピングされ、最後にオーブンで焼くというプロセスをオートメーションによって行うものだ。どちらかといえばクッキングマシンというイメージで、いわゆる3Dプリントのイメージとはやや異なるかもしれないが、特定の素材を用いて自動で立体物を出力するという意味において、これはけだし3Dプリンターだと言える。 近年、食用3Dプリンターはより技術的に発達しており、すでに3Dプリンターを使用するレストランも海外では少しずつ登場してきている。現在は高級レストランやベーカリーにしか導入されていないが、今後、食用3Dプリンター市場が急成長するであろうことは間違いない。各家庭に食用3Dプリンターが設置される日もそう遠くはないだろう。そこで、ここではピザの自動販売機に端を発する食用3Dプリンターの現在について、その技術的な部分を紹介すると共に、それがもたらす利点や欠点などについても考察してみたい。 食用3Dプリンターの出力方式 現在登場している食用3Dプリンターはいずれも材料押し出し法(FDM方式)と似たタイプのプリンターになっている。理論上においては、ペーストまたは半液体状態の材料であれば全て成形し、3Dプリントすることが可能であるとされており、たとえばチョコレートやパンケーキの生地などがその代表例である。 しかし、実際には全てのペースト状或いは半液体状の食材であれば何でも3Dプリントできるというわけでもない。というのも、食事の3Dプリントにあたっては使用するプリンター専用のカートリッジを事前に購入する必要があり、このカートリッジの種類に作れるものが依存しているからだ。 また現時点で登場している食用3Dプリンターにおいては、いわゆる「調理」をすることが出来ない。例外としてPancakeBotという3Dプリンターは生地を押し出し、最後に焼くことまで可能であるが、PancakeBotにおいても生地を裏返す際は人の手を介する必要がある。 その他、食用の3Dプリントの技術として、現在、粉末積層法(SLS方式)で食材を添加していくプロセスなども研究されているが、これが近年中に実現可能かどうかはまだ不明である。 食用3Dプリンターの長所と短所 ...
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腕時計界の至宝「トゥールビヨン」の複雑機構を3Dプリンターで再現──テクノロジーによって変化するステータスの意味
ステータスシンボルとしての「腕時計」 ある人物の地位や富を示すステータスシンボルといえば、車、服、家などがまず思いつくかもしれない。しかし、数あるステータスシンボルの中でも、その歴史の長さ、物語の深さでいえば、腕時計に勝るものはないだろう。 スイスの老舗時計ブランドであるヴァシュロン・コンスタンタンの伝統的なモデル「パトリモニー・トラディショナル・クロノグラフ」。価格は約500万円。 腕時計がステータスシンボルとして優れていることにはいくつか理由がある。たとえば、腕時計が常に身につける「身近」で「個人的」な装飾品であるということ、その他の高級品よりも価格的に入手しやすく(とはいえ家一軒分くらいの価値を持つ時計もあるが)多くの人に開かれた贅沢であるということ、そして車や服というものがモデルチェンジやモードチェンジによって数年ごとに流行が変化していくのに対し、時計のデザインは普遍的で美的に経年耐久性があること、などが挙げられる。 かつてフランスやイギリスの王侯貴族を魅了したとされているジャケ・ドローの「グラン・セコンド」。懐中時計からインスピレーションを得て製作されたモデル。価格は約220万円。 実際、ロレックスやオメガなど、高級腕時計ブランドの人気モデルは数十年にわたって変化がない。もちろん、新機種、新モデルなども常に登場はしているものの、エクスプローラーやシーマスターなど、誰もが耳にしたことあるような定番モデルは、今日においても変わらずに高い存在感を放っている。 もはや高級腕時計の定番となっているオメガの「シーマスター」。価格は40万円台から。 近年はiphoneの普及によって若年層の腕時計離れが進んでいたが、裏を返せば、これは腕時計が「時間を知るため」という機能性に還元されなくなったとも言えるだろう。ステータスシンボルとしての腕時計は、今日においてより純粋性を高めているとさえ言えるかもしれない。 腕時計界の至宝「トゥールビヨン」とは? さて、そうした腕時計の世界において、特別な存在がある。それは「世界三大複雑機構」と呼ばれる、技術レベルの高い限られたメーカーのみが製造できる、希少かつ複雑なメカニズムを有する時計である。 もちろん、この機構を持つ腕時計は抜群に高額だ。それらの時計にはたとえばロレックスのデイトジャストのような一見した派手さはない。言ってしまえば通向けではあるのだが、それだけに「分かる人には分かる」といういぶし銀の魅力を称えているのだ。つまり、それを腕に巻いているということは、その者のステータスを示すのみならず、「良いものを見極める」審美眼や、「表層よりも本質を重んじる」文化的教養の高さを示すことになるというわけだ。 この「世界三大複雑機構」がどのようなものかと言うと、長期にわたりカレンダー調整を不要とする「永久カレンダー」、ゴング音が時間を知らせる「ミニッツリピーター」、そして各パーツが受ける重力を均一化することにより安定した精度を維持する「トゥールビヨン」の三つからなる。 中でも高額で、人気が高いのは「トゥールビヨン」だろう。その神がかって複雑な構造を再現できる時計師は、なんと世界に10人程度しかいないと言われている。発明したのは天才時計技師ブレゲ。トゥールビヨンの発明によってブレゲは時計の歴史を200年推し進めたとまで言われており、実際、ブレゲのトゥールビヨンを現在買うためには最低でも車一台購入できるだけの額を用意しなければいけない。まさに至高のロマンと言うべき、腕時計界の「宝」である。 ブレゲの2019年の作品「クラシック...
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3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」とは何か? その5つの分類と特徴について
3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」 3Dプリンターの造形方式として、一般的に知られているのは光造形方式と、熱溶解積層法の2種類である。市販されている家庭用3Dプリンターは基本的にこの2種類のいずれかであり、たとえば弊社SK本舗ではご存知のように主に光造形の3Dプリンターを中心に取り扱っている。それぞれの造形方式に長所と短所、特性があり、そこについては以前、記事にまとめたこともあるので是非ともご参照いただきたい。 3Dプリンターとは?造形方式やその特徴比較! さて、今回取り上げるのは、光造形方式でも熱溶解積層法でもない、第三の造形方式についてだ。それは通称「粉末造形方式」 と呼ばれる造形方式である。 光造形方式、熱溶解積層法では共に樹脂が素材として用いられており、光造形の場合は紫外線硬化樹脂(レジン)が、熱溶解積層法では熱可塑性樹脂がそれぞれ印刷材料となる。一方、この粉末造形方式では、その名の通り、印刷材料として粉末が使用される のだが、果たして、この粉末造形方式とはどのような方法で粉末から立体物を造形していくのだろうか。 以下では粉末3Dプリンターについて、その基礎的な部分を解説してみたい。 粉末3Dプリントの基礎 まず、粉末3Dプリントの特性についてだ。粉末3Dプリンターでは金属、砂、シリカなど、他の方式では使用できない様々な材料で印刷を行うことができる。いわゆる金属3Dプリンターにおける代表的な造形方式であり、粉末3Dプリンターでは一般的に金属以外においても耐久性の強い造形物を製作できるとされている、そのため、粉末3Dプリンターは最終製品や鋳型の出力に向いていると言われ、主に製造業において高いプレゼンスを誇っている。 ただ光造形方式、熱溶解積層法の3Dプリンターと比較した時、粉末3Dプリンターは現状では平均価格が約60万円とされており、やや高価であるのも特徴だ。一応、一般向けの粉末3Dプリンターも市場には出ているが、今のところ家庭用ではなく主に業務用として流通している。とはいえ、今後は低価格化が進んでいくとも言われており、そうなると一般ユーザーにとってもより身近な存在になっていくことは間違いない。今のうちに学んでおいて損はないだろう。 さて、粉末3Dプリンターには2種類の主要な印刷方式がある。それは「パウダーベッド方式」と「バインダージェット方式」 である。 まず、パウダーベッド方式とは、材料となる粉末を敷き詰め、そこにレーザーやビームを当てていくことで、粉末粒子を焼結または溶解させて造形していく方法だ。 一方、バインダージェット方式とは、材料となる粉末を敷き詰め、そこに液体の結合材(これがバインダと呼ばれる)を噴射して固形化していくことで造形していく方法だ。 ...
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災害支援で活躍する先端3Dプリント技術──家屋の修復、仮設住宅の建造、不足物資の補填
台風で破損した屋根を3Dプリント瓦で修復 2019年に猛威を振るった台風15号によって家屋の破損など多くの被害を受けた千葉県館山市において、東京大院生らのチームが3Dプリンターで出力した屋根瓦を使って壊れた屋根の補修作業を行なったというニュースが2020年10月27日付の日経新聞に掲載された。 3Dプリント屋根瓦が復旧にあたったのは明治初期に建てられたという同地域の交流施設である古民家「かやぶきゴンジロウ」。この古民家もまた台風15号により家屋の一部が破損していた。 かやぶきゴンジロウ(画像引用:https://gramho.com/media/1881708459613670893) この修復プロジェクト自体は昨年より始動しており、記事によれば、同大学院修了の砂田頼佳さんが留学先のスイスで壊れた屋根を3Dプリント瓦で修復した経験が今回の作業に生かされたとのことだ。大学院チームは被災者からの需要があれば、今後もこの3Dプリント瓦の製作を続けるとしている。 コロナ支援でも活躍した3Dプリンター こうした災害支援のための3Dプリンター活用には他にも事例がある。それこそ思い起こされるのは、今なお猛威を振るうコロナ禍において3Dプリンターが果たした役割だ。 パンデミックによって交通機関が停止したことで医療物資の流通に遅れが生じ、深刻な物資不足に陥っていた臨床現場を救ったのは3Dプリンターだった。マスク、フェースシールド、イヤーガード、人工呼吸器、検査用綿棒など、多くの必要品を現場で出力するための3Dデータが有志らによって作成、拡散されたのだ。実際に医療現場はこの3Dプリント医療品によってかなり救われたと聞いている。 あるいは中国の湖北においては不足していたコロナ感染者のための隔離病棟も3Dプリントによって増設されるということもあった。パンデミックは世界中を混乱に陥れたが、皮肉にもそうした混乱によって3Dプリンターの有用性にあらためて注目が集まることになったのだ。 48時間で2棟をプリント!? 3Dプリント仮設住宅の現在 おそらくは今後、地震やハリケーンによる災害の復興支援などにおいても、今まで以上に3Dプリンターが役立てられていくことは間違いない。その中でも3Dプリンターが顕著に有用性を発揮するであろうは、被災者の仮設住宅の建設においてである。 3Dプリンターによる仮設住宅建設に関して注目すべきは、昨年にの記事でも紹介したカリフォルニアを拠点とする非営利団体「ニューストーリー」の取り組みだ。すでに2000棟を超える3Dプリント仮設住宅の建設に取り組んできた同団体は、現在、様々な理由で適切な住居を持てずにいる人々のために、メキシコ農村地区に3Dプリンターで出力された住宅街の建造することに取り組んでいる。 メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!?...
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