
あの『アキラ』のバイクが現実に!? DAB Motors×VVTによる近未来3Dプリント電動バイクが話題
1988年に公開された日本の伝説的アニメ映画『アキラ』。その中でも特に強烈な印象を残しているのが、主人公・金田正太郎が乗る赤いバイクです。日本国内外のバイクファン、デザイン業界、そしてSF映画ファンにとって、あのバイクは『アキラ』が描き出した未来の象徴とも言える存在でした。
そんな“金田バイク”にインスピレーションを受けて誕生した現実の電動バイクが、いま世界中で注目を集めています。手がけたのはフランス発のモーターサイクルメーカー「DAB Motors」と、コロンビア出身の人気アーティストJ Balvin、そしてデザイナーのMattias Gollinが率いる「Vita Veloce Team(VVT)」です。
彼らが共同制作したのは、3Dプリントによるボディワークを搭載した、まさに“近未来的”とも言えるオリジナル電動バイク。その第一号機はJ Balvin自身の誕生日イベントで初公開され、大きな話題となりました。
「アキラ」のバイクを現代のテクノロジーで再現
このバイク最大の特徴は、やはりそのデザインです。真っ赤なボディに大きなタイヤを包み込むようなカウル、流線型のフォルム…。まさにあの“金田バイク”を現代の技術で再構築したかのようなスタイリングとなっています。

しかも、ただ見た目を真似たわけではありません。デザインのプロセスにはAIツールと伝統的な職人技の両方が活用され、スケッチや3Dモデリング、そして3Dプリントによる外装製作など、様々な技術が組み合わされています。
また、ボディには手作業でマット仕上げの深い赤色が塗られ、あえて細かな傷や擦れを残すことで、“使い込まれた未来のマシン”のようなリアリティを演出しています。このディテールが、まるでアニメの中からそのまま飛び出してきたような説得力を生み出しているんです。
音や光で“乗る楽しさ”を演出
視覚的なインパクトだけでなく、乗り心地にもこだわりが詰まっています。ホイールカバーとリムの間には吸音素材が仕込まれており、走行時には低音の振動が体に伝わるような設計に。これは静かな電動バイクにありがちな「味気なさ」を解消し、まるで鼓動のようなエンジンの存在感を演出しています。
さらに、ボディ内部に埋め込まれたLEDライトが、夜間走行時には車体下部に紫がかった青いグローを放つという演出も。これは単なるギミックではなく、未来的なスタイルと視認性の両立を図るものとなっています。正直、とてもカッコいいです。

限定販売も決定!“買えるアキラバイク”に
このバイク、最初はJ Balvinのためだけに製作された1台限りのモデルでしたが、発表直後からの反響を受けて、DAB MotorsとVVTは限定生産を行うことを発表しました。
つまりこのバイクは、ただのショーモデルではなく、実際に購入して公道で走らせることができる“リアル・アキラバイク”なのです。まだ具体的な台数や価格、販売方法などの詳細は明かされていませんが、ファンにとっては夢の実現と言えるでしょう。
日本の『アキラ』ファンの皆さんも今から貯金しておいた方が良いかもです。
『アキラ』と世界のクリエイターたち
よく知られているように、『アキラ』は単なるアニメ作品としてにとどまらず、世界中の映画・音楽・デザイン業界に多大な影響を与えてきました。監督・大友克洋の描くサイバーパンクな近未来都市「ネオ東京」、緻密な背景美術、そして圧倒的な作画力は、ハリウッド映画『マトリックス』や『インセプション』、そして多数のMVやファッションブランドにも影響を与えたとされています。
中でも金田のバイクは、フィギュアやプラモデル、実車レプリカに至るまで数え切れないほどのオマージュが存在しますが、今回のDAB Motors×VVTの取り組みは、そうした過去の模倣とは一線を画す「再解釈と進化」の成果と言えるでしょう。
J Balvinという世界的なポップスターがこのプロジェクトに参加していることからも、アキラという作品がいかに多くの国と世代を超えて支持されているかが分かります。
テクノロジーとカルチャーの融合が示す未来
3Dプリンターによる造形と、熟練の職人による塗装仕上げ。AIによるデザイン補助と、人間の直感的な手作業。このバイクには、いまの時代だからこそ可能になった「ハイテク×クラフト」の美学が詰まっています。
『アキラ』が公開された1988年当時、こんな未来を予想していた人がどれほどいたでしょうか。あれから約35年。あの時の“未来像”は、いま確実に現実のものとなりつつあります。
このバイクは、ただの移動手段ではなく、“物語をまとったモビリティ”なのかもしれません。カルチャーとテクノロジーが融合したこの一台に、近未来の新たな価値観が垣間見える気がします。
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