
アートと音、そしてサステナビリティの融合—3Dプリントで生まれた音響アート《Parhelion》
インテリアデザインの世界にも、テクノロジーの波は着実に押し寄せています。なかでも近年注目されているのが、3Dプリンティングの活用です。これにより、デザイナーは既存の枠にとらわれることなく、形や質感、色彩の実験を行えるようになりました。そして、その進化系ともいえる作品が、オランダのアーティスト、メイ・エンゲルギール(Mae Engelgeer)によって誕生しました。
その名も《Parhelion(パーヘリオン)》、一見するとアートピース、実はれっきとした音響壁面材(アコースティック・ミュラル)です。
「パーヘリオン」とは何か?名前に込められた自然現象
作品名の「Parhelion(幻日)」は、大気中の光の屈折によって太陽の両脇に虹色の光点が現れるという自然現象を指します。どこか神秘的で、ちょっとロマンチックな現象ですね。
このインスピレーションは、作品の表面にも存分に表れています。グラデーションがかかった層構造や、色彩の選定には、まさにこの幻日のイメージが反映されているのです。
アートと機能が手を取り合う、3Dプリンティングの力
このユニークな作品は、オランダのデジタル製造企業「Aectual(アクチュアル)」とのコラボレーションによって実現されました。Aectual独自の押出(エクストルージョン)方式の3Dプリント技術を用いることで、製造中に色を混ぜ合わせることが可能となり、ひとつとして同じものが存在しない、唯一無二の作品が生まれます。

デザイナーであるエンゲルギールが厳選したカラーパレットは3種類。「ALPHA」はやさしい砂のようなベージュトーン、「DELTA」は深みのある紫、「OMEGA」は鮮やかで力強いブルーです。これらのパネルの背面には、再生PET素材のアコースティックフェルトが組み合わされており、見た目だけでなく音響性能にも優れています。
サイズ展開も計算づく:空間を選ばない設計
Parhelionは、直径150cmの大型バージョンと、75cmのコンパクトバージョンの2サイズ展開。前者は壁面の主役に、後者は複数枚を組み合わせてレイアウトの自由度を楽しむのにぴったりです。ホテルやオフィス、自宅のリビングなど、どんな空間でもインテリアのアクセントになりつつ、耳にも優しい。美しくて、しかも実用的。ちょっと得した気分になりますね。
美しさの裏にある、地球へのやさしさ
このプロジェクトがもうひとつ注目すべきポイントは、そのサステナブルな設計思想です。Parhelionは植物由来の再生プラスチックを使用し、背面フェルトも再生PET製。見た目の美しさや機能性だけでなく、地球環境への配慮もしっかりと組み込まれています。
五感を刺激する、未来のインテリア
エンゲルギールとAectualのコラボレーションによって誕生したParhelionは、アートと音響、そしてサステナビリティが調和する、新しいインテリアの形です。視覚、聴覚、そして空間全体の雰囲気をまるごと包み込むような、全方位型の体験。これからの時代、インテリアに求められるのは「見た目」だけではない——そんなことをそっと教えてくれる作品です。