
世界最速340km/h超!中国の学生が3Dプリントのマイクロドローンでギネス記録を更新
「空を切り裂く音が聞こえた——」そんなドラマのような瞬間が、中国・広東省の恵州市で現実になりました。
2024年3月23日、中国香港中文大学(深圳)の学生・Xu Yang(シュウ・ヤン)さんが開発したマイクロドローンが、時速340.78km(211.75mph)という驚異的な速度で飛行し、ギネス世界記録を更新しました。しかも、この機体の重さはたったの247グラム。かつての非公式記録219km/hを大きく上回る快挙です。
趣味から世界記録へ——若きエンジニアの挑戦
Xuさんはもともと模型航空機が趣味の学生。今回の記録更新に至るまで、地道な試行錯誤を重ねてきました。実は、昨年11月には試作機がクラッシュするという苦い経験も。それでも諦めず、パフォーマンスを突き詰めた結果、ついに世界の頂点に立ちました。
3Dプリント×カーボンファイバー=空飛ぶ工芸品
記録を打ち立てた機体「Prowess(プロウィス)」には、Xuさん自らが設計した高速用プロペラを含む、3Dプリントによる特注パーツが多数搭載されています。ボディは厚さわずか0.4mmの超薄型シェルに、軽量カーボンファイバー製フレームを採用。まさに、スピードを追求するためだけに生まれた、空飛ぶ工芸品です。

市販品のプロペラでは速度の要求に応えられず、自ら設計・製造に踏み切ったというXuさん。妥協のない姿勢に、技術者魂を感じます。
世界が注目する「250g以下」の壁
ギネスが定める「250g未満クアッドコプター」のカテゴリは、軽量ながら高性能を求められる極限の世界。今回の記録に対し、同カテゴリの別クラスで記録を持つスイスのエンジニア、Samuele Gobbi氏も「重量制限まで加えてこの速度はすごい」と賛辞を送っています。
秘密は「温度管理」と「チームスピリット」
記録挑戦時には、バッテリーを約40度まで加熱するという裏技(?)も使用。これはパフォーマンスを最大限引き出すための工夫で、プロ並みの知見が伺えます。
またXuさんは、「この挑戦は自分ひとりの成果ではない」と語り、同じような夢を持つ未来の挑戦者たちと知識や経験を共有していきたいとしています。スピード競技でありながら、どこか温かい人間味も感じられるコメントです。
限界は、まだ遠くにある
記録達成後も、Xuさんの手は止まりません。今後はモーターやプロペラのさらなる最適化を進め、より高速な飛行を目指すとのこと。「極限のスピードを追い求める旅に、終わりはない」。その言葉通り、この記録はあくまで通過点かもしれません。
——空のF1ともいえるマイクロドローンの世界で、ひとりの若きエンジニアが示したのは、「速さ」と「熱さ」の両立でした。
Source: scmp.com