
画像:日本初の2階建て3Dプリンター住宅「O House」(出典:株式会社築 プレスリリース)
「3Dプリンターで家を建てる」――海外のニュースで目にすることが増えてきましたよね。
でも日本では、技術があっても「法律が追いついていない」という状況が長く続いていました。
ところが2026年4月、ついに大きな動きが出てきました。
国土交通省が建設3Dプリンター向けの建築材料に関する規制緩和に乗り出し、2026年度が業界の転換点になる可能性が高まっています。
日本経済新聞(2026年4月14日付)の報道と、国交省の公開資料をもとに、今何が変わろうとしているのか、そして何が課題として残っているのかを整理しました。
そもそも何が問題だったのか? ― 建築基準法と3Dプリンターの壁
建設3Dプリンターとは、モルタルやコンクリートなどの材料を3Dデータに基づいて層状に積み上げ、建物の壁や構造を造形する技術です。
製作した部材を建築物の構造体に使えてこそ真価を発揮するわけですが、ここに大きなハードルがありました。
3Dプリンターで使うモルタルは、国交省が定める「指定建築材料」に該当しません。鉄骨やコンクリートのように「この基準通りに使えばOK」という枠組みがそもそも存在しないんですね。
そのため構造体として利用するには、建築基準法第20条に基づき、建築物ごとに個別の大臣認定(20条認定)を取得する必要がありました。建物を1棟建てるたびに認定を取り直すわけですから、時間もコストもかかり、普及の大きなブレーキになっていました。
国交省が示した3つの規制緩和の方向性
国土交通省が設置した「3Dプリンター対応検討委員会」は、2024年8月に対応方針の取りまとめを公表しています。ポイントは大きく3つです。
1. 建基法38条で新材料の認定ルートを整備
特殊な構造方法や建築材料を規定する建基法38条に基づく大臣認定で、3Dプリンター用モルタルのような新材料も扱えるという見解が2025年8月に示されました。
材料の長期的な性質がまだ十分にわかっていない場合でも、モニタリングなどの条件付きで認定を取得できる道が開かれています。建物の一部に3Dプリント部材を用いる場合も対象になります。
2. 小規模建築物向けの「仕様規定」を策定
延べ面積200㎡以下の平屋建てなど、構造安全性の確保が比較的容易な小規模建築物(いわゆる3号建築物)について、仕様規定を作る方針が示されました。
仕様規定が整備されれば、その規定に沿った設計であれば個別の20条認定なしで建設が可能になります。構造計算も省略でき、建設3Dプリンターの実用化が一気に加速する可能性がありますね。
3. 中・大規模建築物向けの「強度指定」制度
中・大規模建築物では、法令に強度の定めがない新材料を使うと構造計算ができないという問題がありました。
そこで、事業者が材料ごとに設計・施工マニュアルを定め、国に申請すれば強度指定を受けられる仕組みが整備されます。これにより、中・大規模の建築物でも3Dプリンター材料を用いた構造計算が可能になります。
パブリックコメント募集中 ― 5月施行の見込み
国交省は2026年3月31日に仕様基準の制定案を公開し、現在パブリックコメントを募集しています。締切は2026年4月29日で、5月中の施行を予定しています。
建設3Dプリンターに関わる方は、この機会に意見を提出してみるのも良いかもしれません。
国内で進む実績 ― 2階建て住宅から万博トイレまで
規制面の議論と並行して、国内でも建設3Dプリンターの実プロジェクトが着実に積み上がっています。
築(Kizuki)× オノコム:日本初の2階建て3Dプリンター住宅

画像:2階建て3Dプリンター住宅の建設プロジェクト概要(出典:株式会社築 プレスリリース)
宮城県栗原市の株式会社築(代表:五十嵐理香氏)と株式会社オノコムが、COBOD製の建設用3Dプリンターを使い、日本初となる2階建て3Dプリンター住宅を完成させました。
敷地面積344㎡、延べ面積49㎡(1階30㎡・2階19㎡)、最高高さ約6.3mの住宅で、日本の厳しい耐震基準をクリアして建築確認・完了検査・販売まで達成しています。
ただし五十嵐氏は「3Dプリンターや材料に精通する設計者は少ない」と人材面の課題も指摘しています(日経新聞 同記事より)。
浜田晶則氏:大阪・関西万博「Gorge:地層の狭」

画像:大阪・関西万博の3Dプリンターで建設された「Gorge:地層の狭」(出典:ShareLab NEWS)
浜田晶則建築設計事務所の浜田晶則氏は、大阪・関西万博で3Dプリンターにより製作する「Gorge:地層の狭(土の峡谷)」を設計しました。建設用3Dプリンターで富山の土を積層出力し、現地で組立施工するという手法です。
しかし現場では多くの課題にも直面しました。浜田氏は「会場にプリンターや材料を運んで印刷するのは想像以上に大変だった」「屋外での製作は出来栄えが天候に左右され、体力も消耗する」と振り返っています。冬場の施工では気温と湿度の低さにも悩まされたそうです(日経新聞 同記事より)。
さらに「積層工程を自動化しても、材料の補充に人手がかかる課題が万博で見えた」とも語っており、技術的な自動化だけでは解決できない現場の実態が浮き彫りになりました。
セレンディクス:550万円の3Dプリンター住宅を量産フェーズへ
セレンディクス社は2022年に日本初の3Dプリンター住宅「Sphere(スフィア)」を完成させて以降、開発から販売フェーズへと移行。50㎡・1LDKの「serendix50」を550万円で販売開始しています。能登半島地震の被災地にも建設されるなど、社会的なニーズにも応え始めています。
Polyuse:国産建設3Dプリンター「Polyuse One」を全国展開
国産建設用3Dプリンター「Polyuse One」を開発するPolyuse社は、2025年のシリーズB資金調達(約27億円)を経て、全国への設置拡大を進めています。建設用3Dプリンティング技術として国交省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録済みです。
規制緩和だけでは足りない ― 残された3つの課題
3Dプリンター対応検討委員会で委員長を務めた名城大学理工学部の寺西浩司教授は、「規制緩和は3Dプリンターの普及の道を開くきっかけに過ぎない」と語っています。
日経新聞の取材を通じて、業界関係者からは法規制以外にも次のような課題が指摘されています。
1. 人材不足
3Dプリンターや専用材料に精通する建築設計者はまだ非常に少ないのが現状です。規制が緩和されても、設計・施工できる人材がいなければ普及は進みません。
2. 屋外施工の環境依存
建設3Dプリンターの造形品質は天候(気温・湿度・雨風)に大きく左右されます。万博での経験から、屋外施工における品質管理の難しさが改めて確認されました。
3. 初期投資の大きさ
建設用3Dプリンターの導入には大きな初期投資が必要です。スタートアップや少人数の設計事務所にとっては、参入のハードルが高い状況が続いています。
寺西教授の言葉通り、規制緩和で場数を踏めるようにし、技術と人材の壁を越えていくことが求められています。
3Dプリンター専門店として ― SK本舗が注目する理由
SK本舗は光造形やFDM方式の3Dプリンターを中心に取り扱っていますが、建設3Dプリンターの規制緩和は3Dプリンティング業界全体にとって大きな追い風です。
建設分野での認知拡大は、「3Dプリンター=試作品を作るもの」というイメージを「実用的なものづくりのインフラ」へと変えていく力があります。製造業や建築業界でのFDM・光造形プリンターの活用にもつながる流れですので、引き続きこの動向をお伝えしていきます。
まとめ ― 2026年度、建設3Dプリンターの転換点
- 国交省が建設3Dプリンター用モルタルの規制緩和に動き出した
- 建基法38条による新材料の認定ルートが整備されつつある
- 小規模建築物(200㎡以下の平屋)向けの仕様規定を策定中 → 4月29日までパブコメ募集中、5月施行予定
- 中・大規模建築物向けには「強度指定」制度も新設
- 築、セレンディクス、Polyuseなど国内プレイヤーの実績も着実に蓄積
- ただし人材不足・屋外施工品質・初期投資コストなど、法規制以外の課題も残る
よくある質問(FAQ)
Q. 建設3Dプリンターで今すぐ家を建てられますか?
現在でも建築基準法第20条の大臣認定を取得すれば建設は可能です。実際に築(Kizuki)社が2階建て住宅を、セレンディクス社が平屋住宅を完成させています。2026年度の規制緩和により、小規模建築物では認定なしで建設できるようになる見込みです。
Q. 3Dプリンター住宅の価格はいくらですか?
セレンディクス社の「serendix50」(50㎡・1LDK)が550万円で販売されています。一方、築社の2階建て住宅のように設計・仕様にこだわるプロジェクトでは、従来の住宅に近い価格帯になる場合もあります。
Q. 建設3Dプリンターに使われる材料は何ですか?
主にモルタル系材料が使われています。通常のコンクリートとは異なり、3Dプリンターのノズルから押し出して積層造形できるよう、流動性や硬化速度が調整された専用材料です。大阪万博では土を素材にした3Dプリント建築も実現しています。
Q. 地震に耐えられますか?
築社が完成させた2階建て住宅は、日本の建築基準法に基づく耐震基準をクリアし、建築確認・完了検査を通過しています。3Dプリント部材と鉄筋コンクリートを組み合わせることで、構造的な安全性を確保しています。
参考ソース
- 日本経済新聞「建設3Dプリンター、関連法に変化の兆し 建築材料の規制緩和へ」(2026年4月14日)
- 日経クロステック「国交省が建設3Dプリンター向けの材料で規制緩和へ、26年度は転換点」(2026年3月13日)
- 国土交通省「建設用3Dプリンターを利用した建築物に関する規制の在り方について」(2024年8月)
- 株式会社築 プレスリリース「日本初の二階建て3Dプリント住宅プロジェクト」
- ShareLab NEWS「富山の土で作られた万博トイレ、持続可能性を形に」
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SK本舗では、Bambu Lab・ELEGOO・Phrozen・Creality・Anycubic・EMAKE3D・Apex Maker・Flashforge・SK本舗オリジナルなど主要メーカーの3Dプリンターを幅広く取り扱っています。光造形・FDM、どちらのタイプもご用意しています。
※本記事は2026年4月14日時点の情報に基づいています。法制度の詳細は国土交通省の公式発表をご確認ください。
