外出自粛がまだまだ必要な今日、皆様は家で何をされているでしょうか。SK本舗は最近新しく安価なプリンターを扱ったり、セールを行ったりの日々です。この機に3Dプリンターデビューしちゃったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、実際にプリンターを買ってはみたものの、マニュアルにはあまり事細かに書かれていない部分があったり、知らない部分もあったりで、結局未だに上手く出力できていない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか 。
というわけで、3Dプリンターを購入してからの操作手順を一から丁寧にお話しします。今回はPhrozen Sonic Miniを使用するケースをご紹介します。
購入にあたって(プリンターと一緒に買うもの)
まず購入前に必要な物を見ていきましょう。
よくある質問としては、プリンターと一緒にレジンはついてくるのですか、ということですが残念ながらレジンはセットではございません。(たまにセットセールも行っています。SK本舗3Dプリンター初心者導入セットには500㎖の水洗いレジンが同梱されています。色はランダムです。)
従って、基本的にSK本舗では初心者の方には下記を一緒に買うことをお勧めしています。
◆プリンター
◆レジン
◆FEPフィルム
<プリンターについて>
プリンターの選び方には様々な要素がありますが、現在SK本舗の指定データでSonic Miniのみ無料でサンプル出力を行っています。小さいキューブのサンプルですが、どのくらい精巧に出るのか等興味がある方はぜひ取り寄せてみてください。ちなみに、お客様がデータを指定なさる場合は有償となります。
<レジンについて>
レジンを初めて購入する方にはSK水洗いレジン『白色』をお勧めしています。普通のレジン、水洗いレジンの違いをご説明します。出力物には、未硬化のレジンがついています。それを洗い落とす際に、普通のレジンにはIPAなどのアルコールが必要です。水洗いレジンは洗浄を水で行えます。そういった理由から、初心者の方には後処理が簡単で且つ出力の失敗が少ないSK水洗いレジン『白色』がお勧めです。まずはこちらのレジンでプリンターの操作を覚えるのが良いでしょう。
レジンの各ページに実際に出力されたサンプル画像がありますのでお好みの色を探すのも楽しいかと思われます 。どうしても出力したレジンの実物を見たい場合はお問い合わせフォームからレジンを指定して出力サンプルが見たいとご連絡いただけますと、Sonic Miniから出力した任意の出力サンプルをご送付いたします。是非ご参考にしてください。
<FEPフィルムについて>
FEPフィルムとはレジンを流しこむレジンVATの底についているフィルムのこと です。初心者には出力の失敗がつきものです。出力失敗が起きるとどうなるのかというとレジンVATの底(FEPフィルム)に失敗して固まったレジンがくっつきます。それを剥がす際に破いてしまったりするので是非予備のフィルムをご用意ください。そしてFEPフィルムは消耗品で、定期的に交換が必要です。摩耗し、出力中に穴が開き、レジンがレジンVATから漏れて、LCDパネルに付着した状態でレジンが硬化してしまった…となるとLCDパネルの交換になります。FEPフィルムに比べて、LCDパネルは非常に高価です。悲しいことになる前にFEPフィルムの交換をしてください。ちなみに、プリンターと同じメーカーのFEPフィルムを必ず使う必要はございません。SK本舗では複数セットのワンハオ社のFEPフィルムをお勧めしています。あとは最近評判のElegoo社製のFEPも良いです。
赤矢印の部分がFEPフィルム
<その他関連商品について>
SK本舗では有料のスライサーソフト(Formware3D)を販売していますが、そちらは買った方が良いですかというご質問をよく頂きます。Formware3Dと無料のスライサーソフトの違いはたくさんありますが、よく使う機能としてはサポート材を付ける部分を自動判定してくれる点が挙げられます。それ以外にはラティス機能や自動中空化、重力サポートなど様々な便利機能が満載です。
サポート材とは、3次元に出力する際に構造上どうしてもどこかで支えないと出力できない部分につけるもので、出力後は外す(捨てる)部分です。
写真の赤枠がサポート材
もちろん自動判定してくれるのが有料の方ですが、どちらかというとお仕事で3Dプリンターを使うのでなるべく失敗している時間を減らしたい、という方がお買い上げ頂いている印象です。ホビーでのんびりやる分には、「ここにサポート材を付けないとだめなのか―――」と楽しみながらやるのも良いのではないかと思います。ということで、こちらは結論どちらでも良いです。まずは無料のソフトを使ってみて、やはり必要だと感じたらお買い求め頂く形でも十分だと考えています。
プリンターが届くまでに用意するもの
プリンターが届くまでに下記を用意してください。
◆プリンターを置く場所
◆出力環境
◆汚れても良い服
◆洗浄用のアルコール(無水エタノールや専用洗浄液など)
◆(場合によっては)アクリル性手袋
<プリンターを置く場所について>
出力中はリビングなどの広い場所に広げさせて頂くとしても、片付ける場所はきちんと用意してください。家でも仕事場でも「これ邪魔!!」と怒られ捨てられないようにしてください。あとは換気をしっかりして、健康に十分気を付けてください。SK本舗からの切実なお願いです。
<出力環境について>
床にレジンを溢しても大慌てしないように、出力中は床にビニールシートを敷くなどして、汚しても良い環境の準備をしてください。こぼしたレジンは、すぐにふき取れれば問題ありませんが、こぼしたことに気付かず放置しているとべたべたになります。こぼしてしまったら出来るだけ早くふき取り、べたべたする場合はアルコールでごしごししてみてください。それでもべたべたする場合は清掃業者にお願いしましょう。カーペットなど布製品にこぼした場合は、アルコールや無水エタノールにてトントンして別布にシミをうつすようにすれば、ある程度は落とすことができます。その後水と洗剤などで手洗いしてください。それでも落ちなければ、諦めてください。という訳で、ビニールシートなどを用意するのがお勧めです。
<汚れても良い服について>
出力時の服装は必ず汚れても良い服を着用してください。理由は、先程カーペットの話で言及した通りです。
<洗浄用アルコールについて>
通常レジンで出力する場合には、出力物を洗浄する際にアルコールが必要です。これはレジンがアルコールに溶ける性質を利用した洗浄方法です。レジンを予期せぬ場所にこぼしたときの洗浄や、プリンターのメンテナンスをする際にも有効です。したがって、水洗いレジンしか購入していない場合にも用意しておくと良いです。また用意するアルコールは無水エタノールや他社で売っている光造形用レジン専用洗浄液がおすすめで、どちらもオンラインショップでの購入が可能です。光造形界では洗浄液としてIPAというアルコールが有名ですが、こちらはアルコールの性質上、特別な健康診断を受ける必要があります。なので、SK本舗ではIPAの利用の推奨はしていません。尚、今のご時世だとアルコール類が手に入りづらい場合もありますので早めに用意をしておくと良いでしょう。
<(場合によっては)アクリル製手袋>
レジンは皮膚に触れるとアレルギーでかゆくなる場合があるため、しっかり手袋をする必要があります。手袋はSonic Mini 1台につきゴム手袋が1双ついていますが、実はゴム手袋でもアレルギー反応が出る場合があります。ラテックスアレルギーをご存知でしょうか。ラテックスと似た成分をもつアボガド、バナナ、クリ、キウイフルーツなどにアレルギーがある人や、アトピー性皮膚炎などがある場合、ゴム手袋でアレルギー反応が出る可能性があります。
しっかり手袋をしておりレジンにも触れていないのに手がかゆい、喘息っぽい症状が出たなどあればラテックスアレルギーの可能性が高いです。レジンもアレルギー症状が出るためレジンに触れてしまったせいだと思いこみ、ゴム手袋を使用し続けた結果、症状がひどくなってしまう場合があるので是非とも知っておいてください。100円均一ショップにゴムではなくアクリル製の手袋があるため、ちょっとおかしいなと思ったら試しに買ってみることをお勧めします。ゴム手袋程フィット感はないものの、物によってはサイズ展開があるためそちらを是非利用してください。
Sonic Miniのセットアップ
基本的にSK本舗からメールで届くマニュアルの通りにセットアップをすれば問題ありませんが、順に見ていきましょう。
1)内容物の確認
日本語マニュアルを見ながら付属品が揃っているか確認しましょう。これはSonic Mini以外の機種にも言えることですが、英語マニュアルと日本語マニュアルで付属品が異なる場合があります。その場合は日本語マニュアルを「正」としてください。というのも、メーカー本国で発送可能でも、日本では法律上発送してはいけない部品もあるなど、国ごとに事情が変わるからです。不明点や不足品があれば、まずお問い合わせフォームから問い合わせてみてください。
軽く内容物と使用用途を紹介します。
<内容物(Sonic Miniの場合)>
・取扱説明書(英語)
・ゴム手袋 1双
→前述した通り、体に合わなかったらすぐに使用をやめましょう。
・スクレーパー(プラスチックのものと金属のものと1つずつ)
→プラスチックのものはレジンを撹拌する際に使用します。(後述)
金属の方は出力後、プラットフォームにくっついた出力物を取る際に使用します。(後述)
・六角レンチ
→Z軸キャリブレーションの際に利用します。(後述)
・漏斗
→レジンVATに出したレジンをボトルに戻す際に使用します。(後述)
・USB
→スライサーソフトのCHITUBOXが入っているので、PCにインストールしましょう。(後述)
・プラットフォーム
→出来上がった出力物がくっつく部分です。SK本舗では替えのプラットフォームを売っています。
・レジンタンク
→SK本舗ではレジンVATとして販売しています。機種によって大きさが異なりますが、汚れが目立ってきたり損傷が見られたら交換しましょう。
・ねじ
・変圧器(電源ケーブル)
・機体用パッド
→Sonic Mini本体の裏側につけましょう。
・Wifiドングルは電波法関係で残念ながら同梱ができません。Amazonで安いものを入手いただけると幸いです。なお、弊社にお問い合わせ頂ければ場合によっては別送できるケースがありますのでご連絡ください。
2)セットアップをしよう
2-1 電源を付ける
セットアップ、とはいえSonic Miniは電源ケーブルを付けさえすれば起動します。ただ、スイッチの「-」マークを押してから起動に時間がかかるので気長に待ってください。どのマシンでも1時間待ってみて起動しなかったらSK本舗の技術窓口へご相談ください。
2-2 LCDテストをする
Sonic MiniもといSK本舗で売っている光造形機は液晶パネル(LCDスクリーン)に出力したい形を映し、その形に紫外線を当てることによって出力したい形にレジンが固まる仕組みです 。例えば、LCDスクリーンが機能しておらず半分しか映らない状態で、中央に出力物を出す場合、出力物は半分しか出力されません。そのため、きちんと全面機能しているか確認するためにLCDテストを行いましょう。またLCDスクリーンは消耗品です。使用した上で問題がある場合は取り換えましょう。
2-3 キャリブレーション(calibration)をする
キャリブレーションとは、プラットフォームの水平度を調整するために行う作業です 。光造形方式は1層ずつプラットフォームにレジンを硬化させていきます。印刷の設定などにもよりますが、1層の厚みは0.1mmだったり0.05mmだったりと非常に薄いので、プラットフォームが斜めになっているとその1層がきちんとくっつきません。やり方はマニュアルの通りですが、雑にネジを絞めたりしてプラットフォームが傾いてしまうとせっかくのキャリブレーションが無意味になってしまうので要注意です。
2-4 テスト出力してみよう
付属品のUSBの中にはPhrozenがあらかじめ入れてくれたデータが入っているためSonic MiniにUSBを差し込んでこちらを出力してみましょう 。ただしこういったデータはメーカー純正のレジンでデータを調整されている場合があるため、使用レジンによっては上手くいかないこともあります。そういうことも念頭に置いた上、まずは一度やってみましょう。
レジンの用意も大切です。まずはレジンをよく振ってからレジンVATに入れましょう 。レジンには適正温度があり、寒すぎると上手く出力できない場合があります。レジンVATに入れたらドライヤーなどで温めましょう。レジンを振ったときの気泡は大体ここでなくなります。またこの時、付属していた「プラスチック」のスクレーパーで更に混ぜておくと良いです。
テスト出力で上手く出力物が出てきたら「金属」のスクレーパーで出力物をプラットフォームから外しましょう。ちょっと外れづらい場合も、無理に力づくに取ると割れてしまうので根気強く割れない範囲で外しましょう。外した出力物は手袋をして刷毛などで洗浄します。絶対にレジンを素手で触らないようにしてください。
2-5 スライサーソフトのCHITUBOXをダウンロードする
2-4でテスト出力が出来たら早速、実際に出したいデータを出力しましょう。
まずは該当データのスライスデータ(1層ごとに分割したデータ)が必要です。Sonic Miniが適用しているのはCHITUBOXなので、こちらをダウンロードしてみましょう。
付属品の中のUSBにもデータが入っていますが、社内ルールで指定以外のUSBをPCに指すのが禁止だったりする場合はネット上でもダウンロードが出来るのでそちらからダウンロードしましょう。ちなみにインターネットからのダウンロードは会員登録が必要です。
CHITUBOXダウンロードページ
https://www.chitubox.com/download.html
2-6 CHITUBOXの設定をする
「設定」→「新しいプリンタを追加する」でSonic Miniを選択しましょう。ちなみに、あとからでも設定が出来るので時間がある時で問題ありません。
① 赤い四角の部分を押します。
② 設定画面の上にある「新しいプリンタを追加する」ボタンを押します。ちょっとわかりづらいですが左上の赤い四角のマークです。
③ Phrozen Sonic Miniを選択し、「OK」ボタンを押します。アルファベット順なので「P」は後ろの方です。
これでようやく好きなものが出力できる状態が整いました。
というわけで、前編はここまでです。
後編ではいよいよ3Dプリンターを使ったSTLデータの出力に挑戦します。
第三講「3Dプリンターを熱溶解層方式(FDM)から光造形方式(SLA)にした人にありがちな失敗の原因」
第六講「サポート材周りのデザイン潰れの原因は“露光漏れ”かも!?」
第七講(後編)「3Dプリンターを購入して実際に使ってみよう! 〜出力から片付けまで〜 」
第九講「3Dプリンター初心者にありがちな失敗とつまずきポイント 」