3Dプリンター(造形方式)の種類
主な造形方式について
3Dプリンターにはいくつかの主要な種類があります。FFF方式(FDM)、SLA方式、DLP方式、LCD方式、SLS方式、SLM方式等があります。
FDM(Fused Deposition Modeling)/ FFF(Fused Filament Fabrication): これは最も一般的な3Dプリンティング技術で、熱で溶かしたプラスチックフィラメントを積層して物体を作成します。FDMプリンターは比較的安価で、プラスチック製のプロトタイプや部品を作成するのに適しています。例えば、カスタムエンクロージャー、ガジェット、おもちゃ、学校のプロジェクトなどの作成に利用されます。
FDMとFFFの呼称の違いですが、基本的に同じ3Dプリンティング技術を指しますが、その名称の違いは主に商標法の問題から来ています。FDMは、アメリカのStratasys社が開発し、その技術名を商標登録したものです。そのため、Stratasys社以外の企業がこの技術名を商用利用することは制限されています。一方、FFFはRepRapコミュニティ(オープンソースの3Dプリンター開発コミュニティ)によって提唱された名称です。FDMと同じ技術を指していますが、こちらの名称は商標登録されていないため、自由に使用することができます。このため、多くの3Dプリンターメーカーは商標法の制約を避けるために、FDM技術のことをFFFと呼んでいます。したがって、FDMとFFFは基本的に同じ技術を指し、その名称の違いは主に商標法に関連した法的な問題から来ています。
SLA(Stereolithography): SLA方式は液体樹脂を特定の光波長の光(UVレーザー)で硬化させることで物体を作成します。この技術は高い詳細性と滑らかな表面仕上げを提供するため、精密なプロトタイプや高品質の芸術作品を作成するのに適しています。
DLP(Digital Light Processing): DLPもSLAと同様に液体樹脂を光で硬化させる技術ですが、こちらはデジタルプロジェクターを使用します。DLPは1面1面を一括で印刷するため、SLAよりも高速で、複雑なジオメトリを持つオブジェクトや大量生産に適しています。SK本舗でも低コストのDLP機種をラインナップとして取り揃えております。
LCD(Liquid Crystal Display): LCDプリンティングはDLPに非常に類似していますが、こちらは液晶ディスプレイを使用して一度に全体の層を硬化させます。これにより、DLPと同等の結果を低コストで提供できるため、個人や小規模なビジネス向けになっています。SK本舗ではこちらのLCD方式の3Dプリンターを豊富に販売しており、SK水洗いレジンなどが後処理も楽で造形品質も非常に高いです。
SLS(Selective Laser Sintering): SLSは粉末状の材料(通常はナイロン)をレーザーで焼き固めることで物体を作り出します。SLSは複雑な形状のパーツや移動部を持つオブジェクトを作成するのに適しています。例えば、エンジニアリング部品やドローンのコンポーネントなどがあります。
SLM(Selective Laser Melting): SLMもレーザーを使用して粉末状の材料を焼き固める技術ですが、SLMでは材料を完全に溶融させます。これにより、非常に強度が高く、複雑な内部構造を持つ部品を製造することが可能です。SLMは主に金属製の部品を製造するために使用されます。そのため、航空宇宙、自動車、医療などの産業で特に重要な技術となっています。例えば、航空宇宙業界では、エンジンのタービンブレードなどの高性能部品を作成するためにSLMが使用されます。また、医療分野では、患者に合わせてカスタマイズされたインプラントや義肢を作成するために利用されます。SK本舗の関連会社、SK AdditiveではHBD社製のSLM方式金属3Dプリンターを取り扱っています。
以下ではSK本舗が主に取り扱っているDLP方式/LCD方式ならびにFFF(FDM)方式の3Dプリンターについて詳細を説明していきます。
①光造形方式(光重合タイプ/LCD方式/DLP方式など)
Elegoo 光造形方式 3Dプリンター 『Mars3 Pro』
光造形方式は、日本人によって開発された3Dプリンターの中でも最も古い造形方式です。
液状の光硬化樹脂(レジン)がたまっているところにコンピューター制御された光が照射されることにより、レジンが硬化して層が出来上がります。そしてまたこの層を少し覆うように液体のレジンが流れ込み、レーザーが照射され…ということが繰り返されて成形されていきます。イメージとしては体積を求める考え方と同じで、厚さを持たない正方形が何個も積み重なると立方体となる、というのと同じです。ここでいう正方形が層のことです。
出力が終わったら最後に造形物を溶剤(アルコールなど)に浸けて未硬化のレジンを洗い流して完成です。
この造形方式のメリット・デメリットは下記の通りです。
<メリット>
- 精度が高い
- 造形速度が速い
<デメリット>
- レジンの取り扱いに注意が必要
- 後処理の工程が多い
- 造形可能サイズが比較的小さい
<メリット>精度が高い
光造形の最も魅力的なポイントが精度です。FFF機と比べ、近年発売されている光造形方式のプリンターは積層した跡(積層痕)がほとんど目立たなくなりました。
<メリット>造形速度が速い
FFF方式と比べて光造形方式は面で出力されていく関係で、造形速度は比較的早いです。大量生産したい場合、データを工夫するとまとめて数個を同時に造形できるのも魅力の1つです。
<デメリット>レジンの取り扱いに注意が必要
光造形方式で使用する樹脂(レジン)は素手で触ることは危険です。人によってはアレルギー反応を起こす場合もあり、必ずゴム手袋やビニール手袋をつけて作業をする必要があります。子どもと一緒に作業する場合は、レジンを素手で触らないように注意してみてあげる必要があります。
<デメリット>後処理の工程が多い
光造形方式は出力後に未硬化のレジンを洗い流し、場合によっては二次硬化が必要です。未硬化レジンを洗い流すのにアルコールなどを用意する必要があります。アルコール洗浄が不要な水洗いレジンというものも開発されていますが、必ず洗浄は必要となり、FFF方式より出力後の工程は多くなります。
<デメリット>造形可能サイズが比較的小さい
機体の構造の関係で同じ価格帯のプリンターで比べたときに、光造形方式はFFF方式と比べて造形可能サイズが小さいのが難点です。もちろん大きなものを出力できる光造形方式のプリンターは存在しますが、大きくなればなるほど高価格となるので、もし大きい出力を考えている場合はFFF方式で出せないか、もしくは一括ではなく分割して出力できないかを検討するのが良いでしょう。
こんな方におすすめ
光造形方式(光重合タイプ/LCD方式/DLP方式など)は高精度の3Dプリント出力が可能な技術であり、多くの利点があります。上記の特徴から、以下の方々におススメできます。
①高精度の出力をしたい方: 光造形方式はレーザーまたは光を使って樹脂を硬化させることで、非常に細かいディテールを再現することができます。これは他の3Dプリンティング技術、特にFDM/FFF方式と比較して明らかな優位性があります。例えば、微細なジュエリー、複雑な歯科用プロダクト、細部まで精密に作り込まれたスケールモデルなどの製作に適しています。
②小さいものを大量生産したい方: 光造形方式は、一度に一層全体を硬化させるため、同時に多数の小さなオブジェクトを作成するのに特に有効です。プリントプラットフォーム上の配置が適切であれば、1つのオブジェクトをプリントするのと同じ時間で、多数の同じオブジェクトをプリントすることが可能です。これは例えば、カスタムジュエリーやミニチュアフィギュア、特定の小さな部品のバッチ生産などに役立ちます。
③出力物が小さい、もしくは分割して出力して良い方: 光造形プリンターのビルドボリューム(出力できる最大の物体のサイズ)は、一般的にFDM/FFFプリンターと比較して小さいです。しかし、出力物が小さい、または大きなオブジェクトを分割して出力することが可能な場合には、光造形プリンターが非常に有効です。分割したパーツは後で接着や組み立てることで一つの大きなオブジェクトになります。このようなケースは、大きなアート作品や複雑なエンジニアリングプロジェクトなどに適用可能です。
これらの例から、光造形方式は多様な用途に適応でき、特に高精度や小さなオブジェクトの大量生産が求められる場合にはその真価を発揮します。
SK本舗の光造形方式3Dプリンターはこちら↓
https://skhonpo.com/collections/3d-printer-lbl
②FFF方式(FDM方式/熱溶解積層法など)
Mingda FFF方式 3Dプリンター 『Magician X』
FFF方式は家庭用にも早くから普及いており、おそらく多くの人がイメージする3DプリンターがこのFFF方式だと思います。樹脂(フィラメント)を溶かして射出して積み重ねることによって成形します。(ソフトクリームのでき方と同じです。)フィラメントがデータの形に射出されて急速に固まり…ということを何度も繰り返して形となります。
このFFF方式のメリット・デメリットは下記の通りです。
<メリット>
- 安価で手に入れやすい
- 様々な素材で造形できる
<デメリット>
- 他の造形方式より表面がでこぼこしやすい
- 歪みが出る可能性が高い
<メリット>比較的普及している方法のため安価で手に入れやすい
多くの人がイメージする3Dプリンター、すなわち普及が進んでいる3Dプリンターということができます。普及が進んでいるということが、技術が進歩しているということであり比較的安価に手に入ります。
<メリット>様々な素材で造形できる
上記と同様開発が進んでいるという理由から、材料であるフィラメントの開発もかなり進んでいます。カラーバリエーションが豊富なほか、環境を考慮した材料や金属素材など様々です。
<デメリット>光造形方式より表面がでこぼこしやすい
この造形方式の特徴上、凹凸は層が何層も重なる際にできてしまいます。そのため精度が高いプリンターでも成形後に表面をやすりなどで磨いて滑らかにするのが一般的です。
<デメリット>歪みが出る可能性が高い
造形方式の特徴として、射出した部分から冷えて硬化していくため、造形物の形状によっては射出部位の冷却ペースが異なり、出力中に形がゆがんだり縮んでしまう場合があります。
こんな方におすすめ
FFF方式(FDM/熱溶解積層法)は、そのコスト効率、簡易さ、そして材料の多様性から、多くのユーザーに適した3Dプリンティング技術です。
①なるべく出費を抑えたい方: FFF方式は初期投資と維持コストの両方が比較的低いため、予算が限られている方に最適です。プリンター自体の価格は他の技術と比較して手頃であり、使用するフィラメントのコストも比較的低いです。また、メンテナンスも簡単であり、特別な環境や高価な消耗品を必要としないため、維持コストも抑えることができます。
②出力物に高い精度を求めない方: FFF方式は高精度の出力には制限があるものの、多くのユーザーにとっては十分な精度を提供します。家庭用のアイテム、教育用のツール、簡単なプロトタイプなど、細部の精度があまり必要でない場合には十分な性能を発揮します。
③様々な材料を楽しみたい方: FFF方式の大きな魅力の一つは、使用可能な材料の広範さです。PLA、ABS、PETGなどの基本的なプラスチックから、木材、金属、炭素繊維、フレキシブルな材料などを含む特殊フィラメントまで、多くの異なる材料を試すことができます。これにより、さまざまな性質と特性を持つ製品を作成することができます。
これらの特性から、FFF方式は初めて3Dプリンティングを試す人、教育目的で使用する人、実験的なプロジェクトを楽しむホビーユーザーなどに特に適しています。
SK本舗のFDM方式3Dプリンターはこちら↓
https://skhonpo.com/collections/3d-printer-fdm
まとめ
説明はかなりかみ砕いたつもりですが、それでも3Dプリンターがあまり普及していない現在では想像するのが難しいのではないかと思います。今後、3Dプリンターを初めて使ってみよう、新しい3Dプリンターに挑戦してみよう、と思ったときに、この記事を見返してもらったり、画像や動画などをご検索頂くとより理解が深まるのではないかと考えています。なお、上記の説明を表にすると下記のようになります。
光造形方式とFFF方式の違いまとめ
光造形方式 | FFF方式 | |
メリット |
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デメリット |
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こんな方におすすめ |
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URL | https://skhonpo.com/collections/3d-printer-lbl | https://skhonpo.com/collections/3d-printer-fdm |