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今すぐ始めるべき副業は「3Dプリンター」!? 間違いなく売れる出力品とは何か?
趣味の3Dプリンターが利益を生み出す? ますます、普及の速度を高めている3Dプリンター。一般家庭にも浸透しつつあり、3Dプリンターを使った「ものつくり」がより広く楽しまれるようになってきている。 もちろん、これは大変に素晴らしいことなのだが、ちょっともったいなさもある。せっかく色々なものを3Dプリントしているのに、多くの場合、それが趣味の範囲にとどまってしまっているからだ。言うなればそれはDIYの家具作りと同様、せっかく作った価値のある「作品」を、自分のためだけの「もの」にとどめてしまっているようなものだ。 それが決して悪いという話ではなく、繰り返すが「もったいない」のである。3Dプリンターを興じるにもそれなりにコストはかかる。プリンター本体代は言うまでもなく、レジン代、消耗品代、場合によってはソフト代など、頻繁に使用するならば特に一定のランニングコストが掛かってしまう。現在はレジンも低価格高品質なものもあり、かつてよりはだいぶ、そのコストは低下はしているが、もしそのコストを帳消しにできる、あるいはそのコストを上回る利益を得られるとしたらどうだろうか。 これはつまり「趣味と実益を兼ねれたらより良いではないか」という話である。実際、趣味としていた3Dプリンターを使って商品を出力、販売し、少なくない副収入を得ている人たちがすでにいるのだ。 特にリモートワーク化の推進が謳われている今日、通勤時間の削減で得た時間で3Dプリンターを使用した副業に注目が集まるのは時間の問題だろう。そこで以下では3Dプリンターを使った副業について解説してみたいと思う。 どんな出力品が売れるの? 狙い目のブルーオーシャンは? さて、3Dプリンターで副業といっても、一体何を売ればいいのだろうか。 これはまさに様々あって、一概に「これが売れる」とは言えない。3Dプリンターで作れるものは多種多様、その中で市場が求めているものは何かを推測し、かつ競合相手が少なそうな「もの」を考える必要がある 。 一般によく売れるとされているのは、趣味のための道具だ。たとえば、リンク先のすでに3Dプリンターで副業をされているという方が書かれたnoteの記事においては、以下のようなラインナップがよく販売されている例として紹介されている。 【副業】3Dプリンターって稼げるの?個人で販売してみた!(再編集版) ・クッキーの型 ・ミニ四駆の部品 ・釣り関連の道具...
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3Dプリンターによって立体再現された歴史的名画がヤフオクに出品!? ダヴィンチ、ダリ、葛飾北斎まで
多様化するアートと3Dプリンター かつて「アート」と言えば主に絵画や彫刻のことだった。しかし、現代においては「アート」という言葉が指し示す範囲は非常に広い。 たとえば、演劇性の高いパフォーマンスアートや地形を用いたランドアート、あるいは映像や音楽を駆使したメディアアートなどの登場は、「アート」の主要な形式を一点ものの絵画や彫刻から空間全体を使って表現するインスタレーションへとシフトさせた。 ランドアートの代表作であるロバート・スミッソンの「スパイラルジェッティ」(出典:wikipedia) ビデオアートの元祖と言われるナム・ジュン・パイクのテレビ彫刻(出典:wikipedia) さらにここ20年では鑑賞者との関係性や社会活動そのものを作品化するというソーシャリーエンゲージドアート(SEA)が注目を集めており、一方には視覚ではなく嗅覚に訴えかけるオルファクトリーアートなどまでありと、実に百花繚乱、あれもこれも「アート」というヴァーリトゥードの様相を呈している。 このような多様性に富むアート業界において、アーティストたちが現在、競うように3Dプリンターを制作ツールとして使い始めているということは、以前にも紹介した通りだ。 2020年に注目すべき3Dプリンターアートを厳選紹介── オラファー・エリアソンからろくでなし子まで 特に立体造形に関しては、3Dプリンターという技術によって初めて可能になった造形もあり、注目度が高い。あるいは3Dスキャンしたデータをそのまま3Dプリントすることが可能になったことによって、対象を写実的かつ立体的に再現すること自体の意味合いは明らかに変わったとも言えるだろう。それはかつて写真機の登場によって絵画の存在理由が根底から問われ直したのと同様だ。テクノロジーはえてして「アート」の世界に改革をもたらしてきたが、3Dプリンターもまた様々な意味で「アート」の世界全体に大きな影響を与えているのである。 かつての名画を3Dプリントによって立体的に再現 一方で今、3Dプリンターと「アート」の新しい関わり方も模索されている。たとえば、3Dプリント技術による新たなる価値創出を目指すベンチャー企業メルタは、来たる11月3日、文化の日にちなんで、3Dプリンターで製作した「3Dプリント名画」の公開オークションを実施することを発表した。 これは、ある意味で、アートの世界の外側からのアートの再解釈である。再現された「3Dプリント名画」は、いずれも歴史上の重要な名画だ。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、葛飾北斎の「富獄三十六景」、サルバドール・ダリの「記憶の固執」。アートの歴史に明るくなくとも一度は目にしたことがあるような有名作ばかりである。 出典:メルタ ...
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3Dバイオプリントは人間を「身体」から解放する── プリント人工骨を開発するA.D.A.Mが掲げる「トランスヒューマニズム」とは?
人間の「骨」を3Dプリントする技術 これまでもSKメディアでは臓器や血管のバイオ3Dプリンティングについては様々にレポートしてきているが、この技術にこれほど注目が集まっているのには理由がある。過去20年間で臓器移植を待つ間になくなった人は15万人超、そして、これまでの臓器移植のやり方ではこの問題は永遠に解決できないと言われているのである。では、どうすればいいのか。解決方法は一つ、それは「必要に応じて人間の臓器をプリントする」ことだ。 かくして医療分野における臓器プリント技術は日進月歩の勢いで進歩し続けているのだが、そんな中、現在では私たちの身体を形成する「骨」もまた3Dプリントの対象となってきている。 たとえば、今年の6月にはテキサスA&M大学の研究チームが、骨組織の3Dバイオプリンティングに使用できる新たなバイオインク「NICE」を開発したことを発表している。これまで、骨の3Dバイオプリントは、身体への適応においてハードルが多く、歯科医療などの限定的な部位を除いてはなかなか進んでこなかった。しかし、この人工細胞を含んだNICEバイオインクであれば、プリント後にネットワークを架橋して強力な足場を作りだし、細胞に優しい人体部位の環境を模倣することで、身体への適応が図られている。要するにNICEとは、問題なく移植可能な「人工骨」を作り出すことができるインク、というわけだ。 Source: Texas A&M University College of Engineering まだ実験段階だが、臨床現場に導入されれば、患者に特異的な骨移植片を設計することによって、従来の治療法と比べて時間も費用も抑えた骨の欠損や損傷に対する医療を提供できる可能性があると言われている。多くの患者を救うかもしれない注目の技術だ。 3Dバイオプリントが人間を「身体」から解放する 同じく、3Dバイオプリントによる人工骨の出力を試みているのがウクライナで操業しているA.D.A.M.である。同社は、骨形成を促進し、高強度で生体吸収性の良い生体高分子材料を改質したバイオセラミックから3 Dプリント骨移植片を作るためのオンデマンド組織製造ソリューションの設計を試みている。 実際、すでにA.D.A.Mでは人工骨の製造が行われているのだが、現状ではまだFDA(米国食品医薬品局)からの承認は受けられていない。残すところは動物実験による安全性の確認となっており、A.D.A.MのCEOであるDenys Gurak氏曰く、あと1年半ほどで市場に提供できる見込みとのことだ。 この承認が通れば、少なくともまずは米国で「骨のインプラント」がより素早く、安価に行われるようになるということだが、A.D.A.Mのビジョンはさらに遠くへと向かっている。同社の最終目標は人間の「身体からの解放」だ。つまり、骨、臓器など、すべてを手軽な価格で3Dバイオプリントすることを可能にすることで、あたかも機械の部品を交換するかのように、身体を修繕、あるいは改造できる社会を作り出すことが、目標として掲げられているのだ。 ...
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3Dプリンターが再現する「極小の世界」!? 髪の毛の半分サイズのナノ彫刻が切りひらく近未来
様々に描かれてきたミクロな世界への想像力 2017年に公開された『ダウンサイズ』という映画をご存知だろうか? 舞台は近未来、人口爆発による資源不足、土地不足の問題を抱えた地球において危急の策として生み出された対策案、それは人間を極小化し、ミクロの街に住まわせるというものだった。「ダウンサイズ」と呼ばれるその技術は人間を13cmにまで縮小することができるもので、マット・デイモンが演じる主人公もまた、試験的に設計されたミクロの世界への移住を決める。全てがダウンサイズされた不思議な世界を舞台に展開していくこの物語は、その後、誰もが驚く予想外の結末を迎えることになるのだが…、ネタバレは避けよう。いずれにせよ、映像上で再現されたミクロ世界はなんとも生々しく、ああ、こんな未来もありえるのかもな、と他人事ではない気持ちにさせられたものである。 この手の想像力がフィクションにおいて描かれることは実は少なくない。映画でいうと『ダウンサイズ』の他にも、ミクロ化した人間がカプセルに入って人間の身体を駆け巡る『インナースペース』(1987)や、ミクロ化した子供達がジャングルと化した自宅の庭を冒険する『ミクロキッズ』(1989)あたりがまず思い浮かぶところだ。あるいは日本人であれば何よりもまず藤子不二雄の名作漫画『ドラえもん』の未来道具の一つ「スモールライト」を連想するという方も多いかもしれない。 だいたい、人間の想像力というものは、宇宙か深海、巨大か極小へと飛躍しがちなものだ。特に極小の世界への憧れというのは根強いようで、海外などにいくと、路傍で米粒に極小の絵を描いて売っている芸人さんをちらほら見かけるし、仏教では古くから修行の一つとして米粒への写経が行われてきたとかこなかったとか。確かにそう考えてみると、小学校の理科の授業においても最も興奮したのは顕微鏡で微生物を眺めたとき(いや、一番はカエルの解剖か)だったというような気がしなくもない。 このように人間を蠱惑してやまない「小さな世界」なのだが、今、この「小さな世界」を作り出すナノ3Dプリント技術が、ネット上でにわかに注目を集めているのだ。 実寸比52万分の1の超極小「戦艦大和」が話題に 発端となったのは、ツイッターにて金属部品メーカー・キャステムが運営するものづくりスペース「京都LiQビル」の公式アカウントが投稿したこちらの写真だ。 これが…コレ‼️👀#ナノ3Dプリンタ で印刷した #戦艦大和 ⚓️✨ pic.twitter.com/gxMpwsTHPx — キャステム京都LiQ【公式】Youtube始めました! (@castem_liq)...
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人気おもちゃの3Dデータを無料公開!? 大量生産大量消費を3Dプリンターが抑制する
「SDGs」から考える3Dプリンター 大量生産大量消費をベースとした生活がもはや限界にきている。 そう言われるようになって久しい。最近ではSDGsという言葉も注目を集めている。これは「持続可能な開発目標」を意味する言葉だ。背景には20世紀を通じて行われてきた産業発展のための環境破壊、資源の無駄遣いへの反省があり、環境を不必要に圧迫することのない新しい開発モデル、産業モデルが、今この「SDGs」という言葉を一つの掛け声に世界中で模索されている。 しかし、そうとはいえ、なかなか私たちの暮らしを根本から変えることは難しい。「ものを大事に」とは言うものの、ものは使っていれば壊れるし、素材、造形が複雑化した商品が多い今日では、自宅で簡単に修理できるような商品自体がそもそも少ないということもある。 あるいは、同じ商品を長く使われすぎてしまうと、製造メーカーが困ってしまう。商品のモデルチェンジは技術変革によってのみ起こるものではなく、企業が従業員に給料を支払い、経営を持続していく上での必要から起こるものでもあるのだ。 すると結局、大量生産大量消費社会は続いていく。しかし、そのような形を続けていく限り、地球環境はますます悪化していってしまい、いずれは私たち自身の首を締めることになる。これは負のスパイラルだ。 こうした事態をブレイクスルーするための技術として、ここ10年、注目を集めているテクノロジーが3Dプリンターである。 言うまでもなく、3Dプリンターとは3次元の立体物をプリントすることができるプリンターである。すでに製造の現場には3Dプリンターが広く導入されており、個人、企業を問わず「ものつくり」のあり方を大きく変えつつあるが、この3Dプリンターがより普及することで、大量生産大量消費時代を終わらせることができるかもしれない、とも言われているのだ。 3Dデータ販売を通じた究極のオンデマンド生産 工業型の大量生産は、基本的に需要を超えて生産される。言ってしまえば、余分に多く作っておくことで、欠品を防ごうとする。すると当然、売れ残りが生じ、それらはやがて廃棄されることになる。必要を超えて作ることは資源の無駄遣いであり、さらにその余ったものを捨てるとなれば、その廃棄物がさらに環境へと負荷をかけることになる。まさに不合理なシステムだ。 その点、3Dプリンターであれば、必要なものを必要なときに必要なぶんだけプリントすることができる。あるいは、商品を「もの」としてではなくデータで販売することができれば、そもそも在庫という概念がなくなる。消費者が欲しい時に欲しいもののデータを購入して自宅で出力する。必要最低限の資源で、必要最低限な「もの」だけ作られる、そんな究極のオンデマンド生産が実現するかもしれないのだ。 これこそが3Dプリンターが大量生産大量消費時代を変えると言われている所以の一つなのだが、ただ、まだこの究極のオンデマンド体制が実現しているかといえば、そうでもない。商品のデータ形式による販売についても実践している企業はごくわずかだ。しかし、状況は徐々にだとしても動きつつある。 皮肉にもそのきっかけとなっているのは、今まさに猛威を振るっているCOVID-19のパンデミックだ。感染拡大を防ぐための人の移動や物流の制限は、各国の医療現場における医療器具不足を引き起こした。そんな中、不足している医療器具をそれぞれの現場で供給できるように、3Dプリンターの無料データがネット上で次々に公開されたのである。 公開されたデータは、たとえば、防護用のフェースシールド、マスク、人工呼吸器の部品、注射器のプランジャーなどで、いずれも医療現場に欠かせない器具である。それらを現場で出力するためのデータが各メーカー、各研究所、あるいは個人によって作成、拡散されたことによって、実際に現場は大いに救われたそうだ。これは3Dプリンターの可能性を、世の中に広く周知するきっかけになった。 物流にもエネルギーが必要だ。あるいは配達員などのエッセンシャルワーカーへの過剰な負担も今回のパンデミックであらためて問題となった。商品のデータ移動による地産地消の仕組みは、そうした観点からも合理的である。今後、拡充していくことはほぼ間違いないだろう。 壊れたおもちゃのパーツの3Dデータを無償提供...
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3Dプリンターが可能にする未来のアンチエイジング! シワやシミの悩みを解決する最先端の人工皮膚とは?
人工皮膚をハンディデバイスで3Dプリント 礼に始まり礼に終わる。どうも、合氣道初段、SK広報のエリナです、おすおすっ! これまで建築、医療、食、ファッション、芸術など、様々な分野における3Dプリンターの活躍を紹介してきたが、なんと今、美容業界でもアンチエイジングの部門において、3Dプリンターが革新的な技術を提供しつつあるらしい。 その気になる技術の名は3Dスキンプリンター。これはトロント大学の研究チームによって開発されたもののようで、その名の通り、スキン=皮膚を3Dプリントしてくれる技術とのことだ。この印刷された3Dスキンを顔に重ねれば、シワ取り手術やシミ取りレーザーなどを一切経ることなく、すでにある皮膚に一層、皮膚を追加する形でシワ、シミを隠せてしまうということらしい。 携帯型3Dスキンプリンター / Wonderfulengineering.com 使われるデバイスも携帯型で重量は1キロ未満。いわば皮膚に塗りつけるような形で、新しい皮膚を手にできるのである。 しかし、元々は美容目的ではなく、火傷の治療などの目的で開発された技術らしい。素材にはバイオインクが使われており、ようは患部に貼るテープの代わりとなる、人工皮膚のシートを刷り出してくれるということだ。まだ実験段階で救命現場では導入されていないようだが、これが手術室で使われるようになれば救命現場に革命をもたらすとも言われている。 (出典:University of Tronto) この3Dスキンプリンターは、重傷を負った人の命を救い、傷跡を隠し、さらには美容技術にも転用しうるという、夢のような技術なのだ。 近未来の「美」の鍵は3Dプリンターにこそある しかし、実を言うと、この技術が開発、発表されたのは2018年のこと。それから2年が経ち、この人工3Dスキン技術はさらなる発展を遂げているらしい。メディア「Forbes」がその最新技術について紹介しているので、内容を追ってみよう。(https://forbesjapan.com/articles/detail/33453/1/1/1) 新技術の開発を行っているのはアメリカのレンセラー工科大学。ここの研究チームでは、「生きた皮膚」の3D印刷が研究されている。記事によれば、研究チームでは「生体材料を使ったインクを結合し、移植用の皮膚を形成し、患者の肌に合わせて貼り付ける」ということらしい。 さらに、人工皮膚ではないが、このプリント技術を駆使して世界の「P&G」が、インクジェットプリンター「オプト」を開発、2020年内に発売されることをForbesは伝えている。...
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注目すべき3Dプリンターアートを厳選紹介── オラファー・エリアソンからろくでなし子まで
礼に始まり礼に終わる。どうも、合氣道初段、SK広報のエリナです、おすおすっ! 3Dプリンターはアートの世界でも大きく活用されている。今回は、いま最も注目すべき3Dプリンターを使用したアーティストとその作品を、自称アートファンの私が厳選して紹介してみたい。 1.オラファー・エリアソン まず、紹介したいのは今まさに東京都現代美術館で2020年に開催された展覧会「ときに川は橋となる」が話題となった世界的アーティストであるオラファー・エリアソンさんだ。 自然との共生、サステナビリティなどのテーマのもと、光や水などの自然現象を取り込んだ大胆な作品で知られるオラファーさんは、同時に最先端科学に対しても常に敏感に反応し、制作に取り入れてきたことでも知られる。 当然、3Dプリンターも例外じゃない。たとえば、今回の展覧会ではアイスランドの海岸に打ち上げられた氷河の氷をスキャンし、3Dプリンターで再現したという模型が展示されている。実はオラファーさんは以前、グリーンランドから取り出した本物の巨大な氷をロンドンの市街地に複数持ち込み、通行人達にそれが溶けていく様子を見せることで地球温暖化に対する問題提起を行うといった作品も発表したことがある。 今回は3Dプリンターによる再現ではあったが、展示を見た感想としては、見事な造形力のおかげで本物に勝るとも劣らない迫力となっていて、「氷」の放つメッセージについて深く考えさせられた。 いずれにしても、オラファー・エリアソンさんは今最も注目されているアーティストの一人、注目しておいて損はないはずだ! 2.AKI INOMATA 続いては日本の若手アーティスト、AKI INOMATAさんを紹介する。INOMATAさんは人間と動物、人間と異種との関係性をテーマにした作品で知られる作家さんで、たとえば、自分の愛犬の毛で作った毛皮のコートを自分が纏い、一方の愛犬には自分の切った髪の毛で作ったコートを纏わせるというような、非常に面白い作品を作っている。 ...
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ケンタッキーが地球の未来を救う!? 3Dプリント・ナゲットは切迫した食糧問題のソリューションとなるか?
KFCが動物性たんぱく質から作る3Dプリント・ナゲットを開発中 礼に始まり礼に終わる。どうも、合氣道初段、SK広報のエリナです、おすおすっ! バイオ3Dプリンターによる食用人工肉プリンティングの先端情報については、SK本舗でも以前から関心を持って取り上げてきた。まだまだ一般化には至っていないものの、その精度の向上は日進月歩。昨年にはイスラエルのアレフ・ファームズ社が宇宙空間での人工肉の培養に成功して話題となったが、バイオ3Dプリンターでの人工肉プリントが一般化すれば、一般家庭においても、必要な時、必要な分だけ、肉をプリントできる日が来るかもしれない。 そうした期待が渦巻く中、この度、ついにあの大手ファストフード・フランチャイズであるケンタッキーフライドチキン(KFC)が、3Dプリントでのナゲットのプリントテストを始めていることを発表 した。 画像引用:KFC KFCによれば、 ロシアのバイオ3Dプリントの研究開発機関である3D Bioprinting Solutionsとの協力のもと、現在、3Dプリント・ナゲットの開発が進められているという。フライドチキンの代名詞的な存在であるKFCだ。当然、生半可なものは作れないだろう。目指されているのは、本物の鶏肉の食感と味の再現である。 以前ご紹介したイスラエルのベンチャー「Redefine Meat」社のバイオプリント人工肉や、Novameatの「Steak.2.0」などは、いずれも主に植物性タンパク質を合成し、肉そっくりの食感を再現することを目指したものだった。しかし、どうやらKFCは動物性タンパク質を使用している らしい。 画像引用:Redefine Meat すると本来、バイオ3Dプリント人工肉技術が見据えている食糧問題のソリューションには繋がらないのではないか、とも思ってしまうが、KFCによれば、たとえ動物性タンパク質を使用していても、従来の鶏肉からの生産より環境に優しい商品になるそうだ。また、従来よりも少ない添加物で作ることができるため、食べる人の健康にとってもクリーンな食品になるらしい。 チキンといえば、今年の4月に中国のマクドナルトが「5Gチキン」を発表して話題となった。結局それは中国マクドナルドのちょっとしたジョークで、実際に5G技術で作られたチキンが存在したわけではなかったのだが、KFCの方はどうやら本気の様子。詳細はまだ不明とはいえ、来年にも店頭に並び始めるのではないだろうかと期待している。 環境に優しい「肉食」のあり方とは何か ところで、いまや「環境に優しい」はマーケティングにおいて欠かせない要素だ。さすがはKFC、時代の空気を敏感に捉えているその嗅覚が素晴らしい。 実際、2050年に世界人口は約93億人まで増えるということが予想されている。そうなった時、仮に人類の全員が現在のアメリカ風の肉中心の食生活をした場合、2014年に生産された肉の約4.5倍が必要になると言われている のだ。もともと肉食というのは経済効率が非常に悪く、たった1kgの(ケンタッキーはチキンだが)牛肉を育てるためにも、牛に与える食物は13kg、水は14000ℓが必要とされる。 ...
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3Dプリンター製のロケットが2023年に打ち上げ!? 銀河を開拓する3Dプリンティング最前線
宇宙開発の可能性とリスク 礼に始まり礼に終わる。どうも、合氣道初段、SK広報のエリナです、おすおすっ!! 人類にとって最後にして最大の秘境と言えば他でもない宇宙だ。映画監督スタンリー・キューブリックの1968年における未来予測では、2001年には私たちは宇宙空間を自在に旅して、月面でモノリスに接触しているはずだったが、すでに2020年となっている現在、いまだ私たちが気楽に宇宙旅行に出かける状況にはなっていない。 とはいえ、人類は宇宙への夢を捨てたわけではない。数十年で人口が100億人を超えると言われている今日、手狭になった地球とは別に居住地となる惑星を探すという意味でも、宇宙開発はたえず進行している。あるいは、宇宙旅行という夢についてもZOZOの元代表の前澤友作さんが「月旅行」のスターシップへの搭乗権を獲得したように、遅ればせながらも少しずつ、キューブリックの思い描いた未来へと近づいていってはいる。 もちろん、宇宙開発といったときにリスクもある。かつてコロンブスが世界中に天然痘を持ち運び故郷ヨーロッパへは梅毒を持ち帰ったように、宇宙空間には未知なる危険なウイルスや細菌が存在している可能性だってある。未知への挑戦は、そうした生態系を撹乱し、地球に新たなリスクを呼び込む可能性とも常に背中合わせなのだ。 こうした危険を認識しつつ、またそこに対して十分に気をつけながら、宇宙開発、研究は積極的に行っていって欲しいものだ。その上でも3Dプリンターが今、大活躍しようとしているので今回はその最前線を紹介したい 。 「Relativity Space」の挑戦 たとえば、アメリカのロケットベンチャーである「Relativity Space」が先月6月に、衛星通信会社のイリジウムから最大6回の打ち上げ契約を受注したことを発表 している。宇宙開発評論家の鳥嶋真也氏がこれについて記事を纏めているため、ここでも少しその内容を追ってみよう。 「Relativity Space」とイリジウムは2023年以降に6回以上のロケットの打ち上げを予定しているらしい。しかし、日々ロケットが打ち上げられている今日では、それ自体は特筆すべきことではない。「Relativity Space」が今、業界内で注目をされているのは、「Relativity Space」が3Dプリンターでロケットを丸ごと製造することを目指している という点においてなのだ。 「Relativity Space」は2015年に設立したばかりのスタートアップで、20代の若手エンジニアであるティム・エリスと、ジョーダン・ヌーンの2名によって立ち上げられた。実は「Relativity Space」以前にも3Dプリンターは宇宙分野で導入されてきていたのだが、それらはいずれもロケットの部品のプリントレベルにとどまっていた。そこに「Relativity Space」が登場し、ロケットを丸々3Dプリンターで出力してしまおうという大胆なプロジェクトを立ち上げたのだから、3Dプリンター業界も宇宙業界も大注目だろう。 ...
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3Dプリンターは本当に地球環境を救うのか? サステナブルな社会を作るための技術革新とは?
地球環境は限界寸前 気候温暖化が進行している。北極では観測史上初の20℃以上を観測しており、昨年の日本の夏の最高気温は沖縄を除くすべての都道府県で40度以上を記録している。毎年、記録的な規模の台風が猛威を振るっている。温暖化についての見解は様々とはいえ、体感的にも何らかの気候変動が起こっているということについては否定しえないリアリティがある。2019年には環境保護を訴えるグレタ・トゥーンベリの存在も話題になった。この問題においては誰しもが当事者であり、地球の一員として無視することはできない。背景には近代資本主義以降の産業構造がある。大量生産大量消費。エネルギーの過剰な使用。森林面積は毎年、日本の国土面積の2割程度ずつ減少している。一方で地球人口は20世紀頭から数倍に増え、今も増加の一途を辿っている。 人間がこれまでと同様の暮らしを続け、エネルギーを消費し続ければ、環境はもはや致命的に破壊されてしまう。しかし、環境保全のために全員が引きこもってしまったら世界の動きそのものが止まってしまう。この未曾有の困難に解決策はあるのか。テクノロジーの革新が鍵だ。3Dプリンターは元来、無駄な生産、無駄な消費を減少させる可能性を持ったテクノロジーだ。しかし、実際のところ、3Dプリンターはどれくらいエコロジーに役立っているのだろうか。というわけで、今日は、3Dプリンターとエコロジーに関して、最新の情報を紹介したい。そして「3Dプリンターは本当に地球環境を救うことができるのか」ということについても、少し考察してみようと思う。 使用済み油を用いた土に還る「優しいレジン」が登場 さて、まずはウェブメディアGIZMODOが紹介していたこちらのニュースを取り上げよう。 マクドナルドの使用済み油、エコな3Dプリント素材に。土に還るしコストも安いしhttps://www.gizmodo.jp/2020/02/mcdonalds-fry-oil-3d-print-resin.html なんでも北米カナダはトロント大学の研究チームが、使用済み油を加工して、3Dプリンタで使えるレジンに変身させる技術を編み出したそうだ。記事によるとトロント大学スカボロ校のアンドレ・シンプソン教授が、市販の3Dプリンター用レジンの原料の分子が、料理油の脂肪分子と構造が近似しているということを発見したとある。使用済み油と言えば下水詰まりの原因の一つ。あるいは廃棄も大変であり、家庭の悩みの一つとして知られる。しかし現代では毎日大量の油が消費されてる。その使用済み油をレジンに変身させてリサイクルするというのだから、これは実にエコな話だろう。 Don Campbell 実は油の生産においても生態系が乱されているということはあまり知られていない。ファストフードなどでよく使われているパーム油の乱獲は現在オランウータンを絶滅に追い込もうとしている。パーム油は主にアブラヤシという木から取れるのだが、このアブラヤシの原生林はマレーシアのボルネオ島にしかなく、このボルネオ島は数少ないオランウータンの生息地としても知られている。現在、このアブラヤシの伐採によりオランウータンが絶滅に瀕しているのだ。由々しき問題である。この一例をとっても油を無駄遣いすることはできない。使う量を控えるというだけではなく、貴重な油ならば使用後もちゃんとリサイクルしたいところだ。この使用済み油をレジンに変換するという研究に関し、まず手をあげたのは世界第2位の規模を誇るファーストフードチェーンであるマクドナルドだったらしい。大手が名乗りを上げたことで、今後のこの技術が普及していくことは、間違いないだろう。どうやら油1リットルにつき420ミリリットルのレジンが作れるらしい。さらにこのレジンは生分解性があるそうで、土に埋めれば微生物の働きによって2週間ほどでその20%が分解されるとのこと。最近はこの「土に還る」ということが、世界的な関心を集めている。以前にも、土に埋めれば12週間で完全に生分解されるTシャツが発売され、話題になっていた。 【WIRED】そのTシャツは“植物”からつくられ、わずか12週間で土に還る 今後、このようにエコロジーの観点を取り入れたレジンが続々と出てくるかもしれない。SK本舗としても、エコを意識した開発を試みていきたいところだ。 世界の飲み水不足を3Dプリンターが救う 3Dプリンターが活躍するのはリサイクルにおいてだけではない。実は、世界の飲料水不足を3Dプリンターが解決するかもしれないと言われている。現在、地球上の水のうち、飲用可能な汚染されてない水は1%未満と言われている。このことから発展途上国では清潔な飲料水が恒常的に不足している。人間にとって水はライフライン。人口は爆発してるのに飲み水が足りないというのはとても深刻な事態である。そこで3Dプリンターが活躍する。実はすでに米国エネルギー省とゼネラルエレクトリックが、3Dプリンターを使用した新たなる淡水化技術プログラムにおいて提携している。なんでも、ゼネラルエレクトリックは、3Dプリントされたタービンを使って空気、塩、水を圧縮し「過冷却ループ」なるものを形成する計画しているようだ。凍結すると塩が氷から分離する性質を利用し、最終的に融解することで飲料水を作ろうということらしい。...
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「STL」時代はあと5年で終了? 次世代の3Dデータファイル形式はどれか!?
2020年代に注目すべき3Dデータファイル形式 今回はちょっと3Dデータのファイル形式について話そう。ファイル形式とは何か。3Dプリンターで何かを出力するときにはまず3Dデータが必要だ。ファイル形式とは、そのデータの種類のことである。一般のデジタル画像における「jpg」などの拡張子を思い浮かべてくれれば良い。3Dデータの拡張子には様々な種類がある。VRML、AMF、X3D、FBX、IGES、STEP、iges、stl、obj、3ds、wrl、fbx、ply、3MF……枚挙すればキリがないが、ではどの形式を使えば良いのだろうか。それぞれに良い点、悪い点がある。あるいはどんなデータを作成したいかによっても、使うべきファイル形式は変わってくる。とはいえ、膨大な種類のファイル形式から、それぞれが自由に選ぶというのもあんまりだ。そこで今回は現在、そしてこれから最も注目すべき、4つのファイル形式について紹介しようと思う。 なぜデータ形式が様々あるのか? そもそも、なぜデータ形式が様々あるのかという点を、少しだけ解説しておきたい。3DデータにはCADモデルからプリンターへと送られる情報が格納されている。CADというのは、モデリングソフトのことであり、つまり、CADで作った3Dデータの情報を3Dプリンターに送ることで、初めて出力が始まるのだ。ただ、それらの3Dデータには、すべての種類の情報が保持できているわけではない。たとえば、単一の素材、単一の色で印刷する場合と、複数の素材、複数の色で印刷する場合とでは、情報の種類や量が違う。あるいは、より複雑で精密なミクロレベルまでこだわったデータを作ろうとすれば、情報量だって普通のデータより圧倒的に多くなる。それぞれのデータ形式には強みと弱みがあり、たとえば単一マテリアルの割と単純な構造のデータを得意としているデータ形式があれば、逆に複数マテリアルの複雑な構造のデータを得意としているデータ形式もあるのだ。このように書くと「複雑なことができるデータ形式なら、単純なこともできそうなものだけど」と思われるかもしれない。理屈としてはそうなる。ただ、複雑なデータに対応するためには、仕組み自体を複雑化する必要があり、ようするにデータ制作の難易度が全体的にあがってしまったり、あるいはデータ自体が脆くなってしまったりもするのだ。単純だけど制作が簡単で頑丈か、複雑だけど制作が難解で繊細か、ざっくりと言えば、そういう選択になる。あるいは、いかに優秀なデータ形式であっても、CADソフトウェアにサポートされていないと、結局、使われないし、使いにくいという問題もある。形式に合わせてソフトウェアを買い換える必要があったり、あるいはデータを他の人とやりとりする上でも、あまり普及していないデータ形式の場合、対応が難しいというもんだもある。これも音声データの形式などを思い浮かべてくれれば良いと思う。そこでここでは、今触れたような普及度、あるいは普及可能性なども加味しつつ、現在、そして近い将来において3Dプリント業界で活躍するだろう4つの形式を紹介したい。 3Dデータ形式のJPEG的存在「STL」 ではまず最も注目すべき4つのファイル形式の1つめから紹介しよう。「STL」だ。 普及度で言えばダントツ1位、3Dデータ形式のJPEG的存在、それが「STL」だ。おそらくSK本舗のユーザーさんの間でも、この「STL」を主に使用しているという方が多いんじゃないだろうか。なんせ歴史が長い。開発したのはChuck Hullさんという人で、1987年に3Dシステムズで最初の3Dプリンターを開発した、この業界の立役者の一人だ。彼が同時に「STL」という形式を作り、以来、30年間、3Dプリント業界のファイル形式のスタンダードであり続けてる。しかし、一方で30年という月日で3Dプリンター技術は大いに進歩し、変容している。そうした背景のもと、「STL」限界説というのも、ずっと囁かれ続けている。「STL」の基本的な仕様は初期のままなんだが、一方の3Dプリンターは日増しに進化している。ただ、それにもかかわらず、今日のほとんどの3Dプリンティングにおいては未だ、ソフトウェアにおいて圧倒的なサポートを受けているこの「STL」を使用し続けている。そろそろ切り替え時期じゃないか、というわけだ。現状、兌換性も高く、使いやすさにおいても優れている。「STL」はテッセレーションと呼ばれるとても単純なアプローチで3Dモデルのジオメトリを保存している。ただ、それは制作を簡易化している反面、ミクロンレベルの精度には対応がしきれない。使いやすさと精密度が、ここではトレードオフの関係になっているわけだ。あともう一つ、「STL」には大きな問題がある。今後、3Dプリント業界ではおそらくマルチカラー化が進行していくと予測されているが、「STL」形式においてはこの色情報を保存することができない。つまり、単色プリントにしか対応してないのだ。とはいえ、この先5年くらいはまだ「STL」のシェアは大きなものであり続けるだろうとも予測されてる。その後はちょっと厳しいのではないか、というのが大方の見立てだ。すると気になるのは、次世代の3Dデータ形式の王者はどれなのか、ということ。以下ではその可能性を秘めた3つの形式を紹介したい。 色情報も素材情報も保存可能な「OBJ」 次の時代の覇権的拡張子の候補として、まず注目したいのは「OBJ」だ。 この「OBJ」が「STL」に対してもつ強み、それはなんといっても複数の色や素材を使用したデータを保存できるということだろう。先述したように、今後、3Dプリント業界のマルチマテリアル化、マルチカラー化が進んでいくことは間違いない。「OBJ」はそうした変化に対応しているのだ。ただ、同じような属性を持った形式を持った拡張子は他にも存在する。その中で、「OBJ」が目立っているのはオープンソースライセンスと、シンプルさの二つだ。このオープンソースという点がポイントで、オープンソースにしたことでCADメーカーが取り入れやすく、ライバルだったFBXやCOLLADAといった形式に対して、「OBJ」はその点で差をつけている。また、またその性能の高さから、航空宇宙産業や自動車産業ではすでに広く使用されている。しかし、欠点もある。やはり「STL」に比べるとデータ自体がかなり複雑なのだ。壊れたOBJファイルを修復すると問題が発生しやすく、修復や編集のためのオンラインツールも少ない。現状ではやはりサポートしているCADも足りていないため、使うためにはプラグインを使用する必要があったりと、手間も多い。もちろん今後どうなるかはわからない。そして「OBJ」にはまだとてつもないライバルたちがいる。以下ではそのライバルたちを紹介する。 「STL2.0」と呼ばれた「AMF」の美点と難点 次なる覇権候補の二つ目は「AMF」だ。2011年に導入されたデータ形式で、当時は「STL2.0」なんて呼ばれてもいた。「AMF」はそもそもの開発目的が「STL」の欠点に対処するというところからスタートしていた。処理速度の遅さ、エラーの多さ、カラーやマテリアル情報が保存できない点、などなど、こうした「STL」の諸問題を全て解決することを目的に発表された形式が「AMF」だった。実際に全ての技術的な面で「STL」よりも優れていて、まさに「STL」の大規模アップデート版と言って差し支えない。こう書くと次の覇権は「AMF」で決まりだと思われるかもしれない。なぜなら、色や素材もカバーしてて、他の面でも「STL」より優秀なのだから。しかし、「AMF」の失敗は、その性能じゃなく、展開にあった。技術的には優れているのだが、2011年のタイミングでは、まだマルチカラーやマルチ素材の必要性も薄く、「STL」で十分という雰囲気が強かった。それゆえ、各種ソフトウェアは「AMF」の採用に消極的だった。結果、これだけのハイクオリティな形式にもかかわらず、普及率に関して出遅れてしまったのだ。なら今から導入すればいいじゃないか。そう思ってしまうが、ここに第三の次世代覇権候補が登場するんだ。その名も「3MF」だ。 マイクロソフトの最終兵器「3MF」 この「3MF」を開発したのは、何を隠そう、あのマイクロソフトである。「3MF」は「AMF」とは異なり、その開発を少数の専門家に委ねるのではなく、業界のビッグネームたちをごそっと巻き込んで、大きなコンソーシアムを設立する形で行った。その結果、業界の関心は一気に「3MF」に向かっていくことになった。開発段階で3Dプリント業界の主要業界を巻き込んでいた、というのは宣伝の面でも大きい。当然、採用されるスピードも早く、現状ではまだ十分には広がってないが時間の問題だと言えるだろう。そしてもちろん、トップ技術者たちが開発したものだから、性能も優れてる。正直なところ、現状ではこの「3MF」が一馬身抜けてる感じはある。ただ、マイクロソフト社には権利問題などで悪い噂も多く、今後どうなるかは果たしてわからない。要約すると、「STL」帝国があと5年ほどでおそらく崩壊して、「OBJ」「AMF」「3MF」の三國時代による戦国の世がやってくるということ。あるいは小さなダークホース的拡張子はまだまだ存在する。皆さんももしかしたら早めに脱「STL」の準備を進めておいた方がいいのかもしれない。
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「Nova Meat」が開発する3Dプリント人工ステーキ「Steak 2.0」とは?
私たちは肉食を諦めなければならないのか 今日、地球環境に対しては様々な警鐘が鳴らされているが、その中でも最も注目されているのが気候温暖化だ。この気候温暖化の原因になっているものの一つに畜産業がある。実に現在発生している温暖化ガスの20%がこの畜産によって発生していると言われているのだ。お肉は美味しい。筆者もまたお肉なしでは生きていけない体だ。しかし、とはいえ、環境破壊も食い止めなければいけない。なんせお肉を美味しく食べるためには、まずもって生きている必要があり、生きていける環境が必要だからだ。では、どうすればいいのか。私たちは肉食をもう諦めなければならないのか。このどん詰まりを救済しようとしているのが3Dプリント人工肉だ、ということについては、以前にも別の記事でredifine meetの3Dプリント代替肉を紹介したことがある。ただ、この問題に取り組んでいるのはredifine meetだけではない。今回は、また違う取り組みを紹介してみよう。 見た目、食感ともに精巧な代替肉ステーキ「Steak 2.0」 今回、取り上げたいのはスペインのバルセロナに設立されたスタートアップ「Nova Meat」という会社だ。その「Nova Meat」がバイオ3Dプリンターを使って、見た目、食感ともに精巧な代替肉ステーキ「Steak 2.0」を開発したらしい。 CEOのギャスパー・サイオンティさんは組織工学分野の科学者であり、この「Steak 2.0」ではそうした先端科学、特に動物の細胞組織に似た組織を作る技術を応用する形で、代替肉を作成したらしい。材料となっているのはエンドウ豆や海藻、ビートルートの絞り汁など。Nova Meatの技術は、“顕微鏡レベルで植物由来のタンパク質の構造を微調整することができ、ビーフステーキ、鶏胸肉、マグロステーキなどの動物肉の質感、外観、栄養および感覚特性を模倣する”ことが目指されている。つまり、厳密には「お肉」ではない。しかし、見た目、質感まで精巧に再現されており、食べる側としては「お肉」でしかないという。もとより大豆は「畑の肉」とも呼ばれるほどタンパク質が豊富だが、今回はそうした栄養面を維持しつつ、食感などではリアルな「お肉」感を再現している。 (画像引用)Nova Meat さらに優れているのは費用だ。現状、生産費用は50gあたり1.5ドルほど。かなりお手頃な値段だと言える。サイオンティさんいわく、この「Steak 2.0」は、これまでに開発された人工肉の中でも、最も現実的な植物をベースにしたステーキになっているとのことだ。 レストランやスーパーへの導入はいつから? さて、一体どこでそれが食べれるのか?...
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メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!? 人類と住宅の「新しい物語」とは?
家を作るなら3Dプリンターが当たり前の時代? 3Dプリンターで出力された住宅街が誕生するらしい。2020年の1月にそのニュースを報道していたのはアメリカの報道メディア「CNN」だ。CNNによれば、なんでもメキシコの貧しい農村地帯で3Dプリンターで作った住宅が2棟、完成したらしい。実はこのプロジェクトは、なんらかの理由によって適切な住居を持たない人たちが住める場所を作ろうというところから始まったものらしい。実際、この作られた家に入居予定の人たちは災害多発地域で安定した居住環境を得られていない家族らしい。プロジェクトを行なっているのはアメリカのカリフォルニアを拠点とする非営利団体の「ニューストーリー」というところで、これまで2000棟以上の3Dプリンター仮設住宅の建築に取り組んできたらしい。 (写真:ニューストーリー) CNNの記事によるとアメリカ南西部を思わせるデザインで、壁は丸みを帯びているそうだ。広さは約46平米。寝室2つ、浴室1つ、もちろんリビングやキッチンも完備とのことだ。寝室が2つあったら子供部屋も作られて家族でも住める。なんでも今回のプロジェクトのために「バルカン2」という巨大3Dプリンターが作られたみたいなんだが、これは2棟の家を同時にプリントできるらしい。しかも、建設にかかる時間も48時間と僅かだ。今回の最新住宅の費用についてはまだ検討中とのことだが、これまで「ニューストーリー」が建ててきた家は約40万~70万あたりだったようだ。「ニューストーリー」の代表者も、3Dプリンティング技術は、住宅ソリューションの実現において、人類の最高の希望になるって語っている。 (写真:ニューストーリー) 世界中で進展している「住宅革命」 もちろん、「ニューストーリー」以外でも、様々な取り組みが行われている。たとえばイタリアではライス・ハウス(米の家)と呼ばれる円柱型の家「GAIA」というものも建てられてるんだが、これなんと原材料が土や藁など、現地で手配できる天然資源なんだそうだ。いわば、究極の地産地消である。 ライスハウス(写真:GAIA) 以前に3Dプリンター橋の回でも説明したように、3Dプリンターで建造物を作ることは、単にスピーディーでコストが安いというだけではない。手作業であれば本来難しい造形なども3Dプリンターであれば可能になる。人々や環境に優しいだけではなく、まったく新しい創造性を生み出しているという点も見逃せない。日本はこの動きに関してはこれまでは少し出遅れていたが、日本のゼネコンも、3Dプリンターを使った建築にようやく本腰を入れ始めているらしい。災害の多い日本の建築基準をクリアする家を3Dプリンタデ作れるようになった暁には、もしかすると世界一安全な3Dプリント住宅が日本から生まれるかもしれない。世界では住宅の3Dプリント化が日進月歩で進んでいる。これまで3Dプリントフード、3Dプリンターによる靴や洋服の製作についても記事にしてきたが、3Dプリンターが引き起こすのは「ものつくり」革命にとどまるものではなく、私たちの「衣食住」の大革命でもあるということだろう。 ちなみに「ニューストーリ」は2020年末までに50棟の家をバルカン2で作ると発表している。まさに住宅の、いや、人類の「新しい物語」が始まろうとしている。
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ハゲに悩む時代はもう終わり!? 3Dプリンターと幹細胞が引き起こす頭髪革命
男性の悲願「ハゲの完全克服」 3Dプリンターが、多くの男性にとっての悲願である「ハゲの完全克服」を可能にするかもしれないらしい。今回はその新しい技術について紹介する。もちろん、「ハゲの克服」が可能になると言ったからって、筆者(女性)は現状でハゲの方も素敵だと思ってはいる。薄毛の方でも素敵な方は多い。ブルース・ウィリスとか、ジェイソン・ステイサム、ジュード・ロウ…………、もちろん日本人でもかっこいいハゲの人はいるだろう。 渡辺謙さん、KEN WATANABE、映画「ラストサムライ」の勝元役の人…………。とはいえ、現状において「ハゲ」や「薄毛」に悩んでいる方は多くいるはずだ。だからこそ、この最新技術によって、注目が集まっているのだ。 ハゲ治療のこれまで さて、まずはこれまでのハゲ治療を振り返ってみたい。世界中、これほどにハゲに悩んでる方が多いにもかかわらず、実は今のところ、抜本的なハゲの克服技術というのは存在していない。アポロが月面に上陸してもう何十年と経ってるのに、クローン羊のドリーが登場してからすでに四半世紀が経つのに、人類はまだハゲを超えることはできずにいるのだ。しかし、進化はしてきた。特にハゲ界において最大のエポックメイキングな出来事といえば、90年代に開発された抗アンドロゲン薬「フィナステリド」だろう。これは主に「プロペシア」という商品名で知られている薬で、ようはハゲの進行を止めると言われているのだ。 どうやら効果は相当にあるらしい。ただ、それなりに副作用もあり、またハゲの進行を遅らせてはくれるものの、すでに減った毛髪を増やす効果というのはあまり期待できないらしい。すでに薄毛が進行してしまってる場合で、なおかつそれを隠したいという場合の解決策としては、カツラをかぶるか、植毛手術を受けるか、というのがこれまでのスタンダードだったようだ。あるいは通販番組でよく見かける薄毛部分にフリカケ状の粉末を塗布する商品のようなものもある。頭にかけるとフサフサに見えるという触れ込みだ。あのCMはついつい見入ってしまうが、いずれにしても、あくまでも「ハゲ隠し」であって「ハゲの克服」ではなかった。また、もう一つ、「ハゲ」や「薄毛」をめぐっては、社会的な複雑さはある。この「ハゲ隠し」というのが、日本においては非常に評判が悪いというのもまたある。社会学者の須長史生さんという方が『ハゲを生きる』という本で、現在のハゲ差別には二種類あるということを指摘している。 須長史生『ハゲを生きる』 二種類の差別のうちの一つは「やーい、やーい、ハゲだー」と罵るような子供のいじめのようなもの。そしてもう一つは「ハゲは悪くない。でもハゲを隠そうとする精神はなんか好きじゃない」と、「ハゲ隠し」をする心理をからかうもの。日本で今ひとつカツラが浸透しない理由は、この二重の差別に由来する、と須長さんは分析している。ハゲたら潔く坊主頭にするのがいい、みたいな風潮は確かにあり、そう考えるとハゲや薄毛をめぐる状況はとても複雑だ。だからこそ、抜本的な解決が望まれてきたのである。 毛包移植と3Dバイオプリンター さて、本題に移ろう。3Dプリンターがハゲを克服するというのは、一体どういうことなのか? 発端は2012年、ある研究チームが、毛の生える幹細胞移植によって無毛のマウスに自然発毛させることに成功した。専門用語でいうと「毛包移植」というらしい。そこで3Dプリンターの出番だ。これら幹細胞技術と3Dプリンターを用いた最新の印刷技術を用いて、3Dプリンターで人間の毛髪を複製し、それを毛包ごと頭皮に植えていくという新しい移植技術が誕生したのである。 ハゲている人というのは頭皮の毛包が休眠状態に入っているらしいんだが、この毛包の元気なクローンを作成し、それごと移植するというわけだ。理論上は、その移植が果たされた場合、今後、その毛包から生えてきた毛はいかに抜いてもなんども生えかわってくる。実はこれまでの植毛技術においても、毛包の移植は試みられていたんだが、拒絶反応があったり、思った向きや形で毛が生えてこなかったりとトラブルが多かったらしい。そこで、毛の形を維持できる毛包の開発が求められていたんだが、現在、そのために提案されている方法が、人工の骨格を形成し、クローンとして作成された毛包の周囲に配置して直接毛髪の成長を助けるというものなんだ。細かいことはさておき、ようするに、形や向きの綺麗な髪の毛を再生する上で、幹細胞技術と3Dプリンターが大活躍してるというわけだ。たとえばコロンビア大学の皮膚科学教授であるアンジェラ・クリスティアーノ氏は、毛包と真皮乳頭を別々に皮膚上に移植するために、アメリカのゼリー菓子・ジェロのような型を、3Dプリンターを用いて出力することに成功している。この成功は「さまざまな種類の脱毛症や、慢性創傷などの内科的治療に変革を起こす」とも言われている。 ...
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アパレル業界の3Dプリンター「ホールガーメント横編機」が起こしたニット革命
環境にも優しいアパレル業界の3Dプリンター 冬に必需の衣料品のひとつにセーターがある。このセーターの製造に関して、人知れず静かな「革命」が起こっていたということをご存知だろうか。その革命の主役の名は「ホールガーメント横編機」。「アパレル業界の3Dプリンター」とも呼ばれているマシンだ。メカニズムは3Dプリンターとは異なるが、簡単に説明してしまうと、糸を素材に自動的に洋服を編み上げてくれる近未来の服作りマシンである。 ホールガーメント横編機においては裁断や縫い合わせまで全部マシンが担ってくれる。機械に糸を設置すれば、あとはプログラムに従って、完成品まで全てオートで制作してくれるのだ。これによって何が変わったのか。まず従来の服作りにおいて発生していた膨大な「無駄」をかなりの程度カットすることに成功した。ここでいう「無駄」とは裁ちクズのことである。たとえばセーターであれば原料に使用する糸の30%がこの裁ちクズとして無駄を作っていたし、ちょっと凝ったデザインのドレスなどになると、およそ50%が無駄になっていたらしい。これは料理で考えると、300gのお肉のうち150gをゴミ箱に捨ててきたみたいなものとも言える。言うまでもなくこれはもったいなく、無駄づかいである。特に2000年代頃よりファッション界では「エコラグジュアリー」という言葉も生まれている。ようするに、環境に優しく、なおかつファッショナブルである、ということが時代のトレンドでもあった。しかし、その実情はといえば、どうしても服作りにおいては膨大な無駄が発生してしまっていた。それを変えたのが、このホールガーメント横編機というわけだ。 裁ちクズは単に糸が無駄になるだけじゃなく、そうしたクズの廃棄焼却における二酸化炭素排出も問題にいなっていた。温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量のうち、およそ10%がアパレル業界によって排出されているというデータもある。つまり、生産の自動化は環境保護の観点からも重要だということだ。また、アパレルに関しては特に、ファストファッションブランドなどが先進国で商品を低価格で販売するために、発展途上国などの工場で服を作ることが一般化していた。こうした低賃金労働は非人道的だという指摘もあり、さらに発展途上国に工場を作れば、いずれその土地の経済が発展し、賃金が上がる。そのため、常に工場を移転し続けなければいけないという「チャイナプラスワン」問題も生んでいた。そうした他の諸国も工場が増えればいずれ賃金が上がる。だから、ファストファッションはいずれあの価格帯を維持することが不可能になるとも言われているのだ。そこに登場したのがホールガーメント横編機であり、まさにアパレル業界を刷新する技術革新として注目を集めている。では、果たしてこのホールガーメント横編機を開発したのは誰なのだろうか。実はそれはある日本人なのだ。 世界を変革する日本企業「SHIMA SEIKI」 ホールガーメント横編機の開発を行った企業は和歌山県にある編機メーカー「SHIMA SEIKI」(島精機製作所)。会長は島正博さんという方だ。 「SHIMA SEIKI」サイトにはホールガーメント横編機で作ったセーターの写真や動画があるが、いずれも可愛く、魅力的な仕上がりとなっている。その特徴はホールガーメントであるがゆえに縫い目がないということ。実はすでにユニクロの「3D KNIT」シリーズなどにも使われていて、多くの人が「SHIMA SEIKI」の服を身にまとっている。この島さんが起こした変革については、『アパレルに革命を起こした男』という本にも纏められてる。ホールガーメント横編機がもたらす環境負荷の低減や、労働問題の改善などについても詳しく纏められている。...
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3Dプリンターによるコンクリート革命が建築業界を塗り替える!? オランダの最先端研究に迫る
世界最長3Dプリンター橋をめぐって各国が競争 2019年9月、オランダで世界最長のコンクリート3Dプリンター橋が誕生した。まずは写真を見てみよう。これがオランダで作られた世界最大(2019年時点)のコンクリート3Dプリンター橋だ。 制作したのはオランダのデザイナーであるミシェル・ヴァン・デル・クレイとアイントホーフェン工科大学。なんでも国家的なプロジェクトでもあるらしく、今回は世界最長となる全長28mの3Dプリントコンクリート橋を完成させたということだ。今回はプリント施設Printfabriekを利用し39個の部品に分割造形された後、組立て作業を行なったという。いずれにしてもこの斬新な形状。圧巻である。 実はいま、この3Dプリンティングによるコンクリート橋をめぐっては各国が競い合うようにして建設している。2019年の1月には上海で、当時の最長となる3Dプリントコンクリート橋が設置されて話題になったばかりだ。 要するに、競い合うことで開発が活発化しているというわけであり、中でもそのトップにいるのがオランダというわけだ。今回の橋の建設もそうだが、実はその後にもまたさらなる進展がある。 3DコンクリートプリンティングでCO2排出量を削減 世界最長の橋が架けられた2019年9月、実はオランダに拠点を置く3Dプリンティング企業VerticoとGhent大学の二つの組織が力を合わせて、これまでにない超巨大規模でのコンクリートの印刷を成功させるというニュースもあった。 サイズとしては先ほど紹介した橋よりも小さい。しかし、ここで注目すべきは、これが分割ではない1回の出力によるもの、ということだ。この橋の製造にあたっては現在の最先端の新技術が導入されているんだが、この新技術ではコンクリートを一層ごとに堆積することで成型が行われている。今回はそれを今まで以上に大規模なサイズで試みたというわけだ。この成功によってコンクリート建築技術を来たるべき大転換へとまた一歩近づいたと言えるだろう。そもそも、これまでコンクリートで形を作る上ではまずコンクリートを流しこむ金型が必要とされてきた。液体を固めるには何か形を決める型が必要だ。身近な例でいうと、氷を作る時に使用する型などもそうだ。しかし、3Dプリンターによって堆積して成型が可能になったことで、その金型なしでもコンクリートを成型することができるようになった。つまり、単純に考えてもこれまで必要だった金型の作成という手順が省略され、作業工程が半分になったのだ。さらに、金型を経由しないことで、コンクリート構造体により多くの完成自由度がもたらされることになったらしく、今までは金型の特性上、技術的に難しかったような形状のコンクリートも、この方法によって作れることになった。実際、バーティコの創設者のVolker Ruitingaはプレスリリースで、「この橋は、3Dコンクリートプリンティングのさらなる可能性を示しています。バーティコでは、この技術が建築物の建造を最適化しCO2排出量を削減するとともに、建設業の生産性を向上させる鍵となると考えています」と述べている。 土木建築分野において、コンクリートの製造によって排出されてるCO2量は実に全体の4分の1を占めている。特にユニークな形や有機的な形状のコンクリート建築を作ろうとした場合、そこで生じる環境コストというのは非常に大きなものだった。この3Dプリント技術を通じたイノベーションによって、そこが大幅に削減されるとのことだ。バーティコ社は橋に続いてコンクリートのドームハウスの3Dプリントに取り組んでいる。いずれにしても3Dプリント技術がコンクリート業界を刷新することは間違いない。
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味気ない老人食をカラフルに! 3Dプリンターによって老後の食生活が一変する!?
高齢者や要介護者のためのフードプロジェクト 飽食の時代と言われる昨今ではあるが、なんでもお腹いっぱい食べれるというのも若さの特権だ。大好きなものを思う存分食べることができると言うのは、健康な臓器があり、歯とあごが丈夫な若いうちだからこそ。年齢とともに徐々に筋肉が弱っていったら、たとえば硬い肉などはそうそう噛みきれなくなる。それゆえ、噛みやすさ、飲み込みやすさを追求した老人食というものは否応なしに「味気なく」なってしまう。しかし、そうした老人食の味気なさが、3Dプリンターによって彩り豊かなものに変わりつつあることをご存知だろうか。実はもう何年も前から「3Dフードプリンターが老人食を変える」というのは言われてきている。2014年には高齢者や要介護者のための3Dプリントフードプロジェクト「PERFORMANCE」が、欧州で立ち上げられている。 しかし、なぜ3Dプリンターが老人食を変えるのか。そもそも老人食において大事なことは先に触れた通り「硬くない」ということだ。高齢者や要介護者は固形物を上手に食べることができない人が多いため、どうしてもスープ状のものやお粥みたいな味気ないものになってしまいがちなのだ。栄養価としては、そうした流動物でも適切なコントロールによって満たすことができるだろう。しかし、人は食事を栄養価のためだけではなく、楽しみとして享受している。食感の乏しく、見た目に華やかさのない食ばかりでは、精神衛生的にはあまりいいとは言えないのだ。その点、食べ物を層ごとに形成する3Dフードプリンターであれば、通常の調理よりも、見た目や食感を重視した食事を提供することが可能になる。たとえば硬いものは食べれないけど、どうしてもジューシーなステーキを食べたいという人がいた場合、3Dフードプリンターであればジューシーなステーキの見た目と風味を持った、柔らかい食べ物を作ることができたりする。 あるいは高齢者、要介護者と一口に言ってもその状態は様々だ。今まではそれぞれに応じたレシピで、それぞれに応じた料理を作るということがコスト的にもなかなか難しかったのだが、3Dフードプリンターであれば、そうした細かい状態に応じたニーズにも簡単に応えることができるようになるのだ。 「食のデジタル化」によって死ぬまでグルメを堪能 果たして老人食の3Dプリント技術の導入は着実に進んでいる。たとえば2019年の頭には、スウェーデン南部のいくつかの老人介護施設で3Dプリントフードの導入を年内に実践するということが発表され、実際に導入された。あるいは施設などだけではなく、デリバリーサービスの実装も検討されているらしい。もちろん人生100年時代なんて言われている日本にとってもこれは非常に重要な技術であり、農林水産省も高齢者の食事のパーソナライズ化に3Dプリンター技術が大いに資することを踏まえ導入の検討を進めているようだ。環境問題への貢献、医食同源の実現、働き手不足の解消などなど「食のデジタル化」が様々な問題を克服するかもしれないとする論文も発表されている。 政策Open Lab/Food Tech( 3Dフードプリンタ)チーム3Dフードプリンタの影響と可能性について あるいは山形大学も3Dプリンターを用いた介護食の開発に取り組んでいる。おそらく、あと数年で飛躍的に伸びていく分野となるのではないだろうか。ちなみに筆者がひそかに期待しているのは、この技術がダイエットフードに応用されることだ。ダイエット中にドーナツがどうしても食べたくなる、あの地獄の苦しみを3Dプリントフードが救ってくれる日を心待ちにいしている。
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3Dプリンターは芸術の新時代を切り拓くか? ポストデジタル時代の最先端アート
現代アートと3Dプリンター 現代アートは難しい。そんな印象をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。その印象は半分正しいように思う。そもそも、現代アートはその始まりからして難解だ。古典的な絵画や彫刻作品が絵としての美しさ、彫刻としての流麗さにおいて評価されていたのに対して、現代アートにおいては作品そのものよりも、作品の外部にある情報が重要視される。たとえば現代アート初期の代表的な作品といえば、マルセル・デュシャンの『泉』という作品だが、この『泉』からしてよく分からない。なんせ、市販されているトイレの便器にデュシャンのサインが入ってるだけ、という作品なのだ。もちろん、便器としての造形が評価されたわけではない。市販の便器を「作品として提示した」という行為そのものが「アート」としてここでは評価されているのだ。 『泉』マルセル・デュシャン さて、なぜアートの話をいきなりしたのかというと、実は現在、アートの世界でも3Dプリンターが大活躍しているからだ。「ものつくり」革命を起こすマシンがアートにおいて重宝されるのは半ば必然。そこで今回はアート界における3Dプリンターの活躍ぶりを紹介しよう。 ポストデジタル時代のアート アートの世界で近年に大きく話題となったことといえば、有名なキュレーターであるロン・ラバコさんによる「ポストデジタル」という言葉だろう。ざっくり言えば「デジタル以降」という意味だが、ロン・ラバコさんがこの言葉で表したったのは、あえて「デジタル」という言葉を使うまでもなく、すでにアートの世界では3Dプリンターを始めとするデジタルファブリケーションのテクノロジーが手法として当たり前のものになっている、ということだ。下はラバコさんが取り上げているリチャード・デュポンさんというアーティストの3Dプリンターと彫刻をめぐる講演動画だ。 このように、3Dプリンターはすでにアートの世界では積極的に用いられているのだが、アーティストはみんな3Dプリンター持ってるのかといえば、現状、そんなことはない。美大などの教育機関には設置されているところが多いだろうが、個人所有となると限られている。多くは代行サービスを使って制作をしているケースが多いだろう。アーティストの要望に従って、3Dデータを作成し、またプリントまでやってくれる代行業者も現在では多い。たとえば「3Dayプリンター」さんなどのサービスもそのひとつだ。今のところ、モデリングには非常に高いスキルが必要であり、参入障壁はそれなりにある。ただ、今後は自分でモデリングできるアーティストも増えてくることは間違いない。あるいは、画力や造形力よりもモデリング力が問われる時代がくるかもしれないのだ。 では現状において、実際にはどんな3Dプリンターアートが作られてるんだろう?それこそ日本でも2018年には大阪で3Dプリンターアート展が開催されていた。今でもサイトで作品の一部を見ることができるが、どれも3Dプリンターの魅力が詰まった素晴らしい作品ばかり。是非とも下の動画をご覧いただきたい。ついつい欲しくなってしまう作品ばかりだ。 偉大なる世界の3Dプリントアート 今後は3Dプリンターがあるからこそのアート作品が続々と生まれてくるのは間違いない。もちろん、海外のアートシーンでも3Dプリンターは活躍している、有名どころを何人か紹介しておこう。まず「3Dプリントアートの父」と呼ばれているジョシュア・ハーカーさん。3DスキャンとCTスキャンを組み合わせて、驚くほど正確なプラスチック製の顔の骨格を制作したことで知られている。 ...
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3Dプリンターで出力した「血液も栄養素も循環する生きた人工皮膚」とは?
本物の皮膚と瓜二つの3Dプリント皮膚 バイオ3Dプリンターに関連してまた新しいニュースが届いた。以前、移植用の心臓を3Dプリンターで出力するという記事を書いたが、その際、今後の課題となっていたのは「その人工心臓が本物の心臓と同じように振る舞えるようになる」ことだった。当然、これは難題である。なんせ、出力した臓器が本物の臓器と同様の働きをするようになれば、それは人間の身体が本格的に交換可能なものとなることを意味するからだ。もちろん、そのようなSF的な技術が簡単に完成するべくもない。時間はまだまだ掛かる。しかし、その難題への取り組みを一歩前進させる、暗闇に一筋の光を差す技術が、登場したのである。まずはこの動画を見てほしい。 これはTバイオウイルスの開発動画では当然ない。この動画はアメリカのレンセラー工科大学によるもので、3Dプリンターで「血管が詰まったリアルな皮膚」を3Dプリントしている様子を撮影したものだ。からくりとしては3Dプリント心臓と同じである。しかし、今回の何がすごいかというと、すでにマウスを使った実験でその人工的にプリントされた皮膚の血管と、マウスがそもそも持っていた血管とがきちんと繋がり、血液や栄養素が循環されることが確認されているということなのだ。 これはつまり、3Dプリンターで作った皮膚を身体が完全に受け入れたということを意味する。ちなみに見た目にも違いは分からない。なんせ本物の皮膚と瓜二つであり、さらに構造も同じなのだから。少なくとも、皮膚に関して、あるいはマウスが対象であれば、皮膚のオーダーメイドはすでに実現しているのである。 鍵を握ったのはコラーゲン この技術を開発したレンセラー工科大で研究を率いていたのは、パンカイ・カランドさんという人物だ。カランドさんいわく、今回の技術と比較したとき、「これまで使用してきた人工皮膚は高級バンドエイドのようなもの」に過ぎないという。バンドエイドは傷の治療を促進こそすれ、最終的には身体に受け入れられることがない。これまでの人工皮膚においては、もともと身体が持っている細胞と最終的にマッチすることがなく、これがこれまでの皮膚移植の大きな障壁となってきたのだ。カランドさんは、血管の内側を覆うヒト内皮細胞や、内皮細胞の周囲を包む周皮細胞の重要な要素に、動物のコラーゲンなどを加えるということを試みた。これによって細胞同士が連絡を取り合えるようになり、人工血管ともともとの血管が結合するようになった。スキンケアにもコラーゲンは欠かせない。そもそも、人間の体を構成しているタンパク質の1/3はコラーゲンである。コラーゲンを鎹にカランドさんが作り出した新しい人工皮膚においては、血液と栄養分が常に移植片にも輸送され、一定期間を経ても皮膚が生き続けることができるという。現状では人間の身体ではまだ試されていない。臨床レベルで利用可能にするためには、今後ドナーの細胞を編集し、血管が患者の体に統合され受け入れるようにしていく必要があるとのことだ。カランドさんは「まだその段階ではないものの一歩ずつ近づいている」と語っている。 果たしてこの技術が一般化した暁には、もはや肌の老化に悩むこともなくなんるのかもしれない。赤ん坊のような肌を3Dバイオプリントして全身に移植、さらには3Dバイオプリント臓器を移植して、常に若々しく健康な身体を万人が手にするようになる…。それがユートピアかディストピアかは分からない。しかし、3Dバイオプリント技術とともに、私たちはその世界へと「一歩ずつ近づいている」。
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来店なしでもサイズぴったりの靴をフルオーダーメイド!? 3Dプリンターを用いた革命的なサービス
オーダーメイドの価格破壊 今回は機械学習と3Dプリンターを活用した靴のフルオーダーメイドサービスを紹介したい。フルオーダーメイドで、幅も長さも自分好みに合わせられる、のみならず、このサービスのすごいのは自宅からでも発注できてしまうということだ。鍵となっているのはAIの画像認識技術である。ユーザーがスマートフォンで自分の足を撮影し、その動画を送ると、画像認識技術によって3Dモデルが生成、その3Dモデルをもとに靴の基盤となる靴型を3Dプリンターが作製してくれるという仕組みらしい。 今回登場したこのサービスでは従来の約半額となる価格で靴のフルオーダーメイドを行うことができる。3Dプリンターのものつくり革命は、こうした価格破壊も起こしやすいのだ。 Shoe-Craft-Terminalという新サービス そのサービスとは、ビネット&クラリティ合同会社というところが打ち出している「Shoe-Craft-Terminal」というサービスだ。 日本の会社のため、サイトも日本語。「世界初、来店不要のフルオーダーメイド靴」というキャッチコピーである。現状でデザインはメンズ用に2型、ウィメンズ用に2型を展開しているようだ。価格も4万円から6万円とオーダーメイドとしては破格。一般のお客さん向けには2019年10月23日から受注が始まっていて、2020年2月の発送が第一号となっている。毎日、会社に通うサラリーマンの方にとっては健康促進にも役立ちそうだ。もちろん、デザインの好みに合うかも重要だが、デザインのバリエーションも今後どんどん増えていく、とのこと。父の日、母の日、誕生日のプレゼントなどにも非常によさそうだ。 「SML」がなくなる日 近年では靴に限らずアパレル業界も3Dプリンターの導入に積極的だ。今後はスマホで撮影した全身写真で3Dデータを抽出して、自分の体型にぴったり合う服をオーダーメイドするという流れが一般化していくだろう。おしゃれの肝はサイジングだとも言われる。実際、GoProの元副社長のミーガン・リッチフィールドが立ち上げたスタートアップRedthreadは、今言ったような3Dデータを使用したオーダーメイトサービスをすでに開始している。あるいは「SML」という表記がなくなる時代が間もなく到来するのかもしれない。1点ずつ衣服をオーダーメイドするようになれば無駄に大量生産する必要もなくなる。その意味では環境にも優しい。服を買うのではなく、デザインをダウンロードして3Dプリンターで印刷という時代も、そう遠くはないかもしれない。
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