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シリカナノ粒子によって自由自在な3Dガラスプリントが現実のものに──開発者いわく「この技術は高級時計や香水のボトルなどに使用できる」
2021年1月22日

シリカナノ粒子によって自由自在な3Dガラスプリントが現実のものに──開発者いわく「この技術は高級時計や香水のボトルなどに使用できる」

3Dガラスプリントが難しい幾つかの理由   3Dプリンターが扱える素材は様々だ。フィラメント、レジンなどのプラスチックを代表に、金属、砂、あるいはバイオ3Dプリンターにおいては有機物なども、現在では造形の素材となる。 そんな中、私たちの暮らしにおいて身近な物質でありながら、これまで3Dプリンターがそれを扱うことを不得手としてきた素材がある。それは他でもない「ガラス」だ。 ガラスの扱いが難しいのは、その融点の高さゆえだと言われている。高温度下においては機械的な特性を維持するのが難しいため、一度に積層できる量が限られ、また焼結後に歪みが生まれてしまうなど、課題が多かったのだ。 実際、これまでにも3Dガラスプリンターは存在しなかったわけではないが、透明度や造形物の精度には問題点も多く、まだ実用的な段階には至っていなかった。 そんな3Dガラスプリントの世界において、まず大きく話題になったのが、2017年にMIT Media Labのネリ・オックスマン教授が率いる研究チームが開発した3Dプリンター「G3DP2」だ。ミラノデザインウィーク2017に同研究チームが制作して展示された、高さ3mの3Dプリントガラス柱「Lexus」は、デザインの複雑さ、正確性、強度、透明性において、大きく話題となった。           この「Lexus」は、しかし、構造はシンプルだ。「G3DP2」は強度のあるガラスを3Dプリントすることできたものの、やはりより複雑な形状のガラスを出力することは難しく、また出力に際してかかる時間と手間は膨大だ。ここには積層型の3Dプリンターによるガラス造形の限界がある。やはり、小さくて細かいガラス作品を3Dプリンターでスムーズに出力することは不可能なのだろうか。         「Lexus」から4年、この難問を乗り越えるかもしれない研究論文が、先日、The Optical Societyジャーナルに発表された。     シリカナノ粒子を使用したレーザー投射型3Dプリンター   論文を発表したのは、フランスのエコール・サントラルに所属する3人の研究者だった。彼らはその論文において、多光子重合に基づく新たに開発された技術を3Dプリンターにおいて使用することで、通常の層ごとの加工に依存することなく精密なガラスオブジェクトをプリントし、将来的にはレーザーベースの複雑な光学系を3 Dプリントすることができるようになる、と論じている。    ...

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驚異の3Dバイオプリンティングの世界——近年の注目ニュースを振り返る
2021年1月19日

驚異の3Dバイオプリンティングの世界——近年の注目ニュースを振り返る

  生命を扱う3Dプリンター   様々なジャンルで驚きをもたらしている3Dプリンターだが、中でも未来世界を予感させるような技術革新が相次いでいるのが3Dバイオプリンターである。 バイオとはそもそも「生命」や「生物」などの意味。つまり、3Dバイオプリントとは、生物に類する有機物をプリントする技術のことで、主にその研究開発は生物医学工学の発展に役立てられている。 すでに話題となったところでは人工肉や人工臓器などの3Dバイオプリントがあるが、近年ではますますの技術的進歩を遂げ、様々な成果が発表されている。そこで、ここでは近年でとりわけ注目すべきと筆者が感じた3Dバイオプリント関連ニュースを紹介してみたい。   3Dバイオプリンティングの最前線こそ人類の進歩の最前線。それでは順番に見ていこう。     1.「もう実験動物はいらない?」コロナ研究にも役立てられる3Dバイオプリント身体   ノースカロライナ州にあるウェイクフォレスト再生医療研究所 のアンソニー・アタラ氏は、薬剤の毒性をテストするための新しい多臓器チップを開発している。アタラ氏が発表した2020年2月の論文によると、「チップ上の3 Dボディ」は、市場に参入した後に薬剤を回収するリスクを減らすだけでなく、より迅速で経済的な薬剤開発につながる可能性があるとのこと。     画像引用:WFIRM   この「チップ上の3Dボディ」とは、多臓器の身体を単純化したモデルを極小のチップ上に再現したもの。通常、多臓器の3Dプリントは極めて複雑であり、その再現には巨大な設備が必要だが、この技術においては、極小サイズにおいてそれらを再現することで、薬剤の実験コストを大幅に下げ、またペースアップすることができるのだ。 実際、この3DボディはCOVID-19の研究にも使用されており、この3Dボディを用いてCOVID-19ウィルスと戦う薬剤のテストがすでに行われているらしい。重要なことは、この実験が動物モデルを使った実験よりもはるかに役立つ可能性があるということ。それが事実ならば、これ以上、薬剤開発のために動物実験を行う必要がなくなるということだ。     2.「来たる大移住に備えて」ロシアの宇宙飛行士が宇宙空間で軟骨を3Dバイオプリント   現在、3Dバイオプリンティングの最前線にあたる実験は、なんと宇宙空間で行われているようだ。人口爆発や気候変動などを受け、居住コロニーとしての地球に限界がきているという警鐘は数多く鳴らされている。そんな中で実際に検討され始めているのが地球外コロニーの形成である。 その形成が間もなく始まるとすれば、重要なことは宇宙空間における医療問題だ。そのためにも低重力環境における3Dバイオプリンティングの研究が、ロシアのバイオテクノロジー企業3DBioprinting Solutionsによって進められているのだ。    ...

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3Dプリンターが明らかにする生物の進化——3Dプリント技術は未来だけではなく過去をも照らす
2021年1月3日

3Dプリンターが明らかにする生物の進化——3Dプリント技術は未来だけではなく過去をも照らす

3Dプリンターが生物の歴史を覆す?   様々な分野に役立てられている3Dプリント技術が、近年、生物学の分野においても活用されている。 中でも進化生物学などにおいて、太古に存在していたであろう生物の限られた痕跡、たとえば化石などを3Dスキャンし、その骨格を3Dプリントすることによって、あらためて生物の進化の歴史が紐解かれようとしているらしい。 昨年にはオハイオ大学のパトリック・オコーナー教授が率いる研究チームが、白亜紀後期に存在していたとされる長くて深いくちばしを持つ鳥(Falcatakelyと名付けられた)の化石の発見を報告しているのだが、この鳥、Falcatakelyが、現在、鳥類におけるくちばしの進化を紐解く上で、非常に重要な種であると注目されているのだ。     Falcatakely(画像引用:オハイオ大学)       太古の鳥の頭蓋骨を3Dプリントで再構築   オコーナー教授が率いる研究チームが試みているのは、Falcatakelyの解剖学的構造を解明するために、マイクロCTスキャンとデジタルモデリングを用いて、鳥が埋め込まれた岩から個々の骨を仮想的に解剖、さらに3Dプリンティングを用いてFalcatakelyの頭蓋骨を再構築し、他の種との比較を行うことだ。             そもそも、白亜紀の鳥類に関しては化石の発見も少なく、完全な骨が出てくることは少ないため、こうした仮想的な骨格の再現が研究を進める上で、非常に役立つらしい。 実際、3Dプリント頭蓋骨を通じた研究によって、このFalcatakelyが現在生きているいくつかの鳥グループと共通しているものの、その組織は全く異なるものであることが判明している。オコーナー教授によれば、この結果は科学者たちが鳥の進化に関して持っていたこれまでの知識とは符合しないそうで、つまり、これは鳥の進化の歴史を知る上で、なんらかの重要な発見に繋がるかもしれないとのことだ。     画像引用:オハイオ大学     恐竜や原人の研究に役立つ3Dプリント技術 こうしたアプローチは他でも行われており、たとえばオランダではこれまで発見されているトリケラトプスの化石の中で、いまだ発見されていない最後のピースを3Dプリンターを使って補完するということが試みられている。昨年には日本の研究チームもトリケラトプスの脳や神経などを三次元的に復元し大きさを計測することで、トリケラトプスの三半規管が他の動物に比べて発達しておらず、すると機敏に動くことが苦手だったのではないかとする論文を発表して話題となった。 もっと以前では日本の海部陽介の研究チームが、フローレス原人の正確なレプリカを3Dプリンターで出力することで、その脳のサイズを特定したこともある。さらに、そこから脳のサイズが身体の大きさに対して絶対的に重要ではないという、これまでの通説とは異なる研究が進んでいる。...

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もはや薬もオーダーメイドする時代へ!? ——パーソナライズ化する医療と3Dプリント医薬品の現在
2020年12月22日

もはや薬もオーダーメイドする時代へ!? ——パーソナライズ化する医療と3Dプリント医薬品の現在

  3Dプリンターが可能にする医療のパーソナライズ化   3Dプリンターの造形技術は日常で使用する道具や玩具、嗜好品ばかりではなく、私たちの体内に入ってくる食べ物、そして私たちの体を内から治す医薬品にまで及んでいる。今回はそんな3Dプリント医薬品の最前線を少し覗いてみたい。 様々な医薬品の中でも、特に3Dプリンターがその存在感を増しているのは、錠剤タイプの医薬品製造においてだろう。これは単に従来の医薬品製造を3Dプリンターが代替しているという話に止まらない。錠剤3Dプリント技術の発達によって、患者それぞれに最適化した錠剤の製造をスムーズに行うことが可能になろうとしているのだ。 たとえば現在、なんらかの病気の症状がある場合、まずは病院に行き、医師の診断を受け、病状に応じた処方箋を書いてもらうことになる。その後、薬局へと行き、その処方箋を見せることで、必要な薬を複数処方してもらうことができるというのが一般的な流れだ。しかし、最新の3Dプリント技術を用いれば、この患者それぞれに異なる複数の医薬品の有効成分を一つの錠剤にまとめて出力することができ、これが医療のパーソナライズ化を推し進めると言われているのである。     「M3DIMAKER」が出力する「ポリピル」とは?   その技術を提供しているのが、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスピンアウト企業であるFabRx Ltdだ。2020年4月、FabRx Ltdはパーソナライズされた医薬品製造のために開発された初の医薬品用3Dプリンター「M3DIMAKER」の発売を発表した。   この「M3DIMAKER」は、Printletsと呼ばれる3Dプリント錠剤を製造するために設計されており、患者に必要な複数の有効成分を組み合わせた錠剤「ポリピル」をプリントすることができる。要するに、自分のためだけの薬をその都度、作ってくれるというわけだ。     ポリピル     これまでのように既成の医薬品に頼る場合、病状、病気の種類によっては処方される医薬品の種類が膨大になってしまうこともある。また、薬にはそれぞれ服用量や服用期間が定められているため、えてして患者にとってその煩雑さは負担になりがちだ。しかし、この「M3DIMAKER」とパーソナライズされた医薬品「ポリピル」があれば、可能な限り、煩雑な服用スケジュールを簡易化することができると言われている。 もちろん、セキュリティも抜かりがない。「M3DIMAKER」は専用のソフトウェアプラットフォームによって制御されており、薬剤師や臨床医が指紋アクセスによって、操作することになる。要するに、アクセス権を持たないユーザーは操作することができない。品質管理に関しても、欠陥品検出のカメラ監視機能などが搭載されているなど、万全が期されている。さらにプリントの速度も優れており、アクセス権者が用量などを調整し出力スイッチを押せば、およそ8分ほどで1ヶ月分の薬剤をプリントすることができる。             この「M3DIMAKER」が普及すれば、自分の症状に特化した薬剤が速やかに、かつ安価で入手できることになるだろう。不要な有効成分は最初から排除できるため、患者にとっての安全性、安心感も高まる。3Dプリンターによって、今、医療は大きく変わろうとしているのである。  ...

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VRモデリングの魅力と難点──近い将来、VRモデリングがスタンダードに?
2020年12月18日

VRモデリングの魅力と難点──近い将来、VRモデリングがスタンダードに?

近い将来、VRモデリングがスタンダードに?   3Dモデルのモデリングに関しては様々な方法、様々なモデリングソフトがある。そんな中、今後もっとも注目のモデリングと言えば、VRモデリングだろう。もちろん、3Dプリンター愛好者にとってもこれは例外ではない。             VRモデリングとは文字通り「VR空間内でモデリング作業を行う」こと。つまり、VRヘッドマウントディスプレイを装着し、自分自身がVR空間に入りながら、そのVR空間にて造形作業を行うという方法のことで、まだ広く普及しているとは言い難いが、おそらく近い将来にはこれが最もスタンンダードな方法になるのではないかとも言われている。   そこで今回はVRモデリングの魅力、その特徴についてを、簡単に紹介してみたいと思う。     VRモデリングの魅力   まず、VRモデリングの魅力とはどういうところだろうか。もちろん、使用者それぞれに色々な意見があると思うが、代表的なところでは以下の4点になる。    ・実在感 ・習得しやすさ ・モデリング速度 ・楽しさ     順番に見ていこう。    ・実在感   VRモデリングで一番期待されていることは「実在感」だろう。上、横、後ろ、斜めとあらゆる角度からオブジェクトを見て、状態を確認することができる。実用面では、パースが画面上で見るよりも実際の目で見た状態に近くなるので、3Dプリントする前にゆがみに気づける、というメリットがある。  ...

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愛猫へのプレゼントを3Dプリンターで作ろう! 猫ちゃん大興奮の3Dプリントおもちゃ5選
2020年12月14日

愛猫へのプレゼントを3Dプリンターで作ろう! 猫ちゃん大興奮の3Dプリントおもちゃ5選

「猫は可愛い」という普遍的な真理   この世に普遍的な真理などほぼ存在しない、世界の全ては捉え方次第でどうにでも変わりうるものなのだ――と信じる筆者のような頑固な相対主義者にも、数は少ないながら普遍的な真理と呼ぶことにやぶさかではない事象は存在する。たとえば、その一つとは「猫は可愛い」という真実である。 猫。その「可愛さ」に類するあらゆる要素を丸めて凝り固めた塊のような存在が人間と出会ったのは古代まで遡ると言われている。それこそ古代エジプト文明のバステトなどは猫をモチーフとした神様だし、一説によれば、猫は古代エジプトにおいて初めて家畜化されたのだとも言われている。実際、すでに紀元前6000年頃の貴族の墓から猫の骨が発見されており、これはその当時から人間と猫がただならぬ関係を形成していたことを示すまたとない証拠だ。   猫頭の女神「バステト」   きっと古代の人々も猫を一目見るやその可愛さに悩殺されてしまったに違いなく、猫を愛したファラオたちと「わかるよ、あいつら可愛すぎるよな」と肩を組んで夜通し猫愛を語り明かしたい心持ちになるのであるが、一方で日本においては実は猫の記録というものはかなり限られている。近世に入って以降はそれこそ歌川広重を始めとする人気浮世絵師たちが数多くの愛くるしい町猫たちを大量に描き残しているものの、たとえば日本の古代の神話的記録である日本書紀や古事記には猫は一切登場していない。あるいは日本の四季折々の風景を歌ったかの万葉集にも猫の存在は一向に見当たらないのだ。     歌川広重「猫飼好五十三疋」     そんな中、日本史に残る最古の猫の記録といえば、平安時代、宇多天皇が愛してやまなかったという黒猫の存在がある。ただし、この黒猫も唐から伝わった「もらい猫」であったとのこと。どうやら日本文化の中にはもともとは猫の居場所がなかったようで(原生の猫がいるにはいたみたいだけど)、つまりは、日本は猫に関してはやや後進国として位置づけられてしまうわけなのだが、そんな日本でも2010年代にはペット飼育頭数ランキング不動の一位と言われた犬を追い越し、晴れて一位の座を獲得するなど猫人気は高まる一方。いまや猫大国と言っていいほどの猫フィーバーが巻き起こり続けているのだ。 あるいは、今日、コロナ禍により人々の外出機会が減ったことで、猫需要がさらに高まりを見せているというデータもあり(一方で飼い猫を手放すケースも増えており、止むを得ず殺処分となってしまっている猫もいるらしい。ストップ殺処分! どうか命を粗末にしないでいただきたい)、猫と人間の蜜月はますます深まっている模様。かくいう筆者も、実を言うと3匹の猫ちゃんと同居している。忙殺される日々ではあるものの、安心しきった様子で我が家にくつろぐ彼らの様子を見れば、日頃の疲れも不思議と癒されてしまう。彼らが鳴らす喉のゴロゴロ以上のアンビエントミュージックは存在しないと断言してもいいだろう。           それにしても、なぜ人間は猫をここまで可愛いと感じてしまうのか。 その理由をめぐっては諸説あるが、一説によると猫の顔面パーツの比率が人間の赤ん坊の比率に近似しており、そのため本能的に可愛さを感じてしまうらしい。あるいは、猫も一万年近い人間との共生の中で人間がより庇護したくなるように進化しているという説もあったり、さらには、猫が保有している寄生虫トキソプラズマが人間の脳をコントロールしているなんて説まである。     トキソプラズマ     このトキソプラズマは猫の糞からネズミに寄生し、ネズミの脳をコントロールすることで、その行動を変化させて猫に食べられやすくする寄生虫として知られる存在であり、これが人間に寄生しているというのは若干ホラー感もある話なのだが、しかし、猫の愛くるしい「ミャー」を耳にすれば、「うん、寄生虫に操られてたとしても別にそのままでいいや」と思えてしまうくらいに猫の可愛いさは圧倒的なのだから、まんざら寄生虫説もありえなくはなさそうだ。 さて、猫愛が高じて余談が長くなってしまったが、この記事はただ猫の可愛さを手放しに賞賛するだけの記事にあらず、そんな可愛い猫たちにすっかり魅入られてしまった人向けに、是非ともお届けしたい情報があって用意したものである。というのも、先日、3Dプリント関連の大手メディア「ALL3DP」が3Dプリンターで作ることができる猫用おもちゃを一覧化して紹介するという超良記事!をリリースしていたのだ。...

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「世界最高峰」と評価される日本のトイレがある国を救う? ——オフ・グリッドの3Dプリント公衆トイレを日本企業が開発
2020年12月8日

「世界最高峰」と評価される日本のトイレがある国を救う? ——オフ・グリッドの3Dプリント公衆トイレを日本企業が開発

トイレ大国・日本が世界を救済する?   古いところでは浮世絵、歌舞伎、寿司、近年に至っては漫画、アニメ、ゲーム、ビジュアル系など、日本独自の文化はこれまで世界を様々に驚かせてきた。その中で、特に20世紀、日本で比類なき発達を遂げ、ある意味ではガラパゴス的な進化を果たした末に世界を席巻している、ある文化がある。私たちが日常的に使用せずにはすませないあいつ、そう、他でもないトイレ文化だ。 TOTOなど世界有数のトイレメーカーを有し、ウォシュレットをはじめ、快適で清潔なトイレをこれまで世界に発信し続けてきた日本は、さしずめトイレ大国と呼んでいいだろう。それは単なる思い上がりではなく、WTO(世界トイレ機関!)代表であり、『トイレは世界を救う』(PHP研究所)の著者であるジャック・シム氏はあるインタビューにおいて「日本のトイレは世界最高のクオリティーだ」と述べ、さらに「日本の最大の輸出資源はトイレ文化だ」とまで語っていた。       「日本のトイレは最大の輸出資源だ」とミスター・トイレ絶賛の理由(DIAMOND ONLINE) https://diamond.jp/articles/-/220925 もちろん、始めから日本がトイレ大国だったわけではない。かつて日本では汲み取り式が一般的であり、水洗の洋式トイレとは、そもそも輸入された技術だった。それを変えたのがTOTOだ。アメリカで開発された温水洗浄トイレ「ウォッシュエアシート」を輸入販売していたTOTOはやがて自社オリジナルの「ウォシュレット」を開発。その機能性の高さからウォシュレットは累計4000万台の大ヒットとなり、今では日本機械学会から「機械遺産」に認定されるなど、国の「宝」となっているのだ。さて、そんな日本が誇るトイレ技術が、今、ある国の人々を救うために役立てられようとしているのをご存知だろうか。そして、そこでも一役買っているのが、3Dプリンターなのである。   あの人口超大国ののっぴきならないトイレ事情   現在、トイレを巡って大きな問題を抱えているある国がある。世界人口ランキング世界2位、2027年には1位の中国を抜くだろうとも言われているのあの大国、そうインドだ。 というのも、インドでは未だにトイレといえば汲み取り式が一般的であり、また野外排泄をする人も多い(その数、なんと5億人以上)。これがインド国内において大規模な水質汚染の原因、あるいは感染症の蔓延の原因になっているというのだ。実際、インドにおいては幼児の死因の2割は下痢と合併症であり、その原因の8割が野外排泄による水質汚染であるということが調査により判明している。       そこにはいくつか原因がある。まず使えるトイレが十分に行き届いていないということ。ただし、それは単にトイレを各家庭に設置すれば解決するという問題でもないらしい。ある村では政府によって95%の家庭にトイレが設置されたが、現在ではそれらのトイレは廃墟と化しているという。なぜかといえば、トイレ自体はあるものの肝心の上下水道は設置されておらず、また汲み取り業者がいるわけでもないからだ。すると、トイレがあっても使い物にならず、結果、野外で排泄するしかなくなるというわけである。     また、インンドでトイレが普及しない背景には信仰上の問題もある。インドのマジョリティが信仰しているヒンドゥー教においては「浄/不浄」の概念が極めて重視されており、それゆえトイレが不浄のものとして遠ざけられる傾向にあるのだそうだ。それにより、トイレを自宅に持つということがそもそも忌避されてしまい、結果、家から少し離れた野外で排泄が行われてしまうことになるのだ。 本来、人間の排泄物は土に還れば微生物によって分解され堆肥となる。しかし、5億人が同時に野外へ排泄を行えば分解のプロセスは間に合わない。さらに野外排泄には汚染や感染症の問題のみならず、排泄中にヘビや動物などに襲われるリスクもあり、また排泄のために一人で野外に出た女性が暴漢に襲われてしまう事件もインドでは頻発している。 こうした問題を受け、インドでは衛生的で安全性の高い公衆トイレの整備が急務とされているのだが、とはいえ、5億人のために必要な公衆トイレを準備するのはそう簡単なことではない。そもそも上下水道が設備されていない地域が多く、あるいは汲み取り式を作ってみたところで、じゃあ誰が汲み取るのか、本当にきちんと汲み取られるのか、という問題は残り続ける。 そこで立ち上がったのが日本の北海道の企業「會澤高圧コンクリート株式会社」だ。同社は現在、ロボットアーム式のコンクリート3Dプリンタを用いて積層造形した公衆トイレを建設するというプロジェクトを行なっている。すでに二基つくられており、それらは2020年の9月に一般公開されているのだが、なんでもこの日本発の3Dプリント公衆トイレ、実はSDGs目標に沿ってインドの窮状を救うために制作されたプロトタイプらしいのだ。       3Dプリントされた外装と水道いらずのオフグリッド・トイレ 會澤高圧コンクリート株式会社はSDGsの目標のうち6番目の『安全な水とトイレを世界中に』の実践を掲げ、女性スタッフを中心とする開発チームをインドに派遣、現地のニーズや課題などを調査。その末に作り出したのが、この3Dプリント公衆トイレだ。...

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金属とプラスチックを同時に造形できる3Dプリント技術を早稲田大学が開発
2020年12月4日

金属とプラスチックを同時に造形できる3Dプリント技術を早稲田大学が開発

プラスチックと金属からなる製品を出力するには?   3Dプリンターで使用することができる素材といえば、まず思いつくのがプラスチックだろう。熱溶解式で用いられるフィラメントも、光造形式で用いられるレジンも、名前こそ異なるが共に樹脂、つまりプラスチックのことだ。 あるいは最近では金属も注目されている。これまでは主に工業的に用いられてきた金属3Dプリンターだったが、現在、技術の進歩とともに低価格化が進んでおり、金属は一般の3Dプリンターユーザーにとっても馴染みのある素材となりつつある。先日、記事にもまとめたように、金属のほか、砂やシリカを素材とする粉末造形方式という出力方式も存在する。   3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」とは何か? その5つの分類と特徴について     当然、使用できる素材が増えればつくることができる対象の幅も広がるのだが、一方で私たちが普段使用している製品の中には、プラスチックだけでできているわけでも、金属だけでできているわけでもないものが多い。そう、実は多くの製品においてはプラスチックと金属の両方が同時に使用されているのである。 すると、どちらか一方の素材しか使えない従来の3Dプリンターの場合、少なくとも一発で完成品を出力することは極めて困難となる。プラスチック、金属、それぞれの3Dプリンターで部品を出力し、その後それらを組み合わせるというプロセスは、控えめに言っても大変な手間だ。 2020年の8月、早稲田大学の研究チームがそうした3Dプリンターの煩わしい状況を一変させる技術を開発したことを発表した。研究チームが「ハイブリッド3Dプリンタ造形技術」と呼ぶその技術とは、他でもない「プラスチックと金属を同時に3Dプリント造形する技術」のことだ。     ハイブリッド3Dプリンタ造形技術とは何か さて、この「ハイブリッド3Dプリンタ造形技術」とはいかなるものだろうか。 そもそも、これまでプラスチックと金属を同時に出力することができなかったのは、それらの素材ではそれぞれ溶け出す融点が大幅に異なることがその理由だった。それゆえ同じマシン内でプラスチックと金属という二つの素材を扱うことはできないとされてきたのだ。 この難問を、早稲田大学の研究チームは「めっき技術」と「3Dプリンタ技術」を組み合わせた新しい技術を開発することで解決したという。そして、金属とプラスチックで構成される任意形状の立体を簡単に造形できるということを実証して見せたのだ。 早稲田大学のHP(https://skhonpo.com/blog/powder)によると   “本共同研究グループは、めっき技術と3Dプリンタ技術を組み合わせることにしました。無電解めっきを施すことが可能なフィラメントを独自に開発することで、めっき部(金属部)とプラスチック部の位置を制御した立体造形物の作製を実現できると考えました。”   “まず、プラスチック用の3Dプリンタで一般的に使用される材料であるABS樹脂に塩化パラジウムを含有させたABS+PdCl2フィラメントを新たに開発しました。その上で、開発したこのフィラメントとABSフィラメントをデュアルノズルの3Dプリンタによって、二色刷りの要領で、ABS+PdCl2部分とABS部分から構成される立体を3Dプリントします。” “3Dプリントされた造形物に対して、無電解めっきを施すことによって、塩化パラジウムの部分に金属が析出します。その結果、金属とプラスチックから構成される立体造形物を作製することができました。”   とのこと。そうして実際にハイブリッド出力された造形物がこちらである。     画像引用:早稲田大学  ...

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フィラメントを天敵「湿度」から守るには!? その予防、検出、乾燥の方法について
2020年11月18日

フィラメントを天敵「湿度」から守るには!? その予防、検出、乾燥の方法について

どうする? フィラメントの吸湿性   SK本舗は基本的に光造形方式の3Dプリンターを扱っているが、今回は熱溶解積層方式(以下、FDM)の3Dプリンターを併用されている方のために、FDMのプリント素材となるフィラメントに関する情報をお届けしたい。 おそらく、FDMを使用されている方は誰しもフィラメントの吸湿性に悩んだことがあるのではないだろうか。湿気はフィラメントの大敵であり、特に日本のような多湿な環境においては、フィラメントを湿度から守ることが、非常に重要な取り組みとなってくる。         そこで、ここではフィラメントの吸湿性によって起こるトラブルや、そうしたトラブルを回避するための知識について、いくつか紹介してみようと思う。FDMユーザーの方はぜひご参考にしていただければ幸いだ。     吸湿によって起こるトラブル どんなフィラメントが吸湿しやすい?   まず、ほとんどのフィラメントは吸湿性だ。つまり、空気中に湿度がある場合、フィラメントは自然にそれを吸収することになる。時間経過により吸湿しすぎたフィラメントを使用して生じるエラーはいくつかあり、主に以下のようなことが起こるといわれている。  ・レイヤーの気泡 ・押出機のエラー ・出力品が脆く、壊れやすくなる ・ヒートベッドへの密着性が悪くなる       がっさがさフィラメントが吸湿してるのか糸引きもすごいや… pic.twitter.com/a9vQJ6HlSD — HiGE (@hige1117) October 11, 2020...

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1枚の写真から3Dモデルを作成するにはどうすれば? 思い出の瞬間を3Dプリンターで出力!
2020年11月17日

1枚の写真から3Dモデルを作成するにはどうすれば? 思い出の瞬間を3Dプリンターで出力!

大切な写真を3Dプリンターで立体にプリントしたい、と考える人は多いと思います。今回は、写真から3Dプリントを行うための三つの方法をご紹介します。

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食用3Dプリンターは「食の未来」を変えるか? その現状、可能性、難点をめぐって──
2020年11月6日

食用3Dプリンターは「食の未来」を変えるか? その現状、可能性、難点をめぐって──

食用3Dプリンターの原型となった「ピザの自動販売機」   現在3Dプリンターには様々な造形方式が生まれており、樹脂による出力、金属による出力など、素材も多様である。私たちが普段口にするような食品もその例外ではなく、食用3Dプリンターの技術的な発展は近年、実に目覚しい。 食用3Dプリンターの原型といえば、2015年に登場したピザの自動販売機がそれにあたると言うことが出来るだろう。この機械は1台の機体の中で既に用意されたピザの生地にトマトソースとチーズがトッピングされ、最後にオーブンで焼くというプロセスをオートメーションによって行うものだ。どちらかといえばクッキングマシンというイメージで、いわゆる3Dプリントのイメージとはやや異なるかもしれないが、特定の素材を用いて自動で立体物を出力するという意味において、これはけだし3Dプリンターだと言える。             近年、食用3Dプリンターはより技術的に発達しており、すでに3Dプリンターを使用するレストランも海外では少しずつ登場してきている。現在は高級レストランやベーカリーにしか導入されていないが、今後、食用3Dプリンター市場が急成長するであろうことは間違いない。各家庭に食用3Dプリンターが設置される日もそう遠くはないだろう。そこで、ここではピザの自動販売機に端を発する食用3Dプリンターの現在について、その技術的な部分を紹介すると共に、それがもたらす利点や欠点などについても考察してみたい。     食用3Dプリンターの出力方式   現在登場している食用3Dプリンターはいずれも材料押し出し法(FDM方式)と似たタイプのプリンターになっている。理論上においては、ペーストまたは半液体状態の材料であれば全て成形し、3Dプリントすることが可能であるとされており、たとえばチョコレートやパンケーキの生地などがその代表例である。   しかし、実際には全てのペースト状或いは半液体状の食材であれば何でも3Dプリントできるというわけでもない。というのも、食事の3Dプリントにあたっては使用するプリンター専用のカートリッジを事前に購入する必要があり、このカートリッジの種類に作れるものが依存しているからだ。   また現時点で登場している食用3Dプリンターにおいては、いわゆる「調理」をすることが出来ない。例外としてPancakeBotという3Dプリンターは生地を押し出し、最後に焼くことまで可能であるが、PancakeBotにおいても生地を裏返す際は人の手を介する必要がある。           その他、食用の3Dプリントの技術として、現在、粉末積層法(SLS方式)で食材を添加していくプロセスなども研究されているが、これが近年中に実現可能かどうかはまだ不明である。     食用3Dプリンターの長所と短所  ...

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腕時計界の至宝「トゥールビヨン」の複雑機構を3Dプリンターで再現──テクノロジーによって変化するステータスの意味
2020年11月3日

腕時計界の至宝「トゥールビヨン」の複雑機構を3Dプリンターで再現──テクノロジーによって変化するステータスの意味

ステータスシンボルとしての「腕時計」 ある人物の地位や富を示すステータスシンボルといえば、車、服、家などがまず思いつくかもしれない。しかし、数あるステータスシンボルの中でも、その歴史の長さ、物語の深さでいえば、腕時計に勝るものはないだろう。     スイスの老舗時計ブランドであるヴァシュロン・コンスタンタンの伝統的なモデル「パトリモニー・トラディショナル・クロノグラフ」。価格は約500万円。   腕時計がステータスシンボルとして優れていることにはいくつか理由がある。たとえば、腕時計が常に身につける「身近」で「個人的」な装飾品であるということ、その他の高級品よりも価格的に入手しやすく(とはいえ家一軒分くらいの価値を持つ時計もあるが)多くの人に開かれた贅沢であるということ、そして車や服というものがモデルチェンジやモードチェンジによって数年ごとに流行が変化していくのに対し、時計のデザインは普遍的で美的に経年耐久性があること、などが挙げられる。     かつてフランスやイギリスの王侯貴族を魅了したとされているジャケ・ドローの「グラン・セコンド」。懐中時計からインスピレーションを得て製作されたモデル。価格は約220万円。     実際、ロレックスやオメガなど、高級腕時計ブランドの人気モデルは数十年にわたって変化がない。もちろん、新機種、新モデルなども常に登場はしているものの、エクスプローラーやシーマスターなど、誰もが耳にしたことあるような定番モデルは、今日においても変わらずに高い存在感を放っている。     もはや高級腕時計の定番となっているオメガの「シーマスター」。価格は40万円台から。     近年はiphoneの普及によって若年層の腕時計離れが進んでいたが、裏を返せば、これは腕時計が「時間を知るため」という機能性に還元されなくなったとも言えるだろう。ステータスシンボルとしての腕時計は、今日においてより純粋性を高めているとさえ言えるかもしれない。     腕時計界の至宝「トゥールビヨン」とは?   さて、そうした腕時計の世界において、特別な存在がある。それは「世界三大複雑機構」と呼ばれる、技術レベルの高い限られたメーカーのみが製造できる、希少かつ複雑なメカニズムを有する時計である。 もちろん、この機構を持つ腕時計は抜群に高額だ。それらの時計にはたとえばロレックスのデイトジャストのような一見した派手さはない。言ってしまえば通向けではあるのだが、それだけに「分かる人には分かる」といういぶし銀の魅力を称えているのだ。つまり、それを腕に巻いているということは、その者のステータスを示すのみならず、「良いものを見極める」審美眼や、「表層よりも本質を重んじる」文化的教養の高さを示すことになるというわけだ。 この「世界三大複雑機構」がどのようなものかと言うと、長期にわたりカレンダー調整を不要とする「永久カレンダー」、ゴング音が時間を知らせる「ミニッツリピーター」、そして各パーツが受ける重力を均一化することにより安定した精度を維持する「トゥールビヨン」の三つからなる。 中でも高額で、人気が高いのは「トゥールビヨン」だろう。その神がかって複雑な構造を再現できる時計師は、なんと世界に10人程度しかいないと言われている。発明したのは天才時計技師ブレゲ。トゥールビヨンの発明によってブレゲは時計の歴史を200年推し進めたとまで言われており、実際、ブレゲのトゥールビヨンを現在買うためには最低でも車一台購入できるだけの額を用意しなければいけない。まさに至高のロマンと言うべき、腕時計界の「宝」である。     ブレゲの2019年の作品「クラシック...

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3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」とは何か? その5つの分類と特徴について
2020年11月3日

3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」とは何か? その5つの分類と特徴について

3Dプリンター第三の方式「粉末造形方式」   3Dプリンターの造形方式として、一般的に知られているのは光造形方式と、熱溶解積層法の2種類である。市販されている家庭用3Dプリンターは基本的にこの2種類のいずれかであり、たとえば弊社SK本舗ではご存知のように主に光造形の3Dプリンターを中心に取り扱っている。それぞれの造形方式に長所と短所、特性があり、そこについては以前、記事にまとめたこともあるので是非ともご参照いただきたい。     3Dプリンターとは?造形方式やその特徴比較!     さて、今回取り上げるのは、光造形方式でも熱溶解積層法でもない、第三の造形方式についてだ。それは通称「粉末造形方式」 と呼ばれる造形方式である。 光造形方式、熱溶解積層法では共に樹脂が素材として用いられており、光造形の場合は紫外線硬化樹脂(レジン)が、熱溶解積層法では熱可塑性樹脂がそれぞれ印刷材料となる。一方、この粉末造形方式では、その名の通り、印刷材料として粉末が使用される のだが、果たして、この粉末造形方式とはどのような方法で粉末から立体物を造形していくのだろうか。         以下では粉末3Dプリンターについて、その基礎的な部分を解説してみたい。     粉末3Dプリントの基礎   まず、粉末3Dプリントの特性についてだ。粉末3Dプリンターでは金属、砂、シリカなど、他の方式では使用できない様々な材料で印刷を行うことができる。いわゆる金属3Dプリンターにおける代表的な造形方式であり、粉末3Dプリンターでは一般的に金属以外においても耐久性の強い造形物を製作できるとされている、そのため、粉末3Dプリンターは最終製品や鋳型の出力に向いていると言われ、主に製造業において高いプレゼンスを誇っている。 ただ光造形方式、熱溶解積層法の3Dプリンターと比較した時、粉末3Dプリンターは現状では平均価格が約60万円とされており、やや高価であるのも特徴だ。一応、一般向けの粉末3Dプリンターも市場には出ているが、今のところ家庭用ではなく主に業務用として流通している。とはいえ、今後は低価格化が進んでいくとも言われており、そうなると一般ユーザーにとってもより身近な存在になっていくことは間違いない。今のうちに学んでおいて損はないだろう。         さて、粉末3Dプリンターには2種類の主要な印刷方式がある。それは「パウダーベッド方式」と「バインダージェット方式」 である。 まず、パウダーベッド方式とは、材料となる粉末を敷き詰め、そこにレーザーやビームを当てていくことで、粉末粒子を焼結または溶解させて造形していく方法だ。   一方、バインダージェット方式とは、材料となる粉末を敷き詰め、そこに液体の結合材(これがバインダと呼ばれる)を噴射して固形化していくことで造形していく方法だ。  ...

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災害支援で活躍する先端3Dプリント技術──家屋の修復、仮設住宅の建造、不足物資の補填
2020年10月30日

災害支援で活躍する先端3Dプリント技術──家屋の修復、仮設住宅の建造、不足物資の補填

台風で破損した屋根を3Dプリント瓦で修復 2019年に猛威を振るった台風15号によって家屋の破損など多くの被害を受けた千葉県館山市において、東京大院生らのチームが3Dプリンターで出力した屋根瓦を使って壊れた屋根の補修作業を行なったというニュースが2020年10月27日付の日経新聞に掲載された。 3Dプリント屋根瓦が復旧にあたったのは明治初期に建てられたという同地域の交流施設である古民家「かやぶきゴンジロウ」。この古民家もまた台風15号により家屋の一部が破損していた。     かやぶきゴンジロウ(画像引用:https://gramho.com/media/1881708459613670893)     この修復プロジェクト自体は昨年より始動しており、記事によれば、同大学院修了の砂田頼佳さんが留学先のスイスで壊れた屋根を3Dプリント瓦で修復した経験が今回の作業に生かされたとのことだ。大学院チームは被災者からの需要があれば、今後もこの3Dプリント瓦の製作を続けるとしている。   コロナ支援でも活躍した3Dプリンター   こうした災害支援のための3Dプリンター活用には他にも事例がある。それこそ思い起こされるのは、今なお猛威を振るうコロナ禍において3Dプリンターが果たした役割だ。 パンデミックによって交通機関が停止したことで医療物資の流通に遅れが生じ、深刻な物資不足に陥っていた臨床現場を救ったのは3Dプリンターだった。マスク、フェースシールド、イヤーガード、人工呼吸器、検査用綿棒など、多くの必要品を現場で出力するための3Dデータが有志らによって作成、拡散されたのだ。実際に医療現場はこの3Dプリント医療品によってかなり救われたと聞いている。        あるいは中国の湖北においては不足していたコロナ感染者のための隔離病棟も3Dプリントによって増設されるということもあった。パンデミックは世界中を混乱に陥れたが、皮肉にもそうした混乱によって3Dプリンターの有用性にあらためて注目が集まることになったのだ。         48時間で2棟をプリント!? 3Dプリント仮設住宅の現在   おそらくは今後、地震やハリケーンによる災害の復興支援などにおいても、今まで以上に3Dプリンターが役立てられていくことは間違いない。その中でも3Dプリンターが顕著に有用性を発揮するであろうは、被災者の仮設住宅の建設においてである。 3Dプリンターによる仮設住宅建設に関して注目すべきは、昨年にの記事でも紹介したカリフォルニアを拠点とする非営利団体「ニューストーリー」の取り組みだ。すでに2000棟を超える3Dプリント仮設住宅の建設に取り組んできた同団体は、現在、様々な理由で適切な住居を持てずにいる人々のために、メキシコ農村地区に3Dプリンターで出力された住宅街の建造することに取り組んでいる。     メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!?...

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今すぐ始めるべき副業は「3Dプリンター」!? 間違いなく売れる出力品とは何か?
2020年10月29日

今すぐ始めるべき副業は「3Dプリンター」!? 間違いなく売れる出力品とは何か?

趣味の3Dプリンターが利益を生み出す?   ますます、普及の速度を高めている3Dプリンター。一般家庭にも浸透しつつあり、3Dプリンターを使った「ものつくり」がより広く楽しまれるようになってきている。   もちろん、これは大変に素晴らしいことなのだが、ちょっともったいなさもある。せっかく色々なものを3Dプリントしているのに、多くの場合、それが趣味の範囲にとどまってしまっているからだ。言うなればそれはDIYの家具作りと同様、せっかく作った価値のある「作品」を、自分のためだけの「もの」にとどめてしまっているようなものだ。         それが決して悪いという話ではなく、繰り返すが「もったいない」のである。3Dプリンターを興じるにもそれなりにコストはかかる。プリンター本体代は言うまでもなく、レジン代、消耗品代、場合によってはソフト代など、頻繁に使用するならば特に一定のランニングコストが掛かってしまう。現在はレジンも低価格高品質なものもあり、かつてよりはだいぶ、そのコストは低下はしているが、もしそのコストを帳消しにできる、あるいはそのコストを上回る利益を得られるとしたらどうだろうか。       これはつまり「趣味と実益を兼ねれたらより良いではないか」という話である。実際、趣味としていた3Dプリンターを使って商品を出力、販売し、少なくない副収入を得ている人たちがすでにいるのだ。 特にリモートワーク化の推進が謳われている今日、通勤時間の削減で得た時間で3Dプリンターを使用した副業に注目が集まるのは時間の問題だろう。そこで以下では3Dプリンターを使った副業について解説してみたいと思う。     どんな出力品が売れるの? 狙い目のブルーオーシャンは? さて、3Dプリンターで副業といっても、一体何を売ればいいのだろうか。 これはまさに様々あって、一概に「これが売れる」とは言えない。3Dプリンターで作れるものは多種多様、その中で市場が求めているものは何かを推測し、かつ競合相手が少なそうな「もの」を考える必要がある 。 一般によく売れるとされているのは、趣味のための道具だ。たとえば、リンク先のすでに3Dプリンターで副業をされているという方が書かれたnoteの記事においては、以下のようなラインナップがよく販売されている例として紹介されている。     【副業】3Dプリンターって稼げるの?個人で販売してみた!(再編集版)   ・クッキーの型 ・ミニ四駆の部品   ・釣り関連の道具...

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3Dプリンターによって立体再現された歴史的名画がヤフオクに出品!? ダヴィンチ、ダリ、葛飾北斎まで
2020年10月26日

3Dプリンターによって立体再現された歴史的名画がヤフオクに出品!? ダヴィンチ、ダリ、葛飾北斎まで

多様化するアートと3Dプリンター かつて「アート」と言えば主に絵画や彫刻のことだった。しかし、現代においては「アート」という言葉が指し示す範囲は非常に広い。 たとえば、演劇性の高いパフォーマンスアートや地形を用いたランドアート、あるいは映像や音楽を駆使したメディアアートなどの登場は、「アート」の主要な形式を一点ものの絵画や彫刻から空間全体を使って表現するインスタレーションへとシフトさせた。     ランドアートの代表作であるロバート・スミッソンの「スパイラルジェッティ」(出典:wikipedia)     ビデオアートの元祖と言われるナム・ジュン・パイクのテレビ彫刻(出典:wikipedia)     さらにここ20年では鑑賞者との関係性や社会活動そのものを作品化するというソーシャリーエンゲージドアート(SEA)が注目を集めており、一方には視覚ではなく嗅覚に訴えかけるオルファクトリーアートなどまでありと、実に百花繚乱、あれもこれも「アート」というヴァーリトゥードの様相を呈している。 このような多様性に富むアート業界において、アーティストたちが現在、競うように3Dプリンターを制作ツールとして使い始めているということは、以前にも紹介した通りだ。     2020年に注目すべき3Dプリンターアートを厳選紹介── オラファー・エリアソンからろくでなし子まで   特に立体造形に関しては、3Dプリンターという技術によって初めて可能になった造形もあり、注目度が高い。あるいは3Dスキャンしたデータをそのまま3Dプリントすることが可能になったことによって、対象を写実的かつ立体的に再現すること自体の意味合いは明らかに変わったとも言えるだろう。それはかつて写真機の登場によって絵画の存在理由が根底から問われ直したのと同様だ。テクノロジーはえてして「アート」の世界に改革をもたらしてきたが、3Dプリンターもまた様々な意味で「アート」の世界全体に大きな影響を与えているのである。     かつての名画を3Dプリントによって立体的に再現 一方で今、3Dプリンターと「アート」の新しい関わり方も模索されている。たとえば、3Dプリント技術による新たなる価値創出を目指すベンチャー企業メルタは、来たる11月3日、文化の日にちなんで、3Dプリンターで製作した「3Dプリント名画」の公開オークションを実施することを発表した。   これは、ある意味で、アートの世界の外側からのアートの再解釈である。再現された「3Dプリント名画」は、いずれも歴史上の重要な名画だ。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、葛飾北斎の「富獄三十六景」、サルバドール・ダリの「記憶の固執」。アートの歴史に明るくなくとも一度は目にしたことがあるような有名作ばかりである。     出典:メルタ    ...

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3Dバイオプリントは人間を「身体」から解放する── プリント人工骨を開発するA.D.A.Mが掲げる「トランスヒューマニズム」とは?
2020年10月20日

3Dバイオプリントは人間を「身体」から解放する── プリント人工骨を開発するA.D.A.Mが掲げる「トランスヒューマニズム」とは?

人間の「骨」を3Dプリントする技術 これまでもSKメディアでは臓器や血管のバイオ3Dプリンティングについては様々にレポートしてきているが、この技術にこれほど注目が集まっているのには理由がある。過去20年間で臓器移植を待つ間になくなった人は15万人超、そして、これまでの臓器移植のやり方ではこの問題は永遠に解決できないと言われているのである。では、どうすればいいのか。解決方法は一つ、それは「必要に応じて人間の臓器をプリントする」ことだ。 かくして医療分野における臓器プリント技術は日進月歩の勢いで進歩し続けているのだが、そんな中、現在では私たちの身体を形成する「骨」もまた3Dプリントの対象となってきている。 たとえば、今年の6月にはテキサスA&M大学の研究チームが、骨組織の3Dバイオプリンティングに使用できる新たなバイオインク「NICE」を開発したことを発表している。これまで、骨の3Dバイオプリントは、身体への適応においてハードルが多く、歯科医療などの限定的な部位を除いてはなかなか進んでこなかった。しかし、この人工細胞を含んだNICEバイオインクであれば、プリント後にネットワークを架橋して強力な足場を作りだし、細胞に優しい人体部位の環境を模倣することで、身体への適応が図られている。要するにNICEとは、問題なく移植可能な「人工骨」を作り出すことができるインク、というわけだ。     Source: Texas A&M University College of Engineering   まだ実験段階だが、臨床現場に導入されれば、患者に特異的な骨移植片を設計することによって、従来の治療法と比べて時間も費用も抑えた骨の欠損や損傷に対する医療を提供できる可能性があると言われている。多くの患者を救うかもしれない注目の技術だ。     3Dバイオプリントが人間を「身体」から解放する 同じく、3Dバイオプリントによる人工骨の出力を試みているのがウクライナで操業しているA.D.A.M.である。同社は、骨形成を促進し、高強度で生体吸収性の良い生体高分子材料を改質したバイオセラミックから3 Dプリント骨移植片を作るためのオンデマンド組織製造ソリューションの設計を試みている。         実際、すでにA.D.A.Mでは人工骨の製造が行われているのだが、現状ではまだFDA(米国食品医薬品局)からの承認は受けられていない。残すところは動物実験による安全性の確認となっており、A.D.A.MのCEOであるDenys Gurak氏曰く、あと1年半ほどで市場に提供できる見込みとのことだ。 この承認が通れば、少なくともまずは米国で「骨のインプラント」がより素早く、安価に行われるようになるということだが、A.D.A.Mのビジョンはさらに遠くへと向かっている。同社の最終目標は人間の「身体からの解放」だ。つまり、骨、臓器など、すべてを手軽な価格で3Dバイオプリントすることを可能にすることで、あたかも機械の部品を交換するかのように、身体を修繕、あるいは改造できる社会を作り出すことが、目標として掲げられているのだ。      ...

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3Dプリンターが再現する「極小の世界」!? 髪の毛の半分サイズのナノ彫刻が切りひらく近未来
2020年10月9日

3Dプリンターが再現する「極小の世界」!? 髪の毛の半分サイズのナノ彫刻が切りひらく近未来

様々に描かれてきたミクロな世界への想像力 2017年に公開された『ダウンサイズ』という映画をご存知だろうか? 舞台は近未来、人口爆発による資源不足、土地不足の問題を抱えた地球において危急の策として生み出された対策案、それは人間を極小化し、ミクロの街に住まわせるというものだった。「ダウンサイズ」と呼ばれるその技術は人間を13cmにまで縮小することができるもので、マット・デイモンが演じる主人公もまた、試験的に設計されたミクロの世界への移住を決める。全てがダウンサイズされた不思議な世界を舞台に展開していくこの物語は、その後、誰もが驚く予想外の結末を迎えることになるのだが…、ネタバレは避けよう。いずれにせよ、映像上で再現されたミクロ世界はなんとも生々しく、ああ、こんな未来もありえるのかもな、と他人事ではない気持ちにさせられたものである。         この手の想像力がフィクションにおいて描かれることは実は少なくない。映画でいうと『ダウンサイズ』の他にも、ミクロ化した人間がカプセルに入って人間の身体を駆け巡る『インナースペース』(1987)や、ミクロ化した子供達がジャングルと化した自宅の庭を冒険する『ミクロキッズ』(1989)あたりがまず思い浮かぶところだ。あるいは日本人であれば何よりもまず藤子不二雄の名作漫画『ドラえもん』の未来道具の一つ「スモールライト」を連想するという方も多いかもしれない。 だいたい、人間の想像力というものは、宇宙か深海、巨大か極小へと飛躍しがちなものだ。特に極小の世界への憧れというのは根強いようで、海外などにいくと、路傍で米粒に極小の絵を描いて売っている芸人さんをちらほら見かけるし、仏教では古くから修行の一つとして米粒への写経が行われてきたとかこなかったとか。確かにそう考えてみると、小学校の理科の授業においても最も興奮したのは顕微鏡で微生物を眺めたとき(いや、一番はカエルの解剖か)だったというような気がしなくもない。         このように人間を蠱惑してやまない「小さな世界」なのだが、今、この「小さな世界」を作り出すナノ3Dプリント技術が、ネット上でにわかに注目を集めているのだ。     実寸比52万分の1の超極小「戦艦大和」が話題に   発端となったのは、ツイッターにて金属部品メーカー・キャステムが運営するものづくりスペース「京都LiQビル」の公式アカウントが投稿したこちらの写真だ。       これが…コレ‼️👀#ナノ3Dプリンタ で印刷した #戦艦大和 ⚓️✨ pic.twitter.com/gxMpwsTHPx — キャステム京都LiQ【公式】Youtube始めました! (@castem_liq)...

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人気おもちゃの3Dデータを無料公開!? 大量生産大量消費を3Dプリンターが抑制する
2020年9月14日

人気おもちゃの3Dデータを無料公開!? 大量生産大量消費を3Dプリンターが抑制する

  「SDGs」から考える3Dプリンター   大量生産大量消費をベースとした生活がもはや限界にきている。 そう言われるようになって久しい。最近ではSDGsという言葉も注目を集めている。これは「持続可能な開発目標」を意味する言葉だ。背景には20世紀を通じて行われてきた産業発展のための環境破壊、資源の無駄遣いへの反省があり、環境を不必要に圧迫することのない新しい開発モデル、産業モデルが、今この「SDGs」という言葉を一つの掛け声に世界中で模索されている。         しかし、そうとはいえ、なかなか私たちの暮らしを根本から変えることは難しい。「ものを大事に」とは言うものの、ものは使っていれば壊れるし、素材、造形が複雑化した商品が多い今日では、自宅で簡単に修理できるような商品自体がそもそも少ないということもある。 あるいは、同じ商品を長く使われすぎてしまうと、製造メーカーが困ってしまう。商品のモデルチェンジは技術変革によってのみ起こるものではなく、企業が従業員に給料を支払い、経営を持続していく上での必要から起こるものでもあるのだ。 すると結局、大量生産大量消費社会は続いていく。しかし、そのような形を続けていく限り、地球環境はますます悪化していってしまい、いずれは私たち自身の首を締めることになる。これは負のスパイラルだ。 こうした事態をブレイクスルーするための技術として、ここ10年、注目を集めているテクノロジーが3Dプリンターである。         言うまでもなく、3Dプリンターとは3次元の立体物をプリントすることができるプリンターである。すでに製造の現場には3Dプリンターが広く導入されており、個人、企業を問わず「ものつくり」のあり方を大きく変えつつあるが、この3Dプリンターがより普及することで、大量生産大量消費時代を終わらせることができるかもしれない、とも言われているのだ。     3Dデータ販売を通じた究極のオンデマンド生産 工業型の大量生産は、基本的に需要を超えて生産される。言ってしまえば、余分に多く作っておくことで、欠品を防ごうとする。すると当然、売れ残りが生じ、それらはやがて廃棄されることになる。必要を超えて作ることは資源の無駄遣いであり、さらにその余ったものを捨てるとなれば、その廃棄物がさらに環境へと負荷をかけることになる。まさに不合理なシステムだ。 その点、3Dプリンターであれば、必要なものを必要なときに必要なぶんだけプリントすることができる。あるいは、商品を「もの」としてではなくデータで販売することができれば、そもそも在庫という概念がなくなる。消費者が欲しい時に欲しいもののデータを購入して自宅で出力する。必要最低限の資源で、必要最低限な「もの」だけ作られる、そんな究極のオンデマンド生産が実現するかもしれないのだ。 これこそが3Dプリンターが大量生産大量消費時代を変えると言われている所以の一つなのだが、ただ、まだこの究極のオンデマンド体制が実現しているかといえば、そうでもない。商品のデータ形式による販売についても実践している企業はごくわずかだ。しかし、状況は徐々にだとしても動きつつある。 皮肉にもそのきっかけとなっているのは、今まさに猛威を振るっているCOVID-19のパンデミックだ。感染拡大を防ぐための人の移動や物流の制限は、各国の医療現場における医療器具不足を引き起こした。そんな中、不足している医療器具をそれぞれの現場で供給できるように、3Dプリンターの無料データがネット上で次々に公開されたのである。 公開されたデータは、たとえば、防護用のフェースシールド、マスク、人工呼吸器の部品、注射器のプランジャーなどで、いずれも医療現場に欠かせない器具である。それらを現場で出力するためのデータが各メーカー、各研究所、あるいは個人によって作成、拡散されたことによって、実際に現場は大いに救われたそうだ。これは3Dプリンターの可能性を、世の中に広く周知するきっかけになった。 物流にもエネルギーが必要だ。あるいは配達員などのエッセンシャルワーカーへの過剰な負担も今回のパンデミックであらためて問題となった。商品のデータ移動による地産地消の仕組みは、そうした観点からも合理的である。今後、拡充していくことはほぼ間違いないだろう。     壊れたおもちゃのパーツの3Dデータを無償提供...

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3Dプリンターが可能にする未来のアンチエイジング! シワやシミの悩みを解決する最先端の人工皮膚とは?
2020年8月27日

3Dプリンターが可能にする未来のアンチエイジング! シワやシミの悩みを解決する最先端の人工皮膚とは?

  人工皮膚をハンディデバイスで3Dプリント 礼に始まり礼に終わる。どうも、合氣道初段、SK広報のエリナです、おすおすっ! これまで建築、医療、食、ファッション、芸術など、様々な分野における3Dプリンターの活躍を紹介してきたが、なんと今、美容業界でもアンチエイジングの部門において、3Dプリンターが革新的な技術を提供しつつあるらしい。 その気になる技術の名は3Dスキンプリンター。これはトロント大学の研究チームによって開発されたもののようで、その名の通り、スキン=皮膚を3Dプリントしてくれる技術とのことだ。この印刷された3Dスキンを顔に重ねれば、シワ取り手術やシミ取りレーザーなどを一切経ることなく、すでにある皮膚に一層、皮膚を追加する形でシワ、シミを隠せてしまうということらしい。     携帯型3Dスキンプリンター / Wonderfulengineering.com     使われるデバイスも携帯型で重量は1キロ未満。いわば皮膚に塗りつけるような形で、新しい皮膚を手にできるのである。   しかし、元々は美容目的ではなく、火傷の治療などの目的で開発された技術らしい。素材にはバイオインクが使われており、ようは患部に貼るテープの代わりとなる、人工皮膚のシートを刷り出してくれるということだ。まだ実験段階で救命現場では導入されていないようだが、これが手術室で使われるようになれば救命現場に革命をもたらすとも言われている。     (出典:University of Tronto)     この3Dスキンプリンターは、重傷を負った人の命を救い、傷跡を隠し、さらには美容技術にも転用しうるという、夢のような技術なのだ。     近未来の「美」の鍵は3Dプリンターにこそある   しかし、実を言うと、この技術が開発、発表されたのは2018年のこと。それから2年が経ち、この人工3Dスキン技術はさらなる発展を遂げているらしい。メディア「Forbes」がその最新技術について紹介しているので、内容を追ってみよう。(https://forbesjapan.com/articles/detail/33453/1/1/1) 新技術の開発を行っているのはアメリカのレンセラー工科大学。ここの研究チームでは、「生きた皮膚」の3D印刷が研究されている。記事によれば、研究チームでは「生体材料を使ったインクを結合し、移植用の皮膚を形成し、患者の肌に合わせて貼り付ける」ということらしい。 さらに、人工皮膚ではないが、このプリント技術を駆使して世界の「P&G」が、インクジェットプリンター「オプト」を開発、2020年内に発売されることをForbesは伝えている。...

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