災害支援で活躍する先端3Dプリント技術──家屋の修復、仮設住宅の建造、不足物資の補填
台風で破損した屋根を3Dプリント瓦で修復
2019年に猛威を振るった台風15号によって家屋の破損など多くの被害を受けた千葉県館山市において、東京大院生らのチームが3Dプリンターで出力した屋根瓦を使って壊れた屋根の補修作業を行なったというニュースが2020年10月27日付の日経新聞に掲載された。
3Dプリント屋根瓦が復旧にあたったのは明治初期に建てられたという同地域の交流施設である古民家「かやぶきゴンジロウ」。この古民家もまた台風15号により家屋の一部が破損していた。
かやぶきゴンジロウ(画像引用:https://gramho.com/media/1881708459613670893)
この修復プロジェクト自体は昨年より始動しており、記事によれば、同大学院修了の砂田頼佳さんが留学先のスイスで壊れた屋根を3Dプリント瓦で修復した経験が今回の作業に生かされたとのことだ。大学院チームは被災者からの需要があれば、今後もこの3Dプリント瓦の製作を続けるとしている。
コロナ支援でも活躍した3Dプリンター
こうした災害支援のための3Dプリンター活用には他にも事例がある。それこそ思い起こされるのは、今なお猛威を振るうコロナ禍において3Dプリンターが果たした役割だ。
パンデミックによって交通機関が停止したことで医療物資の流通に遅れが生じ、深刻な物資不足に陥っていた臨床現場を救ったのは3Dプリンターだった。マスク、フェースシールド、イヤーガード、人工呼吸器、検査用綿棒など、多くの必要品を現場で出力するための3Dデータが有志らによって作成、拡散されたのだ。実際に医療現場はこの3Dプリント医療品によってかなり救われたと聞いている。
あるいは中国の湖北においては不足していたコロナ感染者のための隔離病棟も3Dプリントによって増設されるということもあった。パンデミックは世界中を混乱に陥れたが、皮肉にもそうした混乱によって3Dプリンターの有用性にあらためて注目が集まることになったのだ。
48時間で2棟をプリント!? 3Dプリント仮設住宅の現在
おそらくは今後、地震やハリケーンによる災害の復興支援などにおいても、今まで以上に3Dプリンターが役立てられていくことは間違いない。その中でも3Dプリンターが顕著に有用性を発揮するであろうは、被災者の仮設住宅の建設においてである。
3Dプリンターによる仮設住宅建設に関して注目すべきは、昨年にの記事でも紹介したカリフォルニアを拠点とする非営利団体「ニューストーリー」の取り組みだ。すでに2000棟を超える3Dプリント仮設住宅の建設に取り組んできた同団体は、現在、様々な理由で適切な住居を持てずにいる人々のために、メキシコ農村地区に3Dプリンターで出力された住宅街の建造することに取り組んでいる。
メキシコの農村に3Dプリンターの住宅街が誕生!? 人類と住宅の「新しい物語」とは?
同社が開発した「バルカン2」という巨大3Dプリンターでは1台につき48時間で2棟の住宅が建設可能であり、なおかつプリントされた住宅の価格は40万~70万円という住宅としては破格の設定がなされている。
こうした技術の躍進が、今後の災害支援のあり方を大きく変えていく可能性を秘めていることは間違いない。特に日本は地震、台風など多くの自然災害リスクを有する災害国家。是非とも国家をあげて、先端の3Dプリント技術を災害支援の現場に導入していただきたいところだ。