3Dプリンターによるコンクリート革命が建築業界を塗り替える!? オランダの最先端研究に迫る
世界最長3Dプリンター橋をめぐって各国が競争
2019年9月、オランダで世界最長のコンクリート3Dプリンター橋が誕生した。
まずは写真を見てみよう。これがオランダで作られた世界最大(2019年時点)のコンクリート3Dプリンター橋だ。
制作したのはオランダのデザイナーであるミシェル・ヴァン・デル・クレイとアイントホーフェン工科大学。なんでも国家的なプロジェクトでもあるらしく、今回は世界最長となる全長28mの3Dプリントコンクリート橋を完成させたということだ。
今回はプリント施設Printfabriekを利用し39個の部品に分割造形された後、組立て作業を行なったという。いずれにしてもこの斬新な形状。圧巻である。
実はいま、この3Dプリンティングによるコンクリート橋をめぐっては各国が競い合うようにして建設している。2019年の1月には上海で、当時の最長となる3Dプリントコンクリート橋が設置されて話題になったばかりだ。
要するに、競い合うことで開発が活発化しているというわけであり、中でもそのトップにいるのがオランダというわけだ。今回の橋の建設もそうだが、実はその後にもまたさらなる進展がある。
3DコンクリートプリンティングでCO2排出量を削減
世界最長の橋が架けられた2019年9月、実はオランダに拠点を置く3Dプリンティング企業VerticoとGhent大学の二つの組織が力を合わせて、これまでにない超巨大規模でのコンクリートの印刷を成功させるというニュースもあった。
サイズとしては先ほど紹介した橋よりも小さい。しかし、ここで注目すべきは、これが分割ではない1回の出力によるもの、ということだ。この橋の製造にあたっては現在の最先端の新技術が導入されているんだが、この新技術ではコンクリートを一層ごとに堆積することで成型が行われている。今回はそれを今まで以上に大規模なサイズで試みたというわけだ。この成功によってコンクリート建築技術を来たるべき大転換へとまた一歩近づいたと言えるだろう。
そもそも、これまでコンクリートで形を作る上ではまずコンクリートを流しこむ金型が必要とされてきた。液体を固めるには何か形を決める型が必要だ。身近な例でいうと、氷を作る時に使用する型などもそうだ。
しかし、3Dプリンターによって堆積して成型が可能になったことで、その金型なしでもコンクリートを成型することができるようになった。つまり、単純に考えてもこれまで必要だった金型の作成という手順が省略され、作業工程が半分になったのだ。
さらに、金型を経由しないことで、コンクリート構造体により多くの完成自由度がもたらされることになったらしく、今までは金型の特性上、技術的に難しかったような形状のコンクリートも、この方法によって作れることになった。
実際、バーティコの創設者のVolker Ruitingaはプレスリリースで、「この橋は、3Dコンクリートプリンティングのさらなる可能性を示しています。バーティコでは、この技術が建築物の建造を最適化しCO2排出量を削減するとともに、建設業の生産性を向上させる鍵となると考えています」と述べている。
土木建築分野において、コンクリートの製造によって排出されてるCO2量は実に全体の4分の1を占めている。特にユニークな形や有機的な形状のコンクリート建築を作ろうとした場合、そこで生じる環境コストというのは非常に大きなものだった。この3Dプリント技術を通じたイノベーションによって、そこが大幅に削減されるとのことだ。
バーティコ社は橋に続いてコンクリートのドームハウスの3Dプリントに取り組んでいる。いずれにしても3Dプリント技術がコンクリート業界を刷新することは間違いない。