
味気ない老人食をカラフルに! 3Dプリンターによって老後の食生活が一変する!?
高齢者や要介護者のためのフードプロジェクト
飽食の時代と言われる昨今ではあるが、なんでもお腹いっぱい食べれるというのも若さの特権だ。大好きなものを思う存分食べることができると言うのは、健康な臓器があり、歯とあごが丈夫な若いうちだからこそ。年齢とともに徐々に筋肉が弱っていったら、たとえば硬い肉などはそうそう噛みきれなくなる。
それゆえ、噛みやすさ、飲み込みやすさを追求した老人食というものは否応なしに「味気なく」なってしまう。しかし、そうした老人食の味気なさが、3Dプリンターによって彩り豊かなものに変わりつつあることをご存知だろうか。
実はもう何年も前から「3Dフードプリンターが老人食を変える」というのは言われてきている。2014年には高齢者や要介護者のための3Dプリントフードプロジェクト「PERFORMANCE」が、欧州で立ち上げられている。
しかし、なぜ3Dプリンターが老人食を変えるのか。
そもそも老人食において大事なことは先に触れた通り「硬くない」ということだ。高齢者や要介護者は固形物を上手に食べることができない人が多いため、どうしてもスープ状のものやお粥みたいな味気ないものになってしまいがちなのだ。栄養価としては、そうした流動物でも適切なコントロールによって満たすことができるだろう。しかし、人は食事を栄養価のためだけではなく、楽しみとして享受している。食感の乏しく、見た目に華やかさのない食ばかりでは、精神衛生的にはあまりいいとは言えないのだ。
その点、食べ物を層ごとに形成する3Dフードプリンターであれば、通常の調理よりも、見た目や食感を重視した食事を提供することが可能になる。たとえば硬いものは食べれないけど、どうしてもジューシーなステーキを食べたいという人がいた場合、3Dフードプリンターであればジューシーなステーキの見た目と風味を持った、柔らかい食べ物を作ることができたりする。
あるいは高齢者、要介護者と一口に言ってもその状態は様々だ。今まではそれぞれに応じたレシピで、それぞれに応じた料理を作るということがコスト的にもなかなか難しかったのだが、3Dフードプリンターであれば、そうした細かい状態に応じたニーズにも簡単に応えることができるようになるのだ。
「食のデジタル化」によって死ぬまでグルメを堪能
果たして老人食の3Dプリント技術の導入は着実に進んでいる。
たとえば2019年の頭には、スウェーデン南部のいくつかの老人介護施設で3Dプリントフードの導入を年内に実践するということが発表され、実際に導入された。あるいは施設などだけではなく、デリバリーサービスの実装も検討されているらしい。
もちろん人生100年時代なんて言われている日本にとってもこれは非常に重要な技術であり、農林水産省も高齢者の食事のパーソナライズ化に3Dプリンター技術が大いに資することを踏まえ導入の検討を進めているようだ。環境問題への貢献、医食同源の実現、働き手不足の解消などなど「食のデジタル化」が様々な問題を克服するかもしれないとする論文も発表されている。
政策Open Lab/Food Tech( 3Dフードプリンタ)チーム
3Dフードプリンタの影響と可能性について
あるいは山形大学も3Dプリンターを用いた介護食の開発に取り組んでいる。おそらく、あと数年で飛躍的に伸びていく分野となるのではないだろうか。
ちなみに筆者がひそかに期待しているのは、この技術がダイエットフードに応用されることだ。ダイエット中にドーナツがどうしても食べたくなる、あの地獄の苦しみを3Dプリントフードが救ってくれる日を心待ちにいしている。