「Nova Meat」が開発する3Dプリント人工ステーキ「Steak 2.0」とは?
私たちは肉食を諦めなければならないのか
今日、地球環境に対しては様々な警鐘が鳴らされているが、その中でも最も注目されているのが気候温暖化だ。この気候温暖化の原因になっているものの一つに畜産業がある。実に現在発生している温暖化ガスの20%がこの畜産によって発生していると言われているのだ。
お肉は美味しい。筆者もまたお肉なしでは生きていけない体だ。しかし、とはいえ、環境破壊も食い止めなければいけない。なんせお肉を美味しく食べるためには、まずもって生きている必要があり、生きていける環境が必要だからだ。
では、どうすればいいのか。私たちは肉食をもう諦めなければならないのか。
このどん詰まりを救済しようとしているのが3Dプリント人工肉だ、ということについては、以前にも別の記事でredifine meetの3Dプリント代替肉を紹介したことがある。ただ、この問題に取り組んでいるのはredifine meetだけではない。今回は、また違う取り組みを紹介してみよう。
見た目、食感ともに精巧な代替肉ステーキ「Steak 2.0」
今回、取り上げたいのはスペインのバルセロナに設立されたスタートアップ「Nova Meat」という会社だ。その「Nova Meat」がバイオ3Dプリンターを使って、見た目、食感ともに精巧な代替肉ステーキ「Steak 2.0」を開発したらしい。
CEOのギャスパー・サイオンティさんは組織工学分野の科学者であり、この「Steak 2.0」ではそうした先端科学、特に動物の細胞組織に似た組織を作る技術を応用する形で、代替肉を作成したらしい。
材料となっているのはエンドウ豆や海藻、ビートルートの絞り汁など。Nova Meatの技術は、“顕微鏡レベルで植物由来のタンパク質の構造を微調整することができ、ビーフステーキ、鶏胸肉、マグロステーキなどの動物肉の質感、外観、栄養および感覚特性を模倣する”ことが目指されている。
つまり、厳密には「お肉」ではない。しかし、見た目、質感まで精巧に再現されており、食べる側としては「お肉」でしかないという。もとより大豆は「畑の肉」とも呼ばれるほどタンパク質が豊富だが、今回はそうした栄養面を維持しつつ、食感などではリアルな「お肉」感を再現している。
(画像引用)Nova Meat
さらに優れているのは費用だ。現状、生産費用は50gあたり1.5ドルほど。かなりお手頃な値段だと言える。サイオンティさんいわく、この「Steak 2.0」は、これまでに開発された人工肉の中でも、最も現実的な植物をベースにしたステーキになっているとのことだ。
レストランやスーパーへの導入はいつから?
さて、一体どこでそれが食べれるのか?
前に記事にしたRedifine Meatの人工肉、あるいはAtlas FoodやEmergency Foodsといった様々なスタートアップ企業が本物そっくりの人工ステーキの開発を行っているのだが、いずれも製品を市場に出してない(2020年初旬時点)。
その点、「Steak 2.0」に関して、サイオンティさんはあるメディア(https://thespoon.tech/novameat-unveils-version-2-0-of-its-3d-printed-meatless-steak/)に対し、2020年の終わりにはヨーロッパのレストランに彼のステーキを小規模で売り始めたいと語っていたようだ(実際にミシュランの2つ星レストランとコラボレーションなどが行われ始めている)。2~3年以内にはライセンスを取得し、5年を目安に一般のレストランやスーパーマーケットへの導入を目指すらしい。
サイオンティさんは「私たちの技術がさまざまな材料で機能することを実証することは、生物多様性を支援し、持続不可能な単一栽培や森林破壊の慣行と闘うことを目的としています」とエコロジー意識の高さもアピールしており、「Nine Innovators to watch the2019’Smithsonian Magazine」 に選ばれ、欧州議会、国連、TEDxのイベントに招待されている。「3Dプリントに期待される大きなブレークスルー」を牽引する人物として、いまや注目の一人だ。
(画像引用)Nova Meat
現在、3Dバイオプリンターによる人工肉の世界は群雄割拠の様相を呈している。ちなみに、今日話したような植物性由来の人工肉ばかりではない。たとえば、Memphis Meatsなどの動物細胞から本物の肉をプリントしている企業もある。今後も3Dプリント人工肉の技術的進展から目を離せない。