
「砂で家を建てる」と聞いて、現実的だと感じる人はほとんどいないかもしれません。
砂は崩れやすく、形を保つのが難しい素材です。しかし、その常識にあえて挑戦している人たちがいます。Tùr House(トゥール・ハウス)という建築プロジェクトです。
この構想を手がけているのは Barry Wark Studio。Tùr Houseは、砂を3Dプリントして作ったブロックを組み上げることで成立する住宅を想定した、実験的な建築研究プロジェクトです。
重要なのは、これが「すぐに実用化される住宅」を提案しているわけではない点です。このプロジェクトはむしろ、これからの建築がどうあるべきかを問い直すための、思考実験に近い存在。
とはいえ、砂の家が実現したらとても面白いことは間違いありません。
「建てて終わり」ではない建築の発想
Tùr Houseが描いているのは、完成したら固定される家ではありません。分解でき、組み替えられ、必要に応じて形を変えられる構造を前提とした建築です。
砂という素材も、理想的にはその土地で調達できるローカルな資源を想定しています。壊して廃棄するのではなく、使いながら形を変え、役目を終えたら別の構成に再利用する。Tùr Houseは、建築を「完成品」ではなく「変化し続けるシステム」として捉えています。
この考え方は、3Dプリント技術と非常に相性が良いものです。3Dプリントは同じ形状を繰り返し作るのが得意でありながら、データを変えるだけで簡単に別の形を生み出せます。その特性を建築に持ち込むことで、住宅を一度きりの構造物ではなく、再構成可能な要素の集合体として扱おうとしているのです。

砂をプリントした「外殻」が住空間を包む
Tùr Houseは、複数の砂製3Dプリントブロックを積み上げ、3Dプリントされた柱によって全体を支える構造になっています。具体的なプリント方式や、砂をどのように固めるのかといった技術的な詳細は公開されていませんが、ブロック自体はかなりの厚みを持つ設計です。その理由は断熱性能にあります。
完成イメージでは、居住空間の外側を砂ブロックが包み込むような構成になっています。まるで段ボールが中身を保護するように、砂の外殻が環境から内部を守る役割を果たします。

その内側には、人が実際に暮らすための空間が用意されています。外見は前衛的ですが、内部の構成は意外と現実的で、1階には共有スペース、2階にはプライベートな空間が配置されています。「住む」という行為そのものは、きちんと建築として成立するよう考えられているのが分かります。
モジュール建築としての3Dプリントの可能性
このプロジェクトが示しているのは、3Dプリント建築が持つモジュール性の強みです。ブロック単位で構成されているため、必要に応じて一部を取り外したり、別の配置に組み替えたりすることができます。将来的に用途が変われば、同じ部材を使ってまったく異なる空間を作ることも可能でしょう。
こうした発想は、資材の無駄を減らし、環境負荷を抑える建築の在り方とも強く結びついています。建築物を「壊す」のではなく、「組み替える」対象として扱う。この視点は、これからの建築においてますます重要になっていくはずです。
実現性よりも「問い」を投げかける
正直なところ、Tùr Houseがこのまま現実の住宅として建設される可能性は高くありません。強度、耐候性、法規制など、越えなければならない壁は数多く存在します。それでも、このプロジェクトが持つ価値はそこではありません。
Tùr Houseは、建築と素材、そして3Dプリント技術の関係を、まったく別の角度から考えさせてくれます。建築は本当に固定された存在である必要があるのか。素材は一度使ったら終わりなのか。3Dプリントは、単なる施工手段にとどまるのか。そうした問いを、非常に分かりやすいビジュアルとコンセプトで提示している点に、このプロジェクトの面白さがあります。
砂の家は、今はまだ構想の中の存在です。しかし、その構想があるからこそ、次の現実的な技術やアイデアが生まれる余地があります。Tùr Houseは、3Dプリント建築が向かう未来の一端を静かに、しかし確実に示しているプロジェクトだと言えるでしょう。
Barry Wark Studio
https://www.barrywark.com/homepage
3Dプリンターをお探しですか?
SK本舗は国内最大級の3Dプリンター専門店です。Bambu Lab・Elegoo・Anycubic等の正規代理店として、安心のサポートをお届けします。
