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500年の和菓子作りに3Dプリンターが入った日 — 虎屋『千丈の翳』とBambu Lab H2D Pro

虎屋の特製羊羹「千丈の翳」
3Dプリンタを活用して制作された虎屋の特製羊羹「千丈の翳(せんじょうのかげ)」。長く伸びる稜線が印象的な特製羊羹(編集部にはステゴサウルスの背を思わせる造形に映りますが、形状をめぐる解釈は筆者の印象です。虎屋・Brule等の発表資料に恐竜・ステゴサウルスへの言及はありません)。(画像:Brule Inc. 公式進捗報告ページより引用)

2026年3月27日、500年以上の歴史を持つ和菓子の老舗 株式会社虎屋東京大学大学院工学系研究科 国際工学教育推進機構 ものづくり部門、そして3Dプリンタ専門商社 Brule Inc. の3者が、2024年6月から進めてきた共同プロジェクトの 進捗報告 を行いました。

そこで披露された一品が、虎屋の実験ブランド toraya_lab(とらやラボ) が手がける特別な羊羹『千丈の翳(せんじょうのかげ)』 — 長く伸びる稜線が印象的な菓銘の特製羊羹です(編集部にはステゴサウルスの背を思わせる造形に映りますが、これは筆者の印象であり、虎屋・Brule等の発表資料に恐竜・ステゴサウルスへの言及はありません)。「千丈」は「非常に長い」ことを意味し、長く伸びる輪郭から命名されたといいます。

この羊羹の繊細な輪郭線を実現したのが、Bambu Lab H2D Pro(大型FFF式3Dプリンタ)でした。羊羹『千丈の翳』自体の販売はすでに終了していますが、3Dプリンタが伝統的な和菓子づくりにどんな新しい表現を持ち込んだのか — その答えがこの一品に詰まっています。

「3Dプリンタじゃないと作れなかった」極めて細密な輪郭線

連続する鋭利な輪郭、左右非対称の曲面、そして長く伸びる稜線 — 公式が「極めて細密で美しい輪郭線」と表現したこうした意匠を、従来の手彫り木型で再現するのは 極めて手間と時間がかかる作業 でした(編集部にはステゴサウルスの背を思わせる造形に映りますが、これは筆者の印象です)。

Brule公式の進捗報告によれば、Bambu Lab H2D Pro を使うことで「途切れずに連続造形ができ、輪郭線を美しく再現できた」とされています。3Dプリンタは、和菓子の世界に 「これまで諦めていた意匠を可能にする道具」 として入ってきたと言えます。

Bambu Lab H2D Pro
採用された Bambu Lab H2D Pro。デュアルノズル+大型造形エリアを特徴とする産業/教育研究向け機種です。(画像:ライブドアニュース掲載 / 一次ソース:プロジェクト発表会資料)

なぜ和菓子に3Dプリンタなのか

和菓子の造形を支えてきたのは、職人が彫る 木型(きがた) です。木型は数百年単位で受け継がれてきた工芸の結晶ですが、同時に 新規制作には時間とコストがかかる という現実もあります。複雑なシルエット、細い線、左右非対称の曲面 — そういった「これまで作りにくかった意匠」が、3Dプリンタなら 二次元構想からの立体化が短時間で可能 になります。

このプロジェクトでは、3Dプリンタを「木型を置き換える道具」としてではなく、新しい表現領域を切り開く道具 として位置付けているのが特徴です。さらに東大ものづくり部門は、3Dプリンタだけでなく 3Dスキャナーで既存の和菓子木型を高精度デジタル化 し、デジタルアーカイブから次世代商品開発へ直接活用するアプローチも進めています。

3者それぞれの役割

機関 担当
株式会社虎屋(toraya_lab) 500年以上の和菓子製造技術/実験的菓子開発
東京大学 ものづくり部門 機械加工・3Dプリンタ・三次元計測技術
Brule Inc. 3Dプリンタの選定・導入・技術サポート

これは「3Dプリンタの第3局面」

3Dプリンタの利用シーンは、ここ十数年でこう広がってきました。

  • 第1局面(〜2010年代): 試作・プロトタイプ
  • 第2局面(2010年代後半〜2020年代前半): ホビー・教育・小ロット製造
  • 第3局面(2020年代後半〜): 既存の伝統工芸・専門領域への浸透

虎屋プロジェクトは、まさに第3局面の象徴例です。3Dプリンタが「ものづくりの専用道具」から、「あらゆる表現領域に入り込むインフラ」 に移行しつつあります。500年続いた木型文化に新しい一章が加わった、その瞬間に立ち会えたニュースだと言っていいでしょう。

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