SK本舗ユーザーのリレーコラム FDM編 #07「FDM式3Dプリンターでコスプレマスクを作る」|栗8

FDM式3Dプリンターでコスプレマスクを作る

皆様、初めまして。

リレーコラム企画、第7回は赤井キキさんよりバトンを頂きました、わたくし栗8が担当させていただきます。

近年の家庭用3Dプリンターは安価で高品質、UIやサポートも分かりやすくなり、いよいよ一般家電レベルにまで敷居が下がってきたと感じています。

自身の創作物が気軽に立体化できる喜びは格別ですよね。やはり立体物は生の実物を見て欲しいですし、手に取って触ってみて欲しいと思うものです。

だからこそ「ハンドメイド系のイベントや模型イベントに出展してみたい」と思う方は少なくないはずです。

私自身もその一人でしたが、出展にあたっては少し不安がありました。それは「大衆の前で素顔を晒すのがあまり得意ではない」という点です。なのでこの記事では、FDMプリンターを駆使してイベントに使用するフルフェイスのコスプレマスクを製作した経験をご紹介します。

① 頭部サイズの測定

完全プラスチック製となる今回のマスクは柔軟性が無いため、CADでモデルを作成するにあたり、まずは自身の頭のサイズと形状を詳細に知り、ぴったりのサイズに仕立てる必要があります。専用の測定器具などは持ち合わせていないため、今回は身近なモノで測っていきます。

頭部サイズ測定のセットアップ(大きめのブックスタンド2つ)

使用するのは、ブックスタンド(大きめ)×2、メジャー又は物差しです。

ブックスタンドと物差しで頭部の実寸を測る様子

テーブルなど平面上にこのようにセットし、ブックスタンドの間に頭・顔を挟むことで実寸の頭部サイズを測ることができます。キツくなりすぎないよう、実際のサイズ+2〜3cm程度を製作サイズにすると良いと思います。

また、合わせて、視線確保のための目の高さ、着脱時に痛くならない耳の位置、顎の可動範囲等も考慮しておくとよいでしょう。

② モデル作成

普段私は変形ロボットなどを中心としたおもちゃの創作を行っているため、イベントでは"おもちゃを売るおもちゃ"をコンセプトに、一目で玩具のロボットだとわかるデザインのモデルを作成しました(半分くらいは趣味ですが)。

コスプレマスクのデザイン案ラフスケッチ

Fusion360で作成したロボットマスクの3Dモデル

ご参考までにFusion360での造形手順を簡単に解説いたします。

Fusion360の操作画面

まず、モデルのサイズ感や装着時のイメージをしやすくするため"キャンバスを挿入"から自身の正面の写真を取り込んでおくことをお勧めします。目・鼻・口・耳の位置を参照したい方は横向きの画像も追加するとよいでしょう。

正面写真をキャンバスとして取り込んだFusion360画面

フォームモデリングで顔のベースを造形する様子

2mm厚でシェル化し、目をくり抜いた顔パーツ

今回フェイスパーツは別パーツで造形のため(理由は後述)、まず顔部分のモデルから作成します。フォームモデリングにて、顔が収まるようにモデルを造形。2mm程度の厚みでシェル化し、画像を参考に視界がとれる位置に目をくり抜きます。

頭部サイズを参考にマスク本体を造形する様子

マスク本体の3Dモデル(側面)

マスク全体の3Dモデル

顔ができたら、イメージ画像と事前に測定した頭部サイズを参考に、お好みのマスクを造形します。この時、下から被る際に耳や鼻に引っかからないよう、頭の通り道に注意しましょう。また、後頭部下部を斜めに削っておくと、フチが首に当たらずに上を向く余裕ができます。

通気孔・耳まわりの開口を設けたマスクの3Dモデル

マスク内部に組み込む換気ファンのマウント

造形に関わる部分ですのでお好みで、通気性のための穴や、耳を塞がないための穴を開けると良いと思います。

印刷可能サイズに合わせてパーツを分割したモデル

完成形のマスク3Dモデル(レンダリング)

私が使用する3Dプリンターは言わずと知れた Bambu Lab A1 mini です。印刷可能サイズにパーツを分割していきます。

接着代を追加した部分(赤丸)

はめ込み構造の断面(赤丸)

パーツ接合部の断面

接着剤で組み立てる場合は、このとき"接着代"を追加しておくと、接着の表面積が増え、よりしっかり接着できます。

③ プリント

プラスチックの塊を被る訳ですので、首が疲れないようできるだけ軽量にするためインフィル密度は低めでプリントします。今回のモデルは10%で全てのパーツをプリントしました。

また、顔に密着する造形物であるため、素材は非毒性で人体に安全なオールPLAです。

長時間のプリントになるため、プリント毎にグリスアップを推奨します。

Bambu Lab A1 miniでパーツをプリントする様子

プリントが完了したマスクの全パーツ

およそ40時間のプリントを経て、全てのパーツが揃いました。

④ 組み立て

堅牢に仕上げるため組み立てはネジ止めで行いたいところですが、軽量化のためあえてほとんどの部分をはめ込みと接着剤での組み立てにしています。しかし、せっかくCADで設計しているので、ちょっとした電飾とギミックを仕込んでみることにしました。以下の素材はほとんど百均で用意できます。

組み立てに使う材料(PCファン・発光ユニット・磁石など、ほぼ百均で調達)

後頭部に換気ファンを組み込む位置のモデル

フルフェイスのコスプレマスクの問題点は通気性です。熱がこもれば夏場の装着は危険ですし、吐息などで視界が曇ってしまうこともあるため、このマスクは後頭部のみビス止めで取り外し可能にしており、内側にファンを仕込めるようにしています。使用したのは、リサイクルショップのジャンクコーナーで数百円で買えるPCファンを、簡単な改造でUSB給電で使えるようにしたものです。

マスク後頭部の内側に取り付けた換気ファン

USBハブにまとめたマスク内部の配線

後述の発光ユニットを含め、全てのユニットがUSB給電なので、小難しいはんだ付けなど必要なく、USBハブにまとめるだけで電飾の搭載が完了します。

⑤ 完成

完成したロボット型コスプレマスク(正面)

完成したマスク(側面)

完成したマスク(後頭部・通気口)

プリントパーツを組み立て、ギミックを詰め込んで完成です。

ライオンボード等で制作したマスクよりは少し重いですが、3D上で先んじて造形を練れるというのはかなりの強みで、ギミック等の構造を含めてかなりスムーズに組み上げることができました。

以下は、ご参考までにちょっとした工夫点を紹介します。

フェイスパーツを装着した完成マスクの正面

耳まわりのパーツ拡大(黄色のアクセント)

後頭部下部を斜めにカットした造形

顎の下まで覆うフェイスパーツはネオジム磁石で着脱可能にし、装着時に後付けする構造にすることで、下から素顔が覗かないようにしました。水分補給等も、フェイスパーツを外すだけで行うことができます。

バイザーを下ろして発光させた状態

眼部を青く発光させたマスク(正面)

額のパーツに仕込んだバイザーを下ろし、発光できるようにしました。完全に視界が損なわれるためロマンでしかありませんが…。

上記の発光ユニットや換気ファンはUSBハブによって一本のケーブルにまとめられ、モバイルバッテリーから給電しています。電子工作に覚えのある方なら、ボイスチェンジャーや拡声器を仕込んでみるのも良いと思います。

マスクを装着し、モバイルバッテリーで給電する様子

イベント会場でマスクを着用する筆者

▲イベントにて実際に着用する筆者

⑥ まとめ

FDM式プリンターでコスプレマスクを作る利点としては、以下の点が挙げられます。

  • コスプレ経験や手造形の心得が無くても着手できる
  • 造形に取り組む前に、充分に構造や造形の検討ができる
  • PLA素材を使用することで人体に安全
  • イベント等において、自身が作品の世界観をアピールすることができる

3Dプリンターを用いたコスプレ用品制作は、コスプレイヤーさんの手助けになるのは勿論、イベントにおいて自身の作風を纏ってアピールする手段としても使えると思います。

最近ではコスプレ用品向けの、後処理や塗装のしやすいPLAフィラメントというのも登場していますね。3Dプリンターの一般家庭への普及に伴い、創作コスプレの敷居も下がってきているのかもしれません。

皆さんも自分自身の成りたい姿になって、創作表現の幅を広げてみてはいかがでしょうか!

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

以上、栗8が担当しました。

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