SK本舗ユーザーのリレーコラム FDM編 #01「BambuLab 自動化のススメ」|Psych0h3ad
プリンター1台でも生産能力が数倍に!
3Dプリンターで普段作っているアイテムのサイズを考えてみてください。ベッドサイズギリギリであったりマルチカラー印刷が多く20時間以上かかるので毎回印刷完了時に次の印刷が開始できるなら3Dプリンター本体が多い方が捗るかもしれません。
最近はBambuLabの3Dプリンターを始めとし、初心者の方でも扱いやすい3Dプリンターが増えてくるなか、3Dプリンターで印刷して販売を始めた方も少なからずいらっしゃるかと思います。
そんな中印刷タスクが増えてきてマシンを増やしたいが予算が厳しい、場所が問題、一時的な需要増などの問題に直面したことはありませんか?印刷できる時間に合わせて帰ったり夜中に起きたりされている方もいるかもしれません。
今回は沢山印刷しなければならないという人に向けて3Dプリンターの「自動化」を紹介していきます。
なるべく低予算志向の場合
傾斜式自動排出方法
3Dプリンターを傾けた状態で使用し、印刷完了後に冷えたら自動で落ちるのを待つタイプです。この方法は追加コストがほとんどかからない一方で、いくつかの注意点があります。
造形物が破損する可能性があることや、落下しなかった場合に次の印刷で巻き込まれてしまうリスクがあります。また、プリンターの傾斜角度や造形物の形状によっては、うまく落下しない場合もあるため、事前のテストが重要です。
ヘッド押し退け方式
3Dプリンターのヘッドで印刷物を押し退けて次の印刷へ移行するタイプです。この方法も低コストで実現できますが、ヘッドに本来意図していない力のかかり方をさせてしまう場合があるため注意が必要です。
プリンターヘッドの精度や寿命に影響を与える可能性があるため、長期的な運用を考える場合は慎重に検討する必要があります。また、形状や素材によって押し退ける際の力加減や方向を適切に設定しないと、プリンターの故障につながる恐れもあります。
一例として Farmloop Stage 1

これらの低予算方法は手軽に始められる反面、安全性や信頼性の面で課題があることを理解した上で実施することが重要です。
追加で自動化キットを買う方法
有名なものだとA1 mini向けのSwap Modが挙げられますね。
SwapModはA1 mini本体に改造を加えずに連続印刷することが可能になるサードパーティキットです。価格は約70ユーロ(約10,000円)程度で、3Dプリンターの自動化としては比較的手頃な価格設定となっています。

最大で10〜15枚ほどビルドプレートをセットし、印刷が終わるたびにビルドプレートを自動的に剥がして次のビルドプレートをセットします。このシステムにより、長時間の無人運転が可能になります。
A1 miniサイズだと特に印刷時間が短いケースが多く、3Dプリンターは常に動かしたいけどなかなか会議があったりで手をかけられないということは多いのではないでしょうか。

例えば8時間外出している間に2時間で終わる印刷をする場合、通常は1プレート分のみしか印刷できません。SwapModを使った場合は4プレート分収穫することが可能です。朝出かける前に1回、帰ってきて1回、寝る前に1回で通常は3個1日に印刷できると仮定します。そんな中売り上げが好調で2週間で100個印刷しなければならなくなった場合どうでしょう?
同じことを仮にSwapModなしで行おうとするとプリンターが追加で3台ほど必要になってきます。
あくまで全て印刷が成功した前提ではありますが9日間でSwapMod導入の場合達成可能です。

安定性と保証
目を離している時間も多くなるため定着が安定しているプレートを事前にチェックしてみるのもおすすめです。SwapModは機械的なシステムのため、電子部品の故障というものはなく、長期間の安定運用が期待できます。

また、A1 mini本体を改造する必要がないため、メーカー保証を維持したまま自動化を実現できる点も大きなメリットです。
その他自動化ソリューション
OTTOejectシステム
OTTOejectシステムは、現在Kickstarterでクラウドファンディングを行っている革新的な3Dプリンター自動化プロジェクトです。

このシステムは、完成した印刷物を自動的に排出し、新しいプリントベッドをロードする自動排出システムです。SwapModとは異なり、より幅広い3Dプリンターに対応することを目指しており、デスクトップ3Dプリンター全般の自動化を実現します。
画像で見ることができるように、OTTOeject MK1は既存の3Dプリンター(この場合はBambu Lab X1 Carbon)の横に設置され、印刷完了後に自動的に印刷物を取り出して専用の収納ラックに整理します。黄緑色の鮮やかなデザインが特徴的で、複数の印刷物を段階的に保管できる構造になっています。
Kickstarterでは目標額を達成しており、多くの3Dプリンティング愛好家から注目を集めています。ニュージーランドの5名のメンバーによって開発されており、3Dプリンティングプロセスの完全自動化を目指しています。
DHR Engineering - 産業レベルの自動化
個人向けではありませんが、ヨーロッパのDHR Engineeringのものだとロボットアームなどを利用したタイプの自動化が可能です。

DHR Engineeringは、ブルガリアのプロヴディフに拠点を置く企業で、CNC/3Dプリントの自動化を強味としています。同社のソリューションは、X1C/P1S/X1Eなど様々なBambuLab 3Dプリンターに対応が可能とのことです。
このシステムでは、多軸ロボットアームを使用して印刷物の取り外し、新しいプレートの設置を自動化することができます。画像からも分かるように、複数の3Dプリンターを同時に管理し、大量のフィラメントスプールを整理された状態で保管できる本格的な産業設備となっています。
産業レベルの精度と信頼性を提供し、大規模な3Dプリンティング運用に適しています。ロボットアームによる精密な動作により、人間よりも一貫性のある品質で作業を継続できるのが大きな特徴です。
ただし、このレベルの自動化システムは非常に高価で、主に企業や研究機関での利用を想定しています。個人のメイカーには現実的ではありませんが、3Dプリンティング自動化の最先端技術として注目に値します。
ケースバイケースでカスタムソリューションを提供しているため、一概にだいたいこのセットアップならいくらというオープンな価格はないため、会社への導入を検討したい方はぜひ問い合わせてみてください。
今後の展望
3Dプリンターの自動化技術は急速に進歩しており、今後さらに多くのソリューションが登場することが予想されます。特に、AI技術の発達により、画像認識で印刷品質の自動判定や最適化も更に優秀になると思います。
3Dプリンターの自動化は、単なる効率化ツールを超えて、新しいビジネスモデルや創作活動の可能性を広げる重要な技術となっています。自分の用途と予算に合った自動化ソリューションを選択し、3Dプリンティングライフをより充実させてみてはいかがでしょうか。
