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FDMの印刷速度の推奨値

Q. FDMの印刷速度(mm/s)はいくつが適正?

印刷速度は造形時間を決める最大要因ですが、上げすぎれば表面品質・寸法精度・層間接着がすべて悪化します。機種世代(高速CoreXY世代/従来カーテシアン世代)と素材で最適値が大きく変わるため、分けて考えます。

結論:従来機で50〜120mm/s、Bambu Lab X2D等の高速機で最大500mm/s、TPUは20〜40mm/s

「速度はmm/sという単一の数字で決まらない」という前提を持つのが先決です。Bambu Lab X2D(X1 Carbon後継)はCoreXY+入力整形(Input Shaping)により最大500mm/sを謳う一方、従来機では50〜120mm/sが品質と両立する実用域です。素材・パーツ種別・機構で推奨値は大きく異なります。

機種・素材別の印刷速度レンジ

区分 典型速度 備考
従来機(Ender系・Prusa MK3S等) 50〜120mm/s 60〜80mm/sが品質と速度の両立点
高速CoreXY(Bambu X2D/P1S、Prusa XL等) 150〜500mm/s X2D(X1 Carbon後継)は最大500mm/s。通常は200〜300mm/s付近を常用
TPU(95A中心) 20〜40mm/s ボーデンは15〜20mm/s、硬めの95Aは40〜80mm/s可の銘柄も
CF混練・高強度素材 50〜100mm/s 溶融量が増えるため速度は控えめに

※ 出典:Bambu Lab X1 Carbon/X2D 公式スペック、Prusa Knowledge Base「Flexible materials」、Overture「TPU Print Settings」等の公開値。

判断基準:パーツ種別で速度は分ける

  • 外壁(Outer Wall)が最重要:表面に出る壁は遅めに設定します。従来機なら25〜40mm/s、高速機でも内壁の半分程度に落とすのが定番です。
  • インフィルは最速で:見えない部分なので、機構の上限まで攻めて時間短縮します。
  • トップソリッド/第一層は抑える:天面の仕上げと、プレート定着のためにそれぞれ外壁と同等〜やや遅めにします。
  • 加速度(Acceleration)が実質の律速:速度上限を上げても、加速度が低ければカーブや短辺で実効速度は伸びません。Input Shaping対応機は加速度を上げられるため、数字以上に速く印刷できます。

注意点

  • 最大速度=実用速度ではない:X2Dの500mm/sは直線部の瞬間値で、通常造形での平均速度はその半分以下になることが多くあります。「機種スペック=常用速度」と誤解しないことが重要です。
  • TPUは速度が最重要パラメータ:温度を上げるより速度を下げるほうが効きます。Bowden機構は特にシビアで、20mm/sを起点にするのが無難です。
  • ノズル径で流量の上限が変わる:0.4mmノズルは溶融量に限界があり、物理的に300mm/s超で詰まりやすくなります。高速を狙うなら0.6〜0.8mmノズル+高流量ホットエンドが定石です。
  • 寸法精度は速度より剛性・振動:速度を落としても機体剛性が足りないとリンギングが消えません。速度調整と機体側のチューニング(ベルト張り・ダンパー)を併用します。

運用のコツ:速度キャリブレーションは流量テストから

速度を上げる前に、まず最大流量(Max Volumetric Speed、mm³/s)を銘柄ごとに測るのが正攻法です。OrcaSlicerのFlow Rate Calibration・Max Volumetric Speed Testを使えば、そのフィラメントで破綻なく押し出せる上限流量が把握できます。上限流量÷(ノズル径×レイヤー厚)=理論上の最大速度、という換算で、機械スペックではなく素材側のボトルネックを把握するのが先です。Bambu系なら15〜25 mm³/s、高流量ホットエンド搭載の従来機で30 mm³/s前後が一つの目安となります。速度だけ上げて流量が足りなければ薄層・スカスカ造形になり、結局やり直しになります。

まとめ

FDMの印刷速度は「機種世代×素材×パーツ種別」で決まります。従来機は50〜120mm/s、Bambu X2Dなど高速機は直線部で最大500mm/s、TPUは素材特性上20〜40mm/sが現実解です。外壁・第一層・トップソリッドは抑え、インフィルは攻めるという使い分けが、品質と造形時間を両立する近道です。