2022年にマルチカラー3Dプリントをするならどの方法が良い?
いまだに敷居の高いフルカラー3Dプリント
3Dプリント技術にとって現状における最大の課題とは何だろうか。おそらく、それはフルカラー3Dプリント技術の普及だろう。
確かにマルチカラー3Dプリント技術の開発は日進月歩で進められてきた。現在では様々なメーカーがフルカラー3Dプリンターも発表している。
とはいえ、現状においてはまだ一般ユーザーにとってフルカラー3Dプリントは敷居が高いものになっているというのも事実。果たして、いつになれば我々はもっと手軽にマルチカラー3Dプリントを楽しむことができるようになるのだろうか。
ただし、完全フルカラーとはいかずとも、一般ユーザーが二色以上のマルチカラー3Dプリントを行うための方法ならば、現状でもいくつか存在する。
そこで今回は現状においてマルチカラー3Dプリントを行うためのいくつかの方法を紹介したい。
マルチカラー3Dプリントを行う上でのいくつかの方法
まず、現時点においてマルチカラー3Dプリントを行うために考えられるいくつかの方法をあげてみたい。
①フルカラー3Dプリンターを使用する
②プリント前にフィラメントを着色する
③混合色FDM3Dプリント
④セパレートカラーFDM3Dプリント
最近では以前にこのブログ欄でも紹介したように光造形3Dプリントにおいてもマルチカラープリントを行う技術が開発されてきてはいるが、それらはまだ開発段階にある。
造形速度は従来の10倍以上!? マルチレジン3Dプリント技術「iCLIP」が登場
https://skhonpo.com/blogs/blog/3diclip?fpc=2.1.365.596066bca8c8032d.1688992280000
現状では主にFDM方式でのマルチカラープリントが主流だ。
以下で、それぞれの方法を見ていきたい。
①フルカラー3Dプリンターを使用する
これは最もシンプルなソリューションだろう。すでに3DSystems、Stratasys、Mimakiなどのメーカーはフルカラー3Dプリンターを発表している。それら最先端マシンを用いれば当然、フルカラーで3Dプリントを行うことができる。
ただし、これらのマシンはそのほとんどが企業が最終的なプロトタイプや概念実証の作成に用いる最高級の産業用マシンとなっており、本体価格も約25万ドル以上ととても一般ユーザーが個人で購入できるようなレベルのものではない。
ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンター「3DUJ-553」
一応、家庭用フルカラー3Dプリンターも存在するが、まだまだラインナップは充実しているとはいえない。
フルカラー3Dプリンターの最前線! プロ用から家庭用まで
https://skhonpo.com/blogs/blog/fullcolor3dprinter?_pos=1&_sid=b96565335&_ss=r
ちなみに現状発表されているフルカラー3Dプリンターの多くはマテリアルジェッティングという技術を採用している。マテリアルジェット3Dプリンターは、UVで硬化するポリマー液滴を堆積させることによって部品を構築する技術だ。フルカラーパーツを開発するために、これらのマシンは CMYKの液滴を使用して、それらをコントロールすることで、正確なカラーリングを実現している。
②プリント前にフィラメントを着色する
これはプリカラーリングと呼ばれており、3Dプリントする前にフィラメントをあらかじめカラーリング(染色)しておく、あるいはレインボーフィラメントなどのすでにマルチカラーのフィラメントを使用する、という手法だ。
発想としてはシンプルであり敷居も低いが、プリント前にランダムに着色されるため、パーツの色を制御することはできない。
とはいえ、この方法で造形されたオブジェクトは単色のフィラメントとは異なる華やかな仕上がりになる。
③混合色FDM3Dプリント
混色FDM3Dプリントは、フィラメントを混合して新しい色合いを実現する方法で、1つのノズルと複数の押出機のセットアップを使用する。これにより複数の色をさまざまなブレンドで印刷できるようになる。フィラメントの混合は、プリントヘッドのホットエンドで行われる。
たとえばCreality CR-X Proはデュアル押出機とシングルノズルのセットアップを備えており、この場合、2色のフィラメントを用いることが可能になる。
あるいは混色アドオンキットを使用することで、単色マシンを混色マシンに変換することもできる。たとえば、SeeMeCNCDual 2Into1アドオンキットなどを用いれば、プリンターをデュアルカラー (ブレンド) 3Dプリンターに改造することが可能だ。
DUAL 2 INTO 1 FILAMENT ADD-ON KIT
④セパレートカラーFDM3Dプリント
これは現状で最も効果的かつ簡単にマルチカラー3Dプリントを行う方法だ。その具体的な方法としてはスワッピング、スプライシングの二つの方法に大別される。
・スワッピング
この技術においては必要なノズルは基本的に一つだけだ。プリント中、色の変更が必要なタイミングで古いフィラメントを引っ込めて、新しいフィラメントを挿入していく。シンプルで簡単だが、時間はかなりかかってしまう。なお、フィラメントの交換の際には古いフィラメントを一掃するためのパージも必要になる。
メーカーはこれを行うためのアップグレードキットを用意しているところもある。たとえばPRUSAがMMU用に提供しているマルチマテリアル2Sアップグレードキットを用いれば、最大5色の3Dプリントが可能になる。
・スプライシング
この技術においては、様々な色のフィラメントを切断、接合することで、マルチカラー3Dプリントを実現する。そのため、スワッピングで必要だった色変更のための作業を行う必要がない。この操作においてはカナダのトロントに本拠を置く3Dプリンタ関連ベンチャー「Mosaic Manufacturing」が提供しているモザイクパレットシステム「Palette」が役立つ。
「Palette」は既存の3Dプリンタをマルチマテリアル機に変身させるデバイスデアあり、これを使用するとユーザーは最大8つの異なる色で印刷できるようになる。Gコードが色の変化を示すたびに、パレットは古いフィラメントを切り取り、熱を使用して新しいフィラメントを古いフィラメントに接続していく。このプロセスにより、連続フィラメントがすぐに印刷できるようになる。
以下の動画はMosaic Manufacturingによる「Palette 3」の紹介動画だ。色数は限られてこそいるものの、現状で最も手軽にマルチカラー3Dプリントを楽しむ方法を一つ挙げろと言われたらこの方法になるかもしれない。
まとめ
いかがだっただろうか。
確かに現状において一般ユーザーが高精度なフルカラー3Dプリントを行うためにはまだまだ超えなければならないハードルがある。ただ、2色以上のマルチカラー3Dプリントに関していえば、現状でも様々な方法がある。
特に「Palette 3」や「Palette 3 PRO」を用いたセパレートカラーFDM3Dプリントであれば、低コストかつ最大8つの色を用いたマルチカラー3Dプリントを比較的容易に行うことができる。
マルチカラー3Dプリントに関心があるという方は、是非ともこの記事を参考にして、新しい試みに挑戦していただけたら幸いだ。