造形速度は従来の10倍以上!? マルチレジン3Dプリント技術「iCLIP」が登場
現在実用化されている最速の3Dプリンターよりも5〜10倍の造形速度
スタンフォード大学が開発した最新の3Dプリント技術が注目を集めている。
その名は「iCLIP」。
なんでもこの技術、現在実用化されている最速かつ最高精度の3Dプリンターよりも5~10倍の造形速度をもち、かつ一つの造形物に対して複数種類のレジンを用いることができるというものらしい。
たとえば、この記事のトップ写真。これはiCLIPメソッドを使用して作成されたオブジェクトであり、キエフの聖ソフィア大聖堂をモデルにしているのだが、ご覧のようにウクライナの国旗カラーである青と黄色の2色が用いられている。
「この新しい技術は、デジタルマニュファクチャリングの新時代の到来を告げる。これまでよりはるかに高速に印刷できるようになるだけではなく、複雑なマルチマテリアルオブジェクトを1つのステップで製造できるようになる」
そう語るのはスタンフォード大学のジョセフ・デシモーネ教授だ。5〜10倍の速度というだけでも十分な革新だが、なおかつマルチカラーに対応しているというのだから、これはたしかに夢が膨らむ話である。
この「iCLIP」は2015年に同チームが開発した連続液体界面製造法「CLIP」に端を発し、この「CLIP」を大幅に改良したものが今回の「iCLIP」だそうだ。
では、「iCLIP」の何が特別なのだろうか。
従来の光造形3Dプリンターの場合、マシン下部のレジンプールから造形に必要なレジンを吸引して造形を行うのが一般的である。しかし、この「iCLIP」においてはオブジェクトを上昇させるプラットフォームに設置されたシリンジからも加圧したレジンを同時に供給しているのだ。それによって、造形速度を大幅に速めることに成功し、かつ複数のシリンジを用意することで、1度の造形において複数のレジンを使用することも可能になった。
なんでもジョセフ・デシモーネ教授にヒントを与えたのは、あの名作映画「ターミネーター2」の1シーンだったという。革新のヒントは思わぬところに潜んでいるものだ。
現在、チームは「iCLIP」を最適に駆動するためのソフトウェアの構築を検討しているとのこと。それによって複数のレジンの境界を制御し、さらなる高速プリントを実現することが目指されている。
果たして、「iCLIP」式の3Dプリンターが市場に登場するのはいつ頃になるのだろうか。