ウロコ状の表面模様とは
光造形で印刷した造形物の表面(特に傾斜面や曲面)に、魚のウロコのような細かい模様が浮き出て見える症状です。英語圏では「fish scale」「orange peel(オレンジピール)」「elephant skin」と呼ばれることもあります。ピクセルの格子パターンとレイヤー境界が重なって現れる場合と、レジンの硬化ムラによって現れる場合の二系統があります。
結論:露光・AA・レジン状態・姿勢を順に切り分ける
ウロコ模様は単一原因ではなく、露光設定の過不足/アンチエイリアシング(AA)の不適正/レジンの状態不良/造形姿勢の問題が複合的に絡みます。まずはレジンを攪拌して新鮮な状態にし、露光テスト(Cones of Calibration等)で基準値を出すところから始め、症状が残る場合にAAや姿勢の調整へ進むのが最短ルートです。
原因1:露光時間が不適正(オーバー/アンダー両方)
露光過多ではUVが隣接ピクセルにまで漏れ広がり(光ブリード)、硬化済み部分との境目が膨らんで「elephant skin」のような模様になります。露光不足では層の表面が完全に固まらず、オレンジの皮のような荒れた肌になります。
- 対策:XPTest・Cones of Calibration・AmeraLabs Town等のテストモデルで適正露光を出す。レジンメーカーの推奨値を起点に、0.2〜0.5秒刻みで上下調整
- 新ロットのレジンやボトル交換時は必ず露光を再テスト。気温が10℃変わるだけで最適値は動く
原因2:アンチエイリアシング(AA)設定の不整合
スライサーのAAは、ピクセル境界の階段状模様をなめらかにする機能ですが、設定が強すぎるとエッジが甘くなり、弱すぎるとピクセル境界が目立ってウロコ模様として認識されます。また機種によってはAAをOFFにしたほうが綺麗に仕上がるモデルもあります。
- 対策:Lychee Slicer/ChiTuBoxでAAレベルを2x〜4xで比較印刷。Image Blurは最初は無効もしくは最小に
- グレースケール(Gray Anti-Aliasing)対応機では、露光曲線とAAの両方が効くためメーカー推奨プロファイルを起点にする
- 細かいディテールを優先する場合はAAを弱めに、表面の滑らかさ優先ならAAを強めに
原因3:レジンが分離・劣化している
開封から時間が経ったレジンや、沈殿した顔料が混ざり切っていないレジンでは、同じUV照射でも硬化度が場所によって変わり、表面にまだら模様が出ます。古い造形片や硬化粉がタンクに残っていても同様です。
- 対策:印刷前にボトルを1〜2分よく振る。長期保管品はさらに念入りに
- タンク内のレジンは毎回フィルターで漉してから戻す。硬化片の混入が原因で局所的にウロコが出ることは多い
- 開封から半年〜1年以上経過したレジンは、テストプリントで硬化性能を確認してから本番に使う
原因4:造形姿勢が垂直に近すぎる/曲面が光軸に対して正対している
曲面や傾斜面がビルドプレートに対して正対していると、ピクセル境界(四角形の格子)がそのまま表面に転写され、ウロコ模様として見えやすくなります。
- 対策:モデルを20〜45度傾ける。曲面に対してピクセル格子が斜めに当たるため、視覚的に模様が分散する
- フィギュアの顔や滑らかに見せたい面は、あえて傾斜面として配置する
原因5:LCDの経年劣化・光源ムラ
LCDスクリーンが寿命末期に入ると、UV透過率が場所によって変わり、同じ設定でも硬化ムラが出ます。本体側のUV光源の拡散板が汚れている場合も同様です。
- 対策:機種のLCDテスト機能やグレースケール表示で輝度ムラを確認。局所的に暗い領域があればLCD交換を検討
- 本体内部の拡散板・冷却ファン周辺の埃を、電源を切ってから乾いた布で清掃
- 累計造形時間が1,000時間を超えるLCDは、交換を視野に入れる(メーカー公称寿命は機種による)
予防
- 新規レジン・新規設定の導入時は、必ずテストモデルで露光・AA・姿勢の三点を確認する
- タンクのFEP/リリースフィルムが白濁・傷ついていると硬化ムラを誘発する。フィルム点検を月1回
- 室温15℃以下ではレジン粘度が高くなり、硬化ムラが増える。環境温度を20〜28℃に保つ
- 同じモデルを繰り返し造形する場合、適正露光値をファイル名に記録しておくと再現性が上がる
- 表面品質を最優先するフィギュア等は、グレースケール対応機+メーカー純正プロファイルを使うと安定しやすい
まとめ
ウロコ模様の原因は「露光・AA・レジン・姿勢・ハード」のどれかに必ず集約されます。まずはレジンの攪拌と露光テスト、次にAAと姿勢、最後にハードの点検という順序で切り分けると効率的です。表面品質は機種・レジン・スライサーの組み合わせで変わるため、自分の環境での適正プロファイルを一度作ってしまえば、再発は大きく減らせます。
