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光造形で空洞内に液が残る「カップ現象」の対策

カップ現象(サクションカップ効果)とは

光造形(LCD/DLP/SLA)で中空モデルを印刷したとき、造形物の内側にレジンが閉じ込められ、排出されずに残ってしまう現象です。さらに、はく離の瞬間に内部が真空状態になって強い吸引力が発生することから、英語圏では「Suction Cup Effect(吸盤効果)」や「Cupping Blowout」と呼ばれます。内部にレジンが溜まったまま二次硬化に進むと、硬化不良・重量バランスの悪化・予期せぬ破裂の原因になります。

結論:中空化と同時に「排気・排液穴」を必ず設ける

カップ現象は、中空構造に排気穴(ベント)と排液穴(ドレン)を最適な位置・サイズで設ければ大半が解消します。目安としては、穴径2mm以上、モデル最下部(印刷時に一番下になる点)を中心に2か所以上、上下それぞれに配置するのが基本です。加えて、はく離力が高い造形では中空壁の厚みを十分に確保し、サクション発生時に造形物自体が変形・破損しないようにします。

原因1:中空なのに穴がない/穴が小さすぎる

もっとも多いパターンです。スライサーで中空化しただけで穴を開けなかった、あるいは穴径が1mm未満しかなく、粘度の高いレジンが流れ出せない状態です。プリント中にレジンが内部にどんどん入り込み、はく離時に真空が発生します。

  • 対策:Lychee SlicerやChiTuBoxの「Hole(穴あけ)」機能で、直径2〜3mm以上の穴を最低2か所開ける。大型モデルや粘度の高いレジンでは3〜5mm程度に拡大
  • 穴は造形時の最下点最上部付近に分けて配置。下の穴で排液、上の穴で空気抜き

原因2:穴の位置が最下点になっていない

穴を開けていても、モデルを傾けた結果として穴が局所的な「くぼみ」の上部に来てしまうと、くぼみの底にレジンが残り、同じ症状が再発します。

  • 対策:造形姿勢(傾き)を先に決めてから穴を開ける。傾き確定後に「このモデルの最下点はどこか」をスライサーで確認してからホール位置を決定
  • 複雑形状では内部にくぼみが複数できることがあるため、くぼみごとに排液穴を追加

原因3:壁厚が薄すぎて吸盤効果で変形する

穴を開けていても、中空の壁厚が1mm前後など薄すぎると、はく離時の吸引力で壁が内側にたわみ、層がずれたり最悪は破裂します(いわゆる「ブローアウト」)。

  • 対策:一般的な標準レジンで壁厚2mm前後、ABSライクやタフ系・高粘度レジンでは2.5〜3mmを目安に厚めに設定
  • 内部にリブ(補強の壁)やインフィルを追加し、吸引力を面で受け止める

原因4:はく離速度・待機時間が厳しすぎる

リフトスピードが速く、Rest Time(待機時間)が短いと、レジンが内部に流れ込む前にプラットフォームが持ち上がり、吸引力が過大になります。

  • 対策:リフトスピードを標準より1〜2段階遅くし、Bottom Lift Speedも同様に抑える
  • Rest Time After Lift/Before Retractを数秒追加し、内部にレジンが流入する時間を確保
  • ACFフィルムや柔軟フィルム搭載機では吸引力が元々低めのため、穴設計が適正ならデフォルト速度でも通ることが多い

原因5:中空化せずにソリッドのまま印刷している

中空化していない大型モデルでも、オーバーハング部が局所的に「皿状」になっていれば、皿の内側にレジンが溜まってカップ現象を起こします。

  • 対策:モデルを傾け、皿状のくぼみが下向き=開口部が下になる姿勢に調整
  • 傾けても解消しない場合は、くぼみの最下点に穴を開けるか、ソリッド化を検討

予防

  • 中空化は「厚み+穴+姿勢」をセットで設計する。どれか1つ欠けるとカップ現象が発生しやすい
  • 穴は目立ちにくい底面・裏面に配置。造形後に穴をパテ埋めする運用でも問題ない
  • テスト造形の段階で本体をひっくり返し、内部のレジンが抜けるか確認する
  • Lychee Slicer/ChiTuBoxの「Auto Hollow + Holes」機能は便利だが、必ずプレビューで穴位置をチェック
  • 大型プランターや壺型など、壁に囲まれた構造は排液動線を3Dデータ段階で設計しておく
  • 印刷直後は内部にレジンが残っていることがあるため、プラットフォームから外す前に穴を下にして30秒以上排液。IPA洗浄前の一手間で二次硬化のムラが減る

まとめ

カップ現象は「中空モデルに発生する真空トラップ」という物理現象であり、穴を開ける・壁を厚くする・姿勢を最適化するの3点で大半は解決します。とくに排液穴の位置は造形姿勢によって変わるため、「傾きを決める→最下点を特定する→穴を開ける」の順番で設計するのがコツです。はく離速度やRest Timeの調整は、ハード側の吸引力を下げる補助手段として併用するとより確実になります。