小さなディテールが潰れるとは
フィギュアの眼・髪の毛・装飾の彫り込み、ミニチュア戦艦の手すりなど、元のモデルデータにはある微細形状が、印刷すると「のっぺり」と潰れて再現されない症状です。凸ディテールが丸まる、凹ディテールが埋まる、エッジが鈍る――いずれも原因は共通しており、露光(光ブリード)・AA(アンチエイリアシング)・姿勢・機種解像度の4要素が絡みます。
結論:光ブリードを抑える+最適な姿勢+機種解像度の限界を知る
ディテール潰れの最大要因は光ブリード(UV光の隣接ピクセルへの漏れ込み)で、これは露光過多とAA過多で悪化します。対策としては、露光をレジンごとに最適化し、AA設定を見直し、モデルを適切に傾けること。加えて、機種のXY解像度(ピクセルサイズ)以下のディテールは物理的に再現不可能という点も押さえておく必要があります。
原因1:露光過多による光ブリード
UV光は理論上はマスキングされた領域だけを通しますが、実際には隣接ピクセルにわずかに漏れ広がります。この漏れ光が露光時間に比例して蓄積するため、露光を長くするほど細い突起が太くなり、細い溝が埋まります。結果として突起は丸まり、エッジは鈍り、溝は消失します。
- 対策:Cones of Calibration・XPFinder・AmeraLabs Townなどのテストモデルで適正露光を特定。ディテール重視なら「サポート強度が確保できる最短露光」を狙う
- レジンメーカーの推奨値を起点に0.2〜0.5秒刻みで下げていき、ディテールが再現される限界値を把握
- 透明・白・淡色レジンはUVが通りやすく光ブリードが大きい。逆に黒・濃色は抑えられる傾向。レジンの色でも露光設定は変わる
原因2:アンチエイリアシング(AA)/Image Blur の過剰設定
AAはピクセル境界の階段をなめらかにする機能ですが、強くかけるほどエッジが甘くなり、細かいディテールが丸くなります。Lychee/ChiTuBoxのImage Blurも同様で、大きく設定するとディテールが溶けます。
- 対策:ディテール最優先のモデルではAAレベルを下げる(無効または2x程度)、Image Blurは0にする
- Lychee SlicerのSharpen Details(シャープディテール)等のオプションがある場合は有効化すると、AAによるディテール損失を抑えられる
- 表面の滑らかさを優先する面と、ディテールを優先する面が両立しない場合は、モデルを分割して別設定で印刷する手もある
原因3:機種のXY解像度(ピクセルサイズ)以下のディテール
光造形機のXY解像度は機種によって異なり、4K・6K・8K・12K等と表記されます。1ピクセル未満のディテールは原理的に再現できません。たとえばXY解像度が18μmの機種では、18μm以下の溝や突起は表現不能です。
- 対策:使用している機種のXYピクセルサイズをメーカー仕様で確認。最小ディテール寸法はピクセルサイズの1.5〜2倍を目安にデザインする
- 極細のディテールが必要なミニチュア等は、より高解像度の機種(8K/12K/16K等)を選定する
- ピクセル境界のギザギザを避けるため、モデルを15〜45度傾けると視覚的な再現度が上がる
原因4:造形姿勢が不適切
ディテールが集中している面をビルドプレートに正対させると、ピクセル境界の格子がそのままエッジに乗り、細部がガタつきます。逆に姿勢を傾けると、層ごとの境界線が斜めに入り、ディテールが視覚的に滑らかに見えます。
- 対策:顔や装飾が集中する面を斜め上向きに配置する。真上・真下は避ける
- サポート跡がディテール面に残ると後処理で削る際にディテールを壊すため、サポートは裏面・底面側に配置
原因5:積層ピッチが粗すぎる
積層ピッチが0.1mmでは、Z方向の微細形状が段差として潰れて見えます。ディテール重視なら0.03〜0.05mm、究極の滑らかさが必要なら0.02mmまで落とします。
- 対策:ピッチを下げた場合、層ごとの露光時間も再調整が必要
- ピッチを下げると造形時間は比例して長くなる。実用的には0.05mmから試すのがバランス良好
原因6:レジン種類の特性
レジンには「ディテール向け」と「強度向け」の性格があります。高靭性・タフ系レジンは硬化時の収縮率や粘度の関係でディテール再現性が標準レジンより劣ることがあります。
- 対策:フィギュアやミニチュアなどディテール最優先なら、メーカーの「スタンダード」「ABSライク」「プロ/ディテール向け」系から選ぶ
- 機能部品用途で強度が必要な場合は、ディテールとのトレードオフを割り切る
予防
- 新規レジン導入時は、必ずディテールテストモデル(Cones of Calibration、Validation Matrix等)で限界値を把握する
- 露光時間・AA・Image Blur・姿勢・ピッチを1つずつ変えて比較。複数同時に変えると原因が特定できなくなる
- 機種の仕様書でXYピクセルサイズを把握し、設計段階から「再現可能な最小寸法」を意識する
- 成功したディテール設定はスライサープロファイルに保存し、モデル別にテンプレート化
- フィギュア・ミニチュアは顔・手・武器・装備でディテールの重要度が違う。重要度の高い面が斜め上向きになるよう姿勢を決める
まとめ
ディテールが潰れる最大要因は光ブリードで、その抑制は「適正露光+弱めのAA+適切な姿勢」の三点セットで実現します。加えて、機種のXY解像度という物理限界を超えた微細ディテールは原理的に再現できないため、設計段階でピクセルサイズの1.5〜2倍を最小寸法の目安にするのが現実的です。ディテール特化のテストモデルで自機の限界を把握してしまえば、次からは迷わずベストセッティングで出力できます。
