Q. FDMのEステップ(E-Steps)キャリブレーションはどうやればいいですか?
Eステップ(E-Steps / steps per mm on E-axis)は、エクストルーダーのステッピングモーターが「フィラメントを1mm送るのに何ステップ回せばいいか」を表す最重要パラメータです。ここが狂っていると、どれだけスライサー側でフローやリトラクションを追い込んでも全体的に多い/少ない吐出になり、他の校正が無意味になります。Flow Ratio校正の前に必ず先に済ませる基礎中の基礎です。
結論
標準手順は「ノズルから110mmの位置にマーク→100mm押し出しを指示→残ったフィラメントを実測→補正」。Marlin系ならM92 E[新値]で書き換えてM500で保存、Bambu Lab X1/P1/A1シリーズでは物理Eステップを直接触らず、Bambu Studioの「Flow Dynamics Calibration/Flow Rate Calibration」でフロー側を補正するのが標準手順です。計算式は新Eステップ = 現Eステップ × 100 ÷ 実測押出量です。
準備するもの
- 信頼できるノギスまたは定規(1mm目盛より細かいもの)
- マーカーペン
- Pronterface / OctoPrint / Klipperフロントエンド(Fluidd・Mainsailなど)といった、M503・M92・M500・G1 Eを直接送信できるホスト環境
- 十分な長さ(20cm以上)のフィラメント
手順(Marlin系の標準フロー)
- ノズルを印刷温度(PLAなら200℃前後)まで加熱する。冷えたままだとエクストルーダーが空転・削れを起こす。
- ホスト経由で
M503を送り、現在のEステップを確認する(例:M92 X80.00 Y80.00 Z400.00 E93.00→ 現Eステップ=93.00)。 - フィラメントをエクストルーダーにロードし、エクストルーダー入り口から110mmの位置にマークを付ける。
- ホストから
G91(相対)→G1 E100 F100(毎分100mm=遅め)で100mm押し出す。必ず低速で。速いとギアが滑って正しい値が取れない。 - 押し出しが終わったら、エクストルーダー入り口から残っているフィラメントのマーク位置までを実測する。
- 実際に押し出された量 = 110 − 残り長さ。例:残り18mmなら実押出量=92mm。
- 新Eステップを計算:
新Eステップ = 現Eステップ × 100 ÷ 実押出量。例:93.00 × 100 ÷ 92 = 101.09。 - Marlin系なら
M92 E101.09で書き換え、M500でEEPROMに保存。M500を忘れると電源オフで値が消える。 - もう一度100mmを指示して誤差1mm以内(±1%)に収まっていれば完了。2〜3%ズレていたら再計算して再校正する。
Bambu Lab・Creality Sonic Pad・Klipperの場合
- Bambu Lab X1C/X1E/P1S/A1: 物理Eステップの直接露出はなく、Bambu Studioの「Flow Dynamics Calibration」と「Flow Rate Calibration」でフロー側を自動補正する設計。物理Eステップを触りたい場合はカスタムG-code経由になる。
-
Klipper:
printer.cfgの[extruder]セクションのrotation_distanceを補正する。計算は新rotation_distance = 現rotation_distance × 実押出量 ÷ 100(Eステップと掛ける方向が逆なので注意)。編集後SAVE_CONFIGで保存。 -
Creality Sonic Pad / Ender-3 (Klipper化): Klipper方式と同じ
rotation_distance補正が標準。
注意点
- 冷間(コールド)押し出しは禁止。必ずノズルを印刷温度まで加熱してから行う。冷えたままではエクストルーダーがフィラメントを削って実測が狂う。
- 押し出し速度は100mm/min(=1.67mm/s)程度まで落とす。速すぎるとギア滑り・削れで値が取れない。
- テフロンチューブやエクストルーダーの摩耗があると値が安定しません。まず機械側を点検してから校正するのが本来の順序。
- エクストルーダーを換装した、グリップ力の違うギア(BMG等)に交換した、といったタイミングで必ず再校正が必要。
- Eステップが決まったら必ずFlow Ratio校正とプレッシャーアドバンス校正を続けて実施。順序は Eステップ → Flow Ratio → Pressure Advance(PA)。
- ノギスの読み取り誤差1mmで約1%ズレます。細かい位置のマーキングと、押し出し前・後のマーク位置の実測をきちんと。
まとめ
Eステップ校正は「110mmマーク→100mm指示→実測→現値×100÷実押出量」で終わる、機械側校正の基本のキです。Marlin系はM92 / M500、Klipper系はrotation_distance、Bambu Labはスライサー側のフローキャリブレーションで吸収、と機種ごとに操作方法は違いますが、ロジックは全て同じです。SK本舗では Bambu Lab・Creality・Anycubic・Elegoo Centauri などの主要FDM 3Dプリンターを正規取り扱いしており、初期校正の手順書やサポートも提供していますので、導入時にお気軽にお問い合わせください。
