
捨てるなんてもったいない?3Dプリントでコーヒーかすが生まれ変わる!
朝の一杯のコーヒーがないと始まらない!そんな人は多いですよね。実際、アメリカでは毎日コーヒーを飲む人の80%以上が1日2杯以上飲んでいるそうです。単純計算すると、年間728杯ものコーヒーを消費していることになります。
でも、そのコーヒーを淹れた後に出る「コーヒーかす」のことを考えたことはありますか?驚くことに、アメリカ全体で年間約50万トン(11億ポンド)のコーヒーかすが廃棄されているのです。
「何かもっと有効活用できないだろうか?」
そんな疑問を持ったのが、ワシントン大学の博士課程の研究者Danli Luo(ダンリ・ルオ)さん。彼女は、コーヒーマシンの横でふと気づいたアイデアから、3Dプリント技術を使ってコーヒーかすを新しい素材に生まれ変わらせる方法を開発しました。
この研究が進めば、コーヒーかすはただの廃棄物ではなく、プラスチックに代わる持続可能なエコ素材として活躍するかもしれません!
コーヒーかす × 3Dプリントの秘密とは?
コーヒーかすは栄養が豊富なだけでなく、抽出時に高温殺菌されるため、細菌が繁殖しにくいという特徴を持っています。そのため、コーヒーかすは菌類の培養にも適した素材なんです。
例えば、「菌糸体(マイセリウム)」というキノコの根のような部分を利用すれば、自然由来の軽くて丈夫な素材を作ることができます。最近では、菌糸体を活用した家具やパッケージ、さらには建築材料まで開発されており、世界中の研究者やデザイナーが注目している分野です。
ルオさんの研究チームは、このコーヒーかすと菌糸体を組み合わせることで、エコな3Dプリント材料を作れないかと考えました。
そこで生まれたのが、コーヒーかすに霊芝(れいし)キノコの胞子、玄米粉、キサンタンガムを混ぜ合わせたペースト。この独自の配合で作られたペーストは、3Dプリントに適した柔らかさを持ち、「Mycofluid(マイコフルイド)」と名付けられました。
コーヒーかすペーストを使った3Dプリンティング(Luo et al.)
3Dプリントで形を作る → キノコが育つ!
このMycofluidを3Dプリンターにセットし、専用のノズルを使って押し出して造形すると、ユニークなオブジェが完成します。しかし、これだけでは終わりません。
造形後のオブジェは、約10日間放置することで、キノコの菌糸体が表面に広がり、「マイセリウムスキン(菌糸の膜)」を形成します。これは、オブジェ全体の強度を高めるだけでなく、耐水性や耐久性も向上させるという効果があります。
ただし、そのまま放置するとキノコが成長しすぎてしまうので、最終的に乾燥させることで成長を止め、安定した素材に仕上げる必要があります。
コーヒーかすでエコな梱包材を作る!
この新素材を使って、研究チームはいくつかの試作品を作りました。その中でも注目なのが、コーヒーかす由来のエコパッケージです。
コーヒーかすパッケージの特性
発泡スチロールより少し重いが、強度は同等
ダンボールのような密度で、適度な柔軟性を持つ
完全に堆肥化できる(生分解性がある)
環境に優しいプラスチック代替素材として期待
研究チームは、ガラス瓶用の梱包材や花瓶の一部、モアイ像のオブジェなどを試作しました。
コーヒーかすから印刷され菌糸体皮で覆われた梱包材(Luo et al.)
ルオさんは、「この技術は、特に小規模事業者にとってメリットが大きい」と話しています。例えば、繊細なガラス製品を販売する小規模ブランドが、発泡スチロールの代わりにオーダーメイドのエコパッケージを使用できるようになれば、環境負荷を大きく削減できます。
量産化は難しい?今後の課題
現時点では、この技術を大規模生産に適用するのは難しいと言われています。
大量のコーヒーかすが必要 → 均質なコーヒーかすを安定供給するのが課題
発泡スチロールほど軽量ではない → 軽量化の工夫が求められる
キノコが成長するまで10日かかる → 生産スピードの向上が必要
そのため、ルオさんの研究チームは、ほかの食品廃棄物を使ったバイオベースの3Dプリント材料の開発にも取り組んでいます。
「私たちは、この技術をコーヒーかすだけでなく、さまざまな食品廃棄物にも応用したいと考えています」とルオさん。プラスチックごみ削減という大きな課題に対して、1つの解決策だけでなく、多様なアプローチを提供することが重要だと語っています。
コーヒーかすが未来を変える?
今回紹介した研究は、「廃棄物を資源に変える」というサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方を、3Dプリント技術で実現しようとするものです。
まだ解決すべき課題はありますが、この技術がさらに進化すれば、日々のコーヒーが未来のサステナブル素材に生まれ変わる日も近いかもしれません。
次にコーヒーを飲むとき、ちょっとカップの底を見て、「これが未来の素材になるかも?」なんて想像してみるのも楽しいかも!
参照:https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/3dp.2023.0342
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