
柔軟フィラメント(TPU)の扱い方とプリントのコツ
柔らかく、ゴムのような質感を持つTPU(熱可塑性ポリウレタン)は、3Dプリントの幅をぐっと広げてくれる魅力的な素材です。ただし、通常のPLAやPETGとは勝手が違うため、初めて使うとトラブルが生じたり、失敗してしまうこともあります。
そこでここでは、TPUフィラメントを家庭用FDM/FFFプリンターで上手に扱うためのコツや注意点、さらに深掘りした応用テクニックについて、まとめてみました!
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【1】TPUフィラメントの特徴とは?
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高い柔軟性:硬さ(ショア硬度:柔らかさの目安で、数値が低いほど柔らかい)によって異なるが、一般的に非常によく曲がる。
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耐摩耗性・耐油性に優れる:機械部品やウェアラブルデバイス、プロトタイプなどに最適。
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耐衝撃性・耐薬品性:衝撃を受けても割れにくく、過酷な環境にも耐える。
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強力な接着性:多くの造形プレートにしっかりと密着するが、場合によっては取り外しに注意が必要。
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吸湿性あり:湿気を吸うとフィラメントが劣化し、プリント品質が著しく低下するため造形品質が大きく落ちてしまうため注意が必要です。
【2】印刷前にチェックすべきポイント
▶ プリンターの適性確認
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ダイレクトエクストルーダー推奨:押出し経路が短いため、フィラメントが詰まりにくい。
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ボーデン式でも可能:ガイドチューブをタイトなものに交換、リトラクション量を控えめに設定することで対応可能。
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フィラメント経路のスムーズさ確認:フィラメントパスが不必要に曲がっていないか、無理な摩擦がないかを事前に点検。
▶ フィラメントの状態確認
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乾燥が必須:TPUは湿気を非常に吸いやすく、ブツブツ気泡やノズル詰まりの原因になります。使用前には専用ドライボックスやフードドライヤーを使って、50~60℃で4~6時間ほど乾燥させましょう。
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見た目チェック:ツヤが無くなっていたり、白っぽく濁っていたら乾燥不足のサイン。
【3】スライサー設定のコツ
▶ 印刷速度を落とす
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推奨速度:15~30mm/s
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TPUは押し出しに時間がかかるため、通常よりゆっくり動かす必要があります。特に細かいディテールやブリッジ部分ではさらに減速推奨。
▶ リトラクション設定
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量を少なめ(0.5~1.5mm)
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速度も遅め(10~20mm/s)
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過度なリトラクションはフィラメント詰まりやヨレの原因になるので注意!
▶ 押出量・フロー調整
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標準設定(100%)でも可能ですが、**隙間が目立つ場合は105~110%**に微調整。
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オーバーエクストルージョン(糸引きや表面ボコボコ)に注意して微調整するのがベスト。
▶ 層高・ノズル径に合わせた設定
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0.4mmノズル使用時は、レイヤーハイトを0.2~0.3mmに設定すると安定します。
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0.5mm以上のノズルでは、厚めのレイヤー(0.3~0.4mm)も可能です。
▶ 初層設定
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ベッド温度:40~60℃
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ノズル温度:210~230℃(使用フィラメント推奨に従う)
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初層速度:10~20mm/s(極力ゆっくり)
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必要なら初層だけ押出倍率を少し増やす(105%など)。
【4】物理的な工夫で安定性アップ!
▶ フィラメント供給を最適化
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スムーズに回転するフィラメントホルダーを使う。
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フィラメントが固く巻かれすぎていないか事前に確認。
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フィラメントガイドローラーを活用して供給経路をできるだけ直線に保つ。
▶ ノズル径の見直し
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柔らかいTPU(ショア85A以下)なら、0.5~0.6mmノズルがおすすめ。
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大径ノズルなら押出しが安定し、詰まりリスクも低減。
▶ ベッドへの定着を助ける工夫
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PEIシート、ガラスベッド+スティックのり(Prittスティック)などが有効。
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あまりに強く定着しすぎた場合は、ベッド冷却後にヘラで優しく剥がす。
【5】印刷後の取り扱いと保管方法
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完成品は十分冷却後に剥がす。
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変形防止のため、プリント中に不要な衝撃や強い振動を与えない。
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使い終わったフィラメントは、すぐ乾燥剤入りのジップ袋またはドライボックスに収納!
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長期保存中も定期的に乾燥処理を施すと劣化を防げます。
【6】トラブルシューティング:よくある問題と対策
フィラメント詰まりが発生する場合
フィラメント供給経路に隙間がある、リトラクション設定が過剰である、または印刷速度が速すぎることが原因です。対応策としては、フィラメント経路をよりタイトに最適化し、リトラクション量を減らし、全体的な印刷速度を落とすことが効果的です。
表面にブツブツができる場合
これはフィラメントが湿気を吸っているサインです。プリント前に必ずフィラメントを乾燥させ、湿気を取り除きましょう。乾燥処理を怠ると、内部に気泡が発生し、プリント品質が大きく劣化します。
糸引き(ストリング)が目立つ場合
リトラクション量が不足しているか、ノズル温度が高すぎる可能性があります。リトラクション設定を微調整してフィラメントの引き戻しを強化し、ノズル温度を適正範囲に下げることで糸引きを減少させることができます。
表面がざらざらしている場合
押出量が不足していることが考えられます。この場合はフロー率(押出倍率)を標準値の100%から105%程度に微増し、適切なフィラメント供給量を確保すると表面の密度が向上します。
【7】TPUに適した出力物とは?
TPUの特性を活かせる代表的なプリント例を紹介します。
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スマホケース 柔らかく耐衝撃性に優れるため、デバイス保護に最適です。複雑な形状もプリントでき、オリジナルデザインも可能です。
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ウェアラブルデバイスのバンド スマートウォッチやフィットネストラッカーのバンドは、TPUの柔軟性と肌触りの良さが活きます。
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防振マウント・バンパー ドローンやカメラマウント、エンジン周りの防振パーツに最適です。耐衝撃性と耐久性が求められる場面で重宝します。
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タイヤ・キャタピラ(ラジコン用) ミニ四駆やRCカー、ロボット用のタイヤにも適しており、グリップ力の高いパーツが作成可能です。
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靴底・インソール 靴やサンダルのソール、カスタムインソールなども製作可能です。衝撃吸収性能と耐摩耗性が活かされます。
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医療用プロトタイプ 人工関節のモックアップや装具プロトタイプなどにも利用されることがあります。柔軟性が求められる医療分野でも活躍しています。
これらの用途はほんの一例であり、アイデア次第でさらに多彩な応用が可能です。
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【まとめ】
TPUは一見難しそうですが、コツを押さえれば非常に応用範囲の広い素材です。
少しの設定変更と丁寧な扱いで、TPUプリントの可能性は無限に広がります。この記事を参考に皆さんの3Dプリント作品に新しい可能性を加えてください!
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