
透明3Dプリントのために知っておくべきいくつかのこと
透明な3Dプリントは、見た目の美しさだけでなく、機能的な理由からも重要です。例えば、光学部品や流体制御デバイスの試作などでは、透明なパーツを作ることで内部の流れや動作を視覚的に確認できるため、とても便利です。このように、透明3Dプリントにはさまざまな応用がありますが、実際に高い透明度を実現するにはいくつかの工夫が必要になります。
3Dプリントの基本原理である積層造形では、層と層の間に微細な隙間が生じるため、光が乱反射し透明度が低下してしまいます。そのため、透明3Dプリントを成功させるには、適切な造形技術の選択と後処理の工夫が欠かせません。ここでは、透明3Dプリントに適した技術や材料、それぞれの注意点、透明パーツの活用事例について詳しくご紹介します。
透明と半透明の違い
まず、「透明(transparent)」と「半透明(translucent)」の違いについて理解しておきましょう。
- 透明なパーツ:光をほぼ完全に通し、歪みが少なく、パーツの向こう側をはっきり見ることができます。
- 半透明なパーツ:光をある程度通しますが、拡散されるために視界がぼやけます。
3Dプリントで「透明」とされるものの多くは、実際には「半透明」であることが一般的です。完全な透明度を得るためには、使用する技術、材料、造形条件、そして後処理を工夫する必要があります。
透明3Dプリントに適した技術
透明なパーツを作るには、光造形方式(SLA)や熱溶解積層方式(FDM/FFF)といった3Dプリント技術が利用できます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. 光造形(SLA)
光造形(Stereolithography、SLA)は、液体樹脂(レジン)にUVレーザーを照射し、光硬化させながらパーツを作る技術です。この方式は高精細で滑らかな表面を得やすく、透明3Dプリントに最も適しています。
SLA方式で透明度の高いパーツを作るには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
-
適切なレジンの選択
市販されている透明レジンを使用します。例えば、SK本舗の「新高速透明レジン」は、ガラスに近い透明度を持つ部品を高速かつ正確に作ることができます。 -
後処理の工夫
造形直後のSLAパーツは、樹脂の硬化不均一や表面の細かな凹凸により、完全な透明度を持ちません。表面を滑らかにするためには、以下の処理が有効です。 - サンディング(#400から#3000番までのヤスリを段階的に使用)
- 研磨(ポリッシュ剤やバフを使う)
- クリアコーティング(透明スプレーやUVレジンを塗布)
また、SLAレジンは時間が経つと黄変することがあるため、UVカットのクリアコートを施すことで劣化を防ぐことができます。
2. 熱溶解積層方式(FDM/FFF)
FDM(Fused Deposition Modeling)は、熱で溶かしたフィラメントを積み重ねて造形する方式であり、最も普及している3Dプリント技術です。しかし、層の境目で光が乱反射するため、SLAに比べると透明度は劣ります。
それでも、FDM方式で半透明パーツの品質を向上させることは可能です。以下の工夫を試してみましょう。
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透明フィラメントの選択
透明フィラメントとして、PETG、ポリカーボネート(PC)、PLAがあり、特にPETGは光の透過率が高く、造形しやすいためおすすめです。 - 適切なプリント設定
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レイヤー高さを小さくする(0.1~0.2mm)
層の境目を減らし、滑らかな表面を実現します。 -
押し出し量を安定させる
フィラメントの流量を一定にし、内部に気泡や空洞ができないようにします。 -
低速でプリント
プリント速度を落とすことで、レイヤー同士の接着を強化し、より均質な仕上がりになります。 -
インフィルを減らす
内部充填率(infill)を低く設定することで、光をより通しやすくなります。 - 後処理の工夫
- サンディングと研磨(ヤスリで表面をなめらかにする)
- アセトン処理(PETGやPC向け)(アセトン蒸気で表面を滑らかにする)
- 透明ニスやレジンの塗布(光の拡散を防ぎ、より透明に見せる)
透明3Dプリントの活用例
透明または半透明の3Dプリントパーツは、以下のような用途で活躍しています。
1. 機械や電子機器の試作
透明パーツを使用することで、機械内部の動作を目視で確認できるため、流体の動きを観察するマイクロ流体デバイスや、ギアの可視化試験に役立ちます。
2. 光学部品
光を通す性質を活かし、レンズやライトガイド、透明カバーなどの製作に使われます。例えば、LEDライトのカバーやプロジェクターのレンズ用ハウジングなどに利用されています。
3. アート・デザイン
ガラスのような装飾品や、独特な視覚効果を持つデザインオブジェクトを作成できます。SLA方式を使えば、彫刻作品や透明なジュエリーのプロトタイプも作成可能です。
4. 食品・医療分野
透明な食品用型や、医療器具のプロトタイプなどにも応用されています。特に医療分野では、手術シミュレーション用の人体モデルなどに活用されることもあります。
まとめ
透明3Dプリントを成功させるには、適切な技術と材料の選択、造形時のパラメータ調整、そして後処理の工夫が欠かせません。
- 高い透明度を求めるならSLA方式を選び、レジンの種類と後処理にこだわる。
- 手軽に透明パーツを作るならFDM方式でPETGなどのフィラメントを活用し、層の跡を極力なくす工夫をする。
透明3Dプリントの技術は、試作、デザイン、研究など、さまざまな分野での応用が期待されています。今後、さらなる素材開発と技術革新により、より手軽に透明パーツを作れる時代が訪れるかもしれません。
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