最終更新日:

FDMでオーバーハングが垂れる時の対策

症状とは

オーバーハング(せり出し)部の裏面が荒れる、垂れ下がる、糸を引いたように波打つ、急角度の部分で樹脂がダマになる、といった症状です。造形物の裏面品質や寸法に直結するため、支えなしで出せる角度を上げられれば、サポート材の削減と表面品位の向上の両方を実現できます。

結論

Prusa Knowledge Baseが指摘する通り、オーバーハング品質は「冷却」「速度」「ノズル温度」「レイヤー高さ」の4要素のバランスで決まります。PrusaSlicerではオーバーハング閾値(デフォルトはプロファイル・バージョンにより40〜55度前後)を超える角度でサポートが自動生成される仕様で、PLAであれば適切なチューニングで60度前後までサポートなしで印刷可能というコミュニティ報告があります。70度以上を狙う場合はサポートやオーバーハング専用冷却機能の活用が現実的です。

原因と対策1:冷却不足

溶けた樹脂が固まる前に次レイヤーが来ると、重力で垂れます。対策はパートクーリングファンを100%に上げる(PLAの場合)、オーバーハング検出時だけファン速度を上げるスライサー機能(PrusaSlicerの「Dynamic overhang speed」やBambu Studioの「Slow down for overhangs」)を有効化する、ブロワーダクトを左右均等に風が当たるものに交換する、などです。

原因と対策2:印刷速度が速すぎる

オーバーハング部は層が接触する面積が少なく、速度が速いと樹脂が冷える前に引っ張られます。外壁速度を通常の50〜70%に落とし、オーバーハング閾値を超える領域だけさらに減速する設定が有効です。Prusaコミュニティの議論でも、オーバーハングではダイナミック速度機能の活用が推奨されています。

原因と対策3:ノズル温度が高すぎる

溶けすぎた樹脂は粘度が下がり垂れやすくなります。PLAなら190〜200度台の低めに振ると改善することが多いです(素材・銘柄でレンジは異なるため、メーカーシートの下限側を試します)。ABS・ASA・PETGは冷却を上げすぎると層間接着が弱るため、素材特性に応じてバランスを取ります。

原因と対策4:レイヤー高さが厚すぎる

レイヤー高さが厚いほどオーバーハング時の水平変位が大きくなり、垂れが目立ちます。0.4mmノズルで0.2mmから0.12〜0.15mmへ下げると改善することが多いです。代わりに印刷時間が延びるため、実用部品とコスメティック部品で使い分けます。

原因と対策5:押出幅と設計の工夫

PrusaSlicerコミュニティでは、外壁の押出幅を50%前後に下げることでオーバーハング品質が改善する事例が報告されています。設計面では、急角度のオーバーハングをシャンファー(面取り)やフィレットで緩やかにするだけで造形性が大きく向上します。70度以上はCAD段階で45度以下に分割・再設計するか、可溶性サポートや通常サポートを使うのが現実的です。

予防

  • 新しいフィラメントを使う前にオーバーハングテストモデル(段階角度付き)で上限角度を把握する
  • スライサーのオーバーハング動的速度・動的冷却機能を有効にしておく
  • ダクトやファンの経年劣化を定期点検する(ファンのインペラ割れは冷却能力を大きく落とす)
  • Klipper環境ならPressure Advanceもチューニングし、押出遅れによる垂れ増加を抑える

まとめ

オーバーハングは冷却と速度の協調で決まります。素材別のプロファイルに「オーバーハング時の動的減速・増風」を設定しておくと、モデルを変えるたびに手動調整する必要がなくなります。70度を超える角度を常用したい場合はサポート戦略を前提にした方が安定し、全体の歩留まりも高くなります。設計側で角度を見直すことも含めて、プロセスと設計の両面から最適化してください。


RELATED FAQ