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FDMで寸法精度が出ない時のキャリブレーション

症状とは

STLやSTEPデータ通りの寸法で造形されず、穴径が小さい/大きい、外形が膨張する、XとYで縮率が違う、同じ20mmキューブでもX19.8mm・Y20.3mmのように軸で差が出る、などの症状です。実用部品や嵌合部品を作る場合は±0.1mm前後の精度が求められることも多く、キャリブレーションで追い込む必要があります。

結論

寸法ズレの要因は「XY軸のステップ換算」「Eステップ」「フロー率(押出倍率)」「熱収縮・素材特性」「穴径補正(Hole Compensation)」に分類できます。キャリブレーションキューブだけで判断するとCNC Kitchenも指摘するように誤診しやすいため、押出量の検証から先に行うのが定石です。

原因と対策1:Eステップのずれ

Eステップはエクストルーダーモーターが1mmのフィラメントを送り出すために必要なステップ数です。計測は次の手順で行います:①ホットエンドをPLAで200度に加熱、②エクストルーダー入口から110mmの位置にマジックで印、③G-code G1 E100 F100(100mmを100mm/minで押出)、④印から入口までの残距離を測り、110 − 残距離 = 実押出量、⑤新Eステップ = 現Eステップ × 100 ÷ 実押出量、⑥M92 E[新値]M500で保存。All3DPやMatterHackersの手順と一致します。

原因と対策2:フロー率(押出倍率)の最適化

Eステップが合っていても、フィラメントの膨張や溶融条件でフロー率は変動します。スライサーで壁厚2〜4壁で薄壁のキューブを印刷し、ノギスで壁厚を実測→目標値で割って倍率を算出します。Bambu Studioには自動フローキャリブレーション機能があり、X1シリーズのLiDARでライン幅を読み取って係数を自動算出します。

原因と対策3:穴径が小さく出る(Hole Compensation)

FDMの外形は多角形近似で内側にオフセットされるため、穴径は公称より小さく出る傾向があります。対策は①スライサーのHole Compensation/Hole Horizontal Expansion機能を使う、②設計段階で穴径を+0.2〜0.4mm程度拡張する(値は機種・素材で実測すべき)、③Arachne系のパスでXY Compensationを調整、です。具体値は環境依存のため必ず実測してから適用してください。

原因と対策4:熱収縮と素材特性

ABSやASAは冷却時に1.5%前後、PLAでも0.2%程度の収縮が出ます。Bambu Studioなど一部スライサーにはFilament Shrinkage Compensationが実装されており、素材ごとに係数を設定できます。大型部品ほど影響が大きいため、素材別にプロファイルを分けて管理するのが実務的です。

原因と対策5:XY軸のステップ換算(Steps per mm)

通常はメーカー出荷値で正確ですが、GT2ベルトを他社品に交換した、プーリーを歯数違いに換えた等の改造をした場合は再計算が必要です。公式のSteps per mm = (モーターステップ角換算値 × マイクロステップ) ÷ (プーリー歯数 × ベルトピッチ)で算出します。具体値はメーカーの元値を出発点に改造差分のみ計算するのが安全です。

予防

  • 素材ロットが変わったらフロー率を再計測する(Bambuなら自動キャリブ)
  • キャリブ結果はスライサーのフィラメントプロファイルに紐づけて保存する
  • 実用部品は試作1個目で嵌合を確認し、寸法補正値を記録する
  • M500(EEPROM保存)忘れを防ぐため、ファーム変更後は再起動して確認する

まとめ

寸法精度は「押出系(Eステップ+フロー)」→「熱収縮補正」→「穴径補正」の順で追い込むのが最短ルートです。キャリブレーションキューブだけで判断せず、薄壁テストやフロー率テストを併用してください。Bambu X1シリーズのように自動キャリブ機能がある機種は積極的に活用し、手動調整は差分の検証に使うのが効率的です。


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