症状とは
同じ造形物でも特定の側面だけが荒れる、例えば右側面は滑らかなのに左側面だけ層が乱れる、あるいは前面のオーバーハング部だけ垂れるといった症状です。ベッド上の配置を90度回転させても荒れ方が同じ側面(プリンターから見た方角)にとどまるなら機械要因、造形物と一緒に回転するなら造形データや冷却要因を疑います。
結論
Prusaフォーラムや3D Printerlyで繰り返し報告されている通り、最頻出原因は「ベルトテンションの左右不均衡」と「ベッドレベリングの傾き」です。次点でパートクーリングファンの風向き、リニアレールの汚れ、フィラメント経路の片側負荷が挙がります。まずは造形物を回転させて荒れ側が動くかどうかで機械要因と造形要因を切り分けます。
原因と対策1:ベルトテンションの左右不均衡
CoreXY機やH-botではXY2系統のベルト張力差で片側にバックラッシュが出ます。I3系ではYベルトの緩みが奥側の振動を増やします。Prusaフォーラムの報告でも、ベルトを適正テンションに上げただけで片側の荒れが解消した事例が複数あります。テンションはベルトを弾いて周波数を測る周波数解析アプリ(Spectroid等のスペクトラム表示アプリやギターチューナーアプリ)で数値化すると再現性が上がります。なおGates純正のCarbon Drive Tension Appは自転車・バイク用カーボンベルト向けで、3DプリンターのGT2ベルトとは設計前提が異なるため精度が出ないと報告されています。
原因と対策2:ベッドレベリングの傾き
ノズルとベッドのギャップが片側だけ狭い/広いと、その側だけ押し潰されて過剰充填、あるいは浮いて押し出し不足になります。オートベッドレベリング搭載機でもメッシュの補間範囲外では補正されないことがあるため、手動レベリングでスプリングや可動ノブを再調整し、ABLを再取得します。
原因と対策3:パートクーリングファンの風向き・片吹き
ブロワーダクトが片側にしか風を送らない構造だと、反対側のオーバーハングだけ冷却不足で垂れます。ダクトの取り付け位置、割れ、ファン自体の逆回転を確認し、左右対称のダクトに交換するのが根本対策です。
原因と対策4:リニアレール/ロッドの片側汚れ・給脂切れ
ガイドレールの片側だけ埃やフィラメントカスが付着しているとキャリッジが引っかかり、XY精度が落ちます。無水エタノールで清拭し、機種メーカー指定のグリス(白色リチウムグリス系・PTFEグリス系・Super Lube等が一般的)を再塗布します。Bambu Lab機は公式マニュアル指定の純正グリス、Creality/ELEGOO機もメーカー推奨グリスに従ってください。ロッド曲がりは定盤上で転がして光の漏れを見ると判定できます。
原因と対策5:フィラメント経路の片側負荷
ボーデン式でスプールがヘッドの片側にしかないと、ヘッドが反対方向に動くときだけチューブが引っ張られて押し出し量が不安定になります。スプールをヘッドの真上やボールベアリング式ホルダーに移すと改善します。
原因と対策6:Zリードスクリューの回転ズレ(二軸構成機)
二本のZリードスクリューを同期させていないI3系機種では、電源OFF中にどちらかが自重で回転し、次回印刷時に左右のZ高さがずれて片側だけ層が太る/細るケースがあります。対策はZシンクロベルト追加、ステッパー制動有効化、手動で定盤に合わせて高さを揃える、などです。CoreXY機種でもZ軸が3モーターの場合、オートZティルト(Z tilt adjust)の再取得が効果的です。
予防
- 月次でベルトテンション・レール清掃・給脂・ベッドレベリングを点検する
- テストモデル(XYZキャリブレーションキューブ等)を定位置で印刷し、経時変化を記録する
- ファンダクトは3Dデータ公開のものを使い、割れ・変形があれば即交換する
- 造形前に毎回Zオフセットと一層目の押し潰し具合を目視確認する
まとめ
「片側だけ荒れる」は情報量の多い症状であり、造形物を回転させるだけで機械要因か造形要因かを判定できます。機械要因と判明したらベルト、レベリング、冷却、レールの順で点検すれば大半は解決します。変更は一度に一項目に絞り、同じテストモデルで効果を検証してください。
