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FDMのエレファントフット対策

症状とは

FDMの「エレファントフット(Elephant Foot、象の足)」は、造形物の最下層〜下数層だけが外側に膨らみ、上部とのシルエットが合わなくなる現象です。英語圏では first layer squishbottom bulge とも呼ばれます。プラットフォーム近くの層が自重と熱で潰れることで発生します。

  • 底面が寸法より大きく、上に行くほど正しい寸法になる
  • 組み立てパーツの底面がはまらない、押し込めない
  • 接地面の縁がにじんだように膨らむ

結論(主原因)

主原因は次の2点です。とくに(1)の影響が支配的で、Z-offsetと1層目温度の見直しだけで解決するケースが大半です。

  1. Z-offsetが近すぎて、1層目が潰されている(ノズルとベッドの距離不足)
  2. ベッド温度が高すぎて、下数層まで柔らかい状態が続き自重で広がる

原因と対策(複数)

1. Z-offsetを見直す

1層目が潰されていると、樹脂が横に押し出されて底面積が広がります。正しい1層目の目安は「線が軽くつぶれて隣の線と融合するが、プラットフォームとの隙間が完全にゼロではない状態」です。厚すぎても密着しませんが、薄すぎるとエレファントフットが顕著になります。

  • Bambu Lab P1/X1/A1シリーズ、Creality K1/K2シリーズ、Elegoo Centauri Carbon などオートレベリング搭載機:Z-offsetを0.02〜0.05mm単位で少し上げて再テスト
  • 紙1枚法の手動レベリング機:A4用紙がわずかに擦れる程度に調整し直し
  • 1層目のみで確認できる「First Layer Test」モデルをスライサーから出力して検証

2. ベッド温度と1層目温度を下げる

ベッド温度が高いほど下数層が長く柔らかい状態を保ち、自重で外側へ流れやすくなります。第1層だけ温度を下げる設定を活用するのが定石です。

素材 通常のベッド温度 エレファントフット対策時
PLA 60℃前後 50〜55℃まで下げて様子を見る
PETG 75〜85℃ 70℃前後まで下げる
ABS / ASA 100〜110℃ 95℃前後+チャンバー温度を維持

ABSの場合は反り対策と両立させる必要があるため、過度に下げると剥離リスクが増えます。チャンバー温度の制御と合わせて、1〜2層目を過ぎたら本来の温度に戻す設定が有効です。

3. スライサーのエレファントフット補正を使う

主要スライサーには専用の補正機能があります。数値を変更した影響は底面寸法に直接効くため、0.05mm単位で追い込んでください。

  • Bambu Studio / OrcaSlicer:「Quality → Elephant foot compensation」(標準0.15mm前後で効果あり)
  • PrusaSlicer:「Print Settings → Advanced → Elephant foot compensation」
  • Cura:「Initial Layer Horizontal Expansion」に負の値(-0.1〜-0.2mm程度)を入れる

補正を効かせすぎると、1層目の輪郭が本来より内側に入り、寸法不足や1層目の浮きを引き起こします。まず0.1mm程度から試し、実測でフィットしない場合のみ増やす運用が安全です。

4. 面取り/フィレットを設計に入れる

底面の角が90度だと、押しつぶされた樹脂の逃げ場がなく、見た目上のエレファントフットが目立ちやすくなります。CADで底面エッジに0.3〜0.5mmの面取り(チャンファー)を入れると、見た目も組み付けも改善します。既存データを修正できない場合は、スライサー側で「下数層だけ外周を細くする」スクリプト(一部コミュニティプロファイル)を使う方法もあります。

5. ベッド表面とノズル先端の状態を整える

プラットフォームに反り・汚れがあると、部分的にZ-offsetが近すぎる領域が生まれ、その部分だけエレファントフットが発生します。オートレベリング機であっても、ビルドプレートの水拭き・脱脂、ノズル先端のバリ・こびりつきの除去は毎回の効果が大きい基本メンテナンスです。

予防

  • 新規フィラメント・新規ベッドに切り替えた直後は、必ず1層目テストプリントで確認する
  • 寸法精度が必要なパーツはCADで底面に面取りを入れておく
  • 複数機を運用する場合は、機体ごとに1層目プロファイル(Z-offset・温度・ファン)を分けて保存する

まとめ

エレファントフットは、Z-offset・ベッド温度・スライサー補正の3点で解決できる典型的な初層トラブルです。寸法精度を要求するパーツでは、CAD段階の面取りを組み合わせると、設定調整の負担が一気に軽くなります。