光造形3Dプリンターの後処理方法とコツ|失敗を防ぐためのポイント
SLA(Stereolithography/光造形)方式の3Dプリンターは、高精細な造形が可能で、細かなディテールを表現するのに最適です。しかし、造形後の後処理が少し複雑で、適切に行わないと最終的な品質に大きく影響します。
この記事では、SLA方式3Dプリンターで造形した後の後処理の方法やコツ、そして失敗しやすいポイントについて詳しく解説します。
1. 造形物の取り外しと洗浄
ビルドプレートからの取り外し
造形が完了したら、まずビルドプレートから造形物を取り外します。この際、慎重に作業を行わないと造形物が破損することがあります。以下の手順で取り外しましょう。
- プレートの傾け: ビルドプレートを少し傾け、造形物の接合部分を確認します。
- スパチュラを使用: 専用のスパチュラや薄い金属板を使って、造形物の端から慎重に持ち上げます。無理に力を入れず、少しずつ角度を変えながら進めると良いでしょう。
洗浄
取り外した造形物には、まだ硬化していない樹脂が付着しているため、これを洗浄する必要があります。洗浄をしっかり行うことで、造形物の表面品質が向上し、後の二次硬化プロセスもスムーズに進みます。
- イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄: 通常は、イソプロピルアルコールを使用します。専用の洗浄容器に造形物を入れ、軽く振動を与えるか、容器を数分間手動で揺らして洗浄します。自動洗浄機がある場合は、それを利用すると均一に洗浄できます。
- ブラシでの洗浄: 細かいディテール部分にはブラシを使用して、未硬化の樹脂を取り除きます。柔らかいブラシを使うことで、造形物を傷つけることなく洗浄できます。
洗浄後の乾燥
洗浄が終わったら、IPAの残留を取り除くために、造形物をしっかりと乾燥させます。乾燥不足は後の硬化プロセスに影響を与えるため、風通しの良い場所で数十分以上放置しましょう。
2. 二次硬化(ポストキュア)
洗浄後の造形物は、まだ完全には硬化していないため、二次硬化(ポストキュア)が必要です。これは造形物の強度や耐久性を向上させるための重要なステップです。
UVライトを使用した硬化
二次硬化はUVライトを使用して行います。多くのSLAプリンターには専用の硬化装置が付属している場合がありますが、ない場合は市販のUVライトを使用することも可能です。
- UV硬化装置の使用: 専用の硬化装置がある場合は、造形物を中に入れて指定された時間(通常は10〜20分程度)硬化させます。造形物の全体に均等にUVが当たるように、定期的に向きを変えると良いでしょう。
- 自作の硬化ボックス: 専用装置がない場合、UVライトを設置した自作の硬化ボックスを使用することも可能です。鏡やアルミホイルで内側を覆うことで、UV光を反射させ、効率よく硬化できます。
二次硬化の注意点
硬化時間が長すぎると、造形物が変形したり、割れやすくなったりすることがあります。逆に、硬化時間が短すぎると、十分な強度が得られないため、造形物の使用目的に応じて適切な時間を設定しましょう。
3. サポート材の除去
SLAプリンターで造形する際、多くの場合サポート材が必要になります。造形物の精度を保ちながら、サポート材を除去するのは重要なステップです。
サポート材の除去方法
- ニッパーやカッターを使用: サポート材は、専用のニッパーやカッターで慎重に取り除きます。造形物に傷をつけないよう、刃先を使って根元から切り取ります。
- 注意すべきポイント: 薄くて細かい部分や、サポートが密集している箇所は特に注意が必要です。力を入れすぎると造形物が破損することがありますので、ゆっくりと作業を進めましょう。
サポート材の除去後
サポート材を取り除いた後、サポートの跡が残る場合があります。これらの跡を滑らかにするために、次の工程に移ります。
サポート材除去については以下の記事でより詳しく解説しています。
サポート材の除去を成功させるためのコツと手順
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/supportzaiperfect
4. 表面の仕上げ
サポート材を取り除いた後、造形物の表面を仕上げる作業を行います。この仕上げが、最終的な造形物の見た目や手触りを大きく左右します。
サンドペーパーを使用した磨き
- 粗い目のサンドペーパーで始める: まず、120〜220番程度の粗い目のサンドペーパーでサポート跡や造形物の表面を軽く磨きます。このとき、均一に力をかけることで、滑らかな表面を作り出します。
- 細かい目のサンドペーパーで仕上げ: 最初の磨きが終わったら、400〜600番程度の細かい目のサンドペーパーで仕上げを行います。これにより、より滑らかな仕上がりになります。
表面コーティング
造形物の最終的な外観を改善するために、塗装やクリアコートを施すこともあります。これにより、造形物の耐久性が向上し、光沢のある仕上がりになります。
- プライマーの使用: 塗装を行う前に、プライマーを使用することで塗料の密着性が向上します。
- 塗装: 造形物の目的に応じて、アクリル系やエナメル系の塗料を使用して色を付けます。
- クリアコート: 最後にクリアコートを施すことで、表面が保護され、より長持ちする仕上がりになります。
5. 失敗しやすいポイントとその対策
洗浄不足
洗浄が不十分だと、未硬化の樹脂が残り、二次硬化時に表面がベタついたり、不均一な硬化が発生したりします。洗浄はしっかりと行い、特に複雑な形状の造形物の場合は、細部までブラシを使って洗浄しましょう。
硬化不足または過度の硬化
二次硬化の時間が短すぎると、造形物が弱くなりやすく、長すぎると逆に脆くなります。使用する樹脂や造形物の厚みに応じた適切な硬化時間を設定し、常に均一にUVが当たるように工夫しましょう。
サポート材の除去時の破損
サポート材の除去時に造形物が破損することがあります。特に細かい部分や薄い部分は慎重に取り扱い、力を入れすぎないよう注意が必要です。ニッパーやカッターを使用する際は、刃先が造形物に当たらないように工夫しましょう。
SLA方式の3Dプリンターでの後処理は、少し手間がかかりますが、コツをつかむことで美しい造形物を作り上げることができます。この記事で紹介した手順や注意点を参考にして、ぜひ高品質な3Dプリント作品を作り上げてください。失敗を恐れず、試行錯誤しながらスキルを磨いていきましょう!
なお、後処理攻略に関しては、以下の記事で紹介されているような「裏技」もあります。参考にしてみてください。
もう後処理はいらない? 積層痕を「効果的に隠す」ための2つの裏技
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