オーバーハング完全対策マニュアル|基本的な対策から裏技まで
滑らかな表面仕上げと高い精度で、現在ではFDM3Dプリンターとならび人気を集めている光造形3Dプリンター(SLAプリンター)。
ただ、光造形3Dプリンターを使いこなす上で、プリント設計における「オーバーハング(overhang)」の管理が重要な課題となるということをご存知でしょうか。
オーバーハングを適切に処理しないとプリント品質に悪影響を与える可能性があるため、より良い3Dプリントを行うためにはその理解と対策が欠かせません。そこで、ここでは、オーバーハングの意味、問題点、解決策、そしてテクニックについてを解説したいと思います。
1. オーバーハングとは?
オーバーハングとは、3Dプリントの際に、前の層に対して大きく突き出している部分を指します。具体的には、下に支えがないまま空間に突き出た形状や角度が45度以上の傾斜を持つ部分をオーバーハングと呼びます。プリント中にこの部分がきちんと支えられていない場合、素材が垂れ下がったり、崩れてしまったりすることがあります。
なぜオーバーハングが問題になるのか?
光造形3Dプリンターはレジン(液体樹脂)を硬化させて層を形成するため、サポート材なしでは、オーバーハング部分が硬化する際に重力に逆らえずに歪んでしまいます。この結果、精度の低下や造形の失敗につながる可能性が高まります。特に角度の急なオーバーハング部分では、強いサポートが必要になる場合が多いです。
2. オーバーハングをサポートするための基本対策
オーバーハング部分をきちんとプリントするためには、いくつかの基本的な対策を講じる必要があります。
.サポート材の使用
オーバーハングを補うために最も一般的に使用されるのがサポート材です。サポート材は、プリント中にオーバーハング部分を支えるために配置され、後で除去されます。光造形3Dプリンターでは、サポート材の配置を最適化することで、オーバーハングの造形精度を高めることができます。
ポイント:サポート材は、オーバーハングの角度が45度を超える場合に特に有効です。また、サポート材を使用する際は、サポート接点をできるだけ小さくし、後処理を容易にすることが重要です。
. 角度の調整
プリントするオブジェクトの角度を調整することも、オーバーハングを減らす効果的な方法です。モデルの向きを工夫することで、オーバーハングの角度を緩やかにし、サポート材の必要性を最小限に抑えることができます。
ポイント:モデルを45度以下の角度に配置するように設計すると、サポート材を使用せずにプリントできる可能性が高まります。
.分割プリント
複雑な形状や大きなオーバーハングを持つモデルの場合、分割してプリントするという手段があります。モデルをいくつかのパーツに分けてプリントし、後で組み立てることで、オーバーハングの影響を最小限に抑えることができます。
ポイント:分割する際には、組み立て後に見えない箇所でパーツを接合できるように設計することが重要です。
3. オーバーハング対策の高度なテクニック
オーバーハング問題に対処するためには、プリントの設計段階での工夫が不可欠です。ここでは、より高度な対策とテクニックを紹介します。
. 有機的なデザインを採用する
オーバーハング部分を最小限にするために、設計段階で有機的な曲線や緩やかな傾斜を取り入れることが有効です。自然界の形状に似たデザインを採用することで、オーバーハング部分を滑らかにし、サポート材なしでもプリントが成功しやすくなります。
ポイント:プリントの構造自体を強化するため、急激な突起や垂直のオーバーハングは避け、緩やかな傾斜を作るようにデザインしましょう。
.サポート材の密度を調整する
サポート材を使用する際、サポート材の密度も重要な要素となります。密度を高くすれば、オーバーハング部分をしっかりと支えることができる一方で、後処理が難しくなります。逆に、密度が低すぎると支えきれず、オーバーハングが崩れる可能性があります。
ポイント:サポート材の密度は、モデルの重量や形状に応じて調整することが重要です。一般的には、密度を20〜50%に設定するとバランスが良いです。
.特殊なサポート構造の利用
一部のプリントソフトウェアでは、標準的なサポート材に加えて、より特殊なサポート構造を設定することができます。これには、「ツリーサポート」や「ドライサポート」と呼ばれる方法があり、サポート材の使用量を最小限に抑えつつ、オーバーハングをしっかり支えることができます。
ポイント:ソフトウェアのサポート設定を工夫することで、必要な部分だけを効率よく支えることが可能です。
4. 光造形3Dプリンターならではのオーバーハング対策
光造形3Dプリンターは、液体樹脂を使って精密な造形が可能であるため、オーバーハングの処理には特有の注意点があります。
. 硬化タイミングの調整
光造形3Dプリンターでは、光を使って樹脂を硬化させるため、硬化タイミングを調整することでオーバーハング部分の精度を保つことができます。硬化時間が短すぎると、モデルが十分に固まらず垂れ下がる可能性があるため、適切な硬化時間を設定することが重要です。
ポイント:プリントするモデルや使用する樹脂の特性に応じて、硬化時間を微調整することで、オーバーハング部分を安定させることができます。
.レジンの選択
オーバーハング部分を支えるためには、使用するレジンの硬化特性も大きな影響を与えます。硬化後の強度や粘性が適切でないと、オーバーハング部分が崩れる原因となるため、用途に適したレジンを選ぶことが重要です。
ポイント:高強度のレジンや、特定の造形目的に特化したレジンを選ぶことで、オーバーハング部分の精度が向上します。
5. オーバーハングの失敗例と改善策
オーバーハングの失敗例としては、垂れ下がりやプリント中の崩壊が挙げられます。これらの失敗を防ぐためには、サポート材の最適化やモデルの向きを再調整する必要があります。実際に失敗したプリントから学ぶことで、次回のプリントを成功させるための改善点を見つけることができます。オーバーハングを制するものは3Dプリントを制す
光造形3Dプリンターでの「オーバーハング」とは、モデルの下に支えがない部分のことを指し、適切に処理しないとプリント失敗の原因になります。対策としては、サポート材を使うこと、モデルの角度を調整すること、または分割プリントを検討することが有効です。さらに、サポート材の密度や硬化タイミング、レジンの選択などの設定もオーバーハング対策の鍵です。これらの工夫を取り入れて、より精度の高いプリントを目指しましょう。
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