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3Dプリントの糸引き(ストリング)対策マニュアル

DM方式の3Dプリンターを使用していると、ノズルが空間を移動する際に溶けたフィラメントが垂れ下がり、細い糸のようなプラスチックがモデルに付着することがあります。この現象を「糸引き(ストリング)」と呼びます。まるでクモの巣や髪の毛のように見えるため、プリントの仕上がりを損ねる要因となります。

しかし、適切な設定と調整を行えば、この問題を大幅に軽減することが可能です。ここでは、糸引きの主な原因とその対策について詳しく解説します。今回の記事は世界的3Dプリントメディア「ALL3DP」の以下の記事を参照させていただきました。

ALL3DP|3D Printer Stringing: 5 Simple Solutions

 

糸引きが発生する主な原因

糸引きが発生する主な要因は以下の通りです。

  1. リトラクション(引き戻し)設定の不適切
    • ノズルが移動する際にフィラメントを少し引き戻す機能が適切でないと、ノズルからフィラメントが垂れ下がりやすくなります。
  2. ノズル温度が高すぎる
    • 高温すぎるとフィラメントが溶けすぎ、重力で垂れてしまいます。特にPETGは糸引きしやすい素材として知られています。
  3. 移動速度が遅すぎる
    • ノズルの移動速度が遅いと、滞在時間が長くなり、糸が引きやすくなります。
  4. フィラメントの吸湿
    • 吸湿したフィラメントは、加熱時に内部の水分が蒸発し、小さな気泡が発生して押し出しが不安定になります。
  5. ノズルの汚れや詰まり
    • ノズル内部に残留したフィラメントや異物があると、押し出しが乱れ、糸引きの原因となります。

糸引きを防ぐための対策

1. リトラクション(引き戻し)設定を適切に調整する

リトラクション設定を最適化することで、糸引きを大幅に軽減できます。

  • リトラクション距離(Retraction Distance
    • ボーデン式(Bowden)エクストルーダー:2.06.0mm
    • ダイレクト式(Direct Drive)エクストルーダー:0.52.0mm
  • リトラクション速度(Retraction Speed
    • 3060 mm/sが一般的。速すぎるとフィラメントが切れ、遅すぎると効果が薄くなります。

テスト方法
リトラクションタワー(Retraction Tower)をプリントし、最適な設定を見つけるのがおすすめです。

2. ノズル温度を下げる

温度が高すぎるとフィラメントが液状になりすぎて、垂れやすくなります。以下のように温度を調整するとよいでしょう。

フィラメント

推奨温度範囲

PLA

180-220℃

ABS

210-250℃

PETG

220-250℃

TPU

210-230℃

対策
温度を510℃ずつ下げながら試して、適切な温度を見つけることが重要です。

3. 移動速度(Travel Speed)を上げる

移動速度を上げることで、ノズルが糸を引く時間を短縮できます。

  • 一般的な設定: 150200 mm/s
  • Curaでは「Travel Speed」設定を調整
  • Simplify3Dでは「X/Y Axis Movement Speed」設定を調整

4. ノズルを清掃する

ノズル内部にフィラメントのカスが詰まると、押し出しが乱れて糸引きの原因になります。定期的な清掃が重要です。

清掃方法

  • 外部: 布やワイヤーブラシで拭く
  • 内部: 針やドリルでノズルを通す
  • 「コールドプル」テクニックを使用

5. フィラメントを乾燥させる

フィラメントが湿気を含むと、内部の水分が蒸発し、押し出しが乱れます。特にPLAは吸湿しやすいです。

乾燥方法

  • フィラメントドライヤー(例:Sunlu FilaDryer S2)を使用
  • 60℃のオーブンで46時間乾燥
  • 密閉容器(シリカゲル入り)で保管

エクストルーダー方式別 リトラクト設定の目安

リトラクトの最適値はプリンターの駆動方式によって大きく異なります。下表を起点に、各スライサの「リトラクトテスト」「温度タワー」で微調整してください。

方式 代表機種 リトラクト距離 速度 Z-hop
直結式(ダイレクトドライブ) Bambu Lab A1/X1C/H2D/H2C/P2S・ELEGOO Centauri Carbon・Creality K1/K2 等 0.5〜1.0mm前後 30〜40mm/s前後 0.2〜0.4mm
ボーデン式 チューブでエクストルーダーとノズルが離れた構成 4〜6mm前後 30〜50mm/s前後 0.2〜0.4mm

※数値は一般的な目安です。フィラメント素材・銘柄により最適値は変動するため、必ず1パラメータずつ調整してください。リトラクトを増やしすぎるとノズル詰まりの一因にもなるため、糸引きが止まる最小値を探すのがコツです。

すでに糸引きしてしまった場合の対処法

もし糸引きが発生してしまった場合は、以下の方法で取り除くことができます。

物理的な除去方法

  • 手でちぎる:軽度の糸引きなら指で取り除けます。
  • デバリングツール(バリ取りツール):鋭利なエッジ部分の糸を削ぎ落とします。
  • サンドペーパーPLATPUなどを磨くのに適しています。

熱を使った除去方法

  • ライターやバーナー:素早くあぶることで糸を溶かします。ただし焦がさないよう注意が必要です。
  • ヒートガンやドライヤーPLAにはドライヤー、ABSPETGにはヒートガンが有効です。

まとめ

糸引きはFDM方式の3Dプリントにおいてよく発生する問題ですが、適切な設定と管理によって防ぐことが可能です。リトラクションや温度、速度の調整に加え、フィラメントの管理とノズルの清掃を適切に行うことで、クリーンなプリントを実現できます。もし糸引きが発生してしまっても、物理的または熱的な方法で除去できるため、落ち着いて対処しましょう。

適切な調整を行い、3Dプリントの品質を向上させましょう!

 

 

 

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