3Dプリントした造形物の底が広がってしまう「エレファントフット」現象を防ぐには
光造形3Dプリンター(SLAプリンター)は、非常に精密な造形が可能であるため、模型制作やプロトタイピングなどで幅広く活用されています。しかし、その高い精度ゆえに、特有の造形問題が発生することもあります。その一つが「エレファントフット」と呼ばれる現象です。この現象は、特に造形物の底部が広がってしまうことを特徴としていて、これはもちろんデザイン精度に悪影響を与えてしまいます。ここでは、エレファントフットの原因と、それに対する効果的な対策について詳しく解説してみたいと思います。
エレファントフットとは?
エレファントフット(象の足)とは、3Dプリンターで造形したモデルの底部が広がってしまう現象のことを指します。結果として、モデルの下部が計画よりも太くなり、形状が崩れてしまうことがあるため、特に精密なパーツを作成する際には大きな問題となります。この現象は、積層造形法における初期層(ファーストレイヤー)の問題に起因しますが、光造形3Dプリンターでも同様の問題が発生します。
エレファントフットの主な特徴
- 造形物の底部が広がる:象の足のように、底部が膨らんで不自然に広がる。
- 精度の低下:計画通りの寸法を再現できない。
- 脱着困難:造形物がプラットフォームに密着しすぎて剥がれにくくなることがある。
エレファントフットの原因
エレファントフットの発生原因は、造形開始時の初期層の硬化の不均一さや、プリントベッドとレジンタンクの位置関係に関連しています。以下は考えられる主な原因です。
1. 初期層の過硬化
光造形3Dプリンターでは、液状のレジン(樹脂)を光で硬化させて層を積み重ねていきます。この際、初期層の光照射時間が長すぎたり、光強度が高すぎたりすると、過剰にレジンが硬化してしまい、結果的に底部が膨らんでしまうことがあります。
- 長時間の硬化:初期層が長時間露光されることで、周囲のレジンが広範囲に硬化し、底部が膨らむ。
- 光強度の影響:過剰な光強度により、層の厚みや密度が増し、意図せずモデルが広がる。
2. プリントベッドの初期設定
初期のプリント層では、造形物をしっかりとプラットフォームに密着させるために、ベッドとレジンタンクの隙間が非常に狭く設定されます。しかし、この隙間が狭すぎると、樹脂が圧縮されて広がることで、エレファントフットが発生することがあります。
3. プリント物の重量と重力の影響
造形開始時には、まだ下層部の支えがないため、レジンが重力で少し押し広げられることがあります。このため、特に重たいパーツや広い底部を持つモデルでは、エレファントフットが起こりやすくなります。
エレファントフットに対する有効な対策
エレファントフットを防ぐためには、造形開始時のパラメータ設定や設計プロセスにおいていくつかの工夫が必要です。以下では、その具体的な対策を紹介します。
1. 初期層の硬化時間を調整する
エレファントフットの主な原因である過剰な硬化を防ぐために、初期層の光照射時間を調整します。具体的には、以下のような調整が有効です。
- 初期層の露光時間を短縮:必要以上に長時間露光をしないように、初期層の硬化時間を適切に短縮します。最初の数層は、造形物がしっかりとベッドに接着するように設定しつつ、露光時間を制御することが重要です。
- 光強度の調整:プリンターの光源の強度を下げることで、初期層が広がりすぎないようにします。
2. ベッドとレジンタンクの間隔を最適化する
プリントベッドとレジンタンクの初期層の間隔が狭すぎると、樹脂が押し広げられてしまいます。このため、初期層の隙間設定を見直し、適切な間隔を確保することが必要です。
- 隙間の再調整:特に造形開始時のファーストレイヤーの隙間設定は重要です。プリントベッドがレジンタンクに押し込みすぎないように、微調整を行います。
3. スカートやブリムの活用
エレファントフットを防ぐための設計的な対策として、モデルの底部にスカートやブリムと呼ばれる余剰部分を追加する方法があります。これにより、造形物本体への影響を減らすことができます。
- スカート:モデルの周囲に薄い層を設けることで、広がりを防ぐ。
- ブリム:モデルの底部に追加される平らな部分で、造形物本体の形状を維持するために使用されます。
4. モデルの設計にフィレットを導入する
3Dモデルの設計段階で、底部に少しだけ角を丸めたフィレット(面取り)を加えることで、エレファントフットの影響を軽減することができます。フィレットを追加することで、広がりを吸収し、全体の精度を向上させます。
- 底部のエッジを丸める:シャープな角の部分はエレファントフットの影響を受けやすいため、これを回避するために角を少し丸める設計が効果的です。
5. プリント後の後処理
万が一エレファントフットが発生しても、後処理で修正することが可能です。底部の広がりをサンドペーパーや削り道具を使って整えることで、ある程度修正できます。
- 研磨による修正:エレファントフットが発生した場合、底部を研磨して形状を整える方法です。これは最終手段ですが、簡単なモデルであれば有効です。
初期層の露光時間やベッドとレジンタンクの間隔を最適化することがエレファントフット防止の基本
光造形3Dプリンターで発生するエレファントフットは、特に精密なパーツを作成する際には避けたい問題です。原因を理解し、適切な対策を講じることで、その発生を最小限に抑えることができます。
初期層の露光時間やベッドとレジンタンクの間隔を最適化することが、エレファントフット防止の基本となります。また、設計段階でスカートやフィレットを取り入れたり、後処理で調整を行うことで、造形精度を保つことが可能です。
3Dプリンター技術は進化を続けており、エレファントフットのような問題も技術の進歩とともに徐々に解決されていくと思いますが、それまでの間は、ここで紹介した対策を参考にして、安定した高精度の3Dプリントにトライしてみてください。
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