Pressure Advanceとは?押し出し圧力補正の仕組み
Pressure Advance(プレッシャーアドバンス)は、FDM 3Dプリンターの加減速時に起こる「吐出過多・吐出不足」を補正する機能です。Klipperに実装されている機能で、Marlinファームウェアの「Linear Advance」と同じ目的を持ちますが、実装アプローチが異なります。
結論:ノズル内の圧力遅れを事前・事後に補正して、角・直線の吐出量を揃える機能
フィラメントはノズル内で一定の圧力がかかって初めて安定に吐出されます。加速時は圧力が追いつかず線が細くなり、減速・停止時は圧力が抜けきらず角にブロブ(ダマ)が残りやすくなります。Pressure Advanceは、エクストルーダーの回転量を速度変化に合わせて事前に増減させることで、この圧力の立ち上がり・抜けを補正し、角・直線・細部の押し出し量を均一に近づけます。
解決している課題
補正しない場合、典型的には次の症状が現れます。
- 角の外側にブロブが残る(減速時の吐出過多)
- 直線の加速区間でアンダーエクストルージョンが起きる
- 壁の継ぎ目が太く/細くなり、シームが目立つ
- 細かいディテールがつぶれる/欠ける
Pressure Advanceは「材料の総量」を変えるのではなく「材料の時間分布」を調整する機能で、タイミングだけを整えるのが本質です。
Klipper Pressure AdvanceとMarlin Linear Advanceの違い
| 項目 | Pressure Advance(Klipper) | Linear Advance(Marlin) |
|---|---|---|
| 補正モデル | プリンターのキネマティクスと圧力モデルを使って補正 | フィラメントの余長をばねとみなしK値で制御 |
| 印刷速度への影響 | 基本的に速度を落とさず補正 | 角で減速をかける設計のためスピードに影響することがある |
| 設定パラメータ |
pressure_advance(秒) |
M900 Kn(K値) |
キャリブレーション方法
OrcaSlicerなどのスライサーには、Pressure Advanceのタワーキャリブレーションが用意されています。高さと共に値が増えていく四角柱を印刷し、角のブロブが最も目立たない高さを読み取ります。
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ダイレクト方式:高さ1mmあたり0.002ずつ増加させるのが目安。例えば8mmの位置で最良なら
pressure_advance = 0.002 × 8 = 0.016。 - ボーデン方式:高さ1mmあたり0.02ずつ増加させるのが目安。チューブ内の圧縮成分が大きく、必要な補正値も大きくなります。
ラインメソッド(1層パターンで読み取る方法)もありますが、初層の品質に左右されやすいため、タワー法の方が安定します。
運用上の注意点
- フィラメントごとに最適値は変わる:同じブランドでもPLAとPETGで数値が異なります。硬めの素材、粘度の高い素材では再キャリブレーションが推奨されます。
- 補正しすぎると逆にコーナー凹み:値を上げ過ぎると角で吐出を引きすぎ、内側にへこみ(アンダー)が現れます。
- メーカー機の自動設定:Bambu Lab、Creality K1系、Elegoo Centauri Carbon系など、メーカー機には自動キャリブレーション機能が搭載されているモデルがあります。まずは標準機能を試し、必要に応じてスライサーで微調整するのが現実的です。
まとめ
Pressure Advanceは、ノズル内の圧力遅れを補正することで、角のブロブや直線部のアンダーを解消する機能です。KlipperのPressure AdvanceとMarlinのLinear Advanceは同じ目的を持つ機能で、補正アプローチと適用時のモーション挙動が異なります。高速印刷・マルチカラー印刷ほど恩恵が大きくなるため、機体とスライサーがサポートしているならキャリブレーションの価値は高いと言えます。
