Q
FDMの第一層(ファーストレイヤー)スピードは何mm/sが適正なのか。速いと定着が悪いと聞くが、どのくらい遅くすれば良いのか。PrusaSlicerやOrcaSlicerの初期設定を基準に、失敗を減らす具体的な数値を知りたい。
結論
第一層は20〜30mm/sが鉄則。これは全速度の30〜50%に相当する。PrusaSlicerのデフォルトは20mm/s、OrcaSlicerは30〜50mm/sを推奨している。第一層は印刷全体の成否を決めるレイヤーであり、ここで1〜2分時短してもリスクに見合わない。ベッド定着の余裕を確保し、平面性・ライン幅・温度の差を第一層で吸収するために、意図的に遅くする。ABL(オートレベリング)済みのBambu Lab X1C/P1SでもデフォルトはおおむねこのレンジでPLAが50mm/s前後に設定されている。
スライサー別の第一層スピード早見表
| スライサー | デフォルト第一層速度 | 全体速度比率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| PrusaSlicer(MK4/MK3S) | 約20mm/s | 30〜40% | 最も保守的。安定重視 |
| OrcaSlicer(一般的プリンタ) | 30〜50mm/s | 30〜50% | 機種プロファイルに依存 |
| Bambu Studio(X1C/P1S PLA) | 約50mm/s | 20〜25% | Core XYで精度高いため |
| Cura(Ender系デフォルト) | 20mm/s | 40% | ベッドスリンガー基準 |
素材別の第一層スピード推奨
| 素材 | 第一層速度 | 理由 |
|---|---|---|
| PLA | 20〜50mm/s | 定着が容易、Core XYは上限寄りでOK |
| PETG | 20〜30mm/s | 糸引き・過剰定着(剥がれない)を回避 |
| ABS/ASA | 20〜30mm/s | 反り防止、チャンバー温度と併用 |
| TPU | 15〜20mm/s | 柔軟材は遅く・確実に押し出す |
| Nylon/PA-CF | 20〜30mm/s | 吸湿しやすく定着がシビア |
判断基準
- ベッドがキレイで水平が取れている:デフォルト値で問題なし
- 初めて使うフィラメント・ベッド:20mm/sまで落として様子見
- 大物・広面積の第一層:20mm/s厳守。剥がれは面積に比例して致命的になる
- 小物・精密品:30mm/sでも十分、時間短縮を優先
- ラフト/ブリム使用時:ラフトは速めでも可、最終層(製品の下面)はデフォルトで
注意点
- 第一層の失敗は進行距離に比例してダメージが大きい。5時間プリントで1時間後に剥がれれば、5時間分が無駄になる
- 第一層を速くしても全体時間はほぼ変わらない。第一層は全体の5〜10%。削る効果が小さく、失敗リスクが大きい
- 第一層レイヤー高さは0.20〜0.28mmが基本。薄すぎるとベッドの凹凸を拾い、厚すぎると吐出不足で線が切れる
- ベッド温度・ヒートアップ時間も第一層品質に直結。PLA 60〜65℃、PETG 70〜80℃、ABS 100〜110℃、ビルドプレート種類により調整
- Z-Offsetのキャリブレーションが前提。第一層スピードを下げてもZが合っていなければ無意味
- Bambu LabのAuto Calibrationを毎回スキップしないこと。Lidar/プローブで第一層の安定性を担保している
まとめ
第一層は20〜30mm/s(全速度の30〜50%)を守る。PrusaSlicer 20mm/s、OrcaSlicer 30〜50mm/sがデフォルトの目安。ここを速くしても全体時間はほぼ変わらず、失敗リスクだけが跳ね上がる。「第一層は焦らない」が印刷成功率を最も上げる鉄則。機種ごとのデフォルトに素直に従い、新素材・広面積・PETG/ABSでは20mm/sまで落とすのが安全策。
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