3Dプリンターの時代から3Dファクトリーの時代へ──明治大学のFunctgraphは「全て」を自動化する
サンドイッチを自動で作ってくれるマシーン?
明治大学がものすごいものを作っているらしい。
その名もFunctgraph。3Dプリント技術を駆使した、新たなるファクトリーオートメーションだ。
ファクトリーオートメーションとは、ある商品の製造をパーツの切断やら組み立てやら研磨やらまでを極力マニピュレーター(ロボットハンド)によって行う、現代の工業においてすでに導入されている技術だが、明治大学の研究チームが開発を進めているFunctgraphは、なんでもこれを3Dプリンターによって行うというのだ。
まずは動画をご覧いただきたい。
まず皆が気になったのはサンドイッチの製造シーンだろう。これは確かに便利だ。お腹が空いた時にパッと材料を置けば、ほら簡単、サンドイッチの出来上がり。現状は正直、出来上がったサンドイッチはお世辞にも美味しそうとは言えないが、これは今後いかようにでもなりそうな気がする。数年後には誰もが好みのサンドイッチを自由自在に………いや、待て。注目すべきところはそこではない。
Functgraphは子供と孫を同時につくる
このFunctgraph、研究チームによれば端的にこう定義されている。
「Functgraphとは3Dプリンタで生成したオブジェクトを人が介入せずに組み立て・アクチュエートをする研究です」
つまり、通常であれば何かを作りたいと思って3Dプリンターで出力した場合、サポート材を取り外したり、その出力物同士を手作業で組み立てたりと、なんだかんだで手間が掛かってきたのだが、このFunctgraphでは、そのめんどっちい手間を全て取っ払ってしまおうじゃないかということが試みられているという話だ。さらに出力後、組み立てられたマシンが、そのままオートメーションで、新たに物を作り出し始めるというのだから、ちょっと驚く。
さっきのサンドイッチのシーン、ともするとサンドイッチの出来に目を奪われてしまうが、重要なのはそのサンドイッチを作るサンドイッチメイカーが、まずオートマチックに製造されているというポイントだ。そして、そうして作られたメイカーをもFunctgraphが自動操縦し、いよいよサンドイッチが完成するというわけだ。
言葉で説明すると分かりづらいかもしれない。言っちゃえば孫を作る前に子供を作ってるてなわけで、ともすれば子供と孫を同時に作ってるみたいなややこしい話なのだが、実際にそういうことなのだ。
もはや3Dプリンターではなく3Dプリンターをすら取り込んだ「3Dファクトリー」であるわけだが、実際、Functgraphはパーソナルファクトリーへと道を開く研究だとも言われている。なんせこれがあれば、工場のない個人でも商品(そして商品製造機械)を一定量製造し販売することが可能になる。資本主義の特徴は「生産手段の独占」にある、というのがかのマルクス大先生の教えだったが、Functgraphはその生産手段を生産しちゃんだから、ううむ、実に夢のある技術じゃないか。
開発した研究者の渡邊恵太さんとはどんな人なのかと思ってツイッターアカウントを見たら、こんな研究もしてるようだった。
オンライン飲み会を盛り上げる顔エフェクトシステム「SakeEffects」を開発しています!
— 渡邊恵太 研究室✨明治大学 先端メディアサイエンス学科 (@keita_lab) January 8, 2021
アルコールセンサを用いて酔い度を評価し、それを元に顔エフェクトを描画します!https://t.co/cpgUnmHGux pic.twitter.com/6MMpJthdwq
オンライン飲み会を盛り上げる顔エフェクト。暮らしの痒いところに手を伸ばすという意味では、ううむ、確かにFunctgraphにもスピリットは通底しているようなしてないような。
いずれにせよ、3Dプリンターの時代の次は3Dファクトリーの時代が訪れるのは間違いない気がする。もちろん、3Dファクトリーの精度や速度は、3Dプリント技術の進歩にかかってるわけで、つまり、なんだかんだで今後も要チェックなのは3Dプリンターだということなのだ。