
あのワーナーブラザーズが子供向け3Dプリンター事業に参画──いま問われている3Dプリント技術の早期教育
子供のうちから3Dプリンターと触れ合うために
今日、3Dプリンターはますます一般家庭への普及が進んでいる。その中で注目されているのが、3Dプリンターと子供の関係だ。
今、世界では各国が競うように小・中学生向けの3Dプリンター教育の充実を推進している。ここで目指されていることは他でもなく、子供のうちから3Dプリンターに触れ合うことができる環境を形成することだ。先日の記事でも触れたばかりだが、今後、3Dプリンターに関連する能力が仕事選びの上でも重要な要素となってくることは間違いない。であるならば、幼い頃より3Dプリンターに触れ合う機会を設け、その技術に慣れ親しんでおくことは、子供の将来にとっても大いに資することとなる。
しかし、子供にいやいや何かを身につけさせることがいかに難しいかは、お子さんをお持ちの方であれば熟知されているはずだ。子供を動かすにはいつだって何らかの「アメ」が必要なのだ。そして、その「アメ」において、まっさきに思い浮かぶものといえば、やはり「おもちゃ」である。
おもちゃの出力が3Dプリント体験のきっかけに
子供が3Dプリンターに触れるきっかけとして、おもちゃの印刷は格好の口実だ。言うまでもなく、子供にとってはおもちゃをいかに手に入れるかということが、最重要関心事項のひとつである。
では、どんなおもちゃの3Dプリントにトライするのが良いのだろうか。それこそシンプルな造形のおもちゃならば、家庭でも簡単に出力にトライすることができる。たとえば車の模型や飛行機の模型など、構造さえ凝らなければ親子で3Dプリンター遊びをするはじめの一歩としては決してハードルが高いものではないだろう。
あるいは子供の描いた絵を3D空間に取り込み、プレート化した上で出力したりした日には「ものづくり」の原初的な喜びの体験にきっと大いに感動してくれるはずだ。
しかし、一方でそうした単純な造形品だけでは飽きが来てしまう可能性もある。子供というのはとかく飽きっぽい生き物でもある。自分でつくったという喜びはプライスレスとはいえ、市販のおもちゃに比べれば、単純な造形品ばかりでは見劣りしてしまうのも事実だ。
ともすれば、「パパ、あのキャラでおもちゃをつくって」なんてせがまれることもあるかもしれない。もちろん、リクエストのキャラを頑張ってモデリングして出力してあげることができたなら「自慢のパパ」になれることは間違いないが、そうそう簡単にできるものでもないだろう。ここはひとつ、外からの力を頼りたいところである。
ワーナーブラザーズがToyboxとライセンス契約
実は、そうした問題を意識したのかしてないか、まさに「渡りに船」とでも言うべき新サービスが始まろうとしているというニュースが届いた。あの映画会社として知られるワーナーブラザーズの親会社ワーナーメディアがオークランド3Dとの提携を発表したのだ。さらにワーナーはおもちゃのスタートアップToyBoxLabsとのライセンス契約を締結。これによって、Toyboxの公式ウェブサイトからモデルを選択するだけで、ワーナーメディアが版権を持つキャラクターに関連した好きなおもちゃが出力できるようになるというのだ。
そもそもToyboxは数年前にクラウドファンディングで調達した15,500ドル以上の資金によって、子供向け3Dプリンターのプロトタイプの開発を実現していた。重さは6.6ポンド(3キロ未満)、印刷容量は7×8×9cmのこの3Dプリンターは、本体価格399ドル、無毒なPLA素材を使用しているなど、どんな家庭でも安心して、かつ手軽に使える仕様となっている。
そのToybox3Dプリンターを購入した上でToyboxアプリをスマホにダウンロード、さらにスマホとプリンターをwifi接続さえすれば、今すぐにでもサイトに登録されてる好きなおもちゃを出力できるというわけで、3Dプリンターの面白さを子供に体験させるきっかけになると大きく話題になっているのだ。
ToyboxのCEOによれば「Toyboxは安全な3Dプリンターで家庭でのおもちゃ印刷を提供する唯一のプラットフォーム」とのこと。また、ユーザーにウェブのカタログからワールドクラスのおもちゃを提供することが「私たちの夢」だとも語っている。これは3Dプリンター教育の促進に資するばかりでなく、たまの休日に子供におもちゃ屋を連れ回されることを回避してくれるという点でも親御さんとしてはありがたい話だろう。
時代を見据えた3Dプリンター施策を
もちろん、3Dプリンターの技術を身につける上ではToyboxでは不足だ。しかし、子供が3Dプリンターを好きになり、技術に親しみを持つきっかけにToyboxがなってくれることは間違いない。好きこそものの上手なれ、まずは3Dプリンターに慣れていくこと、その上でいずれ自らモデリングに挑戦したり、あるいは少し大きくなってきたら光造形3Dプリンターでより高精度なオブジェの出力にトライしてみたりと、段階を踏んでいくことが肝要なのだ。
しかし、残念ながらキャラクター版権を持つ日本の企業はまだこの流れには乗れていないようだ。世界では国を挙げて小中学校に3Dプリンターを設置し教育への導入の取り組みが盛んに行われているが、日本はそうした流れからも遅れを取っている(※)。
※ちなみにSK本舗は教育現場への3Dプリンターの導入のきっかけ作りとして、日本国内の小学校、中学校、高等学校、高等専門学校を対象に、2020年10月より3Dプリンターを寄贈する「3Dプリンター学生支援事業」を開始している。
詳細ページ:https://skhonpo.com/school_support
導入事例:https://skhonpo.com/school_support-results
本格的な3Dプリンター時代はもうそこまで迫っているのだ。うかうかはしていられない。日本の次世代が国際社会で活躍していくためにも、時代を見据えた意欲的な企画が国内企業からも提案されていくことを願ってやまない。