3Dプリンターで造形物の表面に波打ち模様ができてしまったら? ウォバリングの原因と有効な対策
3Dプリンティングは、プロトタイプや最終製品を迅速に作成できる便利なツールとして、広く普及しています。しかし、プリントの精度や品質に影響を与える問題がいくつか存在します。その一つが「ウォバリング(Wobbling)」とも呼ばれる現象です(「Z-banding」や「Z-wobble」という風にも呼ばれます)。これは、FDM(溶解積層法)やSLA(光造形法)などの3Dプリンターにおいて、プリント中の造形物に不均一に波打つような模様や歪みが発生する現象です。ウォバリングはプリントの見た目だけでなく、構造的な強度にも影響を与える可能性があります。そこでここでは、ウォバリングの原因とその対策について詳しく解説します。
1. ウォバリングとは?
ウォバリングは、造形物の表面に不規則な横線や波打ちが見られる現象です。これにより、表面が滑らかに見えず、意図した精度が得られない場合があります。通常、ウォーバリングはプリントのZ軸(高さ方向)に関連して起こるものであり、Z軸の動きが不安定になることで生じます。
ウォーバリングの特徴的な症状は次の通りです:
- 不規則な表面の波打ち:モデルの側面に波のような横線が見える。
- 高さ方向のズレ:Z軸方向にモデルが正確に積み上げられていない。
- 滑らかさの低下:滑らかな表面のはずが、ガタつきや凸凹が見られる。
2. ウォバリングの原因
ウォバリングの主な原因は、3Dプリンターの機械的な問題に起因します。特に、Z軸の動きに関わる部品やシステムの不具合がこの問題を引き起こします。以下に、ウォーバリングの具体的な原因を説明します。
2.1 Z軸のリードスクリューの不具合
FDMプリンターにおいて、リードスクリュー(Z軸を制御するネジ)は、造形物の高さ方向の動きを制御します。リードスクリューが曲がっていたり、磨耗していたりすると、Z軸の動きが不安定になり、層の高さにムラが生じてウォバリングが発生します。
2.2 ベッドの不均一性
プリントベッドが水平でない場合、ウォバリングの原因になります。特にベッドがしっかりと固定されていないと、Z軸の各層ごとの高さが均一にならず、波打つような形状が現れます。
2.3 プリンターフレームの剛性不足
プリンター自体のフレームが弱い、もしくはしっかり固定されていない場合、振動や微細な動きが原因でウォーバリングが発生します。これにより、プリント中に小さなブレが積み重なり、表面に不規則な波模様が生じることがあります。
2.4 プーリーやベルトの緩み
FDMプリンターでは、X軸やY軸を動かす際に、プーリーやベルトが使われます。これらが緩んでいると、層がしっかり積み上げられず、造形物にズレが生じることがあります。特に高速でプリントする場合、ベルトの緩みはウォバリングの一因となります。
2.5 モーターの精度不足
プリンターに使われているステッピングモーターが適切に動作していない場合もウォバリングを引き起こします。特に、Z軸のモーターが不規則な動きをすることで、層の間に不均一が生じます。
3. ウォバリングの対策
ウォバリングを防ぐためには、プリンターのハードウェアとソフトウェアの両方を適切に調整する必要があります。以下に、ウォバリングに対する具体的な対策を紹介します。
3.1 リードスクリューの点検と調整
ウォバリングを防ぐためには、Z軸のリードスクリューがしっかりと取り付けられているかを確認することが重要です。曲がっているリードスクリューは交換が必要です。また、定期的にグリスを塗ってメンテナンスを行い、スムーズな動作を保つようにします。
- 点検方法:リードスクリューを手動で回してみて、滑らかに動くか確認します。
- 調整方法:スクリューの取り付けを確認し、緩みがあればしっかり締め直します。
3.2 ベッドのキャリブレーション
プリントベッドが水平でないと、層の高さにムラができてウォバリングが発生します。ベッドキャリブレーションを定期的に行い、常に水平を保つことが重要です。自動ベッドレベリング機能がついているプリンターの場合、これを活用すると便利です。
- 手動キャリブレーション:フィラメントの押し出し具合や各コーナーの高さを調整してベッドを水平にします。
3.3 プリンターフレームの補強
プリンターのフレームが安定していない場合、プリント中に小さな振動が起こり、それがウォバリングを引き起こします。フレームをしっかりと固定し、剛性を高めることで、振動を最小限に抑えることができます。場合によっては、フレームを補強するための追加部品を取り付けることも効果的です。
3.4 ベルトとプーリーの調整
FDMプリンターのベルトが緩んでいる場合、ウォバリングの原因となります。ベルトのテンションを調整し、プーリーが滑らかに動くかどうか確認します。ベルトの摩耗や劣化もウォバリングの一因となるため、必要に応じて交換します。
3.5 ステッピングモーターの調整
ステッピングモーターが不安定な動作をしている場合、モーターの電圧や設定を調整することが効果的です。モーターの動作が不安定だと、各層の高さが均一でなくなり、ウォバリングが発生します。適切なドライバー電流の調整も必要です。
4. ソフトウェアでの対策
ハードウェア以外にも、ソフトウェアの設定によってウォバリングを軽減できることがあります。
4.1 層の高さの調整
層の高さが大きすぎると、Z軸の制御が不正確になることがあります。ウォーバリングを防ぐために、造形物の解像度を高めるために層の高さを減らすことも有効です。通常、0.1mm以下の層高に設定することで、Z軸の不正確な動きが減少し、ウォバリングが改善されます。
4.2 造形速度の調整
造形速度を低減することで、プリンターの動作が安定し、ウォバリングが軽減されることがあります。高速でのプリントは、Z軸の精度に悪影響を与えるため、特に精密なモデルをプリントする際は、速度を抑えてプリントすることが推奨されます。
4.3 プリント時の加速・減速設定の最適化
3Dプリントソフトウェアで設定される**加速(acceleration)や減速(deceleration)**のパラメーターは、プリントの精度に大きく影響します。これらの設定が過度に高いと、プリンターが急激に動き、振動やウォバリングが発生しやすくなります。加速と減速の設定を最適化することで、動作がスムーズになり、プリントの仕上がりが改善されます。
- 推奨設定:加速を低めに設定し、急激な動きを避けることで、プリントの安定性を高めます。特に複雑な形状のプリントにはこの調整が有効です。
5. ウォーバリング対策のまとめ
ウォバリングの対策は、ハードウェアとソフトウェアの両方に注意を払うことが重要です。リードスクリューの点検やフレームの剛性の確保、ベルトの調整などのハードウェア面での対策と、プリント設定の最適化などのソフトウェア面の対策を組み合わせることで、ウォバリングを効果的に防ぐことが可能です。特にZ軸の動きに関連する設定と部品の状態に気を配り、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
また、プリンター自体の精度や剛性を向上させるためのカスタム部品やアップグレードパーツの導入も、長期的には有効な対策となるでしょう
【関連記事】
【2024年】おすすめ10選!3Dプリンターを比較・解説!
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2024osusume?_pos=14&_sid=8d1033306&_ss=r
【2024年】おすすめのスライサーソフト6選|スライサーソフトの基本も解説!
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/2022soft?_pos=12&_sid=8d1033306&_ss=r
【2024年版】3Dモデリングの基礎知識と初心者がつまずきやすいポイント
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/moderingkisozen?_pos=7&_sid=b0e55afc3&_ss=r
2024年に3Dデータを無料でゲットするならここ!|おなじみサイトからこれから伸びそうなサイトまで紹介
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dmuryodata2022
【FDM方式VS光造形方式】 違いや選び方|初心者にも分かりやすく解説
https://skhonpo.com/blogs/3dprinter-practice/3dbegin
【通販はこちらから】
3Dプリンターの通販ページ
https://skhonpo.com/collections/3dprinter-all
フィラメントの通販ページ
https://skhonpo.com/collections/filament
レジンの通販ページ
https://skhonpo.com/collections/3dprinter-resin
FDM方式向けの便利グッズの通販ページ
https://skhonpo.com/collections/conveniencegoods-fff
SLA方式向けの便利グッズの通販ページ
https://skhonpo.com/collections/conveniencegoods-lcd