最終更新日:

Z軸リフトスピードの推奨値

Z軸リフトスピードの推奨値

光造形(LCD/MSLA/DLP)のZ軸リフトスピード(Lift Speed)は、1層硬化→FEPから剥離→次の層へ移るサイクルのうち「プレートを引き上げる速度」を決めるパラメータです。速すぎるとFEPとの剥離ショックでサポート折れ・モデル脱落・FEP破損を招き、遅すぎると1層あたりの時間が伸びて総造形時間が膨らみます。本記事では、ChiTuBoxやLychee Slicerでの推奨レンジと、モデル形状別の使い分けをまとめます。

結論(目安)

CHITUBOXのデフォルトは65mm/minで、一般的に安全・安定に使えるレンジは60〜100mm/minです(ChiTuBox Docs/Monocure3D等)。剥離面積の大きい造形や軟質・フレキシブルレジンではより遅く(40〜60mm/min)、剥離面積が小さく精度要求も高すぎない造形ではやや速めに振る運用が一般的です。

決め方の原則

リフトスピードの本質は「FEP剥離時のピール力をコントロールする」ことにあります。剥離時に一気に引き上げると、FEPの変形がサポート細部やモデル側に強く伝わり破損の原因になります。一方で遅すぎると印刷時間が伸び、LCDの発熱や全体の温度変動リスクも増えます。

  • 剥離面積が大きいほど遅く:ベースプレート近くや中実の大面積断面は剥離力が大きくなるため低速寄り。
  • サポートが細く繊細なほど遅く:ミニチュアや宝飾パターンなどライトサポート主体の造形では高速リフトで折れやすくなります。
  • レジンの粘度が高いほど遅く:高粘度・低温運用時はFEPの復元に時間がかかるためリフトを急ぐと失敗率が上がります。
  • ボトム層は通常より低速:CHITUBOXのデフォルトでもBottom Lift Speedは通常より遅い値が設定されます。プレート密着の確保のためにも低速が基本です。

素材/機種別の目安

あくまで一般的な参考値で、機種の仕様書・スライサー初期値を優先してください。

用途・条件 通常層リフトスピード ボトム層リフトスピード
CHITUBOX標準デフォルト 65mm/min 約60〜65mm/min(機種により異なる)
スタンダード/水洗いレジンの一般運用 60〜90mm/min 40〜60mm/min
剛性レジン・大型/大面積造形 40〜70mm/min 30〜50mm/min
フレキシブル/ソフト系レジン 最大60mm/min目安 30〜50mm/min
小物・サポート繊細なミニチュア 60〜80mm/min 40〜50mm/min

リフトディスタンス/リトラクトとの関係

リフトスピードは単独では決まらず、リフトディスタンス(引き上げ距離)とリトラクト(戻り)スピードとセットで考えます。

  • リフトディスタンス:FEPから完全に剥がれる距離を確保する必要があります。短すぎると剥離不足で次層にミスプリントが連鎖します。一般的な初期値は数mm(機種・スライサー既定値に準拠)。
  • 2段リフト:多くのスライサーは「低速で剥離→高速で上昇」の2段構成をサポートしています。剥離の決定的な瞬間だけ遅く、残りは速くすれば時間短縮と安全性を両立できます。
  • リトラクトスピード:戻り時はFEPに与える力が小さいため、リフトより速めに設定するのが一般的です。機種仕様に合わせて設定します。

検証方法(推奨フロー)

  1. スライサー/機種のデフォルトで1回印刷:まずはChiTuBoxや機種プロファイルの初期値(例:65mm/min)のまま代表モデルを印刷し、成功/失敗の傾向を把握します。
  2. 失敗パターンから方向を決める
    • サポート折れ・モデルが層途中で脱落 → リフトスピードを10〜20mm/min遅く。
    • 造形時間が想定より長すぎる・問題なく印刷できている → 10〜20mm/minずつ速めて限界を探る。
  3. 2段リフトを活用:低速剥離区間を短く確保し、残りを高速に振ることで、安全性を維持したまま時間短縮できます。
  4. レジン・造形温度で再確認:冬場や低温環境では粘度が上がるためリフトを遅めに、夏場や保温運用では速めに振るなど、シーズン/環境差も加味します。

まとめ

Z軸リフトスピードはCHITUBOXデフォルト65mm/minを起点に、60〜100mm/minのレンジで機種・レジン・モデル形状に合わせて調整するのが基本です。軟質レジンや繊細サポートの造形では遅めに、剥離面積が小さく安定している造形では速めに。リフトディスタンス・2段リフト・リトラクトとセットで最適化すると、印刷時間と成功率の両立がしやすくなります。