症状とは
光造形でプリントを開始したあと、完了時にプレート(ビルドプレート)に何も載っておらず、タンク底のFEPフィルムに造形物がへばりついていたり、タンクの中に「ぐちゃぐちゃの硬化塊」だけが浮いている、という失敗のことです。ベースとなるラフト/ボトム層がプレートに吸着しなかった結果、2層目以降がプレートではなくFEP側に持っていかれて、造形物が完成しません。光造形の失敗パターンのなかで最も多いトラブルのひとつです。
結論:原因はほぼ「プレートのレベリング不良」「ボトム層の露光不足」「プレート/FEPの状態」のいずれか
プレート張り付き失敗の9割は、プレートの水平調整(レベリング)ずれ、ボトム露光時間が足りない、プレート表面の汚れ・研磨不足/FEPフィルムの緩みのどれかです。経験上、順番に「レベリング→ボトム露光→プレート/FEP」の順で確認すると、原因特定が早くなります。機種・レジンによって推奨設定は異なるため、数値は必ずメーカー公式の推奨値を起点にしてください。
原因1:プレートのレベリング(水平調整)ずれ
プレートがFEPに対して傾いているか、隙間が広すぎると、1層目がFEPに食い込まず、プレートに「届かない」状態になります。輸送時の衝撃、固定ネジの緩み、調整後のロック忘れなどで発生します。
対策:
- 機種のマニュアル通りにレベリング手順を実施する(多くの機種はA4コピー用紙1枚分の抵抗感が目安として示される)
- レベリング時はタンクを外し、LCD/マスクを保護したうえで行う
- 固定ネジは指定トルクでしっかり締める。締め忘れ・ゆるみは再発の主犯
- 大型機・重いプレートは運搬後に必ず再レベリングする
- 自動レベリング搭載機でも、数値に違和感があれば手動で補正確認する
原因2:ボトム層(最初の数層)の露光時間不足
ボトム層は、以降の層を支える「土台」なのでプレートにしっかり食いつく必要があります。露光が短すぎるとプレートに付かず、FEPに持っていかれます。レジンやプレート表面の仕様によって適正時間は異なります。
対策:
- レジン・機種ごとの公式推奨ボトム露光時間を確認し、その通りに設定する
- プロファイル流用時はボトム露光まで流用し忘れていないか確認する
- 失敗時はボトム露光を段階的に増やす(いきなり倍増させず、数秒〜十数秒ずつ伸ばす)
- ボトム層の「枚数(Bottom Layer Count)」「リフト速度(Lift Speed)」もセットで見直す
原因3:プレート表面の状態
表面がピカピカに磨かれすぎている、油分・離型剤が残っている、IPAや水がついたまま印刷した、といった場合も食いつきが落ちます。新品プレートや洗浄直後は特に注意が必要です。
対策:
- 新品プレートは出荷時の油分をIPAで拭き、乾燥させる
- ピカピカに磨かれたマグネット式柔軟プレート等、表面仕上げによっては意図的に#400〜#600の耐水ペーパーで軽くヘアライン傷をつけ、食いつきを改善する運用もある(機種マニュアルで許可されている範囲で実施)
- 印刷前に表面の水滴・IPA残りを必ず拭き取る
- プレートに古い硬化塊が残っていないか、プラスチックスクレーパーで確認
原因4:FEPフィルムの緩み/ヨレ/劣化
FEPが緩んでいると層が引き剥がされた瞬間にプレート側ではなくFEP側に残ります。逆にFEPが白濁・キズ・穴になっているとレジンが漏れ、プレートに届かない。
対策:
- FEPがピンと張っているか、軽く押してみて音(紙を叩くような音)が出る程度の張力があるか確認
- 白濁・ヨレ・ピンホールがあれば交換する
- 交換時は機種指定のトルク・ネジ順で均等に締める
原因5:レジンの状態・温度
- レジンが冷えていると粘度が上がり、1層目が均一に回らず食いつきが悪化する。冬場は室温を上げるか、ヒーター機能・ヒートマット併用を検討
- 古いレジンは沈殿・分離している可能性があるので、使用前に十分撹拌する
- 長期使用で硬化カスが混じっているレジンはろ過する
原因6:スライスデータの問題
- プレートと接地するラフト/ベースをうっかり切ってしまっていないか
- モデルが浮いたままスライスされていないか(プレビュー確認)
- ラフトの面積が小さすぎる細いモデルは、ラフトを広げる・フラット化するとよい
予防:失敗率を恒常的に下げるチェックリスト
- 印刷前にレベリングの締結確認
- プロファイルは「機種×レジン×層厚」のセットで固定化する
- FEPとプレート表面を毎回目視確認
- レジン使用前の撹拌と気泡抜き
- スライサーのプレビューで1層目の接地面を確認する習慣
まとめ
「プレートに張り付かない」のは単一の原因ではなく、多くの場合レベリング・ボトム露光・プレート/FEPの3領域の複合です。まずレベリングを最優先に確認し、次にボトム露光時間をメーカー推奨値に合わせ、それでも改善しない場合はプレート表面処理とFEP状態を点検する、という順番で進めると、ほぼのケースで切り分けが完了します。露光時間などの具体的数値は機種・レジンで大きく異なるため、必ずメーカー公式の推奨値を基準にしてください。
