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FDMのアンダーエクストルージョン原因別対処

症状とは

アンダーエクストルージョン(under-extrusion、押出不足)は、スライサーが指示した量より実際に押し出されるフィラメントが少ない状態です。典型的な症状として以下が現れます。

  • ウォールのライン同士に隙間が空く(ラインが細い・透ける)
  • トップレイヤーにピンホール(小さな穴)が連続して現れる
  • インフィルのラインが途切れてカリカリ・スカスカした音に変わる
  • エクストルーダーモーターから「カチッ・カチッ」と滑る音(スキップ音)
  • 印刷の途中から突然細くなる(熱こもりや部分詰まり)

結論

アンダーエクストルージョンは単一原因ではなく、「フィラメント供給経路」「熱量」「制御パラメータ」のいずれかまたは複合で発生します。対処の優先順位は、(1) ノズル詰まり・エクストルーダー摩耗の物理点検、(2) 印刷温度の引き上げ、(3) フローレート(押出倍率)とPressure Advance / Linear Advanceの再キャリブレーション、(4) リトラクションとフィラメント径設定の確認、の順が効率的です。

原因と対策(1)ノズルの部分詰まり・焦げ付き

古いフィラメント残渣やカーボン系フィラメントの焦げがノズル内壁に堆積すると、流路が狭まって押出量が減ります。コールドプル(アトミックメソッド)を実施するか、ノズルを交換してください。Bambu Lab公式はハードンド・スチール系ノズルの寿命を使用フィラメント種により数百〜数千時間と案内しています。研磨性フィラメント(カーボン入り、グロー、GF入り)を多用する場合は短めサイクルでの交換が無難です。

原因と対策(2)印刷温度が材料の下限に寄っている

温度が低いと粘度が上がって押し出し抵抗が増え、結果としてエクストルーダーが滑ります。一次ソースに基づく代表的な温度レンジは以下です(フィラメントメーカーの推奨を最優先)。

素材 ノズル温度 ベッド温度
PLA 190〜220℃ 50〜60℃
PETG 220〜250℃ 60〜80℃
ABS 230〜260℃ 90〜110℃
ASA 235〜260℃ 90〜110℃

症状が出たら、まず推奨レンジの中央〜上限側に5℃刻みで上げて再テストしてください。高速印刷(150mm/s以上)では、ヒーターの追従のためさらに5〜10℃高めに設定するのが一般的です。

原因と対策(3)Pressure Advance / Linear Advanceが未調整

Klipperの「Pressure Advance」およびMarlinの「Linear Advance」は、ノズル内の樹脂圧力変動を予測補正する機能です。Klipper公式ドキュメントによると、ダイレクトエクストルーダーでは0.05〜0.2、ボーデン構成では高めで最大1.0近くになる場合もあるとされています。未調整だと加速開始直後にアンダーエクストルージョンが起き、減速時にブロブが出ます。

  • Bambu Lab系:スライサーの「Flow Dynamics Calibration」を実行
  • Klipper機:TUNING_TOWERコマンドでラインテストを実施
  • Marlin機:M900 K<値>でK値を調整

原因と対策(4)フローレート(押出倍率)のズレ

フィラメントロットや材料種により実効フロー量は変動します。単壁キャリブレーションキューブを印刷して、ウォール厚を実測→計算式でフロー補正値を算出するのが確実です(目安:0.4mmノズル・1ウォール設定で実測0.38〜0.42mmが適正)。Bambu Studio / OrcaSlicerには専用の「Flow Ratio Calibration」機能があります。

原因と対策(5)フィラメントの吸湿・変形

PLA/PETG/ABSのいずれも吸湿するとノズル内で水蒸気が発生し、実効押出量が不安定になります。特にPETGとナイロン系は顕著です。開封から1〜2週間以上経過している、または湿気の多い時期に保管していたフィラメントは、50〜70℃で6〜12時間のフィラメントドライヤー乾燥を試してください(素材別推奨はメーカー公式を確認)。

原因と対策(6)リトラクション過多・エクストルーダーギア詰まり

リトラクション量が大きすぎると、ヒートブレイクでコールドプラグ(樹脂が冷えて固まる塊)が発生します。直動エクストルーダーなら0.5〜1.5mm、ボーデンなら3〜5mm程度が起点として安全です。またエクストルーダーギアの歯にフィラメントカスが詰まっていないか、ブラシまたは圧縮エアで清掃してください。

予防

  • フィラメントは使用後すぐ乾燥剤入りの密閉袋に戻す
  • 新品フィラメントロット切替時にフロー/Pressure Advanceをキャリブレーション
  • 研磨性フィラメント使用後は必ずコールドプルで残渣を除去
  • 高速印刷(150mm/s以上)を常用する場合は高流量ホットエンドに換装

まとめ

アンダーエクストルージョンは「物理的な詰まり」「熱量不足」「制御未調整」のどこかで発生します。まずノズル詰まり・エクストルーダーの物理点検、次に温度の引き上げ、最後にフロー/Pressure Advanceのキャリブレーションという順で切り分ければ、原因は高確率で特定できます。症状の場所(全域 vs 印刷中盤のみ vs トップレイヤーのみ)を記録しておくと切り分けが早くなります。

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