2026年11月更新:ベッド温度の比較図とまとめのチェック順を追加、ナイロン・柔軟素材向けMagigoo定着材2点を価格付きで掲載、販売終了機種の注記を追加
症状とは
第一層(First Layer)の定着不良は、FDMプリンターでよくあるトラブルです。具体的には以下の形で現れます。
第一層の不良は、4つの形で現れる
FDMプリンターでよくあるトラブルです。
- フィラメントのラインがプレートに付かず、ノズルの後ろをズルズルとついてくる(ノズル高すぎ)
- 印刷途中でモデルの角からペロッと浮いて反り返る(ワーピング)
- ラインに隙間ができて「ザラッ」とした表面になる(押出不足 or 距離遠い)
- 印刷開始から数分以内に全体がプレートから外れてノズルが空中で空回り(通称:スパゲッティ)
結論
第一層定着の3大要素は「(1) ノズルとプレートの距離(Z-offset)」「(2) プレートの清浄性」「(3) 素材に合ったベッド温度」です。Bambu Lab公式Wikiも「ベッドレベリング前にノズル先端を清掃すること」と案内しています。また、同Wikiはテストプリントの見え方についても「ラインが細く波状ならノズルが高すぎ、縁が盛り上がるなら低すぎ」と案内しています。まずこの3点を見直してから、他の要素(速度、ファン、ラフト等)を検討するのが効率的です。


まず距離・清浄・温度の3点を見直す
この3点を見直してから、速度・ファン・ラフトを検討します。
原因と対策(1)ノズルとベッドの距離が適正でない
ノズル先端とベッドの距離が合っていないと、第一層は定着しません。手動でベッド調整をする機種では、コピー用紙などを挟んで軽い抵抗を感じる程度に合わせる方法が一般的な目安として使われています。自動レベリング搭載機(Bambu Labの主要機種、ELEGOO Centauri Carbon/Centauri Carbon 2、ELEGOO Neptune 4 Pro/Plus、Creality K1系/K2系 等)では、レベリング前に以下を必ず実施してください。なお、ELEGOO Centauri Carbon、Neptune 4 Pro/Plus、Creality K1/K1 MAX/K1CはSK本舗では販売終了です(2026年11月時点)。
- ノズル先端の残留フィラメントを真鍮ブラシで除去
- ベッド表面の油分・指紋をIPA(イソプロピルアルコール99%)で拭き取る
- レベリング機能をON(Bambu Labでは印刷開始時の「Bed Leveling」を毎回有効)
手動調整機では、ライブZ調整(印刷中にZ-offsetを少しずつ微調整。刻み幅は機種・ファームウェアによる)を使って、第一層のラインが隣同士でわずかに接するベスト状態に追い込みます。
原因と対策(2)プレートが汚れている・コーティング劣化
PEI、PC、ガラス、テクスチャードプレートのいずれも、皮脂・離型剤・粉塵で急激に定着力が落ちます。
- 素手でプレートを触らない(縁だけ持つ)
- 週1回以上、IPA 99% + キッチンペーパーで拭き上げ
- PLAで定着が落ちてきたら、中性洗剤+ぬるま湯で洗って完全乾燥
- PEIプレートは使い続けると表面が摩耗します。傷や光沢ムラが出て、清掃しても定着しなくなったら交換を検討
原因と対策(3)ベッド温度が素材と合っていない
一般的な目安は以下です(実際の温度はフィラメントメーカーの推奨を最優先してください)。
| 素材 | ベッド温度 | 推奨プレート |
|---|---|---|
| PLA | 50〜60℃ | テクスチャードPEI(Bambu Lab公式Filament GuideではTextured PEIは45〜65℃、Cool Plateは35〜45℃) |
| PETG | 60〜80℃ | テクスチャードPEI |
| ABS / ASA | 90〜110℃ | エンジニアリングPEI、高温プレート |
| TPU | 40〜60℃ | テクスチャードPEI(Bambu Lab公式Filament GuideではSmooth/Textured PEIで35〜45℃のため、Bambu Lab機では公式値を優先) |
PETGはPEIと相性が強すぎて剥がれなくなる(逆にプレート側を剥離する)事故が有名です。Bambu Lab公式の素材ガイドもプレートへのグルー塗布を推奨しています。
素材別ベッド温度の目安(上の表の数値を横軸0〜120℃で比較)
フィラメントメーカーの推奨温度を最優先してください。Bambu Lab機は、プレートごとの公式値(Cool Plate/PLA Plateは35〜45℃など)に合わせてください。

Magigoo PRO Flex(TPU・TPE)用 50ml ペン型定着材
¥4,620(税込・2026年11月時点)
TPU・TPEなど柔軟フィラメント向けの水性ペン型定着材。対象プレートは加熱式ビルドプレートのガラス面で、PEI・Kaptonなどはプレートメーカーの適合条件を確認してください。
原因と対策(4)第一層速度が速い・ファンが強い
第一層は意図的に遅くするのが鉄則です。
- 第一層速度:20〜50mm/s(高速機でも第一層だけは抑える)
- 第一層ファン:0%(ABS/ASAはもちろん、PLAも第一層だけはOFFが安全)
- 第一層ライン幅:100〜120%(若干太くしてプレート接地面積を増やす)
- 第一層レイヤー高:0.2〜0.28mm(ノズル径0.4mmの場合)
原因と対策(5)反りやすい形状・素材
ABS、ASA、PC、ナイロンは熱収縮で角から剥がれます。大面積・薄肉・鋭角を持つモデルほど顕著です。
- ブリム(Brim):5〜10mm幅で接地面積を増やす(手軽で効果が大きい)
- ラフト(Raft):収縮の大きい素材や凸凹プレートで有効だが仕上げ面が荒れる
- エンクロージャー:ABS/ASAはほぼ必須
- モデル側:角を面取り(フィレット)する、ウォールを鋭角にしない

Magigoo PRO PA(ナイロン)用 50ml ペン型定着材
¥4,620(税込・2026年11月時点)
PA6・PA12・PA66や炭素繊維/ガラス繊維強化PAの最初の一層を支える定着材。ナイロンの吸湿は定着にも影響するため、乾燥条件はフィラメントメーカーの指定に従ってください。
清掃・高さ・温度を見直しても定着が足りない場合は、素材とプレートに合うMagigooも候補です。PLA・PETGなどの一般素材をガラス面で使う場合はOriginal、PEIなどのフレキシブルプレートではSupergripをご確認ください。プレートメーカーが定着材の使用を認める条件で使い、対象素材・表面の選び方と冷えたプレートへの塗り方を確認してください。
原因と対策(6)エアフロー・室温
印刷中にエアコンの風、窓からの冷気、サーキュレーターの直風が当たると、プレート表面温度が局所的に低下して剥離します。プリンター周辺は無風に近い環境を維持してください。冬場(室温15℃以下)の印刷は、可能であればエンクロージャーや段ボールカバーで空気層を作るのが有効です。
予防
- 印刷前にプレート・ノズル清掃をルーティン化
- 素材切替時にベッド温度・第一層速度のプロファイルを切替
- 大型・反りやすい形状はブリム5mm以上をデフォルトに
- プレート交換やノズル交換後はZ-offsetを再調整
- Bambu Lab機は「Bed Leveling」を毎回ONで運用
まとめ
- ノズルとの距離先端を清掃し、レベリングとZ-offsetを確認
- プレートの清浄IPA拭き、傷んだ表面は洗浄か交換
- ベッド温度素材ごとの推奨温度に合わせる
- 第一層の条件速度20〜50mm/s、ファン0%、ライン幅100〜120%
- 反り対策ブリム5〜10mm、エンクロージャー
第一層不良は「距離・清浄・温度」の基本3点で多くの場合は解決します。自動レベリング搭載機でも、ノズル先端の清掃とプレートのIPA拭き上げを怠るとトラブルの原因になります。素材ごとのベッド温度レンジを守り、反りやすい素材ではブリムとエンクロージャーで先手を打てば、失敗を減らせます。
