SK本舗導入事例 #5山口県立田布施農工高等学校 様
【3Dプリンター】ユーザーズボイス
#5「山口県立田布施農工高等学校」様
youtube チャンネルより一部抜粋(記事用に一部文言を文語に修正しております) :https://www.youtube.com/watch?v=7qG0St8hRe0
取材ご協力:山口県立田布施農工高等学校様
今回は教育現場で活躍する3Dプリンターについて、山口県立田布施農工高等学校の皆様にお話を伺いました。
山口県立田布施農工高等学校は農業科と工業科が併設された高校です。
SK本舗の「教育機関へのプリンター寄贈事業」に最初にご応募いただいた学校であり、現在は、寄贈したプリンター「ELEGOO mars 2 pro」を含むSK本舗取扱いのプリンターを2台利用されています。
本動画では、授業で3Dプリンターが使われている様子や先生・生徒のインタビューをご紹介いたします。
※使用機種参考※
ELEGOO mars 2 pro :SK本舗寄贈品
ELEGOO Saturn : SK本舗にて追加購入いただいた機種
Chapter1.3Dプリンターの実習授業
この日は機械制御科の1年生が実習を行う日です。
◆3Dプリンターの用途について
実習科目は5つの科目に分かれており3Dプリンターを使った実習には、今回5名の生徒が参加しました。
生徒自ら好きなデザインで3Dモデリングを行い、3Dプリンターで出力するまでの一連の流れを学習します。
まずは「Fushion 360」でモデリングをしていきます。
その後、スライサーソフトを用いて3Dモデルをプリンターで印刷できる形に変換します。
(先生)スライサーの名前は「Formware3D」ってソフト
(先生)「自動サポート生成」を押すと
(先生)ちょっと待ってたら、こんな感じで
(先生)サポートが勝手に作られます
[スライサーソフトはSK本舗で取り扱っている「Formware 3D」を導入いただいております]
3Dモデルの配置や、サポート材の設置を自動で行ってくれるため、生徒様でも扱いやすいソフトです。
次は、3Dプリンターの印刷の手順を学んでいきます。
プリンターの操作方法、レジンの入れ方、データの印刷開始までを丁寧に解説されていました。
使用しているレジンは、後処理の簡単なSK水洗いレジン1000g『灰色』です。
先生のレクチャー後は実際に自分で印刷を行います。
授業時間の都合上、印刷を開始したところで本日の実習は終了となりました。
(生徒)これであとは待つのみ...
(生徒)箱を...
(生徒)緊張する?大丈夫?
(生徒)よし!
[3Dプリンターの知識がないと授業を行うハードルは高そうですが、そのあたりを担当の先生に伺ってみました]
私は工業科の久保優真と申します。
◆3Dプリンターを授業で扱うのは難しいですか
やっぱり最初は初めてやることもあって難しいなと思ったんですけれども、
1回、操作の方法だったりを覚えると結構簡単にできるな、と思いました。
◆授業でのプリントの成功率
成功率はかなり良くて、90%は超えてるんじゃないかなと思います。
◆プリンターを授業で扱う上で大変な点
3Dモデルを作るためのパソコンの台数だったりネット環境。
あとは3Dプリンター自体が数が少ないと1クラスで一斉に出力ということが難しいので
値段とかもは関係するんじゃないかなと、思います。
[続いて、生徒の方にもお話を伺いました]
◆今日の授業を受けて
機械制御科の松森です。
物などを製造するうえで大切なことっていうのは
その機械のことをよりよく知る、っていうのがあるので
それについて知れるというのはとても大切だな、って思っています
◆3Dプリンターは使えそうですか?
作業を全体的に見た感じだととても難しそうには見えますが、いざ実際にやってみるとなると自分の手で触っている感覚とかもよく分かっていくので、
そうなってくるとやってみてやりやすい感じではありました。
Chapter2.教員インタビュー
現在導入頂いているSK本舗取り扱いのプリンターは2台。
価格、使い勝手ともに入門機として人気の機種です。
※使用機種参考※
ELEGOO mars 2 pro :SK本舗寄贈品
ELEGOO Saturn : SK本舗にて追加購入いただいた機種
これらはレジンという液体を1層ずつ固めながら吊り上げていく「光造形式プリンター」といいます。
一方、フィラメントを溶かしながら積み上げていくFDM方式のプリンターは以前から導入されています。
[※画面上のFDM方式のプリンターはSK本舗取扱品ではございません]
光造形式・FDM方式の違いやSK本舗取り扱いの入門機2種の感想について
光造形式プリンターの導入を決めた機械制御科 科長の田中先生にお話を伺いました。
◆プリンターの寄贈事業に応募したきっかけ
手持ちのスマートフォンにものづくりの情報がいろいろ入ってくるような設定になってるんですが、そこにSK本舗の3Dプリンター寄贈のお知らせを拝見して是非応募しようと思いました。
◆寄贈した光造形式プリンターの用途
まず授業で実習で使っています。1年生の3DCAD活用という実習の授業の中で、モデリングしたデータを実際に3Dプリントをしています。
それから、地元の田布施町と共同でものづくり教室を開いています。
「ジュニアものづくらーラボ」は主に中学生向けのちょっとハイレベルなことをやってみよう、というもので、昨年は3DCADを用いてモデリングをしたものを光造形式プリンターで出したりしましたね。
3Dプリンターはもう5年ほど前から本校は徐々に導入をしています。
ただFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターばかりで光造形は、いろんな情報は目にしていたんですが、使ったことはありませんでした。
ただ、今回の寄贈の案内を見て光造形は積層痕がもうほとんどが分からない、とか
複雑な形でも作れるとかそういう情報を聞いていたので、是非やってみたいなと思って取り込みました。
ここにあるのはFDMで作った造形物と、光造形で作った造形物です。
FDMは最近造形精度がアップしたとはいえ、積層痕がやはり目で見てわかります。
[※画像は田布施農工高等学校にて元々導入されていたFDMによる出力品です]
それからサポートの部分も結構荒れてしまいます。
今まではこれでしょうがないだろうな、と思っていましたが、今回光造形で全く同じモデルを印刷したんですが光造形ではもう積層痕は目で見ても分かりません。
[※画像はSK本舗取り扱いのElegoo Saturn SK editionによる出力品]
それから表面はもう手で触っても滑らかで、射出成形並みにできています。
それから例えばこのくちばしの先端などは指で触ると痛いぐらい尖っていて、
すごく細かい造形も光造形はできるなぁ、と思いました。
小さな文字などを造形物に彫り込んだりもするんですが、例えば2~3ミリ角の文字だとFDMでは潰れて判読不可能なのが、光造形ではちゃんと目で見てわかります。
そういうところに大きな違いを感じました。
◆参考:FDM方式のプリンターに慣れるまでの時間
約2年はかかったと思います。ABSだけではなくてナイロン系だったり、カーボンが入ったたものとか、いろいろ材質を変えるたびにまた1からポイントを探るということがありました。
現在はABSを中心に時々ナイロンとかやってますが、大体のコツが分かったので現在はほぼ10回やって1回程度失敗ぐらいには落ち着いています。
◆光造形プリンターはどのくらいで慣れそうですか?
今寄贈していただいて、一年ちょっと経ったのかな。
コロナ禍もあって(登校が制限されたため)あまり光造形ではそこまで出力はしていないんですが、コツはもうだいぶ分かったかなあと思います。
[スライサー:3Dデータをプリントできる形式に変換するソフト]
特にあのスライサーのソフトが重要だということが分かって、
FDMでは平坦なテーブルにそのまま置いて出力するのが普通なんですが、光造形はプラットフォームから吊るすという形なので、できるだけサポートが少ないような角度に回転するとかそこら辺のノウハウがなかったので。
[Formware3D:有償のスライサーソフト。モデルの傾きやサポート生成を自動で行えるのが特徴]
「Formware3D」のスライサーを使い始めてからはそこを自動でやってくれるというところで、造型の精度というか、失敗しないということが格段にアップしました。
◆露光時間などの細かい設定について
「Formware3D」ではもうSK本舗のホームページの値を、機種に合わせてそのまま入れてます。初期露光時間30秒とか露光時間は3秒とか、それでやると、ほぼドンピシャ。ほぼ失敗なくできています。
「ChituBox」を最初使っていたんですがこのサポートの付け方のコツが分からなくて、非常に失敗ばかりしていました、どうにかならないかなと。
SK本舗のホームページを拝見していたら、有料にはなるんですが、自動で最適な角度に傾けてサポートを付けるという「Formware3D」とスライサーを見まして。
ちょっとこれ試しに一つ購入して使ってみようということで、一つ購入して使ってみました。すると本当に、物の形状に合わせてソフトの方で勝手に回転かけてくれて、サポートもつけてくれると。
で失敗もほぼしないということが使ってみて分かったので、早速もう一台購入しようということで、今二台入れてます。
◆今後取り組んでいきたいこと
特にやはり小さい精密なものの造形が得意ということなので、例えば本校、色々ロボット作ってるんですが、このようなモジュールが小さいギアなんかを光造形で作れればいいなと思って試行錯誤中です。
ただですね、その造形方式によっていろいろクセがあって、現在はまだクセをつかみきれてないので、ちょっとまだギア同士、歯同士が噛み合わないです。
今後ノウハウを積み上げていって、もっと小さな歯車の噛み合わせなども作っていけたらいいなと思っています。
[画像:ギアの出力品、少し大きく出力されてしまっている]
◆使用しているレジンについて
一番使いやすいのはやっぱり水洗いレジンです。何といっても水で洗うというのは、
後処理の廃液の処理とかも気にする必要がないのでこれは一番使ってます。
その他にそのロボットの機械部品などはある程度強度も必要なのでタフレジンとかそういうものを考えていたんですが、あれは後処理が結構大変だという声がうちの教員からあがっていました。
[高靭性レジン:強度と靭性が高いレジン]
最近あのSK本舗さんから高靭性の水洗いレジンというのが出ましたので早速それを購入させていただいていこう、今いろんなものに試しているところです。後、いろんな教員が使ってみようという気になってるので、ゴムライクレジンを使ってパッキン系のもの作ったりとか
そういうものを今チャレンジ中ですね。
[ゴムライクレジン:ゴムのような柔らかい素材のレジン]
◆光造形式プリンターの良い点
アイデアを形にするのに自動で作ってくれるというところが非常に大きいので、今まで作るのに割いていた時間を、アイデアを考えることに使えるので、それはぜひ導入した方がいいと思います。
それから工作教室をやっていいと思うんです、中学生というのはロボットよりも先ほどお見せしたこういうですね、キャラクターみたいなものを、可愛いとか言って作ります。
だからこういう可愛いものはよりリアルに作れた方がいいので、光造形のようなツルツルのもので作ると、非常に喜びます。
◆授業で使用するうえで重要なポイント
やっぱり価格が一番大きいと思います。
学校、特に高校はお金がないので、一台数十万もあるような3Dプリンターだとなかなか買えないし、買えたとしても一台が限度、というのが大体だと思います。
だからこの光造形のプリンターは精度の割に価格が非常に安いなぁと最初驚いたので、まあこういう風に数万円で買えるようなプリンターだと複数台学校に導入することができるため
実習に組み入れることもできるんじゃないかなと。
[画像のプリンター:価格帯が広い光造形式のプリンターですが、これらは10万円以下で使い方もわかりやすいエントリー機種です。教育機関の導入においては機種の相談も承ります]
一台しかないと、例えばロボット製作用、とかそういうふうに用途を決めて作ってしまうんですが、実習に組み入れると毎週毎週3Dプリンターが授業時間に活躍するということができるので、やっぱり私は価格じゃないかなと思いますね。
Chapter3.メカトロ研究部での活用
田布施農工高等学校では、部活動でもSK本舗の3Dプリンターを活用いただいております。
現状はFDM方式のプリンターがメインで光造形は使い始めたばかりのとのこと。
部活の内容や光造形式プリンターの可能性について顧問の先生方にお話を伺いました。
◆メカトロ研究部について教えてください
メカトロ研究部の松田です。メカトロ研究部の顧問をしております
メカトロ研究部の楠といいます。
[松田先生]
メカトロ研究部というのは、ロボットを中心としたものを作って競技に参加をしたり、
(地域の小中学生向けに)工作教室をしたり、生徒がいろんなものを作って勉強するという部活です。
活動の1つである「ロボットアメリカンフットボール」の練習の様子を見せていただきました。自ら製作したラジコン型ロボットを操縦してコート内でボールを奪い合い、相手ゴールへ運び込む競技です。
機体の一部はFDM式の3Dプリンターで製作されています。
光造形式プリンターが導入されたことで部活動にどのような変化があるのでしょうか。
◆光造形式プリンターについて
今、生徒にやっと教えて、今ようやく使い始めたところです。
生徒も使い方を一度教えれば、スライサーソフトからそれから実際の物の使い方はしっかり習得して使えています。
◆光造形式プリンターで行っていること
これは工作教室で中学生が作成した図面からプリントアウトしたものです。
中学生が印鑑を作ってみたりとかですね、自分で図面を書いてそれを出力しています。
これは課題研究の時間に今生徒が田布施町でサイクリングマップを作ろうということをやっておりまして、その途中にモニュメントを置くという中で、卵型のモニュメントと鶏型のモニュメントを作るということで、これが中にソレノイドが入ってカタカタ動くというものを作ってるんですが、これはフィラメント(FDM方式)の3Dプリンターでやったものなので線が出ています。生徒はそこが気に入らないということで、今光造形で作ってる最中です。
これもメカトロ研究部で作ってるロボットのひとつです。
相撲ロボットという競技で、土俵の上で一対一で相撲、押し出せば勝ちというような競技です。
まずはロボットの中で負荷がかからないパーツは、造形で作りたいなと今は考えてます。なぜかと言えばですね、他の3Dプリンターよりも作業が早いので、夜のうちにセットしておけば朝、大体できていますので、早いというのはいいところかなと思っています。
Chapter4.利用者からのメッセージ
最後に、3Dプリンターの導入を検討されている方向けにメッセージをいただきました。
[久保先生]
3Dプリンターは実際に使ってみると、自分がモデルを作ったものが現実に作り出したりっていうふうに実物を見て楽しむこともできますし、その作る過程でもその操作の方法を覚えたりとか学習面にも役に立つことが多いと思います。
[機械制御科 松森さん]
3Dプリンター自体、すごく精密にできているので、やはり大きいものから小さいものまで細かく再現できる、自分の思ったものを作れるっていうところがすごいと思います。
[松田先生]
光造形のプリンターでものを作れば、かなりの精度のものができます。
表面も滑らかで、もはや私たちが考えるものとは違うものができると思います。
本校でもまだまだ使い始めたばかりで偉そうなこと言えませんが、ものづくりの未来が広がる感じがするので、光造形のプリンターはおすすめです。
[田中先生]
3Dプリンターは難しいかなと皆さん思われるみたいで、私もそうは思ってましたが、私は新しいもの好きなので、難しくてもいいやと思って使いました。
すると、全然難しくないということがわかりました。
例えば本校は1年生入学してきたらすぐ3Dプリンターの実習を組み入れてますが、パソコンすら今まであまり触ったことがない生徒でもすぐ3Dモデリングソフトの使い方を覚えるし、3Dプリンターも一回こちらが使い方を教えるともう2回目からはほとんどの生徒が使うことができるようになります。
だから使ってみたいけど難しいなあと思ってる方々は是非お金が許せば、使ってみると全然難しくないということに気づくと思いますので、是非使ってみてください。
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ご協力いただいた皆さまありがとうございました!!