SK本舗導入事例 #3 造型工房キトラ様
【3Dプリンター】ユーザーズボイス
#3「造型工房キトラ」様
youtube チャンネルより一部抜粋(記事用に一部文言を文語に修正しております) :https://www.youtube.com/watch?v=X_Ye71MIfAU
取材ご協力:造型工房キトラ 岡 健之様
「造型工房キトラ」様は様々な模型作品の制作・販売をされており、有名な怪獣作品の模型なども販売されております。
今回は代表の岡様にこれまでの歩みと3Dプリンターの活用方法について伺いました。
※作品名、怪獣名等の関係で一部省略しているシーンがございます。
全編は公式youtubeチャンネル内『【3Dプリンター】ユーザーズボイス「造型工房キトラ」【SK本舗導入事例】』にてお楽しみください。
Chapter1.「造型工房キトラ」の歩み
私は2005年から造型工房キトラっていう形でワンンフェスにデビューしまして、それからずっと造型をやっております。
元々「ガレージキット」っていって怪獣のキットですね、精巧にできた模型を作ることが趣味でそれを若い頃からやっていて、ゴジラを見て自分でも作れるんじゃないかということで粘土をこねて一番最初に作ったのが2005年の時に作ったゴジラの怪獣の頭なんですが、
それをワンフェスに持って行ったところ非常に評判が良くてそれを複製して販売してみたらまたお客さんができて、それからずっとワンフェスにお邪魔するようになって、年に2回のワンフェスに出続けた、というような形になっております。
その頃は会社員でして、子どももいましたし、家のローンとかもあって色々とお金のかかる時期だったんで、造型で一本で食っていくなんていうのは夢にも思わなかったんですけど、ずっとそれを続けていくことになってやっていくうちにお客さんもついて、安定した収入みたいな…副収入なんですけど、できるようになって、いずれはこれで一本立ちしたいな
というような形で考えるようになって徐々に徐々にそれにシフトしていって。
最終的には会社を辞めて、自分で一本で造型で食べていこうという形になりました。
※ワンフェス:ワンダーフェスティバルの略。正解最大のガレージキットのイベント。
[当初は粘度で行っていた造型作業を現在はZBrushで行い、3Dプリンターで出力されています]
◆3Dプリンター導入のきっかけ
桶川というところに作業場を借りていたんですけど、そこが台風19号で浸水してしまったんですよ。
その時にいろんなものが浸水して、私のオリジナル作品の「麒麟」とか龍とかが浸水して、それが泥にまみれちゃった、というのがありました。
それをなんとか復活させようと思って、何ができるかなと思って3Dスキャンして、3Dスキャンしたものをデータ化して3Dプリントすることによって復活できるんじゃないかっていうことをちょっと考えまして、それを私単独でやるには経費がすごいかかるっていうことで、補助金っていうのがちょうど台風19号の関係であるということを聞いて、その補助金を使って3Dスキャンしたデータを3Dプリントして復活させるっていう企画案を考えて補助金事務所に出したところ、それが通るような形になって、SKさんにお願いして、3Dプリンタを購入したっていう経緯があります。
◆3Dプリンターを覚えるまで
緊急事態宣言が、ちょうどその補助金が出て3DプリンターとかZBrushとかを買い入れた後に、緊急事態宣言がポンときてこりゃ困ったねと。
イベントも何も中止になってやることもないね、っていった時に手元にZBrushと3Dプリンターがあって、これをじゃあ極めようということで、去年(2020年)の3月4月ですか。
あの頃からみんなが家の中にこもる時に私はもう毎日毎日ZBrushを使って、そこで自分の作ったものをプリントアウトして...みたいなのを繰り返しするようになって。
一挙にそこで、1ヶ月2ヶ月でほとんど覚えるような形になりました
ゲームとかやんないんで、ZBrushを使った時にこれは面白いおもちゃを見つけたな、みたいな感じで毎日毎日そればっかりやってました。
楽しくてしょうがなかったです。
基本は元々造型ができる人がZBrushとか使うことによって、さらにいい武器を、工具を手に入れた的な感覚ですね。
私から言うともともと自分で手で作れるものをZBrushとか3Dプリンターっていう工具を手に入れたことによって、今までできなかった表現が、すごい短期間で倍の表面ができるようになった、みたいなそういう感覚です。
最初はやってる方に1日2日教わったっていうのはありますけど、あとは本当に手探りで。
今やってんのも本当にこれでいいのかな?と思いつつでSKさんに電話したりして教えてもらいながらやってるような感じです。
◆有償サポートについて
SKさんのそういうサポート付きのやつにしたのはまさしくそれ(相談等)目的で、私の場合は商業ベースで使ってますんで、本当に安定して稼働してこないと使えないんですよ。
そういう意味では安定するまでサポートちゃんとしてもらって、その後何かあった時でもトラブル対応してもらうように今回(有償)サポートまでお願いしてやらせてもらってる経緯もありますので、そういう意味でSKさんのやつはもうこれからもガンガン使ってますんで、よろしくお願いします。
◆イチオシの作品を教えて下さい
※作品名、怪獣名等の関係で一部省略しているシーンがございます。
全編は公式youtubeチャンネル内『【3Dプリンター】ユーザーズボイス「造型工房キトラ」【SK本舗導入事例】』にてお楽しみください。
これもかなりいろんな情報量がギュッと詰め込まれた怪獣で色んなパーツの組み合わせでこういうこともできてるんですけど、まぁ今回ZBrush、3Dプリンターを使って非常にこういう再現がすごいやりやすくなってます。
情報量がたくさんあればあるほど3Dプリンターとかを活用して、ZBrushブラシとか3Dプリンターデジタル造型をやる時にはすごいやりやすいですよね。
手造型だとこれ一個一個積み上げて作っていかないといけないですけど、3Dプリンターの場合はある程度シンメトリー機能とか、コピーして右と左同じにする機能とかあと一個一個パーツをコピーしながら少しずつサイズを変えることによって、同じようなものをパーツとして使える機能があるんで1個作っちゃえばそれのコピーで数分でできちゃうっていう形になってます。そういう積み上げができるものになってます。
それが3Dプリンターのすごい強みじゃないですか。
SKさんの水洗いレジンの透明パーツを使ってやってます。
もともと透明に薄く黄色を塗っています。
私がすごいんじゃなくてSKさんがすごい(笑)
SKさんがこういうのを発売してくれたおかげで私もバリエーションが増えてるっていう感じです。
Chapter2.3Dプリンターの活用
◆使用しているプリンターを教えてください
こちらが「Phrozen Sonic Mini 4K SK Edition」ですね。
こちらは、どちらかというと一番先にデータを作った時の試しの印刷に使ってます。
各パーツごとに分けて順番に出していって、安定するまでこちらで様子を見るような形です。
Mini 4Kはかなり精度が良くて細かな部品でもかなり綺麗な形で出てきますんで、こちらで安定してくると製品的に問題ないねっていうことで、まとめてそれを こちら「Phrozen Shuffle XL」なんですけど、XL、もしくは「Phrozen Transform FAST」の方でまとめて、その部品をまとめた形にして一気に印刷をかけるような形で使わせてもらっています。
まだTransformの方は購入したばっかりなんで、今いろんな形で試しにどんな形で出るかっていうことを試しにやらせてもらってる形になってます。
最近はまだ小さな部品ばっかりを中心に出してるんですけど、もう少し経つと製品的に50cmサイズとか大型のものを作ろうと思ってますんで、それを分割した形で大きな商品もこちらで出力していくような形で使おうと思ってます。
これは、こんな形で閉められるような状態になってますんで、いつも寝る前に、この状態にして寝るわけなんですけど、音はもうこれを閉めるとほとんど聞こえてこないような形になってますんでFANの音とか最初は心配したんですけど全く問題ないような形です使えています。
Chapter3.水洗いレジン
◆SKの水洗いレジンは他のレジンと比べていかがですか?
ごめんなさい、そこは水洗いレジンしか使ってないんです私は。
もう先にそれ使っちゃったから他使えなくて、使いやすさはおそらく全然他と比べたことがないからわかんないんですけど、いいんだろうと思って使ってます。
◆レジンの色はどのように使い分けていますか
グレーはベースですね、サフ(サーフェイサー)吹かないでそのまま造型の出来不出来が一番わかりやすいので、グレーは絶対的にオススメですね。
あとやっぱ透明。
これ(youtube動画参照の怪獣)でいうと胸の部分とか、そういうところで使うような特別なパーツとして使ってます。
後はクリアレッドとかクリアブルーっていうのは今製品としてこういう特別仕様っていう形で出してます。
色を塗れない人とかそのまんま買って組み立てただけで飾っておきたい人向け。
カレーレジン版っていう形で別のイベント、特別なイベント販売みたいな形で販売させてもらってます。それはそれで需要としては結構はあって、ちょっと値段あげてもそういう形でやって欲しいっていう方がいますので、そのためにこういう商品化もしております。
◆造型物への塗装について
うちでは基本的にこういうガレージキットっていう形で色の着色してなくて、パーツがバラバラになった形で販売してるわけですけど、これの完成見本っていう形でうちの方では着色したものを展示はしております。
皆様はそのパーツで買ったものを組み立てて塗装してもらうわけなんですけど、その時に普通のレジンと若干違うのは、普通のレジンだと離型剤っていうのがついていて、その離型剤を落とすためにお湯で煮たり、あと洗剤で洗ったりとかけっこうそういう作業を経てやるわけなんですが、うちから販売する時は洗剤で落とすところまではやって二次硬化までした形で商品化して箱詰めしてる形になってますので、特にそういった作業はせずにいきなりサフを吹いて着色し始めもらって結構です。
他のプラモデルと同じような形での着色方法で結構だと思いますんで、決してあの、煮たり洗剤で洗ったり天日に当てたり、そういうことはしないようにしたもらった方がよいかと思います。
Chapter4.工房の枠を超えて
[岡様は福島県矢吹町出身。2013年には東日本大震災からの復興支援として作品の寄贈や作品展の開催を行っています。]
◆寄贈した「双龍と5匹の隠れ猫」について
「双龍と5匹の隠れ猫」はですね、まず龍がとにかく好きだった。
西洋でいくと龍っていうかドラゴンになっちゃうんですよね。そうするとなんか悪役になっちゃうんですけど、東洋だと龍っていうのは神の化身だっていう風に言われてて、日本なんかは特に龍の伝説みたいなのが各地にあって、神様だという扱いになってます。
私自身も龍がすごい好きで、龍自体を作りたかったんですけど。
「猫とドラゴン展」っていうのが2012年にあって、そういう展示会を東京都美術館の方でやることになって、龍を題材にしたものを何か作らなければいけない、と。
龍と猫を組み合わせて何か作ってくれっていうのがお題だったんですよ、その展示会の。
私の場合は龍を2匹絡めてそこに5匹猫を隠すと見に来た人に猫を探してもらう、っていうような、参加型の作品ですね。そういうものを作って大好評だったんで、それ自体をそのまま私が持っているよりも、私の生まれ故郷である福島県の矢吹町っていうところに、そこに寄贈をさせてもらって。
特に震災の後だったんで、文化センターってでっかいホールなんですけど、そこに展示するものとか募集していた経緯もあって、じゃあそこに置かしてください、みたいな形で当時の町長の方とお話を実際させてもらって、そこに飾るような経緯があったってことです。
矢吹町の子ども達もそこに来て、この猫を探すっていうのを楽しみにしながらやってくれてたので、そういった意味でもすごい良かったなと私は思ってます。
◆矢吹町での造型教室について
造型教室はですね、震災後の復興支援という形で始めたわけなんですけど、当時やっぱり震災に被災してしまった子ども達とかっていうのがもうちょっと明るい話題が欲しいということで何か子ども達にできることはないかと。
私にできることとしてみると、ボランティアっていっても大したこと出来ないしなーとか色々考えてたところに、子供達の陶芸教室っていって粘土をこねて色々楽しい遊びを教えるっていうのをやってみないかっていうことで向こうの同級生の方から話があって、私もそういうんだったら本当に大歓迎だし自分も子供たちに教えるっていうのも今後やってみたいと思っている、ということで始まりました。
そこから何年か経って、5、6年経ってかな、地元の寿司屋に行ったんですよ。
で、カウンター座ってお寿司をつまんでたら、ここに見たことあるような物があったんですよ。
何かって言うと私がそこのお寿司屋さんのお孫さんが、なんか東京の方から来た人に教わって作ったもんらしいよって、おじいちゃんが寿司を見ながら説明してくれて、これもしかすると俺のことかな?みたいな感じで。
自分が何年も前に教えて作ったものがそこのお寿司屋のカウンターの隅っこに飾られてたっていうエピソードがあって、あれはちょっと感動しました。
[現在は、浅草や上尾にて怪獣の造型教室を定期的に開催されています]
◆造型教室について
商品を作る時にはやっぱり売れるものを作らなければいけないし、皆が興味があるものじゃないといけないっていうことを念頭において今造型教室っていうのを先ほどの流れから話してるんですけど、若い子達からお年寄りまで怪獣のファン層がいて、その好きな人たちが私の造型教室に来て、色々話をするわけなんですけど、その中で、こんな怪獣のフィギュアあったらいいねっていう話が毎回聞けます。
その造型教室をやってる意味合いの一つとしては、リサーチ込めてやってる部分もあって、そこもかなりプラスになってて、今の若い子達はこういうのをアンテナ張ってる、欲しがってるんだ。年配の方でも怪獣に興味がある方はこういうのも欲しがってるだ、というところからピックアップして決めるようにしてます。
当然、私自身が作りたいと思うかどうかっていうのが最優先なんですけど、それ+α そういうリサーチの仕方を私の持ってる仕組みの中でそういうの使ってやらさせてもらってます。
◆造型教室に通う小学4年生
小学4年生の子がお母さんに連れられてうちに来たんですよ。
で、「小学4年生でも造型教室入れますか」って。
「全然大丈夫ですよ」
「うちの子が何年も前から言ってるんですけど『将来は円谷プロダクションに入りたい』って、そういう夢を持っているんです」と。
「この子はずーっとそれ言い続けてブレずにきてるから」
「おそらくこの子は将来絶対円谷プロに入るために生まれてきたんだ」ってお母さんが言い切るんで、うちにきて今年で3年目かな、もう中学1年生なんですよ。
その子がね、ずーっと続けて造型教室に来てくれて、私、円谷プロの知り合いの方もいますので、紹介してあげて「将来僕は入ります」って言って、未だにそういう話が続いてるっていうね。
彼が二十歳とか過ぎて円谷プロに入って、そしたら私はすごい嬉しいですね!
それを繋いだご縁みたいな形になるんで。
そうなることを願って今やらせてもらってますよ。
Chapter5.ものづくりに大切なこと
◆忘れられないお客さん
2005年にワンフェスデビューした、その頃の話なんですけど。
ブースを構えてて、そこに何人もの人が来てくれて、買ってくれるわけなんですけど。
私の売ってるものって10万円近くするような商品で、なかなかやっぱりそう簡単にポンとフィギュアに10万円出す事ってできないと思うんですよ。
その時にまだ大学生になったばっかりの男の子が、ずーっと私の作品見てて
「欲しくてしょうがないんです」って言うんですけど、
「お金今持ってないんです」って言うんですよ。
その子が朝から晩までずっと私のブースに遠巻きに見てるんですよ。
他のお客さん接客してる中「どうしても欲しいんですけど」って言われて、最後の最後に、帰る頃に、私も、もう商品最後の1個になっちゃったからその子に声かけたら
「どうしても欲しいんでアルバイトして何ヶ月貯めて払います」
っていう言葉を聞いて、今日会ったばかりの人にそこまで言われて、でも気持ちとしては嬉しいじゃないですか。
作ったものをそれだけ気に入ってくれて。
しかも大学生なんか10万円とかって出す金額って、すごいハードル高いと思うんですね。
最終的にその子に電話番号と住所を置いて、一時金として今持ってる何百円、何千円かだけもらって、その商品を販売したんですよ。一年かけて、その子支払いしてくれましたけど。
まあなんていうかなぁ、自分が作ったものをそこまでの価値として認めてくれて、
その子が支払いを最後までしてくれたっていう気持ちがすごい嬉しかったですよね。
何が嬉しいって、ものを作るってことは、やっぱりそれを見た人がそれに感動してお金を対価として、お金を払って買ってくれるっていうところまでが一連の流れなんですけど、なかなかそこまで本当にいかないで「すごいね」とは言ってくれるんだけど。
そこでお金まで払ってくれるか、それを最終的に組み上げて自分の宝物としてくれるかっていう、そこのところまで やってくれて初めて成立する話で、それを目の当たりにした時に、やっぱり作り手としてはすごい感動します。
◆ファンの存在について
ファンはですね、やっぱり私にとってモチベーションを上げてくれる、唯一無二の人たちなんだろうなとは思います。
今年60歳になるんですけど、独立してもうひと踏ん張り頑張ろう、っていうことを思ってます。
他の人だと「もう60歳になったからもういいよ、人生ゆっくり歩もうよ」と思う方が圧倒的に多いんでしょうけど、私はこの場所を借りて、3Dプリンターをガン!っと用意して、もっと生産能力を上げて、もうひとつ自分で高みを目指して怪獣業界という所でちょっと広めて行きたいな、と思うようなことを考えてまして。
それを支持してくれる皆様がまさしく私のファンだと思ってますんで、その方たちに期待されて、期待に応えられるような商品を今後とも作っていきたいと思ってますんで、よろしくお願いしますってとこです。
◆これから3Dプリンターを始める方へメッセージをお願いします
3Dプリンターをこれから使っていきたいっていうユーザーさんに向けてですけど、まず、お若い方でこれから新しいものチャレンジしたいっていう方は、どちらかというとあれですね、方向性違うのかもしれないんですけど、3Dプリンター・3D造型は万能じゃないんで逆に言うとそういう方は造型の技術を磨くのを最優先にしたほうがいいと思います。
それがあった上で3D造型をして、プリンターで出すっていうことができるような形になると思いますんで、また造型の勉強した方がいいんじゃないですかっていうのが私の率直な感想です。
年配の方で結構やった造型技術もあっていろんなことを試したこともあるって言う方から言うと、決して3Dプリンターというか3D造型自体が難しいものではないです。
ある意味オペレーションの一環としての機材ですね、自分の持ってる技術を表現する機材として考えてもらえれば非常に使いやすい機材であると思うし、一回使うと結構こんなにいろんなことができるんだっていうことが分かると思います。
ぜひチャレンジしてみて下さい。
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ご協力いただき有難うございました。
※このインタビューは2021年7月時点をもとに動画制作・公開しております。