3Dプリンターが使えないと就職できない時代に?──技術革命によって変わりゆく仕事の現場
3Dプリンターが仕事選びの幅を決める
今後、3Dプリンターを操作できるということが、それに就くための条件となってくるような職業が増えていくことは、おそらく間違いない。3Dプリント技術は多岐に渡っており、衣食住に関連する様々な分野でプレゼンスを高め続けている。そうすれば当然、その技術が一般的に求められるようになっていく。これは時代の必然というものだろう。
数十年後には料理をハンドメイドで行うことは、一部のマニアックな高級寿司店のみになっている可能性がある。はたまた、建造物を力仕事で作るといったようなことにしても、あえて汗水垂らして「ものつくり」を行いたいと望むDIY好きの趣味人だけの「遊び」となっている可能性もある。
自動運転技術の発達によって「運転手」の仕事がなくなる、あるいは今までとは異なる形に変わっていくかもしれないという話を聞いたことがあると思うが、それは決して誰にとっても他人事ではないのだ。3Dプリント技術の進展によって影響を全く受けない業界など、おそらく存在しないからである。
たとえば、医療の世界も同様だ。移植用の臓器などに関して、バイオ3Dプリント技術の研究が積み重ねられているということは、これまでもお伝えしてきた通りである。ただし今後、特に大きな影響を受けることになるのは薬剤師だろう。「医療の個別化」が進む昨今、患者それぞれにパーソナライズされた薬剤タブレットの開発が日進月歩で進んでおり、薬剤師が仕事をしていく上では今後3Dプリンターの操作技術が必須となってくる可能性が極めて高いのだ。
患者に必要な複数の有効成分を組み合わせた3Dプリンターで出力する錠剤「ポリピル」
大量の薬を一日に何度も服用することは、精神的にも苦痛であり、患者の体力を奪うことでもある。個別化された3Dプリント丸薬は複数の薬を一粒の錠剤へと個別にまとめることを可能にし、それが服用の煩わしさの解消に繋がることは間違いない。そして、そうであれば、調剤の現場において3Dプリンターが用いられることになるのも、必然的な流れだ。もちろん、この場合、3Dプリンターを扱うのは調剤師である、というわけだ。
新しい技術を前にした時に人が取りがちな3つの態度
これはほんの一例だが、今後はあらゆる職種において、このような形で3Dプリント技術が求められるようになる。筆者の感覚では、これは一時期のプログラミング技術の比ではない。むしろPCのキーボードのタイピングに相当するような普遍的な技術として3Dプリンターの取り扱い技術が浸透していくのではないだろうか。
最近ではVR空間でモデリングを行うVRモデリングなども浸透し始めている
新しい技術を前にした時に人がとる態度は大体3パターンしかない。
率先して受け入れ学び作り手にまわるか、受け入れつつもあくまでも消費者にとどまり続けるか、徹底して拒絶し続けるか。
いずれの態度を選択したとしても正解/不正解ということはないだろう。
だが、携帯電話が登場した時、「常に縛られてるみたいで嫌だね」と拒絶していた誇り高き哲学者たちは、今どれだけその哲学を貫いているだろうか。そして、その後、時代のフロントマンとなったのは、技術が登場した際にどの態度をとった人だっただろうか。
今日もまたそうした態度選択を迫られているタイミングが来ているように思う。もちろん、どのような態度を取ろうと、それはあなたの自由ではあるのだが。