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IPA洗浄と出力物の亀裂/損傷との関係性

IPAは3Dプリンターの出力物の亀裂/損傷の原因となり得るか?詳しく解説 - 光造形3Dプリンターで避けられないIPA洗浄による物理的影響について、実験結果に基づいた対策法まで徹底ガイド。SK本舗は3Dプリンター専門通販として豊富な経験と知識でユーザーをサポートします。

こちらの英文記事を参考に日本語でまとめてみました。一部改変しています。

https://ameralabs.com/blog/can-ipa-cause-cracks-sla-3d-prints/

光造形機3Dプリンターの洗浄には『IPA(イソプロピルアルコール)』が多く使用されており、実際3Dプリンターにどのような影響を与える可能性があるかを知っている人はほとんどいません。この記事では、そんなIPAが普段の3Dプリンターへどのような影響を及ぼすかについてご紹介致します。


最近オンラインのコメントにて、多種多様な3Dプリンター用の樹脂を使用した際に部品が劇的に収縮(dramatic shirinkage)することを懸念している人がたくさんいることに気づきました。これは原料による自然な硬化反応とは異なる収縮といえます。

硬化の際に印刷部分が収縮すると、通常、圧力が最大にかかる箇所に亀裂が発生します。例えば、そのようなスポットは、「T」ジョインツのような厚い壁から薄い壁への突然の遷移、すなわち、より薄い壁の方が、厚い壁に対して垂直であるときに起こりえます。このような圧力によるクラック(stress-based cracks)の原因は非常に多様であり、間違いなく別のブログ記事にするだけの価値がありますので、それについては今後また記事を上げたいと思います。

光造形3Dプリンターの出力物に見られるIPA洗浄による表面損傷の例

この実験でのこの収縮のタイプは原因が明らかで、洗浄やすすぐときに使うIPAが原因と考えられています。また、3Dプリンターでの造形物を水道水で洗ったときも同様の収縮が見受けられましたが、損傷の程度には差がありました。全体として、IPAは3Dプリンターの造形物を洗うために用いられるスタンダードな洗浄方法であるため、この記事ではIPAにのみ焦点を当てて論じてゆきます。

また、このIPAに起因する収縮は見た目にも特徴があります。造形物の表面は、たいていひび割れたり、しわになったりします。その亀裂は深く、内部の部品でさえも破損してしまいます。時にはそれが"砂漠のような表面(desert-like surface)"と呼ばれることもあります。また最悪の場合には、3Dプリンターでの造形物は過度の圧力をかけなくとも、非常に容易に手の中で壊れてしまう可能性もあります。

IPA洗浄による表面損傷の理論的理由とは

【吸収】

化学的観点では、固い(硬い)ものを何かの液体に浸せば、固形物の方が液体を吸収することはよく知られているところです。その際、どれほどが吸収されるかは多様な要因によりますが、最も重要なのは"いかなる場合も吸収が起こる"ということです。あなたがそれを液体に漬ける時間が長ければ長いほど、固形物の方は液体をより一層吸収することになるでしょう。

このような吸収現象は、光造形式3Dプリンターの洗浄手順においても避けられない出来事です。プリンターでの造形を完成させてIPAに漬ける、IPAに長く浸せば浸すほど、その部分はIPAを吸収します。柔らかい材料は周囲の液体を吸収しやすい傾向にあるので、出力したばかりの作品の表面はやわらかいため、より吸収をしやすい状態になっているからです。

この吸収により、3Dプリンターでの造形部分はやや膨張します。膨張して膨れた部分はポリマーの架橋網目構造が膨張しているのです。しかし、IPAから造形物を除くと、吸収された液体は蒸発し、ポリマーネットワーク自体は収縮して原型に戻ろうとする性質があります。しかしながら、ポリマーネットワークは全く同じ元通りの構造に修復することができないため、この収縮により、激しい亀裂および表面の損傷が起きるのです。

この問題について、我々がFTIR分析で検証したことについても述べておく必要があります。その実験により、多様な検体がIPAの影響を受けていることが証明されました。全体として、その研究はこの実験の検体に化学的に明確な変化はないことを示していました。そこで我々は、そのIPAの影響は物理的な理由であり、化学的な変化ではないと結論づけました。

【物質の構成】

それにもかかわらず、この現象が起こる理由を正確に述べることは難しくあります。我々はそれが通常使われる原材料により引き起こされる可能性があるかもしれないことにたどり着きました。というのも、特定の原材料とやり方次第では、IPAに対してより過敏に反応する傾向があるものもあれば、影響をほとんど受けない造形物を出力するプリンターもあります。

我々は上記の事実を議論した後、3Dプリンターの造形物によるIPAの影響について、洗浄、および後硬化の設定で印刷樹脂に与える影響を調査することにしました。

【実験の目的】

この実験の主な目的は、現在市販されているさまざまな3Dプリンター造形用樹脂に対するIPAの影響を調べることです。実験を通して、我々は(IPAを用いた)洗浄、ポストキュアリング(2次硬化)、プリンターでの様々な設定を実施します。この実験の後、光造形式 3Dプリンターに対するIPAによる悪影響の可能性を減らす方法についての結論と調査結果を出すことを目的としています。

IPA洗浄 工程別の時間目安と過度な浸漬のリスク

工程 浸漬時間の目安 過度に行った場合のリスク
一次洗浄(使用済みIPA) 2〜3分前後 長時間浸けると表面が白化・劣化しやすい
二次洗浄(きれいなIPA) 1〜2分前後 細部の未硬化レジンを落とし切る程度で十分
超音波洗浄機 1〜3分前後 高温・長時間で内部応力が高まり、二次硬化後に亀裂が出やすい

※IPAは未硬化レジンを溶かす一方、長時間の浸漬は造形物自体を膨潤・軟化させ、乾燥・二次硬化の段階で亀裂や白化を招きます。「短時間で確実に落とす」のが鉄則です。フレキシブル系・ゴムライク系は特に膨潤しやすいため浸漬は最短に。時間はレジン種・造形物サイズで変わるため目安です。

実験の進捗と実験条件のまとめ

【モデル】

この実験では、非常に人気の高いモデルである、awesome3dgeekによるT800ターミネーターEndoSkullを造形することに決めました。アタッチメント層を追加したままモデルを造形しました。約25mm×22mm×17mmの寸法に縮尺されたものです。

【IPAの条件】

標準のIPA溶液を濃度99%で使用しました。一般的に電気店にて通常購入できるものです。蒸留水や他の液体では希釈しませんでした。IPAは室温で保管されていました。

【レジンの種類】

現在市場で販売されている8種類のレジンをセレクトしました。どのブランドかという予測を避けるために、敢えてブラックかダーク系統の色を選んでいます。全ての材料をそのまま使用し、追加で顔料や他の成分を添加はしておりません。実験用の3Dプリンター用レジンは全て2〜3ヶ月以内に購入したものを使用しています。

【DLP 3Dプリンター】

この実験では、Acer H6518BDプロジェクターを使用するDLP式 3Dプリンターを使用することにしました。全モデル、50umの層の高さと50umのXY解像度で造形しました。露光時間は約2〜3秒で、50um層を硬化させるのに必要な最小時間を測定しました。この時間は、各作品ごとに同じ方法で、別々に計算されました。

【実験の手順】

各レジンは以下の方法でテストを行いました:

・できる限り精度の高い同一サンプルを作るため、1回につき2つのT-800モデルを造形しました。全部で3回の造形が行われ、計6台のT-800モデルが製造されました。

・最初の実験では、T-800のモデルを2個とも洗浄し、IPAに20分間浸しました。1個目のモデルは乾燥したあと、2次硬化は行いませんでした。2個目のモデルは乾燥させ、直ちに90分間2次硬化さました。

・2回目の実験ではT-800モデルを清掃し、IPAに45分間浸しました。最初のモデルは乾燥させ、後硬化は行いませんでした。2個目のモデルは乾燥させ、直ちに90分間2次硬化させました。

・3回目の実験では、洗浄して、90分間IPAに浸しました。1個目のモデルは乾燥させ、2次硬化は行いませんでした。2個目のモデルは乾燥させ、直ちに90分間2次硬化させました。

全体として、試験ごとの主な違いは、モデルの一部IPAにどれくらいの時間浸漬したか、および2次硬化を行ったかどうかという点です。下記の表はテスト結果のまとめです。

(実験)(IPA浸透時間)(2次硬化時間)

実験条件の詳細一覧表

全ての実験の終了後、実験での使用モデルは室温で48時間放置しました。2日後、各モデルを1つ1つ調べたものを以下の結果に記しました。

実験用T-800モデルの造形完成品

実験結果

実験より48時間後に、各モデルの品質とその表面を徹底的に調べました。かなりの数のモデルがありますが、容易にグループ化して結論づけられました。

まず最初に述べたいことは、2次硬化の影響は明確な結論に至らなかったという点です。2次硬化モデルの中には、2次硬化していないものよりも少しだけ良い結果を示したものがあります。しかしIPAで洗浄した直後に90分間後硬化されたという事実にもかかわらず、他のものは同様の表面亀裂を生じた。下に並んでいるいくつかの比較を見ることができます。画像をクリックすると拡大できます。

(左:2次硬化なし)(右:2次硬化あり)

2次硬化の有無による表面状態の比較

樹脂Aにおける2次硬化の効果比較

樹脂Bにおける2次硬化の効果比較

樹脂Cにおける2次硬化の効果比較

樹脂Dにおける2次硬化の効果比較

樹脂Eにおける2次硬化の効果比較

次の比較は、モデルがIPAに浸っている時間に基づいて行われました。洗浄し、20分間浸漬したままにしたそれぞれのレジンのT-800モデルは、全体的に少なくとも何らかの構造的損傷および表面損傷が見受けられました。同じく45分浸透したモデルはある程度の構造的損傷及び表面損傷がありますが、時折、2次硬化したものの中にはきれいな表面を保っていたものもありました。同様に、洗浄し、90分間浸した最後のグループかなりの構造的損傷と表面損傷が確認できました。

ここでも時折実験モデルのいくつかは、90分後IPAに漬けたあとでも2次硬化したものではなにも影響のない綺麗な表面保っていたものがあったことも言及せねばなりません。

比較には以下の画像を参照してください。

二次硬化 90分のグループ

IPA浸透時間

IPA浸透時間による影響の比較結果

結論と提言

実験での全モデルの調査により、いくつか合理的な結論を出すことができました。これらの結論は大変有益であり、皆様が3Dプリンターにて造形をする際の、出力物への潜在的なダメージを抑えることができると思われます。

主な発見は、IPAがあなたの作品の最終的な品質に影響を与える可能性があり、影響を与える事実があるということでした。3Dプリンターでの出力した造形物は、内側にも外側にもパーツが大きな影響を受ける可能性があります。印刷物を長期間IPAに浸したままにしておくと、通常、それへの損傷は避けられないといえるでしょう。(長時間IPAに浸すのはやめましょう!)

我々の結果によると、90分間IPAに浸され、2次硬化されなかった作品はすべて、ある程度の損傷が見受けられました。損傷のばらつきは、主にレジンの構成によって異なりました。IPA中に浸漬された時間が20分または45分のモデルについては、目視できる損傷はより低いレベルに留まりました。

また、これらの結果がハードウェア設定に大きく依存していることも述べておきましょう。この実験には、原材料を効果的に硬化するために多くの光を発するプリンターを使用しました。印刷プロセスの直後に、出力物はきれいな形で、かなり硬い表面を保った状態で造形されます。この、通常より硬い表面を持つものはIPAを吸収率が低く、潜在的なダメージも減らすことができるといえます。逆に多くの光を発さない低出力機だと、柔らかくて曲がりやすい状態で出力されます。これは、洗浄手順の間に物体へのIPA吸収率が増し、深刻な亀裂などの被害をもたらし得ることとなります。

この実験はIPAを用いた場合のみに適応されるのであって、エタノールのような他の洗浄液によってどのように影響されるかについては実験しておりません。したがって、異なる液体を使用すると結果が異なる可能性があります。

よくある質問(FAQ)

IPAの浸漬時間はどの程度が最適ですか?

実験結果から、光造形3Dプリンターの後処理においては、IPA洗浄時間は20分以内に抑えることを推奨します。長時間の浸漬は造形物の亀裂や表面損傷のリスクを高める傾向にあります。

2次硬化はIPA損傷を防ぐのに効果がありますか?

実験では2次硬化の効果は限定的でした。一部のサンプルで軽微な改善が見られましたが、IPA浸漬による根本的な損傷は防げませんでした。むしろ浸漬時間の短縮が重要です。

水洗いレジンを使えばIPA関連の問題は解決しますか?

実験では水道水でも類似の収縮が確認されました。水洗いレジンを使用する場合でも、長時間の浸漬は避けることが推奨されます。

レジンの種類によってIPA耐性に違いはありますか?

はい、実験結果ではレジンの構成により損傷のばらつきが確認されました。特定の材料やプリンターの組み合わせによっては、IPA影響を受けにくいものもあります。購入時に各レジンの特性を確認することをお勧めします。

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