プラゴミを原料に3Dプリントされた電気三輪車が温暖化を食い止める!? 「ZUV」が実現するカーボンニュートラルな生産
ゼロエミッションユーティリティビークル
気候温暖化が叫ばれる昨今、輸送や移動を目的とした自動車が排出する二酸化炭素量の縮減が喫緊の課題となっている。
そのための方法として挙げられているのが、電気自動車への移行、あるいは公共交通機関を積極的に使用することだ。すでにこうした呼びかけ、奨励は数多に行われており、実際に効果は現れてはきているものの、まだまだ十分とは言えない。
そんな中、オーストリアのスタジオEOOSが、原材料からエコにこだわった電気三輪車を開発し、大きく話題となっている。
その電気三輪車は「ゼロエミッションユーティリティビークル」、略して「ZUV」と呼ばれており、今回お披露目されたのはそのプロトタイプだ。
EOOSによれば、これは生産国であるオーストリアから世界中に向けて出荷されるものとしてではなく、世界中の各都市でローカルに3Dプリントされることを想定して開発したのだという。
そして何より驚くべきは、その3Dプリンティングの際の原料となるのが、プラスチック包装廃棄物およそ70キロ相当だというのだ。
カーボンニュートラルを目指して
プラスチックゴミに対する意識は、日本においても近年急速に高まっている。
2020年7月から始まったコンビニエンスストアやスーパーなどを始めとする小売店舗おけるプラスチック製レジ袋の有料化は、そうした意識の高まりを促した。
とはいえ、プラスチックは非常に便利であり、いまだ私たちの暮らしの中に多く用いられている。いかに気をつけてみても、プラスチックゴミというのはどうしても発生してしまうのが現状だ。
EOOSはそこに目をつけた。自然に還るまでの時間が非常に長く、海洋汚染などのリスクもあるプラスチック廃棄物を3Dプリントの材料としたのだ。
開発者のグランド氏は言う。
「消費後のプラスチックの再利用は、実質ゼロの炭素排出量という目標に向けた大きな一歩です」
利用されるのは地元で発生したプラスチック廃棄物。これによって通常のリサイクルが結果的にプラスチックを焼却するため二酸化炭素排出量をただ増やしてしまっていた状況を変えることができるという。なぜなら、ZUVの車体は古くなったら裁断され、別のZUVを形成することができるからだ。
「3Dプリンターが再生可能エネルギーからのエネルギーで動作している限り、すべての新しい車両がある意味でカーボンニュートラルになるのです」
ZUVの普及は必ずや地球環境を改善させるとグランド氏は息巻いている。
※カーボンニュートラル…本来は、「植物や植物由来の燃料を燃焼してCO2が発生しても、その植物は成長過程でCO2を吸収しており、ライフサイクル全体(始めから終わりまで)でみると大気中のCO2を増加させず、CO2排出量の収支は実質ゼロになる」という考え方。
持続可能なモビリティシステム
機械面においてはどうだろうか。
アディティブマニュファクチュアリング企業であるThe New Rawと共同で製作されたZUVは、、ペダルや時電車のチェーンを必要とせず、後輪のハブモーターを介して電力が供給される仕組みとなっている。製造にあたっては、それぞれの地域にZUV生産施設を拡充していくことで、現在はアジアに依存しているモビリティ製造の歪さを是正していくという。
重量はわずか100kgのコンパクトなデザインだが、ZUVにはベンチシートに大人二人、さらにフロントの貨物ボックスには同量の貨物を運ぶことができるのだとか。車には800キロのバッテリーが搭載されているが、ZUVであれば8キロのバッテリーで済む。
もちろん全電動式。これで都市内の多くの移動に対応することで、持続可能なモビリティシステムを作っていきたいとグランド氏は語る。
原材料、製造過程、流通過程、さらには再利用方法と、あらゆる部分においてエコロジーを意識したZUVは、果たして近未来の都市的モビリティのスタンダードになるのだろうか。地球と人類の命運は3Dプリント技術の発展に掛かっているのかもしれない。