
3Dプリンターと廃品を使って風力発電機を自作する方法|これであなたも自給自足生活?
もし自給自足生活を望むなら
都会暮らしをしていると、ふと文明的な暮らしに倦んでしまうことがある。
便利さ、快適さ、そして欲望を刺激する大量の情報に、時として胃もたれを感じてしまうという人は少なくないだろう。どんなに派手な暮らしも日々繰り返されてしまえば退屈さを逃れられないものだ。
いや、そもそもこの不景気に派手な暮らしなんて、そうそうできたものじゃない。雑踏に揉まれながら懸命に働いてみても、その見返りはといえば雀の涙。仕事の休憩時間のレッドブルでさえ値上がり待ったなしの世知辛いご時世だ。
胃腸を無情にも締めつけるお金や時間、将来へのプレッシャー。そんな心労の一切から逃れ、自然豊かな地で自給自足の暮らしでものんびりできたら…。そんな夢想をいくら浮かべても、目の前の仕事が減るわけでは残念ながらない。結局、今日も今日とて満員電車に飛び乗り、SNSのタイムラインに流れる必要なのかどうかもよく分からない情報に目を通すエブリデイ。
と、なんだか鬱々とした枕になってしまったが、実際のところ、この時代を生きるというのは誰にとっても多かれ少なかれ大変なものだ。そうそう楽して生きる道なんてない。
ただ、もし本当にこの暮らしに嫌気がさした時に、そこから逃れるための方法を知っていたなら、少し心の持ちようは変わるんじゃないだろうか。それこそ自給自足の暮らしを本当にするだけの知識を持っていれば、今の仕事でたとえつまづいてしまっても「いざとなったら野生でも生きていけるさ」と鷹揚に構えるだけの余裕が生まれそうなものだ。
さて、ここからが本題。仮に賃金労働を最低限に抑えて、ほぼ自給自足の暮らしをしようと思い立った時、まず考えるべきは電力の供給源だろう。いかに自然暮らしと言っても電気一切なしというのはさすがに原始的すぎる。
電力といえば、火力、水力、原子力、ソーラーと、その発電方法は様々だが、とりわけ最もナチュラルな発電方法といえば風力発電だろう。実は今、3Dプリンターとスクラップを使って自作された風力発電機がちょっとした話題となっている。
3Dプリンターとスクラップで風力タービンを自作
風力タービンを一人で、しかもゼロから作り出した人物の名前はクリス・ハーバー。農村に暮らしている彼が目をつけたのは3Dプリンターと壊された車の部品だった。
彼が作ろうとしたのは三相交流型の風力発電機。この「三相交流」とは、単相と比べて少ない電流で同じ電力を得られるため電気損失が少なく、多くの電気を使う工場などで利用されることが多い電気交流の方法で、名前のとおり、3つの波形が常に流れているので、モーターを起動するときに配線を正しくつなげば、常に同じ方向にモーターを回転させることができる。
この基本的なシステムも、もちろんクリスはゼロから作り出した。まず手巻きステーターを2つの磁気ローターの間にしっかりと固定、その上で3Dプリントされた治具によって磁石を所定の位置に固定する。ちなみに治具とは工業製品の製造過程で必要となるパーツ同士を固定させるための器具のこと。この治具製造においては3Dプリターが非常に役立つ。
詳しくは下の動画を見てもらいたいが、使用したのはランドローバーの損傷したホイールのようだ。これが風力タービン全体が風を受けて回転するためのベアリングの基礎を提供している。そこに様々な機械加工部品が加えられることで、自家製の風力タービンができあがっていく。
果たして自作した風力タービンはちゃんと発電してくれたのだろうか?
どうやらクリスにとって問題となったのは、電力が強すぎることだったようだ。すでに蓄電バッテリーが満タンの場合、作られた電力はどこにいくのか。映像ではその逃がし方も紹介されている。
ところで、実はこのクリス、以前にソーラーフレームや水力発電機も自作している。風が少ないエリアで暮らしたいという人はそちらの動画を参考いただくと良いかもしれない。
さて、これでもういつでも電力に困らず自給自足の暮らしができる…とは、クリスの動画を見る限り、やはりならない。そもそも個人所有にしては立派すぎる工房と、充実した電気工具というアドバンテージがクリスにはある。技術力もすごい。車の壊れたホイールまではなんとか手に入りそうだが、その他は少なくとも筆者には敷居が高いものばかりだ。
それに考えてみれば、3Dプリンターやレジンを定期的に購入するくらいの予算は確保しておきたいし、スマホやPCを使わない生活というのも考え難いものがある。ゲームだってしたい。毎日ご飯作るのも面倒だから外食だってしたい。となると、やっぱり自給自足は非現実的なのだろうか。
その結論を出すのは、ひとまず目の前に山積している仕事を片付けてからにするとしよう。