「狼瘡」の治療を前進させる3Dプリントデバイスをミネソタ大学が開発
皮膚の炎症と紫外線の相関関係
狼瘡と呼ばれる皮膚疾患がある。
正式名称はエリテマトーデス(紅斑性狼瘡)。免疫の異常による自己免疫疾患で世界に約500万人の患者がいるとされている。全身または皮膚に炎症が起こってしまう病気で、その発疹が狼に噛まれた痕のような赤い斑状であることから、狼瘡と名付けられた。
同時に発熱、全身に及ぶ倦怠感などの症状、腎臓、肺、中枢神経などの内臓にもさまざまな症状が現れることもあることから指定難病とされており、一般の治療にあたってはステロイドが用いられている。
もうひとつ、狼瘡の目立った症状に日光過敏症がある。皮膚を紫外線に暴露した後に、露光部位に紅斑、水疱、あるいは熱が出ることがある。これは狼瘡の症状を悪化させることになり、当事者としても非常に苦痛を伴う。それゆえ日光過敏症を発症している狼瘡患者は、日中の外出に大変気を使うことになる。
こうした患者さんへの治療を促進するためにミネソタ大学の研究者が3Dプリントされた光感知デバイスを作成したことを先日発表した。このデバイスでは、狼瘡の症状と光感受性を関連づけるデータを収集し、世界中の医師たちが狼瘡を適切に治療するのに役立てることが目指されている。
3Dプリント紫外可視光検出器によるデータ集積
発端となったのはミネソタ大学医学部の皮膚科医であるデイヴィッド・ピアーソンだ。
彼は臨床の場において日光が狼瘡を悪化させる問題に向き合ってきた。しかし、日光と狼瘡には相関関係があるということはこれまでも分かっていたものの、各患者それぞれが日光によってどのような影響を受けるのかを予測することは困難だった。そこで、ピアーソンはその相関関係をよりよく理解するために、ウェアラブル医療機器の開発者であるマイケル・マカルパインと共同でこのデバイスの開発に着手した。
今回、作成された3Dプリント紫外可視光検出器は、1日中連続して皮膚に装着することができる。それによって患者が曝されているUV露出を監視し、かつその露出を患者の症状に関連付け、それらのデータを集積していく。マカルパインはこの制作にあたり、3Dプリントされた発光デバイスを用いた。それらを修正し、受光デバイスに変換することで、本デバイスを制作した。なお、臨床試験もまもなく開始される予定だという。
3Dプリント技術と医療機器は非常に相性がいい。今回のデバイスも、3Dプリント作成であればこそ、患者に合わせてパーソナライズされたデバイスを印刷することが可能になる。確かにこれは「小さな一歩」に過ぎないかもしれないが、この「小さな一歩」の集積によってしか医療は進歩しない。この研究が狼瘡患者の苦しみを少しでも取り除く日が来ることを願っている。